花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【短編】『雪見草ーゆきみぐさー』某白友様贈答品

    白い白い純白の花は、五月の陽光に雪のように眩しく輝いて
    零れ咲いていた。
    風にそよぐ(空木ーウツギー)の白い花。

    可愛らしいその花の小道を夕鈴と二人そぞろ歩く…

    低木の愛らしいその花を、見下ろすように愛でながら散歩すると、この先に小川に面した四荷があった。

    匂いたつような、艶やかな白。

    丸い柔らかな明るい色をした若葉も、とてもかわいらしい空木の花は、別名『雪見草ーゆきみぐさー』とも呼ばれていた。

    零れ落ちるばかりの純白の花は、見た目が雪のよう。
    遠目から耀くばかりの新雪を冠したような枝ぶり

    風にそよぐ乙女のような初々しさ
    まるで、穢れない君のようなこの花は・・・・

    ・・・白陽国では、特別神聖視されてきた。

    豊穣の女神の使い花
    豊作の吉凶を占う大切な花とされてきた。

    今年は、雪を被ったような満開の枝振り
    風に吹かれてそよぐ姿は、とても風情があり、
    本当に季節外れの雪を思わせるようだった。

    小川の四荷の長椅子に寝そべる黎翔
    このところ蒸し暑くなった初夏の陽射しを避けて、
    夕鈴は、黎翔に膝枕をしてあげた。

    政務に疲れたしばしの癒し・・・・
    いつの頃からか、夕鈴の膝は、黎翔の指定席となっていた。

    泰山木(たいさんぼく)の大きな葉から燦々と日差しが降り注ぐ。
    大きなぽってりとした白い花から甘い香りが漂う。
    重なる葉の天然の日よけで、弱められた日差しは、ちょうどいい木陰を作っていた。
    爽やかな新緑の風。

    ―黎翔は、零れ落ちそうな『雪見草』を見つめて呟く。

    『今年も、豊作だね。民も国も豊かになれる』

    『ーー今年も、戦を起こさずにすむ。』

    いささか物騒な独り言。
    だけど、国を守る黎翔にとっては、大事な心配事。

    「陛下何か言いましたか!?」

    うとうとしていた夕鈴は、黎翔の独り言を聞き逃したのか、
    聞き返したが、黎翔は穏やかに微笑むばかり…

    (もしも、不作の年に、食料不足になれば・・・私は、国を守る為に、戦に出なければならないかもしれない。豊作であれば、君にこの国が戦の色に染まるのを見せなくてすむ。)
    胸に秘めた黎翔の秘密。

    (いつだって、きみのことを愛してる。
    君が安全に住める国
    戦など心配しなくてすむ豊かな国を早くつくらねば…)

    今にも花の香りが匂ってきそうに、枝をおおって咲きこぼれる小花。

    満開に咲き綻ぶ『雪見草』を背に、不思議そうに小首を傾げて黎翔を見つめるハシバミ色の愛しい人。

    黎翔は、金茶の髪の頭(こうべ)を捉えて、夕鈴を引き寄せた。
    柔らかなピンク色の唇に口付ける。

    ひどく昔ふうで古風な気持ちになる…
    かすれ気味の黎翔の誓いの言葉…

    『君を守るよ。』

    憂いを含んだ瞳の奥に、王としての責務と苦悩。

    平和が約束されても、もしもの想定は頭から抜けない。

    切ない口付けに、唇を塞がれた夕鈴。
    ふだんと様子の異なる黎翔の様子に黙って甘い口付けを受けた。

    ーせめて今だけは何も考えず、愛する人の口付けを味わっていたい―

    甘く香る5月の四荷

    もうすぐ恵みの梅雨の季節

    満開の花が零れ落ちる木陰で、二人つかの間の幸せを得る。
    未来の幸せを予感させる木の傍で、白く輝くこの瞬間の幸せを噛みしめる…
    甘い口付けの雨に打たれながら、
    小川のせせらぎの音だけが、時を感じさせるのだった・・・


    2013年
    05月27日
    16:00

    Sana様贈答品
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    2013.05.31 02:52 # [EDIT] 返信

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