花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    月晶の雫 4

    「…ん…んぅ。」

    見慣れたいつもの天井。
    私、いつの間に自分の部屋に帰ってきたのかしら…?

    「夕鈴、気付いた?」

    覗き込まれるように、天井を背景に陛下の顔が見えた。

    「陛下!」

    私は慌てて、寝台から起きようとした。

    「ダメだよ!
    夕鈴、倒れたんだ!
    急に起きちゃダメ!」

    肩をつかまれて、優しく寝台に押し返された。

    「倒れたって…」

    え……と?
    記憶が繋がらない。

    「熱中症だったんだね。
    後宮に帰ろうとして、出来なかったんだよ。」

    そう言って、陛下は私の頬を片手で撫でた。

    「赤みはひいたね。
    熱も無いようだ。
    どこか、まだ苦しく無い?」

    髪を撫でながら、優しい赤の瞳が質問する。

    「何処も、苦しくないです。
    ご迷惑をおかけしました。
    もう大丈夫です!」

    「…そう?
    それは、良かった。
    もう少し、早く気づいてあげられたら、
    夕鈴は、倒れることなかったのにね…。」

    「……ごめんね。」

    すまなさそうに、陛下は私にそう言った。

    「いいえ。
    私のほうこそ、ご迷惑をかける前に、後宮に戻るべきでした。
    ……陛下、ありがとうございます。」

    「政務室は、風が吹き抜けないし…
    夕鈴、暑かったよね。」







    「今は、大丈夫?
    暑くない?
    苦しくない?」

    ……あ。
    そういえば…暑くも苦しくもないことに、私は気付いた。

    そこではじめて、今の自分に気がつく。
    妃の衣装ではなく、花簪も外されて、
    下着姿の心もとない単衣の衣一枚だけだった。
    襟元がくつろがれでおり
    鎖骨ばかりが、胸の深い谷間まで……見える。


    きゃあ!
    なんてこと!!

    「…!!!」

    私は、慌てて布団を引き上げて潜ってしまった。
    顔が、ボボッッッ…と赤くなる。

    今度は、熱ではなく恥ずかしくて……。

    「元気になったようだ」

    陛下は、そんな私に
    クシャリと髪を撫でるとクスリと笑った。

    優しく見つめる陛下の顔がまともに見れない……

    「ところで、夕鈴。
    明日から、地方公務に行きたいのだけど…君にも、来てほしい。」

    「移動に耐えられるかな……妃の仕事があるんだ。」

    「もう大丈夫です!行けますよ!」

    「…………うん。
    大丈夫そうだけど、暑い行程だから、
    無理しないでね。」

    「暑いのですか?
    公務はどちらへ?」

    「白陽国の南、碧林(へきりん)へ」

    「碧林の離宮は、涼しくて快適なんだけどね。
    そこに行くまでの道中が、狭い馬車の中だからとても暑いんだ。」

    「碧林の都そのものが、砂漠の真ん中にある交易のオアシスなんだ。」

    「そこで、オアシスを守る女神に祈りを捧げる10年に一度の大祭が開かれる。」

    「大祭は、10日間あってね。
    民の祭りと王の神事で、女神に祈りを捧げるんだ。」

    「10年に一度の欠かせない祭なんだよ。」

    「僕らは、神事をしに行くんだ!」


    ……続く




    分館からの移設です。
    2013.11.17.初稿 分館
    2014.07.11.移設 さくらぱん
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