花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【短編】金魚

    窓辺に置いた金魚鉢。
    その中で、美しく泳ぐ魚たち

    薄絹のような真っ赤な尾びれが水中で揺らぐ……
    水を張ったガラスの向こうは、揺らぐ別世界。

    きっと私の住む世界と違うんだわ。

    ……まるで私は、この金魚のようね。

    狭くて綺麗な後宮で、美しく着飾り……
    何をするわけでもなく、ただただ陛下を楽しませる

    くるりと…一回転した金魚の尾びれが、水中でひるがえり優雅に舞った。

    この場所を、選んだのは私。

    “貴方の傍がいい…”

    “愛しています。
    もう離さないで……”

    貴方の居る場所が、私の居場所
    貴方が居ない場所には、生きられない。

    分かってる
    今でも後悔なんてしてない。





    ……只

    「ただ…」

    時々、酷く場違いな場所に居るような感じがして……
    訳も無く不安なの

    ユラユラ踊る金魚たち。
    波立つ心、ゆらゆらと……


    金魚鉢をぼんやりと見つめながら
    私は、そんなことを考えていた。


    ーーその時。
    背後から、きゅっと抱き締めてきた逞しい両腕に
    私は、現実に引き戻された。




    「只…なんだ?」

    優しく問われて、頬に口付けられる。
    後宮の私の自室で、そんな不埒なことをするのは、一人しか知らない。

    「陛下!
    いつの間に……」

    「ただいまぁーー、夕鈴。
    僕のお嫁さんは、何を憂いているの?

    物憂げな姿も、愛らしいけれど……」

    ちゅっ

    …ちゅっ

    優しく気遣う抱擁。
    それ以上は、陛下は私に問いかけ無い。

    優しい口付けの雨が降る

    「陛下。
    唇に口付けて……ください」

    珍しい私からのお願いに
    一瞬だけ目を見開き、驚いた様子。
    でも、すぐに嬉しそうに微笑んでくれた。

    「いいよ……君が望むのならば。
    何度でも!」

    優しく触れるだけの口付けは、あの日と同じ。
    貴方が、私を好きだと言った……あの日と同じ。
    何度も求められ、触れては離れてく

    優しいだけの
    いたわりの甘い口付け

    水中で揺らぐ金魚のように
    私の心の中に、沁みてくる愛。

    ユラユラが、とまらない……

    気持ち、い…い……

    「夕鈴。
    今日は、いったいどうしたの?」

    「……なんでもないの」

    幸せすぎて、泣きたくなる。
    鼻の奥がツンとして、語尾が掠れて言葉にならない。

    何かを感じてる陛下が、私の耳朶に囁く。

    「夕鈴。
    愛してる」

    「……私も」

    陛下の首にしがみ付いて、首に頭を摺り寄せた。

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    私は、狼陛下の花嫁、夕鈴。
    身分違いの世紀の恋を実らせた。
    稀有の少女。

    だけど、それは秘密なの。
    内緒なの。

    今も、昔も変わらない……
    後宮に咲く一輪の花の話。



    2016..07.14.改訂
    2016..07.13.初稿
    【今日の花言葉】
    布袋葵 (揺れる想い)
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