花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【長編】楼蘭ー王宮編ー33 ※要注意!!!古代パラレル

    楼蘭








    「お久しぶりね。
    蒋(しょう) 将軍、お父様はお元気かしら?」

    離宮の四阿は、まだ夜明け前。
    漆黒の湖に、篝火が明々と四阿を照らす。

    簡素に着替えた夕鈴は、昔なじみの懐かしい将軍の顔を見つけると
    嬉しそうに老将軍に近付いた。

    「姫様。
    火急の用件につき
    早朝からの謁見を、お許しいただきありがとうございます。
    王は変わりなく、お元気でございます。

    それにしても……
    しばらく見ないうちに、益々お美しくなられましたなぁ。
    年々、今は亡きお妃さまに似てきておりますぞ……」

    「将軍、堅苦しい世辞はもうよい。
    それよりも火急の用件とはなにか?」

    「わざわざ……
    将軍が密使とは、穏やかではありませんね」

    「姫様。
    気を確かに、お聴きくだされ
    御父君・楼蘭王より、ご伝言です。

    「皇帝より密使あり
    至急、王宮に戻るように」との仰せです。

    私と共に至急お戻りください。
    王が王宮でお待ちです」

    「そうですか。
    武帝の……」

    「どうやら今回は今までどおりでは、はぐらかせないご様子。
    王の苦渋の御決断。
    姫様、私と共に
    王宮にお戻りくださいませ……」





    「……とうとう時が来たのですね」

    夕鈴は沈鬱な面持ちで、蒋(しょう)  将軍をジッ…と見つめた。

    父と同い年の、この老将軍には、
    何度も忙しい父の代わりに、夕鈴の心を支えてくれた。
    離宮を出るということは、故郷を告げ……親しい人々との別れを意味していた。

    (そう、とうとう……)

    夕鈴の瞳から、ツツー……と涙がひと筋、頬を流れた。

    ……っ

    「~~っ」

    蒋(しょう)  将軍は、静かに泣き始めた姫に親心にも似た胸の痛みが走る。
    娘同然に見守ってきた姫を抱きしめ、謝罪した。

    「姫様っ
    申しわけありませぬ……」

    「私も辛い。
    あなた一人に、国の命運を押し付けるのは……」

    「蒋(しょう)  将軍……
    昔から分っていたことです。
    大人しく参りましょう」

      ……っ

    父のように慕う
    蒋(しょう)  将軍に、やさしく背を慰められながら
    夕鈴の涙は、止まらない。

    頭では分っていても、心が苦しかった。

    ロプ=ロール湖は、対岸が見えないほど濃い朝霧に包まれていた。
    先の見えない景色は、彼女の心にも似て晴れない。

    もうすぐ夜明けが近い
    夕鈴は、昨日と違う新しい一日を迎えようとしていた。

    …………王宮編・34へ 続く。




    2016.03.04.改訂
    2012.08.30.初稿 
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