花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【短編】プロローグ『緋色の衣 ー兆しー』

    【長編】『緋色の衣』の前エピソードになります。

    謎めいた女長の職業は、占い師。
    先見の目を持つ彼女が何も知らなかったはずが無い。

    某所で書いていたお話を纏めて、加筆修正したものです。
    すでに読んでいる方には、スミマセン。

    『緋色の衣』

    踊り子・夕鈴と流れの民の女長
    【兆し】


    雪解けの大地が覗く、春間近の森
    まだ冬支度のくすんだ針葉樹の森に幌つきの荷馬車が、鞭の音も高く疾走する。


    牝馬(ひんば)の嘶(いなな)きが静寂の森に響く
    黄昏時の琥珀の空。

    鞭をふるう若き御者に、馬車の中から少女が声を掛けた。

    幌から出た姿は、一目で流れの民と分かるいでたち
    薄い金茶の長い髪を、後ろで一つの三つあみにした
    はしばみ色の大きな瞳の少女は、大きな声で御者に話しかけた。

    「この先に開けた土地があると長様が言っているわ」
    「今夜は、そこで野営をしましょうと・・・聞こえた?」

    『分かったよ、了解!!!』
    『そう長に伝えてくれ!!!』

    「分かった。」

    すぐに馬車の中に消えた少女を確かめ、
    若い御者はますます馬車を急がせる。

    もうすぐ夜が来る。
    こんな暗い森には、様々な生き物がハンターとして人間を狙う。

    早くたどり着いて、野営の準備をせねばならない。
    風のように飛ばす馬車に緑の木々も流れては消える残像を残し
    新たな道を作り出す。

    的確に御す馬車はほどなく開けた長の指定した野営の場所に着いたのだった。








    月と狩猟の化身が通る

    野営の明かりを取り巻く森の狼たち

    この焚き火は、命の火

    一晩中、寝ずの番をせねばならない。

    赤々と燃える焚き火に小枝をくべながら

    夕鈴は、森に開けた空を見上げる。

    漆黒の空に瞬く美しい星空。

    降り注ぐような星を飽きずに見つめる。

    いつの間にか、寝ていたはずの長が焚き火の向うで夕鈴を見つめていた。

    爆(は)ぜる焚き火の向うで、長の黒曜石の瞳が見つめる・・・

    夜を写しとったような瞳。
    占いを家業としている長は過去と未来を見通す目を持っているといわれていた。
    神秘的なその瞳に、魅入られたように夕鈴は長の瞳を見つめていた。

    野営をしている針葉樹の森。

    その中の切り払われた開放的空間のはずなのに・・・・
    長に、見つめられていると急に手狭に感じてしまう。

    言葉も出ない、不思議な時間。
    急に時がゆっくりと進む。

    年齢が分からない落ち着いた声で、長が夕鈴に話しかけた。

    『寝ずの番御苦労様です。夕鈴。』

    「どうしたのですか?」

    『貴女と少しお話がしたくて・・・・』

    長は爆(は)ぜる焚(た)き火の立ちのぼる様(さま)を辿り、その瞳を満天の星空へと向けた。

    『今夜は、綺麗な星空なのですね。』

    「本当に美しいです。」

    瞬く星を見つめながら、
    長は静寂を脅(おびや)かさないように静かに過去を語りだす。

    『・・・・・・・。』

    『貴女と初めてあった時もこのような美しい夜でした。』

    『貴女と青慎を見つけた夜』

    『まだ赤子だったの青慎を抱きかかえて、貴女は私たちの前に現れた。』

    『私たちの家族になった。』

    「あの時は、子供でしたから必死だったのです。」

    『・・・・そうでしたね。』




    長は沈黙し、再び夕鈴を見つめた。

    「・・・・・・・?」











    『夢をみました。』
    『貴女の夢を・・・』





    『いずれ貴女は、私たち家族と離れ、幸せになることでしょう。』

    『困難のある幸せでしょう。きっと貴女は、迷うはず』

    『その時には、自分の心に素直になるのです。』

    「長・・・・それは。」
    (占なのですか?・・・・・私の未来なのですか?それは、いつ???)

    言葉に出来ない言葉を読み取り、長が小さく頭(かぶり)を振る

    『私は、夢を見ただけ・・・・』

    『そして夢に従い、貴女に今伝えなくてはならないと思っただけ』

    『夢ですが、貴女は夢の中で幸せそうに笑っていました。』

    『きっと貴女は幸せになる』

    『夢の未来、貴女の幸せな時が必ず訪れます。』

    『アレが、ただの夢でないことは私がよく知っています。』

    『伝えましたからね、夕鈴。』


    『おやすみなさい、夕鈴』

    「・・・・・・・おやすみなさい、長。」

    そう言って再び横になった長はすぐに寝入ってしまった。

    星が瞬く、北へ星が流れた。
    春まだ遠い針葉樹の森。

    長の夢占の言葉は、次の日の朝ガタガタと揺れる馬車で
    寝ずの番の疲れで熟睡した夕鈴の脳裏から一瞬でわすれてしまったという。

    馬車は進む。
    北の大地へと

    『白陽国の国主の在位を祝う式典』にあわせ
    興行するために・・・・

    そこで、夕鈴の運命が待っているとも知らずに
    眠る彼女を乗せた流れの民の馬車は進む。

    彼女に彼を巡りあわせるために。


    【兆しー完ー】





    2013年
    09月17日
    08:34
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    1340:管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    2013.09.18 20:50 # [EDIT] 返信
    1341:管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    2013.09.18 20:54 # [EDIT] 返信
    1342:瑞希さん 2013.09.18. 拍手コメントありがとうございました。

    見ましたの印v-344

    もちろんさっぱり分かっておりませんでした。

    ご指摘ありがとうございます。

    早速直してみました。

    確かに絶句ですよね。v-356

    2013.09.18 21:00 さくらぱん #- URL[EDIT] 返信
    1343:OCOさん 2013/09/18 SNSコメントありがとうございます。

    見ましたの印v-344

    ところどころの長のキャラ…
    なんとなく気に入ってます。

    ここから始まる物語。

    今度は幕間かな~


    2013年
    09月17日
    22:10

    2013.09.18 21:02 さくらぱん #- URL[EDIT] 返信

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