花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【Yコラボ】アリスの口付け 15 銀の馬車

    「ゆーりん、ゆーりんっ?
    聞いてる?
    ゆーりん?」

    「ぁ……黎翔さん」

    ちょっと懐かしい記憶に浸っていた私は、心配そうな黎翔さんの声で現実に引き戻された。
    私の瞳を覗き込む、心配げな彼の瞳。

    いけない、今デートの最中だったわ……

    「ごめんなさい、聞いていませんでした。
    何ですか?」

    もう疲れたのかと聞いてくる彼に、笑顔で大丈夫と伝えた。

    「……そう?
    なら、いいんだけど。

    「僕、何度もゆーりんの名前を呼んでも
    全然気づいてくれないから心配しちゃった」

    「君とのデートが楽しくて、少し無理させたね。
    ゴメンね、ゆーりん……」

    しゅんとなった黎翔さんは、いつもの辣腕ぶりを発揮する
    狼陛下な社長じゃなくて…… 、

    今は落ち込んだ小犬のよう……
    今にも、きゅーーん、きゅーーんと鳴きだしそうで……
    心配をかけてしまった私は、胸がちくんと痛くなってしまった。

    せっかく彼が時間を作ってくれた
    貴重なデート を楽しまなきゃね。

    私は、きゅっと心をこめて、彼を抱き締めた。
    「心配してくれて、ありがとう」と囁く。
    黎翔さんは、やっと安心したのか私に微笑んでくれた。


    「ゆーりん、ゆーりんっ!
    ほら見て!
    女王様の馬車が来たよ!」

    金と銀の光に包まれて、まばゆい馬車が鈴音を鳴り響かせながら
    近付いてきた。

    絵本のハートの女王様は、怖くて意地悪だけど……
    このパークのハートの女王様は、とても美人で優しい笑顔の
    素敵な女王様だった。

    私が、ぽおっ……と見とれていると、私の目の前で馬車が止まった。

    優雅に女王様が馬車から降りてくる。
    会釈されたので、慌てて返した。

    女王様に促されるままに、黎翔さんと私は眩い馬車に乗る。
    乗り込んだと同時に、馬車の扉が閉められた。

    「黎翔さん??
    女王様が、まだっっっ……」

    「大丈夫だよ、ゆーりん」

    一緒に女王様も乗るものだと思っていた私は、ハートの女王様を広場に残して、馬車が走り出したことに驚いた。

    馬車はパレードを抜け出して、風のように走ってく。
    やがて小高い丘を頂上目指して駆けて行った。

    流れ星のように現れ消え行くパークの光。

    「大丈夫。
    ゆーりんは、何も心配しなくていい」

    微笑みながら隣に座る黎翔さんに、しっかり抱き締められて
    私はようやく安心してきた。

    やがて、パークを見下ろす頂上広場に着いた。
    馬車を降りて展望台まで、ふたり手を繋いで歩いてく。

    「ゆーりん、
    疲れてそうだったから、ここまで連れてきてもらっちゃった」

    悪びれもせずケロリと白状する黎翔さんは、
    いつものワンマン社長で……

    少し過保護すぎるわ……私は、彼に呆れる気持ちと彼の優しさに、ついつい笑みが浮かんでしまう。

    二人で見る眼下の景色は、発光きのこたちが織り成す不思議な世界。
    ハートの女王様の城が、遮るものが無くて近くに感じられたた。
    白亜の城に、真っ赤な薔薇の花の美しい映像が映し出されている。
    パークの夜景の美しさに、知らず感歎のため息が漏れていた。

    「わぁ…綺麗」
    「本当だ…綺麗だね」

    私は照れ隠しで、パークの夜景に夢中になったふりをした。
    繋いだ彼の大きな手を、ギユッ…と強く握り締めて
    小さく「ありがとう」と呟いた。

    隣で黎翔さんが笑った気配がした。

    もぅ!
    何もかも、お見通しなんだから……
    素直に、お礼を言っただけじゃない。
    そんなに笑わなくても……

    素直じゃない私は、少し膨れっ面で夜景を見ていた。
    そんな私に黎翔さんは、クスクス笑いながら
    優しく背中から抱き締めてくれた。

    「ゆーりん、好きだよ」
    「黎翔さん……私も」

    彼のぬくもりに包まれながら、しばらく二人で甘い夢に浸るのだった。



    ……続く
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