花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【長編】『楼蘭』―黎翔編―外伝 【砂漠の帳 2】

    楼蘭外伝 




    【砂漠の帳 さばくのとばり 2 】

    焚き火の焔を瞳に映し、夕鈴は老将軍に話しかけた。

    「ねえ、蒋(しょう) 将軍。
    こうして焚き火を囲みながら星空を見ていると
    あなたと初めて砂漠の夜営をした夜を思い出すわ。」

    「あの頃は……
    お母様も健在で
    お父様も、いつもにこやかで……」

    「そうでしたな。
    あれは、ずいぶんと昔のことになりますなぁ……」


    夕鈴の心は、遥か過去に遡り……
    幼き日の夜営の夜へと飛んでいく。

    確かあれは王宮から、ロブ=ノールの離宮へ
    はじめて旅した時の記憶。



    「はじめて見た何も無い砂漠に夕陽が沈んだ時。
    燃えあがるように真っ赤に染まる砂漠と空」

    「初めて過ごした夜の砂漠。
    満天の降るような星空に、感動して泣いたっけ……」

    「私には、初めての夜営だったけど。
    とても楽しかった。
    その頃が、きっと一番の幸せだったのね。

    それからすぐに戦が起こり、お父様は戦場へ向われた。
    お母様は…………」

    その先の言葉を切り、夕鈴は膝に顔を埋めた。
    彼女の小さく震える肩を、老将軍は優しく宥めた。




    しばらくして夕鈴は頭上の美しい星空を見上げた。


    「この続く星空の下に、お父様がいる。
    蒋(しょう) 将軍、貴方や、楼蘭の人々がいる……
    そう思うと、ロブ・ノールの離宮に、独りでも淋しくはなかった」

    「私はロブ・ノールの離宮から、
    東方の漢の後宮に、居を移すだけ」

    引き結んだ口元が、今の彼女の精一杯の強がりなのだろう。
    夕鈴は、隣の老将軍を見つめて、言葉を静かに紡いだ。

    「覚えておいて……蒋(しょう) 将軍。
    この続く星空の下に、私が居る事を」

    「お父様を頼みます。
    私に代わりに、楼蘭を
    父を守ってください……」

    ――――そして、この続く星空の道筋の下に、黎翔様も……

    見上げた星空に続く、天球の光る道筋。
    漆黒の宇宙に、煌く輝く星々が作る巨大な光の道は、
    はるか彼方、地平線の先まで続いていた。

    夕鈴は、頭上に輝く星を眺めながら、
    黎翔への熱い想いを封印すべく
    夕鈴は、そのはしばみ色の瞳を、ゆっくりと閉じるのだった。


                ー砂漠の帳 さばくのとばり・完-

    本編・夢逢瀬編43  黎翔SIDEへ 続く


    2016.03.10.改訂
    2012.11.15.初稿
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