花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    月晶の雫 15 ※離宮編

    誰も人が居なくなったことを、確認すると……
    神官長は、おもむろに口を開いた。

    「陛下とお妃さまの仲の睦まじさは、辺境に住む私どもの耳にも届いております。
     まさか、これほどとは、思いもしませんでしたが……」

    「……どういう意味か?」

    「慈しむあまり、お手をつけていないご様子。」

    「分かるのか?」

    「いままで何組もの神事を見届けました。
    お二人の振る舞いや気遣いで、すぐに分かりました。」

    「このまま……神事を進めることを、憂慮しております。
    お妃さまには、神事を何とご説明しておられるのですか?」

    「彼女には、何も伝えていない。
    万事、何も問題は無い。
    神事は、私達の手で執り行う。」

    「陛下……それでは、お妃さまのみならず、陛下まで傷つかれることでしょう。
    何も、神事は今年、王族で執り行わずともよいのです。」

    「今年、婚儀を迎えた若い夫婦は、村に大勢おります。
    その中の一組で、神事を執り行えば、1~2年は、持ちましょう。」

    「だが、王族でないものは、10年は持たない。
    神官長、この国の為にも神事は予定通り執り行う。」

    「陛下、三日三晩のこの神事、偽りの夫婦では、女神は喜びません。
    お妃さまは、歌を歌えないことでしょう。」

    「神官長、くどい。
    手は打つつもりだ。
    神事は、予定通り執り行う。」

    「……お妃さま……しいては、陛下の恩為ですぞ。」

    「分かっておる。
    もう、話はよいな。」

    話は、もうすんだとばかりに、部屋を出ようとする黎翔は、
    途中足を止めて振り向いた。

    「時に神官長。
    張老師から、話は聞いているな?」

    「はい。
    万事ぬかりなく今夜の手はずは、整っています。」

    「陛下の衣装も
    お妃さまの衣装も
    村人と変わらぬものをご用意しております。」

    「神事までには、戻る。
    安心して、手筈を整えて待つように……」

    「承りました。」








    「陛下とお妃さまの幸運をお祈りいたします。」

    恭しく陛下を見送る神官長の唇から、小さく呟かれた言の葉は、
    黎翔の耳には、届かなかった。

    ……続く

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