花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    完【長編】本誌設定『甘やかな毒9』※30000hit達成記念

    ・・・続きです。

    陛下が明かした衝撃の事実に呆然とする夕鈴。

    「・・・・・・・・・っっっ。」

    『・・・・・・・・・・夕鈴っ!!!!』

    ずるずると、陛下の衣を掴みながら・・・・・床にへたり込む。
    その身体を陛下が支えた。

    「あの蛇が・・・・む・・・どく。・・・・・・無毒。」

    『夕鈴、大丈夫!?』

    呆然自失の夕鈴は、はしばみ色の瞳で、陛下の顔を見つめたまま
    信じられないという顔をしていた。

    「では、どうして陛下は倒れたのですか・・・」

    ぽつりと呟く夕鈴に、黎翔は決まり悪そうに答えた。

    『君が蛇に咬まれそうになって、とっさに庇った時に
    足元が滑り頭を打った。  脳震盪を起こしていたんだね。』

    「では、蛇の毒ではないんですね。」

    『先ほどから、そうだと言っているんだが・・・・』

    黎翔は、苦笑してそう答えた。
    その言葉がきっかけだったように、緊張の糸がぶつりと切れた夕鈴は、
    子供のように泣きじゃくり始めた。

    泣きながら、黎翔に訴える。

    「・・・陛下が私を庇って、死んでしまうのかと思いました。」
    「本当に、心配したんです。」

    溢れる涙を止められず、夕鈴はぽろぽろと大粒の涙を零す。
    しゃくりあげる声が声にならない。
    顔を真っ赤にしてそう答えた。

    『李順や武官・侍女達、皆から聞いた。
    ・・・・夕鈴が必死で僕のことを助けようとしていたことを。』

    『夕鈴・・・ありがとう。』

    「てっきり、私は蛇の毒で陛下が倒れられたのかと・・・・」
    「だから、助けようと・・・・」

    「必死だったんです。」

    『うん。・・・・分かっている。夕鈴、ありがとう。』

    泣きじゃくる夕鈴を柔らかく抱きしめて、嬉しさを隠しきれない黎翔。
    ニコニコと笑顔が零れた。

    きっと、この王宮で、王を心配する人々の中、
    たった一人 夕鈴だけが、黎翔という個人を心配してくれていた。

    その事が黎翔は、とても嬉しかった。

    侍医が来て、この傷を初めて見たときの黎翔の驚き。
    腕を縛っていた彼女の衣。
    傷口に残った彼女の口紅の色。
    床に残った血だまり。
    李順の証言。

    そのどれもが、黎翔を助けようとした彼女の行動の痕。
    黎翔を心から救おうとした夕鈴の真心が嬉しかった。

    泣きじゃくる彼女が、愛おしい。
    抱きしめながら、こみ上げてくる嬉しさを隠し切れない黎翔。
    この腕の中のぬくもりが愛おしかった。

    そのうちに、少し落ち着いてきたのか、泣きじゃくっていた夕鈴が
    今度は、青ざめ始めた。

    「どうしよう・・・・知らずに、妃の衣を汚して、袖を破いてしまいました。」
    「・・・・また、借金が追加されちゃう・・・・。」

    今度は、別な涙を零し始める夕鈴。

    『大丈夫だよ。今回は、僕を助ける為だったのだもの。』
    『僕から、李順に話しておくよ。』

    借金の追加を本気で心配している夕鈴は、本当に顔色が悪かった。

    「そもそも・・・衣を破る原因を作ったのは、陛下です。」

    夕鈴は、今度は怒り出す!!!
    怒ったことで、少し元気が出たのかはしばみ色の瞳に力がこもる。

    「あのまま・・・私が蛇に咬まれていたらこんな事態にならなかったんです。」
    「陛下は、この国の王なのですから、バイトを庇う必要はないはずです!!!」

    『それは違うよ、 夕鈴。』
    『あれが、適切な判断だ。』
    『私は大抵の毒に、免疫があるし、君は毒に慣れていない。』
    『だから、アレがベストな選択だった。』

    「だからって・・・・だからって・・・・バイトを庇う理由になりません!!!」

    真っ赤な顔で怒る君が、愛しくて可愛い。
    怒っても、泣いても 君は、可愛い。

    怒る夕鈴の言葉を
    心から心配してくれた君の言葉が、ーーーーーーー嬉しかった。

    甘んじて怒られよう、君に。
    抱きしめながら、黎翔は夕鈴の言葉を喜びとして聞いていた。






    どれくらいそうしていたのだろうか。

    「・・・・もう、心配させないで下さい。」

    黙り込んだ夕鈴が、ポツリとそう呟いた。
    その言葉に、黎翔は夕鈴を見つめた。
    本気で心配しているはしばみ色の瞳が綺麗だった。

    『ごめんね。心配かけて・・・・』
    『助けてくれて、ありがとう、夕鈴。』

    「陛下が、無事で良かった。」

    ようやく笑顔を取り戻した夕鈴が、心からの笑顔で黎翔に応えた。

    大輪の花が開くような笑顔を向けられた黎翔。
    とても夕鈴が眩しく感じた。

    黎翔の心がドキンと大きく跳ねあがる。
    甘い微熱が止まらない。
     
    指先まで、身体が温かい。

    (君が好きだ。)

    黎翔の心に、恋の熱が燈る。



    床にへたり込んだままでは、二人とも身体に悪い。

    『夕鈴、とりあえず長椅子にすわろうか・・・・』
    黎翔が先に立ち上がり、夕鈴に手を差し伸べる。

    ところが・・・・夕鈴は、その手を取らない。
    眉をへの字にして、黎翔に涙目で訴える。

    「陛下・・・・今頃、腰が抜けました・・・・・立ち上がれません。」

    情けない声でそう告げた。
    破顔する黎翔。

    「陛下、笑わないで下さい!!!!」

    腰の抜けた夕鈴を抱えあげて、長椅子に向かう黎翔。
    明るい笑い声が響く。

    いつもの日常が戻り、事件は終わりを告げた。





    ーーーーーーーーーーーーーーーーだけど。





    君がくれた真心。

    僕を巡るこの微熱はきっと消えない。

    僕の心臓に消えない熱を残した夕鈴。

    僕を包む温かな愛。

    心を溶かす 

    【甘やかな恋】 として…


    ―【甘やかな毒】完―

    2013年
    04月18日
    13:54
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