花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    現パラ【短編】YESと言って…… 1

    それは何気ない1日の終わり……

    もう二年もお付き合いしている
    彼からの一本のメール。









    “夕鈴。
    今すぐ会いたい。
    ……いいかな?”

    いつもは電話で用件を済ませるのに……
    黎翔さんからの珍しいメール。

    絵文字も何も無い……
    彼からの短いメールは珍しく弱気な内容で、私は嫌な胸騒ぎがした。

    すぐに、メール返信ではなく
    黎翔さんに電話したけれど、彼は出てくれなくて……。

    私は仕方なく指定された公園に急いで向かった。
    夕闇迫る公園は、濃いラベンダー色に染まり、
    冬間近の枯れた木々の梢から、綺麗な空が見えた。

    ポツリ…ポツリと、公園の街灯が灯り始める。



    夕闇に煙る景色に見とれることも無く、私は黎翔さんを探した……














    ――――いた!




    かなり暗くなりはじめた公園の木々の影のベンチに、
    点いたばかりの街灯に照らされて影を濃くし、うなだれた彼。
    掘りの深い顔だちが、夕闇でさらに深まる。

    ベンチに座り…
    膝の間で組まれた両手は、固く握りしめられていた。

    いつも明るい彼と違い、今日の彼は深い苦悩の表情を浮かべていた。

    ……何があったのかしら?

    私が一目で分かるほど、その表情は暗く……近づいても彼に声を掛けにくかった。









    先に気がついたのは、黎翔さんだった。


    「……夕鈴」

    私の存在に気がついた黎翔さんは、顔を上げて、ホッとした表情で険しかった顔を緩めた。

    ベンチから立ち上がると、顔を私の肩にうずめて
    ギュッと抱きしめてきた。

    「きゃ…
    どうしたの?
    黎翔さん?」

    「……ゴメン、夕鈴。
    呼び出して……」

    「ううん。
    大丈夫!
    それより、どうしちゃたの?」

    「…………」

    今度は、何も応えてくれない彼に私の不安は募るばかりで…
    すっかり夜の闇が世界を覆い尽くすまで、私は黎翔さんに抱きすくめられていた。

    私はただ、彼の背を抱き…
    寒くないように、少しでも温めることしか出来ない。

    常と違う彼の様子に、
    私は彼が説明してくれるまで、じっと待った。










    「     った……」

    「…え?
    なに?」

    「て……に、なった」

    「黎翔さん
    よく聞こえないわ!
    もう一回言ってくれる」

    「夕鈴。
    転勤になった!」

    Σ!
    「えっ……ドコ?」

    「N・Y……」

    「嘘!
    黎翔さんっ!」

    私の胸騒ぎは、当たってしまった!

    数年で、ステータスを駆け上っていった黎翔さんらしいと言えば、らしいけれど。
    まさか……まさか転勤先がN・Yだなんて!

    「…僕は君と離れて暮らすのは、耐えられない。
    嫌だ!」

    「夕鈴、お願いだ。
    NYについて来てくれないか?」

    「えっ!
    黎翔さん、それは……」

    「夕鈴。
    君が好きだ!
    僕のお嫁さんとして、一緒にアメリカに行こう!」

    「夕鈴
    yesと言って……」



    黎翔さんの擦れた声が、耳朶に響く……
    彼は、本気だった。

    黎翔さんの突然のプロポーズに
    今度は、私が動けず……



    チラチラと、いつの間にか雪がちらつく公園に、二人佇んでいた。










    ……続く
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