花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【長編】楼蘭ー王宮編ー30 ※要注意!!!古代パラレル

    楼蘭 




    皇帝の使者が、居なくなった謁見の間で、
    楼蘭国王・比龍王は、物思いに沈み動けないでいた。

    この『楼蘭』は、シルクロードの要衝
    南北の天山北道・天山南道の合流地でもある『交易都市・楼蘭』

    オアシスの豊かな水の恵みは、タクラマカン砂漠を越えてきたキャラバンの人々を癒し、
    そして多くの旅人を、タクラマカン砂漠へと送り出してきた。

    西域地区36ヶ国の内でも特殊な立地条件。
    砂漠において豊かな水の恵みと、貿易による枯渇することのない
    豊かな国庫は他国にとって、あまりにも魅力的だった。

    『楼蘭』を狙う国は多く、たびたび首都は戦の炎に包まれた。
    その都度、騎馬戦上手な『楼蘭軍』が活躍をみせ、国を堅固に守ってきたのである。

    比龍王は深い溜め息を吐き、玉座に疲れたように身を沈めた。
    傍らの空の王妃の玉座を見る。

    比龍王の正妃・藍鈴 妃―あいりん ひ―
    『西方の宝石』と謳われた美しい寵妃は、先の戦で亡くなっていた。

    楼蘭妃のあまりの美しさに、彼女の為に度重なる争奪の戦が起きた程である。

    先の戦も、藍鈴妃が火種だったと噂された。
    最後、楼蘭王宮は炎に包まれ
    正妃は、敵の手に落ちる寸前に自害し尊い命を散らした。

    ……自分の所為で、国が炎に包まれた
    責任を感じての覚悟の自害だったという。

    次々と正妃付きの侍女たちも、それに習い命を散らす。

    炎に包まれた楼蘭王宮。
    正妃の部屋で自らに刃を向けて血の海に沈む女達……

    その地獄のような光景を、幼き日の夕鈴姫は、逃げる間際に見たのだという。
    狂ったように燃え盛る炎と、影絵のような女達の末路。
    深い悲しみに満ちた光景は、今も姫を夢で苦しめる。

    比龍王は、愛する人を守れなかった。
    彼女の自害を止めることが叶わなかった。

    戦に勝ち、攻めてきた敵国を退けたものの……

    王が妃を助けに、王都に着いた頃には、すでに彼女は自害しており、
    炎上する炎に包まれた王宮は焼け落ちる寸前だった。

    年若い侍女、数名に守られて、呆然と炎の王宮を見つめる夕鈴姫を
    父である比龍王が見つけられたのは、奇跡だったのかもしれない。


    その頃から急速に勢力を伸ばしてきた
    漢の帝国の皇帝・武帝。

    その勢いは止まらず、昇竜のごとく拡大する東の強国。
    女・子供でさえも容赦しないという残虐な国。

    そんな不穏な漢帝国が、楼蘭に意外な行動にでる。
    内外共に疲弊し痛手を負った楼蘭王国に、手を差し伸べてきたのである。

    王都が炎上した楼蘭を、漢帝国が武を持って諸外国から守ると提案してきたのである。
    ただし、それにはある条件がついていた。

    条件は、12歳という年若い夕鈴姫を、武帝の寵妃にすること。
    比龍王は、国が疲弊したまま……漢との戦の覚悟で断ろうとした時に、
    異を唱えるものが居た。

    夕鈴姫、本人である。
    必死に、父王を説得したという。

    二度と炎に包まれる母国は、見たくない……
    この身を差し出すだけで、この国が助かるのなら
    喜んで武帝のもとに嫁ぎましょう……と。

    その面差しは亡くなった母にそっくりで、
    父に向ける眼差しの強さは、揺るぎない固い決意が溢れていた。

    ……藍鈴(あいりん)。
    君が、もし生きていたのなら何と言うだろうか?

    「それでも父親ですかっ?」、

    罵倒されそうだな……

    比龍王は、今は主無き空の玉座に、寂しく呟き力なく微笑んだ。

    夕刻のオレンジ色した陽射しが、
    誰も居ない謁見の間に細長く床を輝かせていた。




    ……王宮編・31へ 続く。




    2016.03.01.改訂
    2012.05.30.初稿
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