花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【Yコラボ】アリスの口付け 10  不思議な出会い

    そして始めた
    ビル清掃のアルバイト。

    このビルは、大きくて広くて、
    思ってたより結構大変だった。

    確かに割は良いかもしれないけれど、
    その分すべて清掃するには、体力も必要だった。

    私は中途半端なことが大嫌いだから、
    “やるなら完璧に!”を、遂行していた。

    だからバイトを初めて3か月、このビルで働く人の顔なんて
    誰一人として覚えることなんてなかった。


    あっ、一人だけいた!!
    あの時の眼鏡の面接官だけ。

    兎に角、それくらい一生懸命に
    ビルの清掃に精を出していた…。


    ****


    「君が新しいバイトの子??」

    フロアの床の頑固な汚れを、ゴシゴシ拭いていた時に、
    不意に頭上から、声が降ってきた。

    俯いたままの私の耳に届いた声は、
    低いけど、温かみのある声質で……。

    まず、その声に惹かれた。

    その声に導かれ、私は顔を上げた。

    目に飛び込んできたのは…印象的な深紅に輝く瞳。
    私を見据える瞳は、力強くて
    視線を逸らすことが出来なかった。

    私の傍らに佇むのは、すらりとした長身。
    仕立ての良いスーツに、身を包んだ若い男性。
    顔だちも涼やかで、キリッとしたイケメンの青年だった。

    きっと、女性社員の憧れの的なんだろうなぁ~と容易に予想出来る顔立ち。
    まぁ、私には関係ないことだけれど……。

    そんなことを考えていた私は、その人の返事を一瞬遅れてしまった。

    「えっ、はいっ、
    そうです!」

    「そう…君が」

    「?」

    その人はその一言を呟くと、
    私を見詰めたまま黙ってしまった。

    私はどう返答してよいのか分からず、
    モップの柄を握りしめたまま固まった。

    広いフロアには、私たち二人だけしかない。
    お互いが黙りこくったことで、辺りになんとも気まずい静寂が漂う。

    私は掃除を再開したくても、
    その人の視線が気になって動きだせない。

    「あの…私。
    ここのお掃除をしたいんですが」

    「ああ、どうぞ」

    そんなこと言われたって、出来っこない。
    見つめられたままだから……。

    「…私、何かヘンですか?」

    彼は私の何が気に掛かっているのか?
    すごく気になって訊いてみた。

    「ヘン?
    いいや、別に」

    別に?
    そんな事、無いでしょう。
    じゃあ、どうしてただの清掃バイトを
    じっと見てるっていうのよ?

    私の中で、疑問符が飛び交う。

    ええい!
    もう知らない!!

    私は、再びモップを動かし、
    何事も無かったかのように、ごしごしと床の掃除をはじめるのだった。



    ……続く
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