花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    月晶の雫 5

    旅の道のりは、とても快適とは、ほど遠く…厳しかった。

    蒸し暑い馬車の中。
    王都から離れるごとに、荒れていく道…
    ガタガタと大きく揺れる馬車。

    窓から覗く、乾いた大地が、更に渇きを誘う。

    馬車の窓から見た景色は、草も木も無い荒涼とした赤茶けた砂漠。
    とてもこの先に、緑豊かな街があるとは思えなかった。

    時折、私を気遣い陛下が馬車を止める。
    こんな時、旅慣れていない身が、みんなの足手まといかなとも思い、申し訳なく思う。

    退屈だろうからと時折、馬車に同乗して話しかけてくれる陛下。
    その陛下も、炎天下の中の移動で、とても暑そうだった。

    「僕は、旅慣れているからね。」

    気遣う陛下は、そう言って水の入った皮袋を差し出してくれた。
    水を求めていた私は、素直に受け取った。

    喉の渇きが満たされる回数が増えるたびに…
    水のありがたさが、身に沁みる。

    道すがら、陛下は碧林の都と泉の女神の話。
    祭りと神事について話してくれた。

    「……だからね、夕鈴。
    神事を執り行うのは初日の夜だから、民の祭りには、10日全部は行けないけど、初日だったら神事の前に行けると思うよ!」

    「面白いものもあるし……お忍びで、一緒に行こうね!」

    忍び出る気満々の陛下は、そう言ってイタズラっぽく笑ってくれた。

    ……面白いものって、何かしら?
    神事については、何も教えてくれなくて不安が多いけれど…
    民の祭りに参加できると聞いて、私の心は弾んだ。

    「お忍び用の碧林の衣装を、用意してもらうように頼んでおくよ!」

    「楽しみだね!」

    「はい!
    楽しみです!」

    そんな話をしているうちに、前方の地平線に黒い山が見えた。
    どんどんと近づいていく……

    「もうすぐ碧林に着くね!」

    「着いたら教えるから、少し眠るといい…。」

    「着いたら神官たちが、神事の打ち合わせで
    君についてまわるからね!」

    う……

    「そうなんですか?
    では、少しだけ……着いたら起こしてくださいね!」

    私はそう言って、陛下の言葉に甘えて、うたた寝することにした。


    ……続く



    分館からの移設です。
    2013.11.17.初稿 分館
    2014.07.11.移設 さくらぱん
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