花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【中編】本誌設定『雷雨2』

    昨日の続き。
    本誌設定ですが、濡れた陛下は、妙に艶っぽくなりました。
    いつものようにいつものごとく見切り発車で作っております。
    いつもより、うにゃうにゃと余計なタネが進行の邪魔をしています。
    「雷雨」続いてます。
    早く、雨が止まないかなと思います。


                       ◆◇◆
    陛下の端正な顔立ちに張り付く ぬばたまの前髪。
    雨で張り付く前髪から雫がぽたぽたと、陛下の頬を伝い床へと落ちる。

    雨に洗われ、彫りの深い陛下の男性的な顔だち。
    自然と艶のあるそのしぐさ。

    陛下は、無造作に雨の雫を手で拭いながら、夕鈴に話しかけた。

    『君が自室に居ないと、君の侍女から連絡があった。』

    『何かあったのかと、心配して探していたんだが……
    こんな所にいるとは。』

    『突然の雨で、戻るに戻れなかったんだね。』

    『とにかく君が無事でよかった。』

    陛下は、そう言って夕鈴に優しく微笑んだ。

    陛下の深い藍色の衣からも大粒の雨の雫が滴り落ちる。
    四阿の軒下に陛下の周囲だけ、濡れて色を変えていた。

    陛下は、この土砂降りの雨の中を夕鈴を探していたのだろう。

    夕鈴は申し訳なくて、四阿に出来た陛下の水溜りをジッと見つめた。
    陛下の濡れた衣をツンと掴む。

    「ごめんなさい。 ……ご心配をおかけしました。」

    小さく微かな夕鈴の謝罪の声は、雨の音に消されることなく陛下に届いた。

    大きな陛下の手が、くしゃりと夕鈴の頭を撫でる。

    『今度から気をつけてね。』

    『君は、僕の唯一の妃なんだから……』

    『君が居ないと、皆が心配するんだ。』

    『……特に、僕がね。』

    ーーーー!!!

    はっとして夕鈴が視線を上げると、
    至近距離で優しく微笑む陛下の笑顔。

    ほっとしたようなその顔に、本当に心配をかけたのだと
    改めて夕鈴は申し訳なく思った。

    「……ごめんなさい。」

    眉をへの字に下げて、改めて謝罪する。

    『もう、いいよ。君が無事なら。』

    綺麗な紅の瞳が、優しく夕鈴を見つめた。
    いつも包み込むような陛下のまなざし。
    そのまなざしに、どれだけ夕鈴は救われてきたことだろう。

    夕鈴の慣れない後宮での暮らしを気遣う陛下。

    育ってきた環境も境遇もまったく違う二人が出会った奇跡。
    こんな仕事を父親が持ってこなければ、出会うことさえなかったであろう。

    ただの雇用主とバイトの関係であっても
    平凡な市井の娘である私が、陛下の隣に居る不思議。

    そんな自分を気遣い、雨の中探しに来てくれた優しい国王を
    いつの間にか夕鈴は、好きになっていた。

    身分違いの叶わない恋だと分かっていても、心は素直に傾いていく。

    雨の音に遮断されて、今は陛下と二人きり……
    なんとなく言葉もなく二人、空を見上げた。





    『……雨止まないね。』

    ポツリ……陛下が呟く。

    その横顔に、夕鈴はドキリとした。
    至高の存在としてのこの国の王でもなく……
    演技中の狼陛下でもなく……
    小犬のような陛下でもない……

    雨に濡れた黎翔という優しい個人。

    かい間見えたこの人は、なんて儚く見えるのだろうか。
    雨に打たれたこの人を今、なんて身近に感じられるのだろうか。

    きっと王という重責は、私が思っているのよりも重いのだろう。
    いつも偽りの仮面を被り、王として頑張っている隣に佇むあなたに
    そっと、エールを贈りたくて……
    「ここに私はおりますよ。
    ずっとあなたの味方です。」
    そう伝えたくて、でも言えなくて……

    所在なさげに下ろしていただけの陛下の手を、
    そっと夕鈴は握り締めた。

    「……雨止まないですね。」

    隣にいる陛下がこっちを振り向いたようだったが、
    夕鈴は気付かないふりをして、天から降る雨を見ていた。

    陛下が、再び呟く。

    『……はやく、止まないかな。』

    「…………きっともうすぐ止みますよ。」

    「どんなに激しい雷雨でも、止まない雨はないのですから……」

    雨の音を聞きながら、ほんの少しだけ
    先ほどよりも温かくなった陛下の手のぬくもり。

    伝えたい想いを伝えられず……だけど伝えたくて。
    ずっとあなたの手を握りしめる。

    ふと気付いたら、陛下に握り直されて、
    私の手は陛下の大きな手に包まれていた。

    陛下の温かなぬくもりを感じながら
    夕鈴は、四阿で陛下と雨の止むのを待つ。

    夕鈴は、ほんの少し……いつもより陛下を身近に感じていて。

    雨の音と雨の匂いと陛下のぬくもり。
    ささやかだけど嬉しいこと『陛下と二人だけの雨宿り』

    夕鈴は、小さな幸せを感じていた。


    ・・・・続く


    2013年
    07月19日
    10:41
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    2013.07.25 02:05 # [EDIT] 返信
    1036:らっこさん 7/21 拍手コメントありがとうございます。

    見ましたの印v-344

    小さな幸せがいっぱいで、大きい幸せになれたらと思います。

    2013.07.25 12:44 さくらぱん #- URL[EDIT] 返信

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