花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    『桜の刻印4』 ・恋愛・

    黎翔は告白した次の日もいつも通りだった。
    こちらが拍子抜けするほどいつも通り。

    次の日も、その次の日も・・・

    しかし、夕鈴は違った。
    仕事に支障はない程度だが
    周りに何かあったと気づかれるくらいにはおかしかった。

    黎翔のちょっとした行動やしぐさ、言動に
    ドキドキしている自分がいる。

    異性として意識し始めると
    自分の気持ちに少しずつ気が付き始めた。


    そんなある日のこと。

    旦那さんからのDVに怯えた女性が相談に来た。

    その時偶然他の女性警官が出払っていたこともあり、
    夕鈴が担当することとなった。

    その時部下である黎翔も同席した。

    それだけで終わればよかったのだが・・・

    その女性はそれから何度も署に足を運んできた。
    お目当てはどうやら黎翔のようで、
    彼の見目の良さに当初の目的を忘れて
    誘惑しようと日参するようになってしまった。

    そうしてしばらくそんな日が続いたある日、
    夕鈴が外に出ている時に偶然その女が来た。

    「あら?今日はあの女刑事さんいないんですね」

    「ええ、ですから今日はお引き取り下さい」

    黎翔は冷たくあしらうが女話懲りない。
    それどころか胸にしなだれかかってきた。

    「ねぇ、そんなつれないこと言わないで。
     私、あなたが好きなの」

    「・・・離してください」

    民間人なので邪険にすることもできず
    黎翔がやんわりと女を引きはがそうとするが
    女はますます強くしがみついてくる。

    「んもう!照れなくてもいいじゃない!」

    そこに夕鈴がタイミング悪く戻ってきた。

    「なに、してる、の?」

    呆然とした様子で目を見開き、小さくつぶやく夕鈴の声を
    耳ざとく耳に止めた黎翔と女がそちらを見る。

    「!?汀さん!ち、違うんです!誤解です!」

    「あら?誤解じゃないわ!
     私たち、こういうことなの♪
     邪魔しないでくださる?」

    慌てて否定する黎翔。
    しかし女は夕鈴を蔑んだような眼で見て、
    勝ち誇ったような笑みを浮かべそう言い放った。


    「お、お邪魔しました!」

    そう言って駆け出す夕鈴。

    「ま、待って!夕鈴さん!」

    急いで黎翔が追いかけようとするが女は絡み付いて離れない。

    「ねぇ、いいでしょう?
     あんな旦那とは別れるわ。
     だから私といいことしましょうよ♪」

    その言葉を聞いてついに黎翔はぶちぎれた。

    「・・・いい加減にしろ!
     二度と私に近づくな!」

    「な、なによ!
     警察が民間人にそんな口きいていいと思ってるの!?」

    「そっちこそ、公務執行妨害で今すぐ豚箱にぶち込んでやろうか?」

    そう言って冷たい目で見降ろすと女はやっとひるんだようだ。

    「二度と私の前に姿を見せるな!
     次に会ったときは・・・覚悟しておけ。」

    そう言い放つと黎翔は夕鈴を追って走り出した。

    一方夕鈴はというと無我夢中で泣きながら走っていた。

    「そ、そっか・・・。
     わ、私、黎翔のこと、す、好き、だったん、だ。
     い、いまさら気が付くなんて・・・。
     馬鹿なわたし・・・。」

    その時ようやく黎翔が夕鈴の背中を見つけた。

    「夕鈴さん!」

    大声で叫ぶとびくっと肩を震わせた夕鈴は
    ますます速度を上げて走ってゆく。

    しかしそこは女性。
    しかも足元は今日に限って慣れないパンプスだ。

    黎翔はぐんっとスピードを上げると一気に追い上げ、
    夕鈴を捕まえた。

    「は、離して!」

    「嫌です!」

    「あ、あんなにきれいな彼女がいるんじゃない!
     なのに、なんで私のこと、す、好きだなんて言ったのよ!!」

    夕鈴がもがきながらわめくが黎翔は離れない。

    「誤解だって言ってるだろう!」

    黎翔は怒鳴ると夕鈴の肩をつかみ、自分の方を向かせ、
    左手で腰を引き寄せ、右手で顎を持ち上げた。

    「っな!?」

    痛いぐらい真剣でつらそうな眼を向けられ、
    しっかりとその両腕に拘束された夕鈴は
    逃げることも目をそらすこともできず固まった。

    「あの女が勝手に言い寄って来ただけです。
     夕鈴さんだって知ってるでしょう?
     私がここの所ずっと迷惑してたの。」

    「え、ええ、まぁ」

    「それに、この前伝えましたよね?
     私が好きなのはあなただって。
     愛しているのは夕鈴さん、あなただけです!」

    「あ、愛!?」

    「ええ、そうです。愛しています!
     ・・・そろそろ返事を聞かせていただけませんか?」

    「・・・きよ。」

    「え?」

    「あ、あなたが、好き、よ?」

    涙で潤んだ瞳で上目づかいで黎翔を見上げ、
    真っ赤にほほを染めて夕鈴が思いを伝えると、
    今度は黎翔が固まった。

    「?珀君?」

    夕鈴の問いかけにはっと気が付いた黎翔は
    そのままぎゅうっと夕鈴を抱きしめた。

    「きゃっ」

    「ありがとうございます!嬉しいです!!」

    そこまで言って黎翔は少し体を離し、
    夕鈴の顔を見下ろした。

    「大切にかわいがってあげますから」

    そう言って見下ろす黎翔はあの日見た妖艶な表情を浮かべていた。

    ゛ブルル・・・"

    (な、なに?さ、寒気がする・・・)

    こうして兎は狼に捕まった。
    小犬の皮を被った狼に・・・


    はっち作


    2013年
    09月21日
    22:07
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