花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    完・黒龍【長編】果樹の杜 5

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    ぎゅっと抱き締められて、陛下の柔らかな抱擁。
    陛下の手に私は、そっと手を重ねる。
    隣を盗み見ると、じっと真摯な瞳で見つめる陛下と目が合った。


    「……何を、でしょうか?」

    陛下は、李順さんに何を聞いたというの?

    心当たりが無くて、陛下に問いかけた。
    その間にも、じっと見られていて……

    密着して抱かれているってだけでも、
    恥ずかしいというのに……

    至近距離。
    しかもマジマジと見つめられては、
    今更ながら顔が火照ってくる。

    静かな丘は、風の音さえも、音を潜めているかのように
    陛下の優しい声と息遣いしか聞こえなかった。

    明日に向け、真っ赤に焦がれる空。
    落つる夕陽に、私は照れて真っ赤になった顔を、俯いてごまかした。

    「君が、私の本当の妃になることの決意を李順から聞いた。
    もう二度と下町には、戻らない。
    君の大切な家族にも、友人にも、誰にも会わない覚悟をしていたと」

    ……ああ、そういえば、
    李順さんに聞かれたっけ……

    でも、あれは……

    「陛下。

    それは……「もう少しだけ聞いて……
    最後まで言わせて」」

    優しくも、否やを言わせぬ
    陛下の言葉。

    チュッ……

    こめかみに軽い衝撃。
    陛下の口付けと、心地良い酩酊感。
    口付けひとつで……
    私は、そのまま何も言えなくなった。

    「……そのことを聞いた時、
    私が、どれほど嬉しかったか分るか?」

    顔の輪郭を指先でなぞられ、
    陛下のほうを上向かされた。

    当然というように
    重ねられた唇。

    ……ン。

    問いかけの後の
    二度目の口付けは、私の唇に……
    夕陽の温もりではなく、陛下の確かな唇の温もり。

    すぐに離れたソレは甘噛みされて
    私の唇が、ジン……と甘く痺れが残った。

    耳朶に心地良い、
    低く甘い陛下の声音。

    夕陽に照らされた陛下からの強い視線。
    綺麗な朱赤の瞳に魅入られる。

    「君が、どれだけ弟思いの姉なのか……
    私は、ずっと君を見ていたから知っている。
    どれほどの決断だったのかも……」

    「ーー夕鈴。
    私を選んでくれて、ありがとう!」

    屈託無く、笑う陛下が眩しくて、
    私は目を細めた。

    「いいえ、陛下。
    それは、私の台詞です。
    陛下だったら、どんな美姫でも選べるというのに……」

    「本当に、私があなたの妃で、いいのですか?」

    まだ信じられない夢の続きを見てる気がして……
    もう何度目か分らない質問をしてみた。

    だって、私が王様と相思相愛だなんて……
    現実でも、まだ夢じゃないかと思うの。

    「……ばかだな。
    何度も言わせるな。
    君にしか私の妃は勤まらない……」

    「冷酷非情の狼陛下と異名を誇る私を
    恐れず逆らい、自分の意思を貫ける娘など、君しか居ない。
    何よりね私が跪き、愛を請いたいと願うのは君だけだ、夕鈴」

    「君だけが、私を恐れず……
    嘘、偽りの無い心で私を愛してくれる
    君だけが、私を癒してくれる」

    「愛しているよ。
    これからも、ずっと愛し続けるよ。
    元気で、片時も目の離せない……僕の花嫁」

    「……陛下。」


    ……ん!?

    元気って、目の離せないって……褒められてるの?
    どうなのコレ。
    って……今までの行動が行動だけに、私は苦笑いするしかない。

    「君を一度 手放したのは、私の間違いだった。
    君の行動は、私の予測の範疇をいつも越える」

    愛情深く、啄ばむように施される口付けの甘さに、
    私は上手く呼吸できない。

    臨時花嫁だった頃と変わらない甘さ……否や

    嘘偽り無く、陛下に愛されていることを知った今、
    苦さのなくなった甘いだけの愛に、私は溺れそうになる。

    口付けに翻弄されて、酔わされそう……

    でも、でも……
    これだけは陛下に伝えなくては。

    「ーー陛下。
    ……いえ、黎翔さま。
    貴方だから私は、黎翔さまと共に歩む道を選べたんです」

    「民への想い。
    施政への熱意。
    私への優しさ。
    誰よりも賢王で、誰よりも努力をしている
    雄々しい私の陛下。
    いつまでも私を、貴方の御側に置いてくださいませ。

    ……黎翔さま、お慕いしております」

    「きっと素性、分からぬ正妃と風当たりは強いだろう。
    ーー許せ、夕鈴」

    「そんなこと、とっくに貴方を選んだ時点で、
    諦めております!」

    「黎翔さまと、両想いになれるなんて……
    私は、微塵も思わなかったのですから」

    心から晴れやかな笑顔を、私は愛する人に向けて
    お互い太陽よりも眩しい笑顔で笑いあった。

    芳しく香る白い林檎の花弁が暮れかけた空に舞う。
    愛を確かめ、育みはじめたばかりの初々しい二人。

    林檎の花の花言葉は「選ばれた恋」

    身分違いで諦めかけた恋。
    玉砕覚悟で臨んだ夕鈴の初恋は、思わぬ成就で実った。

    たとえ、この先どんな困難が待ち受けていようとも
    受けいれて打ち勝つ覚悟で、結ばれた二人。

    真綿で、くるんで育てた恋じゃない。
    お互いに手を差し伸べて、ようやく繋いだ強い愛なのだから。
    きっと壊れることは無いはず……
    いつか愛は実を結び、大きな幸せが訪れることでしょう。


    I met you, I fell for you, now I love you, and I can’t stop.

    ――――きっと、そんな日はもうすぐ。


    ー果樹の杜・完ー


    I met you, I fell for you, now I love you, and I can’t stop
    あなたと出会い、好きになり、愛しちゃって、もう止まらない。

    なんか今の陛下と夕鈴みたいです。

    さくらぱん
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    2015.05.26 12:45 # [EDIT] 返信

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