花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    月晶の雫 8

    「何事だ!!!」


    侍女達の悲鳴を聞きつけた黎翔は、倒れた夕鈴を見て青ざめた。
    脈を計るといつもより、早い。
    床に転がる酒盃の香りを確かめ、毒の入っていないこと知る。

    「妃は、どうしたというのか?
    この状況を誰か説明せよ。」

    「恐れながら、陛下。
    湯上りに、こちら特産の白ぶどう酒を召し上がりまして
    お倒れになりました。」

    「まさか、ここまでお酒に弱いとは張老師より聞いていなかったもので……
    申し訳ありません。」

    「確かに、状況はそのようだな。
    妃は、泥酔しているようだ。
    旅の疲れもあって、酔いがまわったのだろう。」

    「まあよい。
    此度のことは、もてなしゆえのことだろう、不問とする。
    明日からは、葡萄液を用意するが良い。」

    「承知しました。」

    「このまま、私が部屋まで連れて行こう。
    部屋に案内せよ。」

    「こちらでございます。」

    湯殿に近い賓客の間に案内されて奥の寝台に夕鈴を寝かしつけた。
    こうなったのは、伝え忘れた老師の仕業に違いなかったが、
    逆に助かったのかもしれない。

    国王陛下の部屋は、一つ。

    妃と別室は、ありえない。

    来るべき神事のためにも
    彼女は、国王が愛する妃で、あり続けなければならず
    この先の神事はなりたたない。

    この碧林では、王都に帰るまで一つの寝台を黎翔と共にするのだ。

    もしかして、それさえも老師は計算していたのかもしれない。
    真っ赤な顔で、泥酔して寝てしまった夕鈴には、申し訳なかったが……
    黎翔もまた長旅で疲れていた。

    言い訳と説明と説得をする手間が省けた。
    すべては明日の朝、説明しよう……そう黎翔は、決め込むと
    寝台に一人眠る、夕鈴に寄り添うように、黎翔は隣に滑り込んだ。

    そのまま彼女を引き寄せて、瞳を閉じた。

    腕の中の温かな彼女のぬくもりに、ゆっくりと穏やかに眠りに落ちていく。

    静かに離宮の夜は、更けていく。

    誰も、国王と妃の眠りを邪魔する者は居なかった。


    ……続く



    関連記事
    スポンサーサイト

    管理者にだけ表示を許可する