花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【長編】『楼蘭―風の行方―』 54 ※要注意!古代パラレル

    楼蘭




    意を決し、四阿の垂れ幕をくぐった夕鈴姫。
    ……暗い闇の中に星明かりは届かず、目が慣れない。

    やはり誰も居ないのでは?

    そんな疑問が、ふと頭をよぎる。
    垂れ幕の端がふぁさりと四阿の床に落ちたと同時に……
    彼女の腕が何者かに引き寄せられた。

    「きゃあ、、、(は、ンっ!)」

    そのまま抱き締められて、
    柔らかな唇を唇で奪われ、彼女の悲鳴が掻き消された。

    バクバクと跳ね上がる心臓の音。
    暗闇にいまだ慣れぬ身には、不埒な暴挙になすすべがない。

    んぅぅ…

    息苦しさと恐怖にバタバタと暴れるも硬い板床に縫いとめられて
    執拗に口腔を蹂躙された。


    熱い舌先が彼女の歯列を這う……

    誰とも見分けられぬ闇の中での、口付けは終わりが見えない。
    このまま永遠に続くのかと思うほど。

    ―――油断した。
    悔しくて、無性に腹が立った。
    自分にも、この男にも。

    夕鈴のささやかな抵抗は、ますます戒めがキツクなるばかりで。

    抱き締められた腕の中から逃げ出そうと試みるも…
    失敗し、落胆して……

    夕鈴は不意打ちの口付けの苦しさに涙がこみ上げた。
    抗うも全てが徒労に終る。

    口付けに翻弄される…
    荒々しい口付けに……

    ふぁ…ンっ…

    っ!





    ……
    ………




    どれくらいそうしていたのだろうか?

    夕鈴姫が抵抗を諦めた頃…
    長い戒めは始まりと同じように唐突に終わった。

    ぱたりと床に彼女の腕が投げ出された。
    もう……抵抗する気さえおきない。

    四阿の中、重い沈黙が流れた。









    「夕鈴……私です。
    黎翔です」

    夕鈴をしっかりと抱き締め、
    耳朶に抑えきれない恋の熱と甘さで囁く黎翔。

    「……黎翔さま?
    なぜ、こんな……酷いこと」

    長い抵抗の末、彼に動くことさえ出来ないほど翻弄された夕鈴姫。
    唇を奪った人物が、恋しい黎翔王だったことに驚いた。

    ……思考さえも奪われて、未だ混乱する夕鈴。
    乱れた裳裾から白い太腿が悩まし気に露わになっていることにも気が付かない。

    「すまない。
    怖い思いをさせたね。
    君に逢えて嬉しくて
    自分を抑えられなかった」

    闇に仄かに浮かぶ
    白い胸と細い喉が、粗く上下する。

    乱れた長い髪が、はちみつ色の河の流れを作り床に光る。

    彼女の咎めるような強い眼差しも、
    自分に翻弄されて乱れた姿も、
    すべてが愛らしく麗しい。

    昼間の他人行儀ではない。
    黎翔の知るロブ・ノールの愛しく気高い彼女だった。

    「驚かせてごめん」

    黎翔は、やさしく床から引き起こし彼女を胸の中に抱きしめなおした。
    腕の中に長く求めていた愛しい彼女の温もりがあった。

    とくん。とくん。とくん。
    脈打つ温かな血潮の音。

    彼は、ようやく会えた愛しい女性(ひと)に
    髪に、額に、瞼に、優しく口付けを贈った。

    先ほどまで、あれほど抵抗していた夕鈴は
    黎翔と知ると
    口付けの贈り物を優しく静かに受け止めてくれた。

    口付けを贈る度に、初々しくも微かに震える彼女に
    愛しさがこみ上げてくる。



    優しく微笑む黎翔は、いつになく上機嫌だった。
    場所も忘れ、時も忘れ、ただ彼女しか見えない。
    一人の恋する男として、彼女のすべてを感じていたかった。

    「……貴女にお逢いしたかった。
    夕鈴姫……愛しております」

    「私が愛する人は唯(ただ)一人。
    貴女しかいない可愛い女(ひと)」

    「……黎翔さま。
    お約束が違います。
    私は、ロプノールのまぼろし「幻などではない!」」

    「貴女は、ここに居る。
    ここに、こうして触れることができる」

    んっ!

    再び、奪われた唇は、先ほどの荒々しさではなく
    夕鈴を甘やかすように彼女の心の頑なさを甘く蕩かすものだった。

    …ぁ。

    「夕鈴。
    もう一度言う。
    私の妻になってくれ」






    自分を唯一、愛するという男に熱く愛を乞われたプロポーズの言葉を
    夕鈴は甘い至福(とき)の中で、ぼんやりと聞いた。


    その言葉は風のよう。

    遠い麗しのロプ・ノールの湖面を吹く風のようだと彼女は思った。
    決して求めてはならぬ愛しい風。

    でも心は求めずにいられない。
    ーーーーーー好きで好きで大好きで。


    とても







    ……切なかった。



    ……続く

    2017年03月13日 改訂
    2013年09月27日 初稿
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