花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    現パラ【中編】 君に告ぐ 2

    嫌だわ……

    もう!
    こんな時に限って、エレベーターが来ないなんて!

    夕鈴はエレベーターホールで、足止めをくっていた。
    黎翔さんに別れを切り出して急いでいるだけに、早くここから立ち去りたい!

    そう思っているのに……
    自身の焦りとは、裏腹に。
    下りのエレベーターは、全然来なくて。

    焦らせる気持ちが、なんど下りるボタンを押し続けたことだろう。
    やっと来たエレベーターに乗れたのと同時に……

    「待つんだ!
    行くなっ、夕鈴!」

    彼がエレベーターホールに飛び出して来たのは……










    今にも閉じられそうなエレベータードアに、黎翔さんは身体を挟み
    エレベーターを止めた。

    普段、焦ることなんてない黎翔さんの
    必死に止める姿に、私は唖然として逃げることを忘れた。

    「夕鈴!
    こっちへ来るんだ!」

    そう言って、私の手首を掴み
    去ったばかりのエレベーターホールに連れ戻された。

    私を引き寄せた勢いあまって、二人ともエレベーターホールの壁に激突したけれど……
    黎翔さんが私を抱き抱えてくれたので、私はどこも怪我をしなかった。

    「何で……
    なんで、追いかけてくるの?
    こんな無茶……」

    「君の為なら、無茶だってするよ。
    君の誤解を解きたい……」

    「誤解?」

    「誤解だろう?!
    あのゴシップ記事」

    夕鈴が持ち込み、社長室に捨ててきた新聞。

    “若き狼
    珀コーポレーション会長・珀黎翔
    ハリウッド進出女優 ●●●●と熱愛発覚!
    結婚も秒読みか!?”



    「…………」

    「隠しているとはいえ、僕の妻は君一人だ。
    あんなもの……デマに過ぎない」

    「あの女優の売名行為だ!
    もっと僕を信用してくれないか?」

    「でも…あの写真!」

    「あれは、先日のパーティーで
    勝手にあっちからKISSしてきたんだ……
    あんなところを、写真に撮られていたなんて
    僕がKISSしたい相手は、世界中で君一人だけだ」

    苦々しげに呟く黎翔さん。
    夕陽に照らされた真剣な紅い瞳に射竦められ
    徐々に近付く彼の顔。

    「泣かせてゴメン、夕鈴。
    もう不安にさせない
    ……君を…愛してる」



    んっ!

    chu…

    気づけば、私は黎翔さんに囚われ
    唇は奪われていた。

    「君は分っているはずだ。

    僕のすべてをさらけ出せる相手は
    君だけだということを……」

    「君だけが僕の安らぎ」

    chu…

    ふ…ぁ。

    chu… chu…

    ン。

    chu…  chu… chu…

    「君に離婚を切り出されて
    僕の世界は一度死んだよ、夕鈴」

    「……ごめんなさい」

    「この罪は君の一生をかけて償ってもらうから……
    覚悟して!」

    chu…

    「僕は君一人しか愛せない!」

    「君は僕だけを信じて愛するんだ……
    離婚なんて……許さない」

    chu…

    ぁ……

    chu…      chu…     chu…

    ャ…


    逃げ出せない。
    黎翔さんのくすぐったいようなKISSの雨
    優しい彼に囚われて……蜜の時間は永遠に続くかに思われた。







    「……コホン、会長。
    失礼致します。

    問題は、解決したようですね」

    「李順!「李順さんっっっ!」」

    「いつからソコに居たんだ?」

    「お忘れでしょうが……
    最初から一部始終です」

    「さて、会長。
    時間があまりございません。
    記者会見の準備を整えました」

    ……?

    唐突な李順さんの言葉に、私は付いていけず黎翔さんと顔を見合わせた。

    「会長のお考えは、お見通しです。
    何時までも奥様を隠し通せるとは思っていません」

    「良い機会ですから、正式にご発表なさりたいのでしょう!
    ●●●●ホテルに、結婚報告記者会見の手配を整えております」

    「手回しがいいな……
    さすが私の秘書だ」

    「お褒めにあづかり光栄です。
    ですが、時間はあまりございません。
    夕鈴さん!?」

    夕陽に、硬質な光を煌かせ眼鏡の李順さんは呟いた。
    昔、夕鈴が独身だった頃、アルバイトの雇い主だった李順さん。

    「うぁあっ!
    はい」

    「何ですか!
    その気の抜けた返事は!
    返事は短く、可憐にお淑やかで慎ましく!

    本当に貴女って人は、教育のし甲斐が無い」

    「……すみません」

    鬼の上司として名高い李順さんの部下だっただけに、
    本能的に夕鈴は居住まいを正して謝った。

    「まあ、いいでしょう。
    今は時間が惜しいですから……」

    「貴女の淑女教育が、終っておりませんが…致し方ない事態です。
    今までのおさらいがてら、記者会見を乗り切っていただきましょう」

    Σ!
    「記者会見!?
    乗り切るって何をですか!?」

    「鈍い人ですね。
    貴女と会長の結婚発表ですよ。
    きっと貴女に質問攻めです」

    「とにかく準備を致しましょう。
    私に、ついて来て下さい」

    「ドレスとメイク道具をご用意しました。
    素材は十人並みですが、私が何とかいたしましょう!」

    「え゛
    李順さんが、メイクするのですか?」

    「時間がありませんし……
    僭越ながら私が致します」

    「黎翔さんっ」

    「夕鈴、諦めて……
    本気の李順は、もう誰にも止められないから」

    「夕鈴さん、ちゃっちゃと来る!!」

    「は……はい!」











    パタパタと走り去る彼女の後姿を見送った後。
    黎翔は、手のひらをゆっくりと開いた。
    そこには、先ほど李順から手渡されたプラチナに光る夕鈴のシンプルな結婚指輪があった。

    今度こそ君の指に、ずっと光らせることができるんだ!

    まだ新品のようなソレを、どうやって彼女の指にはめようか……
    黎翔には、頬を染め嬉しそうに微笑む夕鈴の姿が想像できた。

    “黎翔さん
    この指輪、今度こそ一生大事にするね!”

    優しく微笑む妻の姿が……




    黎翔は幸せを握り締めて、足取り軽くエレベーターホールを去っていく。
    美しく着飾った妻を待つべく、記者会見会場に向うのだった。






    おしまい



    2015.11.27.改訂
    2015.11.26.改訂
    2015.11.23.初稿  トピックいい夫婦の日 final  参加作品

     SNS45000hitを踏んだこやあのさんに、捧げます。
    こやあのさん、リクエストありがとうございました。


    リク内容
    短編で
    現代パロで
    黎翔さんが夕鈴を溺愛する甘々な話。


    微糖ですね。
    すいません。
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