花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【長編】『楼蘭』―再会編―51  ※要注意!古代パラレル

    楼蘭


    「その前に、お前に紹介しておきたい者がおる
    お前も既に見知っておろう……
    東の漢帝国の皇帝の懐刀、炎彬将軍。

    それと遠く西の小国、
    白陽国を治める国王・珀黎翔殿だ」

    あえて見ないようにしていた夕鈴が、その名を聞いて動揺した。

    父王である楼蘭国王に紹介された炎彬将軍と黎翔は夕鈴姫の前に進み出る。
    どちらの眼差しも痛い。

    推し量り、どんな些細なものでも見逃さないであろう厳しい眼差しの将軍と
    謁見の間に入ってから、熱心に見つめる黎翔王の熱い眼差しと。

    ……そんな眼差しで見ないでください。
    黎翔さま。

    気づかれてしまいます。


    顔にかかるベール越しでなく、素顔で相対したい衝動を堪え
    不審がられないように、夕鈴姫は、まず帝国の使者である炎彬将軍に向き合った。

    「お久しぶりですね、将軍。
    皇帝陛下は御健勝ですか?」

    先の楼蘭の遠征時に、武帝に付き添う姿を覚えていた夕鈴姫は、
    サッと立ちあがり将軍に向き合った。
    優雅に臣下の礼をとりながら、炎彬将軍は夕鈴姫の質問に答えた。

    「お会いできる日を心待ちにしておりました。
    ますますお美しくなられて、皇帝陛下もさぞお喜びでしょう」


    「皇帝陛下は、健やかであらせられます。
    姫が嫁がれる日が待ちきれないとのことで、
    私が護衛とお迎えを仰せつかりました」

    「それはご苦労なことです。
    でも私も、たった今、王宮に着いたばかり……
    すぐにと申されても困ります」

    「もう少し待っていただけないかしら?
    父とも、積もる話がしたいし……」

    「それとも私の夫となる皇帝陛下は、久しぶりの親子の会話を待てないほど
    狭量な方なのかしら?」

    「そんなことはございません。
    現に、姫とのお約束を守り
    十分に姫の成長を待たれたではありませんか?」

    「皇帝陛下にとって夕鈴姫は特別なお方。
    正妃の座をご用意してお待ちです」

    「それは先に嫁がれた貴姫たちの嫉妬が怖いわね。
    皆、正妃の座を欲しがるでしょうに。
    それに真に正妃と望んでいた方は私の母君だったのでしょう?」

    ゆらゆらと陽炎の如く瞼から消えぬ暗い焔の影
    次々と苦悶の影が揺らめく様が幻のように浮かんで消えた。


    ……皮肉なものね。
    望む方には、嫁ぐことが許されず。
    その手を取ることさえ叶わない。

    こんなにも、お傍に居るのに……

    つい本音が口から出てしまったのは、彼女の若さゆえだった。
    ーーー漢帝国と楼蘭王国の関係は、友好であらなければならない。


    そのことを、ふと忘れてしまったのは。
    彼女本人を望まれた婚儀ではなかったためだろう。


    苛立ちぎみの彼女の言葉に……


    「夕鈴!」

    父王の咎める声が響き、夕鈴姫はハッと我に返った。
    いつのまにか荒ぶる心のままに、将軍に対峙していた。

    将軍は、そんな夕鈴姫の態度にも余裕の微笑みを讃えていた。
    底の見えない微笑みは、得たいの知れない人物に見える




    あいかわらずめんどくさい国。
    そんなことをおくびにも出さず……夕鈴姫は、多少慇懃無礼に将軍の答えをかわしながら
    適当に、話を切り上げた。

    どうせ嫁ぐのは変わらない。
    この将軍にどう思われようと彼女にはどうでもよかった。


    *****

    次に、夕鈴に声をかけたのは黎翔王だった。
    夕鈴姫が差し出した手を、恭しく受け取りながら西洋風な挨拶を交わす。
    手の甲に軽く、黎翔の唇が触れた。

    既知の親しみが感じられないように……そっけなく。
    ありきたりな挨拶を、二人は手短に交わした。

    ロブ・ノールでの約束を守り
    二人は、初めて会ったもの同士の当たり障りのない挨拶を交わしたのである。


    黎翔王が触れた彼女の手は
    謁見が終わって自室に戻っても、まだ熱を帯びて熱かった。


    夕鈴姫は、黎翔王が触れた場所に自らの唇を重ねた。



    黎翔さま……


    自室で密かに呟いた声は、誰にも聞かれず静寂に秘された。


















    ……風の行方編・52へ 続く

    2017.02.20..改訂
    2016.04.23..改訂
    2013.04.25.初稿
    覚書

    前漢  武帝 劉 徹(リュウ てつ )皇帝陛下 の懐刀

      姫 炎彬 将軍(キ yan bin ヤンビン)、

    意味 炎彬(yan bin ヤンビン)、 焔のように美しい

    真っ赤な甲冑を身に着けて、先陣を駆ける鬼神
    奇襲戦を得意とする策略家でもある。
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