花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【Yコラボ】アリスの口付け 17  恋の迷路 

    入口につくと、黎翔さんはさりげなく私の手を離した。

    「夕鈴、ここのミラーハウスは普通のモノとはちょっと違うんだ」
    「違うって何が…あっ、ホントですね。
    入口が二つだわ」
    「うん、ここはそれぞれの入口からはコースが違っていてね。途中では合流出来るんだけど、ゴール間際で合流するんだ。だから競争しようよ。どっちが先に相手を見つけられるのか」
    「競争ですか?イイですよ!私負けませんから」
    「じゃあ、後でね」

    そう言うと、黎翔さんは鏡の国の入口へと身体を滑らせた。
    私も慌てて黎翔さんとは違う入口から中へと駆け込んだ。


    私は右手を鏡に触れながら進んでいく。
    鏡が途切れた先を曲がる。
    そしてまた鏡に触れる。

    それを何度も繰り返す。
    何度曲がったのか?
    もう忘れてしまったくらい曲がったと思う。

    でも黎翔さんには会えない。
    段々、本当にこの道で大丈夫なのか心配になってきた。
    実はこのままいくと行き止まりで、私は永遠に抜け出せなくなるような感覚に囚われる。

    見えるモノは、鏡だらけ。
    当たり前のことだけど……。

    周りの鏡に自分の姿が写り込み、無数の『私』が生まれる。
    そしてその『私』は『私』を見詰めている。

    何だか、怖いって思えてきた。
    一人きり。
    誰もいない。
    黎翔さんさえ……。

    両手を胸の前で組んで不安を取り除こうとした。
    その両手は冷えていた。
    先程まで感じていた黎翔さんの温もりは消えていた。

    私は黎翔さんがいないと、ただのちっぽけな私だ。
    何の取り柄も無い。

    考えていると足は止まってしまう。
    歩かないと、黎翔さんには会えない。

    「早く、進まないと…黎翔さんに先を越されちゃう」

    自分を叱咤するように、声を出す。
    空元気でもいい。
    今は黎翔さんに会うことだけを考えよう。

    私は進んだ。
    ただ、前に。
    兎に角、前に。
    力強く踏みしめて。
    心の中で、黎翔さんの笑顔だけを思い描いて。



    「夕鈴!!!!!」

    声が聞こえる……。
    私を呼ぶ声。
    大好きな低めの声音。

    「黎翔さん!!!!!!」

    声を出して自分のいる位置を黎翔さんに知らせる。

    ここにいるの。
    私はここにいるの。


    角を曲がった先に、黎翔さんがいた。
    両手を広げて、私を迎え入れる。

    「僕の勝ちだね」

    そう言って笑った黎翔さんの笑顔が眩しく見えた。



    ……続く
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