花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    黒龍【長編】果樹の杜 おまけ  -恥らう林檎ー

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    ……長くて短い二人の時間。
    つかの間の休みは、あっという間に過ぎていく……

    燃えるような夕陽の色
    空を焦がして、山向こうに消えていく……

    「あぁっ!
    消えちゃう。」

    思わず呟いた言葉に、陛下はクスッと笑った。

    「消えるわけではないよ。
    太陽も、夜のうちは休んでまた明日照らしてくれる。
    さあ、もう日が暮れた(王宮に)帰ろうか。」

    暗くなったからと、差し伸べられた陛下の手に、
    私は、くすぐったくも嬉しくなってしまう。



    ほんの半日の陛下のお休み。
    まさか、こんなに遠くにまで、遠乗りするだなんて思わなかった。

    私は、少し先を歩く陛下の横顔を見つめ……
    せっかくの休みをこんな潰し方でよかったのかしらと問うと……

    「せっかくの休みだからこそ、
    誰かに邪魔されることなく、君と一緒に過ごしたかった。」

    と答えられた。

    その答えに、嬉しくもありね心配にもなる。
    かえって疲れていないと、いいのだけれど……
    そんな心配は、臨時花嫁の頃と同じ。

    結局、この人は妃(私)に対し、どこまでも甘いのだ……

    ふぅーーーーっ

    王宮に帰る道すがら、そんなことを考えて、袖の内側で細く短いため息を吐き出した。
    気付かないと思っていた、かすかなため息は、すぐに見抜かれた。

    「どうした夕鈴。
    疲れたか?」

    「……いいえ」

    あれ?
    そういえば……

    「あの、陛下。
    素晴らしい夕陽でしたが……
    私に見せたかったのは、あの夕陽ですか?」

    「そう。
    いや正確には、あの場所から見える見渡す限りの林檎の木だよ。
    綺麗だったろう。」

    「はい。
    とても綺麗でした。」

    「あの丘から見える景色は、王領地で作られている林檎園だ。
    もちろん他の果樹も作られてはいるが……林檎が多い。
    何故だか分るか、夕鈴」

    陽は落ちて、街道を照らす月明かり……
    黎翔と夕鈴を乗せ、漆黒の黒龍は、危なげなく歩みを進める。
    カツカツ……という、リズミカルな蹄の音。

    考えても市井のただ人だった夕鈴には、皆目見当がつかない。
    分らないものは、聞くしかない。

    「どうしてですか?
    教えてください陛下。」

    知ったかぶりをせず
    知らないものは聞いても知ろう。
    耳を傾けようとする姿勢。
    素直で、純朴な資質は夕鈴の美徳だった。

    「ここ白陽国は、冬は長い雪に閉ざされ物流も少なくなる。
    他国に比べて、生鮮、葉物野菜や果物が当然少なくなる」

    「思い出してごらん。
    下町で、安く林檎が手に入っただろう?」

    「そういえば、そうですね。
    青慎が、風邪をひいた時は、摩り下ろした林檎をよく食べさせていました」

    「その林檎は、さっきの果樹園で作られた林檎だよ。
    冬の間、栄養不足の民の口にも入るように、大量に作らせている。
    林檎は、上手に保管すれば、冬を越せる果物だからね。
    とても大事にしている果樹園なんだ」

    「価格が高騰しないよう、いつでも庶民の口に食べられるようにしている。
    また、冬の間の諸外国への輸出品にもなっている。
    我が国の林檎は品質が良くて甘いらしいからな……」

    「そんなこと知りませんでした。」

    林檎一つで、ここまで国に絡むとは。
    冬の間の民の健康にまで、気を使う
    やっぱり、陛下って凄い。

    「一度、夕鈴に見せたかったんだ。
    林檎の木は、一年中手がかかる。」

    「太陽の光が足りないと、実が落ちる。
    雨が多くても、少なくても、いけない。
    甘い実だから、当然虫も動物も寄ってくる」

    「たくさん愛情を注いで真っ赤な美味しい林檎になるんだ…
    君にも、知って欲しかった」

    「たとえ身近に居なくとも、
    君は私の傍で、家族も友人も守っていることを……」

    「この国の妃。
    国母となるのは、君なのだから。
    二人で力を合わせて、民を支えていこう!」

    「はい。
    ……陛下。」

    「そして、早く私の子を産んでくれ……」

    「はい。
    ……え!?

    (ぎゃーーーーー/////!)
    ~~~~~~っっっ!」

    思わず返事をしてしまった私の顔は、
    収穫期の林檎より真っ赤だったという。

    朗らかに笑う陛下に恥ずかしさのあまり
    ポカポカ……と、叩いてしまったのは……/////不可抗力だと思う。

    でも、いつかあなたの子を産み育てたい。
    そんな幸せ、早くくるといいなぁ……

    私のそんな気持ちは、まだ内緒。
    だって、恥ずかしいじゃない。


    もう、陛下のばかっ!





    ―果樹の杜 -恥らう林檎ー・完-

    2015.05.26.初稿


    回収できなかったネタを、おまけで回収します。

    これで果樹の杜は、終了です。
    お付き合い頂き、ありがとうございました。

    2015.05.26.
    さくらぱん
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    2015.05.26 17:39 # [EDIT] 返信

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