花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    紫雨―しう― 8   よゆままcolor

    もう逃げられない・・・・
    私は逃げたいの?
    いや、そうじゃない。
    陛下の味方でいたい・・・はず。

    でもこんなのは駄目なんだと、私の奥底で警鐘が鳴る。

    「へ・・・・い・・・か、こんなのズルいです。」

    「ズルいとは?」

    「・・・・・・・・・こんなの陛下じゃ・・・・ない。」

    紅く・・・そう深い紅の双眸がキラリと輝きを増す。
    口元に宿る妖しい笑み。

    「では、本当の私とは?」

    陛下は、私に質問しかしない。
    その間も詰められていく……陛下と私の距離。

    「ち・・・・が・・・う。」
    「違うとは?」

    徐々に近づいてくる 端正な顔。
    私は耐え切れず……不意に顔を背けた。

    どうしていいのか、分からないから。
    背けた顔に迫る長い指。
    顎下に入れられ、ツィッと陛下の方に向けられる。

    その瞬間、私は堅く瞳を瞑った。

    ・・・・・怖い。

    恐怖が吹き荒れる。
    私の中で。


    うんっっ????
    温かい。


    薄眼を開けると。
    そこには、陛下の真摯な瞳が。

    そして・・・・・触れ合っている唇。
    いや違う、口付けられている。

    「あっ~ん。」

    角度を変えられて、何度も塞がれる唇。
















    長い・・・・・・・沈黙の刻。

    流れ込んでくる陛下の想い。
    溢れだす私の想い。

    いつの間にか、私の頬には光る滴が滑り落ちていた。

    どんな陛下でもいい。
    この時。
    今、まさに相対峙しているのが陛下なのだから。

    狼陛下であろうと。
    小犬陛下であろうと。

    あるがままのこの姿が真実。
    私が見つめているのが本質。
    そして感じるものが真(まこと)。

    溢れだす涙が、止まらない。


    「夕鈴??」

    名残惜しそうに離される唇。
    私は慌てて、手の甲で涙を拭い取った。

    「陛下、私・・・わかったんです。
    どちらの陛下も陛下なんだと。」

    途端、陛下がふんわりと・・・・・そう、穏やかに微笑んだ。
    つられて私も笑みが零れる。

    「これからも、そのままの陛下でいてください。
    私は、傍にいますから。」


    そう云った私の瞳からもう紫雨が流れることは無かった。



    END

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