花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【長編】『楼蘭』ー離宮編・外伝1― ※要注意!!!古代パラレル

    楼蘭外伝 






    今宵も、ロプ=ノールの星鏡が美しい。

    夕鈴姫は、離宮の湖に張り出した四阿に居た。
    湖面に響く静かで切ない二胡の調べ……

    花の顔(かんばせ)は四阿に置かれた篝火に照らされ、
    彫りの深い顔立ちに濃い陰影を作る。

    今は閉じられた、はしばみ色の瞳。

    どこか切ない音色は、夜の湖を渡る……
    風に乗って、その調べは何処へ行くのか?








    突然、二胡の音色が途絶えた。
    夕鈴は、物憂げな眼差しで、ロプ=ノールの星鏡を眺める。

    楽器を、傍らに床置いた。
    二胡は、これからの自分に必要な“教養”なのだと父が話していた。

    二胡も、上手く演奏できるようになった。
    香も、練れるようになった。
    あちら風の刺繍も、綺麗に入れられるようになった。

    だけど唯一、恋愛だけが分からなかった。
    誰も教えてくれなかったし
    知らなくてもいい……と自分は思っていた。

    自分の人生に、恋は望んではいけなかった。

    ――――だけど知ってしまった。

    ……予期せぬ
    甘い恋の味を。



    夕鈴は、耳朶に触れた。
    彼女の耳には、対であるはずの翡翠の耳飾りの片方が無くなっていた。

    外された耳環は、今朝出立したばかりの黎翔の耳朶にあったのを、
    彼女は思い出していた。

    琅玕(ろうかん)の美しい、シンプルな造りの翡翠の耳環は、
    ロプ=ノールの湖の緑を写し取ったような鮮やかな緑色。

    トロリとした瑞々しいその耳飾りは、夕鈴のお気に入りの耳環だった。

    そういえば黎翔様に会う時は、必ずしてたっけ…

    残された冷たい耳飾りに触れながら、彼と過ごした日々を思い出す。
    湖面に美しい月が映っていた。

    揺らぐ月影に、彼の笑顔を思い出す。

    「……また、会えるかしら?
    でも、その頃には……」

    私は嫁いでいるのかもしれない。
    もう会えないのかも。

    欠けた魂を探すように、心は黎翔を求めていた。



    いつの間に耳飾が、外されていたのかしら?

    きっと昨晩、彼と会った時なのだろう。

    彼に求婚され、何度も口付けられた唇が熱を持つ。

    今は、どのあたりを旅しているのかしら?

    王都までは、5日間かかる。
    黎翔様は、今朝出立したばかり…

    夕鈴は瞳を閉じて、残された片耳の翡翠の耳環に触れた。
    二人を結びつけるものは、もうこの対の片方の耳環だけだった。

    夕鈴の瞼の裏に焼きついている鮮やかな今朝の彼の凛々しい姿。
    彼の片耳に、この対の耳環があった…

    昨晩の出来事を再び思い出す。
    彼の腕の中で、何度も口付けられた記憶が蘇り、切なく心も身体も熱くなった。

    黎翔様
    旅のご無事を祈っております……

    星鏡の湖に願いを込め、夕鈴は片割れの耳環を愛おしそうに、ひと撫でした。


    月も星も穏やかに彼女の願いを聞いていた。


                     -完-


    ……離宮編・外伝2へ 続く



    2016.02.26.改訂










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