花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【本誌沿い短編】風のイタズラ

    麗らかで暖かな陽差しが、
    あでやかな後宮の庭の紅葉を輝かせる。
    小春日和の午後

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    珍しく陛下が、
    朝から政務室に向かうことなく……

    「今日は公休だ」

    と突然、宣言されました。
    それを聞いて驚いたのは私、夕鈴。

    (休みだなんて一言も聞いてないわ……でも)

    このところ仕事が多いとかで、
    日付を越えて帰って来る夫を
    密かに心配していた私。

    まだまだ新婚期間で、甘く贅沢な二人だけの時間を過ごしていたい。
    片身の狭いイチャイチャLOVE LOVEは、恥ずかしくて困るけれど……

    私と過ごす時ぐらいは、陛下に寛いでもらいたい。

    「夕鈴。
    珍しいお菓子があるんだ!
    一緒に食べよう」


    何をするわけでもないけれど
    久しぶりに、のんびりとした甘い休日を過ごすつもりで
    夫が仕事を前倒ししてまで、時間を作らせたことなど、私は知らなかった。

    今日は“いい夫婦の日”なのだから!

    老師から手に入れた情報で、張り切って休みをとったなどとは露知らず……

    老師が、これで御子が♪ 御子が~~♪
    変な笑いで、みょうちくりんな踊りを披露し、
    その場を盛り上げたことについて夫は完全無視だったらしい(笑)

    しっかり「甘い休日を夫婦で過ごす1日」は、いたく夫の心に刻まれた。
    老師の策略に、まんまと乗せられたということだろう。

    いつもは痒い所に手が届く優秀な侍女たちも、
    今日ばかりは早々と気をきかせて、でしゃばることなく夫婦二人っきりにさせてくれた。

    黎翔が呼ばない限り邪魔するつもりも無いのだろう。
    影も形も気配さえも感じられない。

    夫婦二人っきりになると、タイミング悪く、
    必ず割って入るお邪魔虫(李順さん)も
    今日は、そんな心配をする必要がなかった。

    今日は、なんの気兼ねもなく堂々と
    朝からいちゃついて誰にも咎められない。

    夫は、そんな腹黒さを胸に秘めて
    私を膝に乗せ、食後のお茶の時間を嬉しそうに楽しんでいた。

    私が淹れたお茶と茶菓子を、私が夫の口へと運ぶ。

    一口食べた後に、私の指まで齧るのは勘弁してほしい……

    齧られた指先が熱い。

    恥ずかしくて爆発しそう。
    逃げ出したい!

    いや、今すぐ本気で逃げ出そうかしら?

    私は真っ赤な顔で、少し冷めてきた飲みかけのお茶を、わざと大げさに啜ってみせた。
    多少、后として庶民らしく品がなくとも、二人きりなら許されるだろう。

    「新婚だから、多少甘いのは仕方がないよね」

    真っ赤になって身悶える私に可愛いと何度も口付けながら、
    陛下は私を説き伏せてくる。

    そんなはず無いじゃない!

    いくら新婚でも甘いわ!

    まだ、ちょっと納得していないけれど。
    夫が、幸せいっぱいに微笑んで
    上機嫌なので、良しとする。
    (騙されてあげる)

    美形の夫の極上の微笑みに、至近距離で逆らえるはずもない。
    結局、私も夫に甘いのだ。

    なにせ臨時妃であった頃から、
    恥ずかしいほど妃に甘い夫は、
    結婚して本物の妻になってから、ますます私に甘ったるい。

    なんでこんなに甘いの?

    「今日は
    私が君の世話をする!」

    「紅が、(口付けで)とれてる
    塗り直してあげる」

    ウキウキと、あれこれ張り切って世話を焼きたがる彼と違い。
    突然の張り切りように私は夫を、どう接していいのかわからなかった。


    結局、美味しいお茶とお菓子のお礼だよと言われて

    相変わらず、そのまま夫の膝に横座りさせられ。
    夫の手ずから、私の口へと
    一口大の小さなお菓子を夫から餌付けされた。

    「はい
    ゆーりん。

    あーーん!
    して……

    美味しい?」



    「美味しいですけど……

    もう今日は、
    いったいなんなんですか?」

    いつも以上に、甘やかされて口説かれる、
    細々と世話を焼きたがる夫に、私は早々に根をあげた!

    甘い。

    甘い。。。。。甘すぎるっ!

    いったい、なんなの?
    もう!

    真っ赤になって叫ぶように抗議すると……
    真顔で、夫に抱きしめられた。

    「私たちは新婚なのに、
    親密度が足りない気がするんだ。
    今日は、その距離を埋めよう。
    なにせ今日は ……の日だからね!」

    にっこりと至近距離で微笑まれて
    素早くギュッと、力強く腕に抱きしめられた。

    今度は、お菓子でなく
    甘い口付けを貰う……

    抗議する言葉を奪われ、
    ぐずぐずに甘く溶かされた。

    いつも以上に甘ったるいのは、なにか今日に意味があるらしい。
    更に、夫の甘い誘惑は続く……

    「遠乗りへ行こうか?
    二人っきりで遠出しよう」

    「それとも下町へ遊びに行こうか?
    君に似合う簪を手に入れよう」

    どれもこれも違う気がして
    断り続けるうちに、
    夫は、すっかり機嫌を損ねてしまった。

    声色が冷たくなっていく。

    「ゆーりん。
    冷たい」

    マズイ……
    そう思った時には既に遅く。

    ちょっと怖い拗ねた瞳で
    私を真っ直ぐに見詰める
    綺麗な紅い瞳に射竦められた

    「それならば……
    君は、どうしたいんだ?」

    「何も…………ただ。

    そうですね。
    二人で庭を散歩したいです!」

    特別なことなど何もいらない。
    貴方が傍に居てくれれば……

    「なんだ。
    そんな事か?
    それでいいのか?」

    「はい!
    行きましょう」

    「丁度、池の畔の紅葉が色付いていて見頃なんです。
    貴方と二人で見たかったの!」

    そんな愛らしい笑顔で、欲の無い可愛らしいお願いを新妻からされて、
    夫としては否やはなく……

    「じゃあ行こうか?」

    「はい」



    *****


    燦々と降り注ぐ
    五色に煌めく紅葉の木漏れ日のシャワー
    木立を抜ける細い小道を、枯れ葉を踏みながら二人並んで、ゆっくりと散歩する。

    どちらとも知れず、
    いつの間にか、しっかりと繋ぎ握ぎられた右手と左手。

    時間がゆったりと進む。
    こんなにも夫婦で寛いだ時間を過ごしたのは、久しぶりだった。

    立后してからというもの、
    気の休まる日も無くて忙しかったような気がする。

    今日という日に、素晴らしい時間をくれた夫に私は深く感謝した。

    「……黎翔さま」

    「なに?
    夕鈴?」

    「ふふっ……
    なんでもないです。

    ただ呼びたかっただけ……」

    燦々と降り注ぐ木漏れ日を浴びて
    どちらともなく夫婦で笑いあった。

    城に居ながら森の空気を味わえる。
    後宮の庭は不思議な場所だ。

    それから会話もなく、ただ手を繋いで二人仲良く道を歩く。

    寡黙な夫の沈黙が心地よくて、
    私を包む夫の手は大きくて温かかった。

    池の畔まで歩むと、突然イタズラな風が私たちに吹いた。

    「あっ!」

    ザワザワと紅葉の枝か大きくざわめいた。
    フワリ舞い上がった私の
    薄衣の肩掛けが風にさらわれ、
    大空へと高く高く舞い上がる‼

    フワリ

    フワ フワリ

    高い紅葉の梢の上にフワリと落ちた肩掛けは、ひらひらと裾舞いながら悪戯に私たちを誘った。

    ちょっと背伸びすれば、背の高い夫の手が届く高さ
    でも、向こうが透けて見えるほどの薄い肩掛けは、枝に引っ掛かり落ちてこない。

    私のお気に入りなのに……

    強く引っ張ると破れそうで、
    強く引っ張ることができなかった。

    「なかなか落ちてこないな……」

    少し苛立ち気に肩掛けの端を持ち
    乱暴に強く引っ張る陛下に

    「あまり無理して
    引っ張らないでください!
    破けちゃうわ!」

    「ゴメン。
    ゆーりん。
    外すのは無理そうだ!

    誰かに梯子をかけさせて
    とらせようか?」

    だんだんと大がかりになっていく
    事の顛末。

    「気にいってる肩掛けなのに
    …………どうしよう。

    そうだ!」

    困り顔で夫を見守る私に、妙案が浮かんだ。

    「陛下。
    ……あのですね」

    耳垂れてショボンとした
    小犬のような夫の袖を引き、
    今、浮かんだアイデアを夫に伝えた。

    「あともう少しで、手が届くようですので……
    だったら私を何時ものように、抱きかかえてくれませんか?」

    「自分で、余裕で外せる気がするんです!
    お願いします」

    私が、夫の耳元で恥ずかしそうに呟いた提案に、
    黎翔は嬉しそうに、パアッっと笑顔を見せた。

    「いいね。
    やってみようか?」

    軽々と夫の逞しい両腕で、高々と抱え上げられ……
    梢へと手を伸ばした私の指先。

    絡まる衣を優しく枝から外して、
    無事に生地を痛めることなく、
    肩掛けを自分の手元へ引き寄せ
    回収することに成功した。

    「よかった!
    どこも破れてない」

    「無事に取り戻せたね」

    「はい!
    陛下のお陰です」

    「良かったね!
    ゆーりん」

    「ありがとうございます!」

    無事に肩掛けを取り戻したものの……
    一向に私を抱えたまま、下ろしてくれない黎翔。

    「あのですね。
    肩掛けを無事に取り戻したことですし
    そろそろ降ろしてくれませんか?」

    「降ろしたくないな……
    せっかく、滅多にしない君からのお願いなのに」

    「えっ!?
    でも、でも。
    重いから、さっさと早く降ろしてください」

    「重くないよ。
    昔は、よくこうして君を連れ去っていたっけ……」

    「…………あの頃は」

    「降ろすと脱兎のごとく
    君は逃げ出していたね」

    謳うように、うっとりと昔を懐かしむ夫の顔は、
    ひどく優しく微笑む。

    逆らう気力さえも奪うかのようで、
    その微笑みに私は、しばし見とれた。

    「そうだ。
    昔のように、
    このまま君を、ここから連れ去ろう。
    寝所まで……」

    艶のある魅力的な低い声色で
    色っぽく囁かれた。

    下から口付けられて、
    俯くことも出来ない。

    熱視線が私を嬲る。
    急に腕の中が居心地悪くなって、
    身を捩って逃げようとするも
    既に狼に囚われたままで………
    地面からは足が遠くて。

    「えっ!
    えぇ⁉
    やぁ、ダメです!
    降ろして!」

    その先の展開が読める気がして
    私は、顔から火が噴き出しそうだった。

    暴れたら暴れるほどに、
    夫の笑みは意味深に深くなっていく……

    はらり……と、紅葉が舞った。
    秋は深まり空は青く澄んで高い。

    私の抗議する声と陛下の笑い声が、
    空に響いた。

    麗らかで穏やかな秋の幸せな1日。
    その後、後宮の寝所で、その日1日の中で
    極上に甘い時間を過ごしたのは、言うまでもない……







    2016.11.29.初稿
    さくらぱん


    いい夫婦の日に、間に合わせたかったのだけど、間に合わず……
    筆が乗らなかった。

    久しぶりで、書き方を忘れてます(笑)
    おかしなところは、目をつぶってくださいね





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