花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【Yコラボ】アリスの口付け 12  狼陛下

    そして私は毎日のように、この本社ビルへと足を運んでいた。

    社長の偽婚約者なんて
    ご大層なバイトを引きうけた私は、
    それらしい振舞いの講義を、受けさせられていた。

    更には、全身のサイズまで測られて……
    服まで一点ものが貸与された。
    あくまで貸与だけど。

    しかし普段着から、下着。
    身につける宝石類から、パーティドレスまで…

    どれだけ金掛けるのよ、たかが偽婚約者の為に!!
    と、叫びたくなるくらいのモノだった。
     
    それこそ普通の高校生が、着ることなんてないであろう、ブランド物の服で。
    正直言って服に縛られているような感覚まで、味わう羽目になった。

    しかも肝心の社長さんとは会うことも無く、
    これで本当にバイト代もらってもいいのかしら?と
    申し訳なく感じる始末。

    「はぁ~~~。
    なんで私、こんなバイトを請け負ったのかしら?
    肝心の社長さんとは会えないし…
    もしかして、もう偽婚約者なんて必要なくなったのかしら?」

    私は講義の行われる広い会議室で
    誰も居ないことをいいことに、一人呟いた。

    「そんなに社長に、会いたいのか?」

    私の言葉に間髪入れずに、後ろから掛けられた声。
    驚きのあまり、ビクッと心臓の鼓動が跳ねた。

    誰も居ないと思っていた会議室。
    突然、響いたもう一人の存在……
    私の背筋は、ピピツと、伸びた。

    もしかして私の独り言、聞かれた?
    偽婚約者のことがバレた?
    これってかなりマズい状況よね!

    私は怖くて振り返ることは出来ず、そのままだんまりを決めこんだ。
    でもいつまでもこのままというわけにもいかず……ビクビクしながら振り返ることにした。

    そこに立っていたのは、先日フロアで会ったイケメン青年だった。
    そう……この大企業のトップ、珀社長その人だった。

    「あっ、その、あの、いや、そうじゃなくて!
    初めまして、私、汀夕鈴と申します」

    「知っている」

    「ですよね…」

    「社長さん!一つ訊いても「社長さん、ではなくて黎翔さん!」」

    「はい?」

    「だから、黎翔さん!と呼ぶ!!」

    いきなりそんな事言われても、
    そんな呼び方出来るような器用な私じゃない。

    それでも威圧感に圧倒され、
    小さく囁くように『黎翔さん』と呼んだ私は
    頬を染めて俯いた。

    「聞こえない」

    「………いじわるですね!!」

    「まぁ、私は『狼陛下』なんていう通り名があるから、
    いじわるなのかも知れないな」

    聞いたことがある。
    あれは確か…フロア清掃で聞こえてきた会話の中に
    しばしば『狼陛下』って言葉。

    『陛下』ってどんだけ、ご大層なのかしら?
    どんな人がそう呼ばれてるのかな?って
    興味を覚えたことまで思い出した。

    その人が今、私の目の前にいる。
    そう呼ばれるに相応しい立ち姿で……。

    私は知らず知らずのうちに、見惚れていた。
    視線が外せなくなるほどに。


    ……続く
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