花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【短編】春陽 はるひ


    麗らかな日差しが降りそそぐ……春の四阿
    うたた寝の陛下を膝に抱き、陽に透ける真っ直ぐな黒髪を指梳いた。

    「……毎日
    お仕事、ご苦労さま」

    近頃は春の案件が多いとかで、後宮への帰りも遅い。
    陛下は忙しいのに、私と過ごす時間をわざわざ作ってくれるのが、とても嬉しかった。

    私の膝で、安らかな寝息をたてて眠る密かに好きな人。
    きっと貴方の寝顔を、こんなに間近で見られるのは私くらいだと思うと、
    頬が緩み、心が幸せに満ちる。

    まだ……
    もう少しだけいいよね?

    午後からの政務に支障をきたさないうちに、起こさなければと思うのだけれど……
    陛下の安心しきった寝顔を見ると、おこすのを躊躇う。

    貴方を起こしたら、この幸せな時が終わり
    また貴方が離れてしまうから……

    だから、もう少し。
    梅の花弁が次に散るまで……

    もう少し……
    もう少しだけ私の膝で、うたた寝てくださいね。

    梅の香(か)薫る
    良き時に…
    あなたと二人
    幸せな時。

    寝返り
    私の膝に、顔を埋めて
    甘える貴方の
    黒髪を掻き分けて……

    その愛しい耳朶に
    イタズラに私は、口付けた。

    Chu!……” 

    ぱっと散った
    陛下の耳朶が赤くなる。

    寝返りうつ
    愛しい貴方は
    嬉しそうに、はにかんで笑っていた。

    「……夕鈴」

    いつから起きていたの?
    イタズラが見つかった子供みたいに、私は居心地が悪くなる

    恥ずかしくて真っ赤になった私に、陛下が囁く。

    「夕鈴、可愛い……
    顔が真っ赤だ!」

    ますます陛下の顔が見れない!
    視線を逸らす私を、陛下が捉えた。
    すばやく引き寄せられて、口付けられる。

    「夕鈴
    愛してる……」

    「私も……」

    同じ気持ちを分け合って、幸せに満ちる時も
    つかの間。

    「膝枕ありがとう!
    行ってくるよ!」

    陛下との午後の別れの時。

    ……離れたくない。
    このまま傍に居て……

    我が儘な私の願いは、胸に仕舞う。
    軽く寂しくなった、私の膝の重み。




    お願い。
    風よ……
    陛下の温もりを攫わないで。


    溢れだす愛しさは
    涙溢れ、零れ落ちる。
    秘めた恋とは、なぜこんなにも切ないのでしょう?

    無垢な小犬のような無邪気な貴方の笑顔に、私の胸は締め付けられるばかり……
    しあわせで幸せで、叶わぬ恋と知る残酷な夢。

    「狼陛下の花嫁」の臨時花嫁の仕事が終わったら、ただの市井の娘と国王陛下に戻る……

    それは何時?

    今はただ……
    切ないほどに愛しくて、
    唯一愛を交わす
    貴方との時間を、宝物のように過ごしている。

    いつか水泡のごとく、全てが消え去るというのに……

    貴方の前から私が消える。
    私は、もう貴方にお目にかかれない。


    ――――――別れの時が、永遠に来ないといいのに……


    はらはら……と、梅が咲き零れる。
    貴方が居なくなった四阿は、私には広すぎて…

    春の日差しを受け、庭には金色の福寿草が輝いていた。
    私はその光が、眩しく感じて瞳を閉じた。

    先のことは考えられず
    春陽を閉ざして……

    幸せスタートのつもりが、切なく暗くなりました。
    あれれ?
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