花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    『桜の刻印8』・追い込まれた兎・

    「さて、夕食でも作るか」

    そう言って黎翔が立ち上がった。

    「・・・ごめんね、いつも作ってもらっちゃって」

    「ああ、夕鈴さんは料理からっきしだもんな。
     別にいいよ、それくらい」

    「仕方ないじゃない!実家ではいつも母が作ってくれてたんだもの。
     でも・・・、申し訳ないわ。
     明日にでも銀行に行って生活費持ってくるから」

    「心配しなくても一人分も二人分もそんなに変わらないよ。
     悪いと思うならもう、ごめんはなし!
     言うならありがとうにしてくれ」

    「うん・・・ありがとう」

    「よし!んじゃ夕飯作るよ。
     今日はもう遅いし、パスタとかでいいか?」

    「うん!」

    「じゃ、すぐ作るから待っててくれ」

    そうして出来上がったのはカルボナーラ。
    黎翔の作る料理はいつもひと手間かかっていて
    お店で食べるような料理が出てくる。

    料理下手な夕鈴と違って黎翔はそれこそ
    そこいらのファミレスでは太刀打ちできないような
    美味しい料理を作る。

    申し訳ないと思いながらも
    夕鈴はいつも黎翔の手料理を楽しみにしている。

    「「いただきます」」

    食事は美味しく、話は弾んだ。

    夕食が終わり、洗い物も済んだところで
    黎翔が夕鈴の座っていたソファの隣に腰かけて
    夕鈴の肩を抱き寄せた。

    「夕鈴さん、お風呂、入ろうか」

    「ええ!先、黎翔君入ってきて!
     私は黎翔君の後で入るから!」

    「・・・。
     いや、夕鈴さんが先でいいよ。
     行っておいでよ」

    「でも・・・」

    「俺はいいから。さ、行っておいで」

    「分かった。そうさせてもらうわ。
     ありがとう」

    そうして夕鈴はお風呂場へと向かった。

    「さて、と。
     あの腕でどうやって洗うつもりかね・・・。
     手伝ってやらないとな♪」

    黎翔がにやりと笑った。

    夕鈴が湯船につかっていると
    洗面台の方からかたん、と音が聞こえてきた。

    「・・・黎翔君?どうかした?」

    訝しげに夕鈴が湯船の中で膝立ちになって問いかけた。
    とそこへ腰にタオルを巻いた黎翔が入ってきた。

    「っきゃああ~~~!
     な、何考えてるのよ!!!」

    夕鈴は慌てて湯船に沈むと黎翔に向かって叫んだ。

    「なにって、その腕じゃうまく洗えないだろう?
     洗ってあげるよ。さ、おいで?」

    「む、無理!ぜぇったい無理!
     い、今すぐ出てって!」

    妖艶に微笑む黎翔に対し、夕鈴は涙目だ。

    (さすがにまだ無理、か・・・)

    夕鈴の必死な顔を見てそう悟った黎翔は仕方なく出て行った。

    (~~~~ほんっとに、黎翔君は何考えてるのよ!
     よ、嫁入り前の若い娘の入浴中に乱入するなんて!)

    それからしばらく夕鈴はそのまま動けずにいたのだった。


    「黎翔君!どういうつもり!?
     いきなり入ってくるなんて!」

    お風呂から出ると黎翔がソファで足を組んで新聞に目を通していた。

    「どうって、さっき言ったとおりだよ?
     夕鈴さんが困ってると思ったから行ったんだ」

    「じ、常識で考えなさいよ!
     結婚もしてないのにい、一緒にお風呂なんて
     入れるわけないでしょう!?」

    (ふぅん?結婚したらいいんだ・・・)

    「ああ、悪かったよ。
     悪気はなかったんだ。ただ夕鈴さんが困ってると思ったから・・・」

    「・・・はぁ、もういいわ。
     黎翔君もお風呂入ってきたら?」

    「ああ、そうさせてもらうよ」

    困惑したように謝罪する黎翔に毒気を抜かれた夕鈴。
    それが狼の作戦だとも知らずに・・・

    (ああ、これで結婚したら一緒にお風呂入れるな。)

    裏を見せずだんだん追い込んでいく狼の意図を
    兎さんは気が付いていなかった。


    はっち作


    2013年
    09月21日
    22:20
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