花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    月晶の雫 7

    「お妃様、長旅でお疲れでしょう……
    こちらに、湯浴みの準備を整えております。
    まずは、旅の疲れを癒してください。」

    「馬車の中は、とても暑かったの。
    汗を流したかったから、嬉しいわ。」

    「……こちらにどうぞ。」

    案内された湯殿は、やはり自然の岩肌を活かした岩窟風呂で、とても雰囲気のある場所だった。
    僅かな水のせせらぎも、音が反響して聞こえる。

    不思議な空間。
    岩山をくり貫いて作られているのだから、すべてがこのような作りなのだろう。

    「お妃様、湯加減はいかがですか?」

    女官たちの声もよく反響する。
    それが、面白くて……

    王宮では、体験したことの無い現象に驚きを隠せない。
    溢れる透明な湯は、惜しみなく注がれ、いずこかへ流れていく。

    砂漠の離宮での水の贅沢な使い方。
    陛下に、湯浴みがここの最高級のもてなしと聞いていなかったら
    きっと、気後れして入れなかっただろう。

    そして、滾々と湧き出る豊富な水があり
    少々の湯浴みでは枯れない、碧林の街の豊かさの証明。
    驚きと感嘆と感謝で、私は湯を頂いた。

    湯上りに用意された夜着は、二つ。
    碧林の衣装といつもの夜着。

    私は、いつもの着慣れた夜着を選ぶと袖を通した。
    湯上りにさっぱりした肌に、着慣れた夜着が馴染む。

    私は、ようやくほっと一息ついた気がした。

    「お妃様、お飲み物はいかがですか?」

    小さな盆に青硝子の小さな盃。
    少し白濁した飲み物を渡されて、素直に受け取った。

    ペロリと少し味見すると爽やかな葡萄の味と芳醇な香り。

    ――――甘い。



    私は、安心してそのままイッキに飲み干してしまった。
    湯上りの乾いた咽喉に沁み込む冷たい飲み物。

    飲み干してから、気付いた。
    後から香る酒精の香りに・・・



    マズイ!!

    これ、強いお酒!!!

    身体がカッと熱くなる。

    気付いたと同時に、ぐらりと視界が傾いた。

    「きゃーーー!!! お妃様っっ!!!
    だれかっ来て!!!」

    その場で倒れた夕鈴に気付いた女官達の悲鳴は、
    夕鈴には、届かなかった。



    ……続く


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