花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    月晶の雫 13 ※離宮編

    うわぁ……空が青いわ。
    何度、見ても不思議。

    夕鈴の頭上には、ぽっかりと丸い空。

    碧林(へきりん)の離宮にある
    屋上庭園は静かで……

    「お妃様、そんなに顔を上げては、
    躓いて危ないですわ。」

    クスクスと、笑う侍女たちの言葉に、夕鈴はハッと我に返った。

    危ない……危ない……
    お妃らしくなかったわ。
    口をあんぐり開けて、空を見てるだなんて……
    失敗したわ。

    羞恥で頬が熱い。
    耳朶も熱を帯びてきた。
    きっと、耳まで真っ赤だわ。


    夕鈴は、侍女たちの視線を遮るように
    大袖で、顔を隠した。

    「とても不思議なので……」

    もう一度、視線を空へ戻すと真っ青な乾いた空。
    対照的に、ここは緑と水の気配が、濃かった。

    火照る肌に、冷たい水の気配は、心地よい。

    色彩鮮やかな花々が、清冽な水を湛えた噴水を中心に配されている。
    屋上庭園の名にふさわしく、周囲を神殿の切り立った岩山が囲っている。

    花々には、鳥や蝶が集い、生き生きとした色彩に溢れる。
    天界の庭園もかくやの美しさだった。


    岩山の向こうは、乾いた砂の大地。
    緑など草の一本もない。
    岩一枚隔てた、この大きな違い。
    夕鈴は、そのことが不思議だった。

    侍女が言うには、これが泉の女神の加護なのだという。
    この奇跡を持続させるために、神事は定期的に執り行われ、
    この土地は、水に潤い豊かなのだという。

    「それにしても陛下は遅いですね。」

    侍女の陛下という言葉に、夕鈴は、ドキリと心臓が跳ねた。
    今朝の近すぎる距離。陛下の顔を思い出す。

    侍女の声が無かったら、二人ともしばらくあのままだったことだろう。
    今夜も、同じ部屋で陛下と寝台を共にするのだと思うと、ドキドキが止まらない。
    しかも、神事は三日三晩。
    昼も夜も、陛下と二人っきりだという。

    片思いだけど、陛下が好きだからこそ
    これは、なんて心臓に悪い。
    夕鈴は、平静を装いながら侍女に話をあわせた。

    「神官長殿とのお話が、弾んでいるのでしょう。」

    「お妃様、今度はこちらの庭をご案内いたしますわ。
    果物のなる木々を植えたフルーツガーデンです。」


    「まぁ、どこからか甘い香りがすると思っていましたが、果物の庭園ですか。
    実が、生っているのですか?」

    「異国から取り寄せたオレンジが、たわわに実っております。
    のちほど、お部屋に届けましょう。」

    「ありがとう。
    それは、とても楽しみだわ。」

    夕鈴は、侍女に連れられて緑の木陰に消えた。


    ……続く
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