花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【宝物殿】SSS  たった一枚の よゆまま作




    何も聞こえない。
    何も見えない。

    見えているものは全てがモノクロで。
    殺伐とした風景が広がるだけ___________。


    ここは誰もいない、後宮の主たる唯一の妃の自室。
    しかしここの空気は冷え渡っている。

    その中心で一人佇む。

    「ここに来ても逢えるはず等ない事くらいわかっているのに・・・栓ない事だな。」

    この国の至宝の冠を抱く王、珀 黎翔は部屋の中心に立ち、独り言ちる。

    「君がいないこの世界は、色をなくす。
    そして、音もないただの暗闇だな。」


    これ以上いても、ただ心の奥が凍えていくだけ。
    翻って、踵を返す。

    後宮、王宮への回廊、庭園・・・何処にいても夕鈴を思い出す。
    だからそれを忘れたくて、執務室で政務だけを淡々とこなしていく。
    そんな毎日を過ごすだけ。

    何も感じず。
    何も聞き入れず。
    そして誰も信じず。


    ***********



    「これでは・・・昔の陛下に戻ってしまいましたね。」

    李順は独り言ちる。
    それほどあのバイト娘の事を気に入っていたのかと、今更ながらに思う。

    でも手放してしまったのは、陛下ご自身。
    これ以上危険な目には合わせたくないから・・・と。
    それは確かにそうだ。
    ここにいれば、否応なしに陛下を狙う刺客の標的にされる。
    だから逃がした。

    でもそれで本当に良かったのだろうか・・・・・・
    李順は今日も頭を悩ます。



    朝が来て、
    昼になり、
    そして空は茜色に染まり、
    夜が来る。

    どんな思いを持とうとも、等しく日は過ぎゆく。
    何もしなくてもしていても、また明日という日はやってくる。



    そうして・・・・・・・・・・・
    何日、何十日、何か月過ぎたのだろうか。


    「李順、そろそろ正妃を娶る。
    候補を選定しろ。」

    抑揚のない声で命令が下された。

    「御意!!」

    ただ、そう答えるしかない。
    これも側近である自分の仕事だと割り切って、
    名だたる貴族のご令嬢方を候補に挙げてみた。
    そしてその中には________。


    「これが、この国にとって一番良い事ですよね・・・・・・。」

    自分に言い聞かせて。

    「陛下、正妃の件ですが・・・・選定結果でございます。
    こちらに置いておきますので。必ずこの中から選んでください。」

    それだけ告げて、執務室を出た。
    後の結果は、容易に予想はつくから・・・・

    「もしかしたら初めから、こうなることは分かっていたのかもしれませんね。しかし今からが大変ですね・・・・陛下にとっても、正妃となるべきあの方も・・・そして、私にとっても。」

    李順は、早足である場所へと。
    自分にはすることがあるから。

    黎翔は全くといって興味も無さげに、卓上の正妃候補の姿絵を見る。
    そして無表情から一変、驚きの表情へ。

    「これは・・・・・・・・・・・・・・・・・李順のヤツ。」

    生気がみなぎった表情にとって代わる。
    そして深紅の瞳には力強いモノが宿る。

    目の前の世界は、鮮やかに色彩が戻る。
    黎翔の世界に色を付けたのは、一枚の絵姿。
    柔らかく微笑んだ_________________________後宮唯一の花、汀 夕鈴のものだった。



    securedownload-1_201405130842027b3.png
       (挿絵☆線画さくらぱん・塗り絵ダリ子さん)



    「夕鈴、もう放しはしない。
    一生、私の傍でこのように微笑んでいてくれ。」


    黎翔は一人呟き、嫣然と微笑んだ。

    関連記事
    スポンサーサイト

    管理者にだけ表示を許可する