花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    月晶の雫 18 ※離宮編

    「……あの。
    コレは、いったいなんなのでしょう!?」

    顔を真っ赤にしながら、彼女が囁く。
    彼女は黎翔の太腿に横座り、彼の脚の間に脚を挟まれ、両手で腰を支えられていた。
    密着感が、半端ない。
    少しでも距離を離そうとするのは、とても彼女には無理だった。

    「……我が妃よ。
    何か不満か?」

    涼しい顔をして、切れ長の目が笑う。
    明らかに、面白がっているらしい。
    陛下は、素知らぬふりをして、彼女に問うた。

    「……だって
    こんな格好」

    ……恥ずかしい。
    好きな人の脚の間に挟まれてるだなんて。

    「……夕鈴?
    仲睦まじい夫婦は、稀に、このようなことをするそうだ。
    ……不服か?」

    …え?
    本当に?

    仲睦まじい夫婦の演技なら、仕方ないけれど……
    今は、侍女も下がらせて二人っきりなのに。
    演技なんて必要ないんじゃ……

    二人っきり……

    うっ……
    やだ。

    なんか緊張してきた。
    私だけ、陛下を変に意識しているの馬鹿みたい。

    先ほどから、陛下に抵抗して膝から降りようと努力しているのだけれど。
    ますます戒められて降りることが叶わない。

    陛下は、そんな私を見て面白がっているようだし……悔しい~~


    とにかく現状を打破するのよ、夕鈴!

    私は、唇を尖らせて、膨れっ面をしてみせた。

    「不満など……
    私は、不敬ではないかと恐れ多くて……」

    「不敬?
    君が?
    ……何故?」

    「王と妃である前に、
    私は君の夫であり、君は妻だ。
    夫が妻を膝に抱えて、愛おしむのに何の不敬がある?」

    「…だって。
    だって、だって~~」

    だから、今は演技は必要ないんじゃ……
    バタバタと手足をばたつかせ、幾度目かの抵抗を試みるも……

    「暴れぬな、夕鈴。
    私から落ちるぞ」

    「////////んなっ!!!」

    引き寄せられ、頬に軽く口付けされた。



    「……それに。
    今は、昼餉の時間だ」

    「私は今、両手が塞がっていて食べられない」

    「君が食べさせてくれなければ…
    私は、餓死してしまう」

    「陛下。
    大袈裟ですわ」

    「私を膝から下ろしてくだされば、
    両手は自由ですし、ご自由にお一人で食べられますわ」

    名案だというように、一人で納得して晴れやかに笑う君だけど、
    僕がそんなに簡単に、君を離す訳無いじゃない。

    顔を曇らせ、弱った小犬のような懇願の表情を作る。
    君は、これが僕の演技と知っていても、僕のお願いは断れないから。

    「夕鈴。
    それじゃ……食事が楽しくない。
    君が手ずから食べさせてくれるから、美味しいのに……」

    ~~~~…。
    ずるいわ、陛下。

    私、このうるうるの瞳に弱いのよ!
    強く断れないじゃない。



    ふぅ~~…

    完敗です。


    「陛下。
    ……負けました!」

    顔を真っ赤にしながら、僕に不平不満を率直に口にする娘。
    それでも、彼女に腹がたたないのは何故だろう?
    私の膝の上で頬を染めて、恥じらいつつも、私の口に食事を運ぶ甲斐甲斐しさ。

    至近距離で、君の潤む大きなハシバミ色の瞳を見つめる
    僕の姿を君の瞳に見付けると、君の視線を独り占めしていることに安堵する。

    …君をもっと困らせたいな…

    そんな心の機微に気がついて、僕は苦笑した

    …君だけなんだ。
    僕が、我が儘を言いたい女性は…

    …君を、もっと独占していたい…

    「……夕鈴」

    「はい。
    何でしょうか!?
    陛下」

    ……この心の距離が、もどかしいよ 。
    僕を陛下と呼ばないで……

    「夕鈴」

    「はい…?」

    何度も君の名を呼び掛けて…
    切ない気持ちの言葉を呑む

    (……愛してる)

    先へ続く言葉は、まだ君に言えなくて。

    君の瞳の色が、変わるのを怖れて言えない。

    もしも、君が好きだと伝えたら

    恐怖の瞳に凝るのだろうか?
    それとも、変わらぬ瞳で見つめてくれるのだろうか?
    ……それとも。


    君との関係を壊したくない。
    だけど、その先の関係に進みたくて。

    僕は臆病にも、君の気持ちを強請る代わりに
    卓に並ぶ料理に言葉を置き換えて、夕鈴に食事をねだった。


    まるで
    雛鳥のように……


    ……続く。

    2016.01.05.初稿
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