花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    2016年03月 の記事一覧

    0323 本日の呟き   ご報告

    おはようございます。
    さくらぱんです。

    いつもご訪問・拍手応援をありがとうございます。
    各館のカキコミ、とても嬉しく拝見しています。

    昨日、長女の合否の発表があり、
    無事に北陸の新潟大・法学部に合格しました。
    地元の進学高に早々と決まった次女も含め
    コレで三人とも行き先が決まり、ひとやま越えて
    ようやく一安心しました。

    これまで沢山の応援と
    温かな励ましの言葉をありがとうございました。


    写真は、一番心配していた長女の合格発表の日の蔵王です。
    祝福するかのような美しい雄姿を見せてくれていました。

    四月上旬まで、
    子供たち三人の入学準備で慌しく更新もままならない状態が続きます。
    申し訳ございませんが……ご了承ください。

    さくらぱん

    DSCN4317-20160322.jpg
    2016.02.22.撮影


    DSCN4316-20160322.jpg
    2016.02.22.撮影


    スマホについて
    先日の日記に、沢山のコメントをありがとうございます。
    住所録・どうにかなりました。
    その他諸々は、四苦八苦の日々です。
    頑張ります。

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    0321  本日の呟き  とうとう……

    ゲストの皆様
    今晩は
    さくらぱんです。

    更新できないのに、ご来訪・拍手・コメントを、いつもありがとうございます。
    いつも管理画面に入るのを楽しみにしています。





    さて。

    心の準備も無いまま……
    一昨日から、スマホデビューです。

    そして……他社乗り換えのふっるーーーーーーーーーいガラケー機種だったので、互換性が無く……
    電話帳を移せなかった。
    コレ痛い。痛い。痛い・・・・メッチャ泣きたい。

    電話帳現在、家族分しか入ってなく
    三件です。

    必死で、手入れするしかないのですが……
    百件近いの入れる暇ないーー

    しかもスマホ初心者ですから、パニクっています。
    設定?
    指紋認証?なにそれ?
    取り説は、どこ?

    慣れるより、慣れろですね。
    本とですね。

    今まで、ガラケー更新できていましたが・・・
    しばらく端末更新できなくなっちゃいました。
    慣れるまで、待っててくださいね。

    そんなわけで
    しばらくPCのみで。

    ご迷惑おかけします。
    更新お待ちくださいね。

    2016.03.21.さくらぱん


    【白友&ブロ友さんへ業務連絡】
    上記理由で、auの虹魚のアドレスが使えなくなりました。
    電話番号は引き継いでますので、通話はOKです。

    新しいi虹魚アドレスは、docomoさんです。
    ただちょっとだけ変えています。

    しばらく、「花の四阿」ポストに、メールご連絡をお願いいたします。
    そちらが確実です。

    突然、件名さくらぱんのアドレスお知らせ通知が来ましたら、ご確認&変更してくださいね。

    さくらぱん

    【長編】『楼蘭』―再会編―48  ※要注意!古代パラレル

    楼蘭





    謁見の間の中央を大勢の出迎えの人々が見守る中、長い裳裾をひいて
    夕鈴姫が父王の玉座のもとへと、静かに進んでいく。

    幾つも重ねた薄紅色のベールで花の顔(かんばせ)を隠し、
    控えめな襟ぐりや袖のデザインながらも、婚期の女性らしい豊かな胸と折れそうな細いウエストを強調させる
    白銀の錦の幅広の帯で引き締め、華奢で女性らしい豊かな曲線美を際立たせた謁見の衣装
    薄絹の薔薇色の衣装が、チラリと垣間見える彼女の白い肌を引き立たせていた。

    華奢な手首には、細い金細工の輪が連なる
    清らかな音は彼女の足元からも、一歩ずつ歩むごとに涼やかに聞こえた。

    薄紅色のベール越しに、夕鈴姫の艶やかな金茶の髪が揺れ動く
    微笑みの弧を描く明るく艶やかな薔薇色の唇が、歩みを止めぬ風にめくれベール越しに垣間見えた。

    夕鈴姫の柔らかで優美な微笑み。
    人々を魅了する楼蘭王女の微笑み。

    あれほどまでに焦がれ、毎夜夢にまで見ていた愛しい彼女の姿。
    なんて近くて遠い存在なのだろうか?

    今、目の前にいるのに触れ合えない。

    黎翔には、触れられないこの距離がもどかしかった。
    夢ではない本物の彼女の美しさに息を呑む。

    黎翔はドキドキ……と胸の動悸が早くて苦しい。
    呼吸さえ、ままならない苦しい時間が過ぎていく。





    ――――あの夜。

    自分だけを見つめてくれた彼女の美しい瞳。
    今は幾重ものベールに隠され見せない、その瞳。

    黎翔は、もう一度自分だけを見つめる
    夢見るような憂いを帯びたハシバミ色の瞳が見たかった。

    数日前の鮮やかな夢を思い出す。
    甘やかな口付けの夢の逢瀬。

    彼の腕の中で夕鈴姫は
    ――――花綻ぶような輝く笑顔で、微笑んでくれた。

    黎翔の心は夕鈴姫へと駆ける。

    彼女をここから連れ去り
    その花の顔(かんばせ)を隠すベールを剥ぎ取り

    思う存分、彼女の柔らかな唇に唇を重ね口付けたい。
    あの日のように……

    と、同時に夕鈴姫との出立の約束を思い出していた。

    「黎翔様。
    お願いがあります。

    ここで見聞きしたことは、お忘れください。
    私は、ロブ・ノールの幻(まぼろし)なのです」

    その約束を自分は守らなくては、ならない。
    彼女の為に、自分の為に。

    約束は約束。

    それでも燃え盛る恋の焔は、止めることは出来ない。
    夕鈴姫のその姿を、熱い想いで見守る黎翔。

    ロブ・ノール湖の離宮を出立して、彼女と別れてから一ヶ月も経ってはいないのに……
    それでも姫に恋する黎翔には、ずいぶんと逢っていないように感じられた。

    抱き締めたい。
    再会の喜びを、夕鈴姫と分かち合いたい。

    ひときわ熱い視線を送る黎翔は、彼女を熱心に見つめるのだった。

    ……再会編・49へ 続く


    2016.03.21.改訂
    2013.04.23.初稿 続きを読む

    【長編】『楼蘭』―再会編―47  ※要注意!古代パラレル

    楼蘭







    城を離れていた……
    この国の王女の帰還に、主だった貴族達が謁見の間に集まった。
    皆、夕鈴姫の成長を、ひとめ見ようと、自然に集まったのである。


    朗々とした夕鈴姫の到着を知らせる
    先触れの声が、謁見の間に響き渡る。

    ……と同時に、重厚な作りの謁見の間の中央の大扉が
    音も立てずに少しずつ大きく開いていった。


    薄暗い室内に目が慣れていた人々は、真昼の陽光の外の輝きに、誰もが目が眩んだ。

    ――――その眩い光の中に夕鈴姫は居た。

    人々が固唾を呑んで、見守る中
    静々と姫は、謁見の間の中央へと、歩を進める。

    ぴりり……とした人々の期待と緊張感、一斉に自分に集まる様々な視線を感じて
    夕鈴は、足が震えた。

    何も……考えるまい。
    ただ私は、父に挨拶しに来たのだ。

    背筋をピンと伸ばし、視線は真っ直ぐに……
    謁見の間の奥にいるであろう、父に久しぶりに会えることだけを
    彼女は考えた。

    会うのは、いつぶりだろう?
    なかなか会いに来てくれない父を、困らせる手紙を送ったこともあった。

    “父に、やっと会える”
    そう考えるだけで、夕鈴の心に勇気が湧いて
    自然と微笑みが浮かんだ。

    ひと足。
    ひと足。
    歩む……勇気が生まれた。

    静寂に包まれた謁見の間に、夕鈴の絹擦れる音だけがする。
    これだけの人々がこの場にいるというのに、話し声一つ、物音一つしない。

    皆の視線が、自分に注がれていることに、彼女は肌で感じていた。
    痛いほどの視線が彼女に突き刺さる。

    逃げ出したいのに
    ――逃げ出せない。

    見渡せば、長きに渡る楼蘭城の不在。
    昔なじみの見知った者は、少なかった。
    代わりに、目に付く漢帝国風の衣装。
    王宮内部にまで入り込む漢の役人に、夕鈴の緊張感が強まる。

    生まれ親しんだ温かな楼蘭王宮の名残は少なくて
    父王の苦労が忍ばれ、夕鈴は胸が締め付けられた。

    自分が城に居れば、少しでも父を慰められたのかもしれない
    という思いがしてならない。

    でも、夕鈴に残り少ない自由な時間をくれた父には
    彼女は深く感謝していた。

    きっと王宮では、監視のような帝国の目と耳が多くて
    自分は、伸び伸びと暮らせることなんて出来なかっただろう。

    王宮を去り、ロブ・ノールの湖に佇む離宮に隠れ暮らした年月。
    一時であっても、帝国の皇帝に嫁ぐ身を忘れられた。

    ロブ・ノールの離宮で、
    一生知ることは無いと思っていた、恋を知った。
    たとえ報われない恋と知っても、愛する心と ときめき を味わった。

    ――――そして彼女の楼蘭王女としての時間は、もうすぐ終わりを告げる。

    帰城すること。
    すなわち帝国への輿入れの日が迫るということ。
    チラリと、両脇の漢帝国の出迎えの者たちを見廻した時。










    ――――夕鈴に衝撃が走った。

    漢の武帝の使いである将軍の隣には、

    ロブ=ノールの離宮で、夕鈴が恋をした
    愛しい白陽国国王・珀黎翔王の姿があった。

    ……再会編・48へ 続




    2016.03.18.改訂
    2013.04.23.初稿
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    【長編】『楼蘭』―再会編―46  ※要注意!古代パラレル

    楼蘭





    流れる裳裾が、わずかな風に翻る 。

    ここは楼蘭王宮の夕鈴の自室。
    懐かしさよりも見知らぬ場所に迷い込んだような違和感に
    夕鈴は苦笑した。

    それだけ離宮で過ごした時間のほうが、長かったのだとということ。
    ただ単に、そう言うことなのだが……


     少しは懐かしさを感じるのは、やはり生まれ故郷だからなのだろうか?

    ロブ=ノール湖からの旅支度を解き、砂漠の砂埃を湯浴みで落とし、
    父王への帰城の挨拶をする為、準備を整えている夕鈴。

    この城には油断ならない漢の武帝の使者もいるという。
    きっと気の抜けない父王への挨拶となろう。
    謁見の間には、その使者も自分を待ち構えているに違いない。

    表情を読み取れ難くするため、幾重にも重ねたベールを夕鈴は女官に指示した。
    私が、本当は漢帝国へと嫁ぎたくないなとど、武帝の使者に気取られてはならない。
    変な噂を、武帝の耳に入れたくない。
    この婚約は破棄してはならないのだから。

    幸い私は、武帝の婚約者。
    主君の婚約者を、マジマジと直視する者も居ないだろう。

    婚約者のいる年頃の娘が、
    他所の男の目から顔を隠すのは普通のことだった。
    夕鈴が幾重にも重ねたベールで、顔を隠すのは使者に対して失礼ではないはずだ。

    蜻蛉の薄羽根のような薄紅色のベールを、幾つも重ねて夕鈴は豊かな表情を隠した。
    夕鈴からは良く見えるが、使者からは、これで夕鈴の表情を窺がい知ることは出来ないはず。

    少女だった頃と違う、女性らしいたおやかさと、優雅さを強調する衣装。
    少女から婚期の女性として成長した姿。
    武帝の婚約者として、楼蘭王国の王女としての存在感を、
    夕鈴は謁見の間に居る者、皆にアピールせねばならなかった。

    それが王宮へ帰城した最初の彼女の役割であり、仕事だった。

    “楼蘭の王女は、武帝との約束を忘れてはいない。
    楼蘭は、帝国との約束を破らない。
    夕鈴姫は漢帝国へ嫁ぐ意思があり”
    との意を夕鈴は、見える形で示さねばならない。

    儀式めいた【帰城の挨拶】
    そんなものは早く終わらせて、早く父と二人きりで話がしたかった。
    気兼ねなく話せるのは、深夜になってからなのだろうか?

    長椅子に座り、漢風の絹仕立ての小さな靴を女官に履かせてもらいながら、
    夕鈴はベールの内側で、そっと気重な溜め息をついた。

    窓から見える、涼やかな木陰も今の彼女を和ませない。
    はしばみ色の大きな瞳は暗く憂いた。
     
    ピリリと……総毛立つような嫌な緊張感が、夕鈴を妙に高ぶらせていた。


    ……再会編・47へ 続く





    2016.03.18.改訂
    2013.04.23.初稿
    続きを読む

    0317 本日の呟き

    :ゲストの皆様
    こんにちは
    さくらぱんです。

    更新が滞り、すみません。

    ご報告。

    昨日、次女の高校合格発表でした。
    無事、第一希望校に桜が咲きました。←一安心。
    そのまま制服作って……にわかに準備が慌しいです。

    明日は、三女の卒業式。
    やっと三人卒業です。
    感慨に浸る間もなく、今日も役場と銀行と学校……入学手続きに追われています。
    落ち着くのは、いつ?

    コメント&声援ありがとうございます。
    凄くPOWERを頂いています。

    今、すごくお絵かきしたい。したい。したい。
    更新をお待ちくださいね。

    さくらぱん

    DSCN0005-20160316.jpg


    【長編】『楼蘭』―夢逢瀬編―45  夕鈴SIDE 2 夢逢瀬編・完

    楼蘭




    ー夕鈴SIDE 2ー

    夕鈴!

    (黎翔さまっ!)

    呼ぶ声に見上げれば、
    切り裂かれて覗いた 真っ青な空

    どこまでも澄んだコバルトブルーに光る青空と眩しい太陽の光輪。
    差し込んだ眩しい天空の光から彼女に手を差し伸べる人影。

    「夕鈴っ!」

    夢の中で巨大な大鷲の鉤爪に囚われたまま、夕鈴は叫んだ。

    「……○○○○○さまっ!」

    確かに愛しい人の名を、呼んだはずなのに、
    その声は、まだ濃く残る闇に囚われて声にならない。

    無音の闇に、愛しい声だけが木霊する。

    「夕鈴!
    ……夕鈴!」

    「……黎翔様」

    涙ながらに諦めに似た落胆で夕鈴が呟いた声は、以外にも大きく木霊して……
    次の瞬間、パリリ……と、漆黒の闇が跡形もなく剥がれ落ち消えていた。

    闇に慣れた目に、眩しい光の洪水。
    眩しくて目がくらむ。

    目を開けていられなくて、彼女は目を瞑った。











    どれくらい、そうしていたのだろう。
    目を開ければ……そこは暖かな見慣れた景色。

    穏やかで静かなロブ・ノールの岸辺。
    星明りが、湖面に光りを灯す星鏡の夜

    (温かい……)

    何時の間にか暖かい腕に包まれて、誰かの胸に抱かれていた。
    心安らぐその人の温もり……無言で髪を撫でられ指梳かれていた。

    静寂が心地良い。
    夕鈴は、この温もりを知っていた。

    先ほどの闇の冷たさや、恐怖も絶望も薄らいでいく。
    ……萎縮した心が、少しずつ緊張が解きほぐされていった。

    ただ……怖かった名残の涙だけが、夕鈴の頬をぽろぽろと零れ落ちた。

    「……夕鈴」

    耳朶に囁かれる、はじめて心響いた自分を呼ぶ甘美な声
    優しく抱かれ、耳朶に繰り返し告げられる

    「愛している」……と言う囁き。

    クラクラとほろ酔いながら、ゆっくりと……はしばみ色の瞳を開けば、
    暖かな焔の色の綺麗な瞳で見詰められていた。

    「黎翔様……」

    好きな人に抱かれていることを知り、頬染める夕鈴。
    安堵で温かな涙が零れた。

    啄ばみ繰り返される
    黎翔からの甘美な口付けは、どんな美酒よりもほろ酔う。


    (すき……
    私、黎翔様が好き……)


    忘れようとした恋心は、新たな涙を彼女にもたらす。

    星鏡に寄り添う恋人達は、運命を知る。

    逆らえぬ恋の運命。

    星々は祝福の光を贈った。

    「貴方が好き!」

    夢の中なら……
    こんなにも貴方に、素直になれるのに……

    黎翔からの甘い口付けに応え……熱い吐息を零す夕鈴と
    愛する夕鈴に酔う黎翔の
    対の翡翠の耳環(じかん)が仄かな光を放ちながら、
    輝いていたことを夕鈴は知らなかった。



                  ―夢逢瀬編・完―



    再会編・46へ 続く

    2016.03.15.改訂
    2012.11.16.初稿

    【長編】『楼蘭』―夢逢瀬編―44  夕鈴SIDE 1

    楼蘭




    ー夕鈴SIDE 1ー

    ああ……
    また、この夢……

    夕鈴は、苦しげに身を捩(よじ)り逃げようとするも。
    ……漆黒の暗闇に失墜する自分を、大鷲に変化した武帝が無情にも捕まえる。

    鋭い猛禽類の鉤爪は夕鈴の柔らかな皮膚を引き裂き、ゆるゆると鮮血が流れ落ちた…

    武帝の
    血も凍りつく、深淵の恐ろしい闇の眼差し
    この冷たい瞳から、私は逃れられぬのか!?
    交わされる冷たい口付けに、夕鈴の身体が大きく震えた。

    自らを、贄と差し出したあの日以来…

    繰り返し…繰り返し
    夕鈴の夜を苛む悪しき夢。






    ……諦(あきら)めの未来の自分。

    ――夕鈴!――

    いつものように深淵の闇に深く沈む
    自分に呼びかける。

    闇を切り裂く一条の強い光!
    温かな陽光にも似たその閃光。

    湧く希望のような自分を呼ぶ声。

    あの声は……





    ――――黎翔さまっ!







    溢れる涙が止まらない

    ~~っ!!!

    鉤爪に捕らわれ逃げられぬまま……
    夕鈴の片耳だけの翡翠の耳環(じかん)が
    暗闇の中、鮮やかな明るい緑に輝いていた。

    ……夢逢瀬編45  夕鈴SIDE 2へ続く。


    2016.03.14.改訂
    2012.11.16.初稿

    【長編】『楼蘭』―夢逢瀬編―43  黎翔SIDE

    楼蘭





    ―黎翔SIDE―

    滑らかな指どおりの良い綺麗な髪が、
    サラサラ……と、私の指先から零れ落ちる。

    いつの間にか私は、愛しい彼女を胸に抱き締め
    素直な美しい金茶の長い髪を指梳いていた。

    星影は、囁く……優しく穏やかな夜。
    ……腕の中に抱きしめた
    愛しい夕鈴との別れの夜の
    切なくも幸せな時間の再来。

    これは、たぶん夢なのだろう……
    黎翔は、“夢だ”と、直感で知った。

    だけど、なんて幸せな夢なのか。
    夢であっても彼女に、また会えることが嬉しい。

    繰り返し私は、彼女に甘く愛を囁く。
    自分の声が、見知らぬ者のように響いた。

    震えて……擦れる自分の声。
    愛に恐れ、愛を乞う。
    恋焦がれる青年そのものの私は、オウムのように愛を繰り返し
    愛しい夕鈴に愛を乞う。

    「愛しています、夕鈴。
    貴女を私の妻にしたい。
    どうか……是と。
    是と言ってほしい」

    静寂の星降る夜のロブ=ノール湖畔。
    幾万の星々が、星鏡のロブ=ノール湖に映しだされていた。

    言葉では、伝えきれない
    迸り滾る熱い気持ちを込めて
    夕鈴の柔らかな唇に
    何度も触れ、口付けた。

    黎翔から夕鈴への情熱の誓い。

    繰り返し、夕鈴の柔らかな唇に酔いしれ
    「愛している」……と伝えた。

    音も無く静かに流れ落ちる彼女の涙。
    頬に、瞼に、震える睫に口付けた。

    細い華奢な肩が、嗚咽に震える。
    私は、愛しくて切なくて、ギュッと強く彼女を抱き締めた。

    ますます泣き崩れる夕鈴。
    何も言わないけれど
    伝わったのは、王女としての重責と切ない思い。

    はしばみ色の瞳は涙に曇り、何も写さない。

    夕鈴……君は何を怖れる?

    繰り返し囁き口付けた、私の愛は空しく通過するだけなのか?

    その秘密を、私に明かして……
    君を縛る重責を取り除きたいんだ。

    諦めかけたとき……
    ようやく応えた夕鈴の言葉が、私の胸に突き刺さった。

    ――――私は、国の為に嫁がなければならない。
        
    ――――黎翔様、好きよ。

    ――――たぶん初めて、お会いしたときから。
          気づくのが、遅かったけど
          出会うのが遅すぎたけれど

    ――――貴方に恋してよかった。
          この想いを胸に秘めて、嫁ぐことができる。
          ありがとう

    ――――だから許して……      私の我侭を。
          貴方を、私の運命に巻き込みたくないの。


    ――――だからお願い。
          ぜんぶ忘れてください……      私のことを。

    ――――ぜんぶロプ=ノールの星鏡が見せた夢だと思って……
          私は、幻(まぼろし)なのよ。

           


    夕鈴、君を幻(まぼろし)などには、させない。
    忘れることなど、できない。

    君は、「私を好きだ」と言ってくれた。
    少しでも私に望みがあるのならば、私は諦めない。

    あと、少し……あと少しで、君の憂いの秘密が聞き出せる。
    もう少しなんだ……夕鈴。

    私を待っていてくれ!!!




    ――――――――夢だというのに、生々しい感触。
    伝わる微熱に、私の心は熱く乱される。

    抱きしめた君を離さない。
    離したりなどしない。

    別れの夜と違い。
    ――――夢では、熱く口付ける黎翔に、
    いつの間にか彼女も応え、たどたどしくも熱く口付けを交わす。




    二人の対の耳環(じかん)が
    熱い二人の鼓動にあわせて、呼び合い呼応するかのように
    鮮やかに熱く輝いていた。

    互いしか見えていない二人は、そのことに気づかなかった。


    ……夢逢瀬編44  夕鈴SIDEへ 続く。


    2016.03.14.改訂
    2012.11.16.初稿

    【長編】『楼蘭』―黎翔編―外伝 【砂漠の帳 2】

    楼蘭外伝 




    【砂漠の帳 さばくのとばり 2 】

    焚き火の焔を瞳に映し、夕鈴は老将軍に話しかけた。

    「ねえ、蒋(しょう) 将軍。
    こうして焚き火を囲みながら星空を見ていると
    あなたと初めて砂漠の夜営をした夜を思い出すわ。」

    「あの頃は……
    お母様も健在で
    お父様も、いつもにこやかで……」

    「そうでしたな。
    あれは、ずいぶんと昔のことになりますなぁ……」


    夕鈴の心は、遥か過去に遡り……
    幼き日の夜営の夜へと飛んでいく。

    確かあれは王宮から、ロブ=ノールの離宮へ
    はじめて旅した時の記憶。



    「はじめて見た何も無い砂漠に夕陽が沈んだ時。
    燃えあがるように真っ赤に染まる砂漠と空」

    「初めて過ごした夜の砂漠。
    満天の降るような星空に、感動して泣いたっけ……」

    「私には、初めての夜営だったけど。
    とても楽しかった。
    その頃が、きっと一番の幸せだったのね。

    それからすぐに戦が起こり、お父様は戦場へ向われた。
    お母様は…………」

    その先の言葉を切り、夕鈴は膝に顔を埋めた。
    彼女の小さく震える肩を、老将軍は優しく宥めた。




    しばらくして夕鈴は頭上の美しい星空を見上げた。


    「この続く星空の下に、お父様がいる。
    蒋(しょう) 将軍、貴方や、楼蘭の人々がいる……
    そう思うと、ロブ・ノールの離宮に、独りでも淋しくはなかった」

    「私はロブ・ノールの離宮から、
    東方の漢の後宮に、居を移すだけ」

    引き結んだ口元が、今の彼女の精一杯の強がりなのだろう。
    夕鈴は、隣の老将軍を見つめて、言葉を静かに紡いだ。

    「覚えておいて……蒋(しょう) 将軍。
    この続く星空の下に、私が居る事を」

    「お父様を頼みます。
    私に代わりに、楼蘭を
    父を守ってください……」

    ――――そして、この続く星空の道筋の下に、黎翔様も……

    見上げた星空に続く、天球の光る道筋。
    漆黒の宇宙に、煌く輝く星々が作る巨大な光の道は、
    はるか彼方、地平線の先まで続いていた。

    夕鈴は、頭上に輝く星を眺めながら、
    黎翔への熱い想いを封印すべく
    夕鈴は、そのはしばみ色の瞳を、ゆっくりと閉じるのだった。


                ー砂漠の帳 さばくのとばり・完-

    本編・夢逢瀬編43  黎翔SIDEへ 続く


    2016.03.10.改訂
    2012.11.15.初稿

    【長編】『楼蘭』―黎翔編―外伝 【砂漠の帳 1】

    楼蘭外伝 








    【砂漠の帳 さばくのとばり 1 】



    幾つもの星がざわめく 砂漠の夜に
    明々とオレンジ色の焚き火が灯る

    夕鈴姫のいる
    夜営する蒋(しょう) 将軍の部隊。

    部隊に守られるように華やかな緋色の女テントから
    焚き火に誘われるようにーーー旅衣装のうら若き夕鈴の姿。

    「蒋(しょう) 将軍」

    焚き火に近づいた夕鈴は、
    駱駝の乾燥した糞を燃やし
    明々と燃え盛る焔を見つめていた老将軍に話しかけた。

    「姫様。
    どうされました?」

    「なにもないわ。
    隣……いいかしら?」

    「こんなところで、よければ。
    御用件なら、テントまで伺いましたものを」

    「もう真夜中だし、侍女達も寝ているわ。
    起したくなかったし、将軍とお話したくて」

    「昔みたいに、焚き火を囲みながら
    あなたとお話がしたかったから……」

    膝を抱えて老将軍の隣に座った
    焚き火に照らされた夕鈴の顔は、子供のように無邪気に将軍を慕い……
    先の見えぬ不安の影は、色濃くその顔に滲み出ていた。

    蒋(しょう) 将軍にも、わが子同然の姫の様子に、胸が痛い。

    ささやかな幸せな夢に浸る年頃なのに ……
    それさえも彼女には許されない。

    それを思うと仕える楼蘭王の苦悩も分かり
    溜め息しかでてこなかった。

    明々と燃える焔を見つめながら、夕鈴は淡々と話す。

    「王都と王宮の様子は相変わらずなのですか?
    漢は私との約束を、きちんと守っておりますか?」

    「楼蘭を守る
    漢の駐屯地の衛兵は、いまだ我が物顔で町を闊歩。
    楼蘭を守る為と言っていますが最近は兵を増強しており、あれでは占領ですな」

    「王宮には、相変わらず漢の目と耳が送り込まれ続けています。
    王宮に着きましたら、言動にご注意ください。

    此度の使者は漢の将軍。
    下手な使者より扱いも悪いかと」

    「……それは何故?」

    「武帝直属の卓越された近衛を率いる武帝お気に入りの将軍と聞いております。
    その発言や決定は、武帝の決定に准じた扱いとか……

    それに年若い将軍ながら武と智に優れているとか。
    奴なら楼蘭王宮の見取り図など手元に無くとも、
    簡単に頭に叩き込むことでしょう」

    「それに、他国の間者や刺客も入り込みましょう……
    漢と楼蘭の婚姻は、西方諸国の今の関心。
    気に入らない諸国は、昔から多い。

    姫様も、十分にご注意ください。
    王宮にいる間は、この蒋(しょう)が命をかけてましても姫様をお守りいたします」

    父と同じ、年老いた将軍は、いつも夕鈴の心配をしてくれた。
    皺の刻まれた顔に、決意が漲る。

    心配してくれている……ただ、それだけで彼女の心は温かくなる。
    嬉しくて、少し涙が滲んだ。

    「ありがとう、蒋(しょう) 将軍。
    嬉しい言葉だけど私より、お父様を守ってほしいの。
    約束して!
    決して命を粗末にしてはいけないと……」

    「楼蘭の民は誰一人として、血を流してはいけない。
    私は、その為に武帝に嫁ぐのよ」

    毅然と胸を張る夕鈴の言葉は、
    民を守る優しさと強い決意に溢れ、一国の王女らしい言葉だった。

    早くからそれを求められ、強いられてきた言葉に彼女の運命の過酷さを改めて知る。

    「街の様子。
    王宮の様子は、よく分かりました。

    私からも、一度
    武帝に頼んでみます。
    漢軍が楼蘭の人々に、酷いことをしないように……と」

    焚き火の焔を見つめ続ける夕鈴の表情からは
    老将軍はその心を読み取れなかった。



    ……砂漠の帳 2へ 続く



    2016.06.10.改訂
    2012.11.15.初稿

    0309 本日の呟き

    皆様
    今晩は
    さくらぱんです

    心配していた次女は
    満面の笑みで帰ってきました。
    どうやら拍子抜けするぐらい楽勝だったらしいです…

    対象的に…
    淡々と長女の報告。

    やっぱり…な結果でした。

    素直に喜べない(-"-;)キマラナカッタ

    地獄の一週間、明後日から後半戦スタートです←

    週末まで、生きてるかしら?←すでにミイラ化

    【長編】『楼蘭』―黎翔編―42 ※要注意!古代パラレル 黎翔編・完

    楼蘭






    「そうか……
    夕鈴は、もう少し早く貴殿と会いたかったと……そう言っておったか。
    不憫な……」

    小さく呟いた比龍王の言葉は、
    誰に向けたものでも無く、父としての心情、本音。

    馬頭琴を傍らに置き、立ち上がり
    遥か遠くロブ=ノールに住む愛娘を思う。

    国の為とはいえ、運命に逆らえず好いた男の手を取れなかった……
    そのことに対して、父親として胸が痛い。
    沈痛な面持ちで比龍王は、湖にひろがる対岸を眺めた。

    ストゥーパ(仏塔)は、星空に濃い濃紺の影を落とし……
    対岸の家々には、温かなオレンジ色の灯りが幾つも灯る。
    夕鈴が守りたい……父王・比龍の治める幸せな楼蘭王国の風景。

    とても平和な楼蘭だが……
    それは夕鈴の犠牲あっての平和。

    漢帝国の手で、仮初めに守られている、うわべに過ぎない。
    夕鈴を漢の武帝に差し出したとしても、
    皇帝の気まぐれで、何時戦が起きたとしても不思議ではなかった。

    冷たい夜風が比龍を翻弄する。
    漢帝国という大きな嵐。

    その嵐に晒されて、果たして楼蘭王国はどうなるのか?
    娘は、どうなる?
    比龍は暗い瞳で、冴えた美しい星空を見ていた。

    その時、ストゥーパから西へと大きな美しい星が二つ流れた。
    楼蘭王国から、砂漠の西、白陽国へと……

    天啓のような……その光!

    かつて、ロブ=ノール湖で初めて出会った比龍王と藍鈴姫も
    数奇な運命に導かれ、結ばれた仲だった。
    そんな場所で、かつての自分と同じく、娘は黎翔と恋に落ちた。

    「これは天啓なのかも知れないな。
    なぁ……藍鈴!?」

    まだ遅くは無いのか?
    まだ間に合うのか?

    比龍の自問自答の答えは無く、星々が煌くのみだった。
    比龍王は、娘・夕鈴の運命の歯車が、大きく廻り始めたことを知る。

    運命を信じてみるか?

    瞑目して更に自問自答を繰り返したが、正しいと思える答えは出なかった。

    黎翔は星空を見上げる、比龍王の言葉を待った。

    こちらに背を向けているため、その表情は伺い知ることが出来ない。
    粘り強く老王の言葉を待つ。

    黎翔は、その背に滲む苦脳を読み取り
    同じ王として不安を抱いた。だが…もはや、ただじっと待つしかない。










    しばらくして比龍王は、夜空を見上げながらこう告げた。

    「……数日。
    あと数日で夕鈴は、この王宮に戻る」

    「時は巡り……
    運命は変わりゆくのだろう」

    「珀 黎翔国王殿。
    貴殿に娘の憂いを打ち明ける前に、私も娘に聞かねばならないことが出来た」

    「夕鈴が戻る。
    その後でいいだろうか?」

    「構いません。
    姫に出会えるのは私も嬉しい。
    感謝します、楼蘭王」

    そう言うと踵を返して、与えられた自室に戻る黎翔を
    比龍は、静かに見送った。
    比龍の心は、国王としての自分と父親としての自分がせめぎあう。

    今宵、黎翔と話して比龍は、一つ決心した事があった。

    ロブ=ノールの神託に……
    黎翔と娘の運命に任せてみよう……すべては、娘の夕鈴の幸せの為に。

    しばらくして、四阿から物悲しい馬頭琴の音色が聞こえてきた。
    震える琴の音色は、望めぬ国の未来と、娘への愛情を奏でているかのようだった。

                  ―黎翔編・完―

    黎翔編 外伝 砂漠の帳1へ 続く

    本編 夢逢瀬編 43 へ 続く



    2016.03.09.改訂
    2012.11.14.初稿 

    【長編】『楼蘭』―黎翔編― 41 ※要注意!古代パラレル

    楼蘭







    「貴殿のつけておる
    その耳環は、かつて私が娘に贈った品に似ておる。
    黎翔殿は、ロブ=ノールの離宮に行ったのか?
    我が娘とは何処で?」

    「はい。
    隠すつもりもございません。
    私は砂漠で迷い危ういところを姫に助けられました。
    数日間、供の者と共に、離宮にて客人として手厚いもてなしを受けました」

    「比龍王に聞きたかったのは他でもない……夕鈴姫のこと。
    彼女の憂いを取り除きたいのです」

    「姫の憂いを聞いてどうする?
    その憂いは、取り除けないかもしれぬぞ?」

    「それでも私は知りたい!
    彼女の涙を止めたいのです」

    揺るぎ無い固い決意を秘め、まっすぐに比龍王に詰め寄る黎翔。

    言葉、苦しげに
    黎翔は比龍王に打ち明けた。

    「理由を聞いても……
    彼女は、私に心の内を教えてはくれなかった」

    「夕鈴姫の父君である貴方ならば……
    もしかして事情を知っているかと思い馳せ参じました」

    純粋に姫を恋慕う想ひの色を秘めた黎翔の瞳が、
    真っ直ぐに比龍王を見つめた。

    真っ直ぐな穢れない青年の瞳……かつて比龍王も持っていた瞳。
    馬頭琴の弓を止めて、比龍王は真摯に尋ねる。

    「なぜ、そこまで……?
    他国であるはずの我が娘の憂いを尋ねる?
    黎翔殿?」







    「何故と問われれば単純なこと。
    彼女を愛しておりますゆえ、姫の憂いを晴らしたいのです。

    貴方に許可を頂き
    国に連れ帰り、我が妃・白陽国の正妃に……と願っております」

    「黎翔殿。
    その気持ちは嬉しいが……
    夕鈴には、もう伝えたのか?」

    「もちろん。
    了承は得られませんでしたが……

    離宮を出立する前の晩に、夕鈴姫に気持ちを打ち明けました!」

    その時の夕鈴姫との逢瀬を思い出したのか、黎翔の顔は紅潮し輝いた。

    「姫は、貴殿に何と……答えたのだ?」

    「何も……。
    ただ “もう少し早く、お会いしたかった” とだけ…………」

    「………………」

    比龍王は、黎翔から愛娘の言葉を聞き…
    深い思慮に沈んだ。

    「泣きながら私の胸で、眠りについた彼女の憂い。
    ――どうか楼蘭王。
    この私に、彼女の憂いを教えてください」

    黎翔は比龍王に切々と訴え続けた。
    愛する夕鈴との未来の為に……


    …………黎翔編・42へ 続く



    2016.03.09.改定
    2012.11.14.初稿

    0309 本日の呟き

    皆様
    おはようございます
    さくらぱんです

    高校近くの
    いつものファミレスで、モーニングしています。

    先ずは、お詫びを…
    コメントを溜め込んでいて、スミマセン!
    今週は、お返し出来なさそうです(∋_∈)
    落ち着きましたら、必ずお返ししますのでお待ちくださいませ!

    実は、ここ半年の中で、めっちゃ忙しい今週のうちの本日です←

    只今、次女の第一希望高校の入試真っ最中。
    今朝は、5時には起こしてと言うので…
    4時半に起きて、炊飯器をセットして、入試応援弁当を作りました。

    次女は、ストレートアイロンで寝癖直し…( ̄∀ ̄)次女の寝癖は頑固者ナノ。

    夕方には、長女の第一希望大学も合否が出ているはず

    ツレも泊まりがけの出張中で、駅までお迎えに行かなきゃ…

    と…いう訳で写真館も、コミュも満足に更新出来てない状態が続いてます←

    せめて…本館だけでもと、ガラケーで楼蘭の改定更新中。

    でも、ガラケーなんでいろいろと不備が……
    スミマセン(;_;)

    さっき楼蘭40の変更を更新しました。

    ……そして今日は部分日蝕の天体ショーがあるはずなんですが…
    今現在の宮城県。
    分厚い雲に覆われまったく見れません。

    南の方で、太陽が出ている方は、部分日蝕の観測のチャンスですよ!
    太陽を直接見るのは、目を痛めますので、たまには変わりダネで木漏れ日を探してみてください。

    月蝕ピーク時は、11時頃。

    もしかしたら、欠けた木漏れ日になっているかもしれませんよ!

    小さな頃、晴天の部分日蝕の時、三日月みたいなの欠けた木漏れ日の光が地面にいっぱいあって面白かった記憶があります。

    今時期、葉のある木は少ないので、難しいかと思いますが、

    地面を観測するのも目を痛めず観測できて楽しいと思いますよ←

    今回の部分日蝕は、10時~12時。
    ピーク時は、宮城県が11時10分頃。

    …それまで晴れないかな?

    期待と失望と落ち着かない不安でドキドキ…のさくらぱんからでした。



    【長編】『楼蘭』―黎翔編― 40 ※要注意!古代パラレル

    楼蘭



    物悲しく響く馬頭琴(ばとうきん)の調べが、夜の静寂(しじま)に響く
    楼蘭王宮の湖にせり出した四阿から……哀愁漂う琴(きん)の調べ

    過去を遡り懐かしむ
    楼蘭国王・比龍の愛と悲哀の琴
    馬頭琴は優しく震え、柄頭の馬の彫りも影を濃くする

    比龍王の白髪交じりの薄い金茶の髪は、夜風に靡き
    ハシバミ色の瞳は、深い憂慮に沈んでいた……

    「……やはり来たか。
    珀 黎翔国王殿」

    馬頭琴(ばとうきん)を奏でたまま、比龍王は黎翔の存在に気付き声をかけた。
    王の手元の弓は、震えるまま澄んだ音色で馬頭琴を奏でている。

    星空が綺麗な夜だった。

    夜風が比龍の心のように、湖に細かな漣(さざなみ)をたてる。
    澄み切った馬頭琴(ばとうきん)の音色が、湖面を渡っていった。

    「綺麗な音色が聞こえましたので、つい誘われてしまいました。
    比龍王よ。
    お寛ぎのところを、お邪魔してしまいましたか?」

    王宮から四阿へ渡る橋の上で、黎翔は比龍王に控えめに声をかけた。

    「いや……かまわん。
    むしろ、貴殿を待っていたと言うほうが正しいか?」

    そこで、はじめて
    比龍は、自分を訪ねて来た若い王を見た。

    凛々しく引き結んだ口元。
    奥に秘めた情熱と決意の焔揺らめく澄んだ紅い瞳
    ……片耳には見覚えのある深い緑の美しい翡翠の耳輪(じかん)が光る。

    比龍には亡き妻・藍鈴(あいりん)姫と出会った頃の
    若く自信に満ちた過去の自分を見ているようだった……

    比龍は改めて、西国から来た若者を好ましく眺めた。
    今の自分には無い
    若さと、才気あふれる自信……
    この若さで、一国を治める、その器量。

    比龍王は、懐かしくも眩しいものを見るかのように
    黎翔を見る瞳を細めた。

    少しずつ年老いた王へと歩みを進める黎翔は、
    極度に緊張しつつも……
    夕鈴姫のことを尋ねるために比龍へと近付いた。

    「珀国王殿。
    いや、黎翔殿。
    そう緊張せずともよい」

    「私こそ貴殿とゆっくり話が、したかったのじゃ……

    貴殿のしている
    翡翠の耳輪には懐かしく見覚えがある」


    「……我が娘。
    夕鈴に会(おう)たのか?
    珀 黎翔殿?」

    突然、馬頭琴の音色がプツンと途絶え……
    代わりに穏やかな楼蘭王の声。

    黎翔に問いかけた比龍王の顔は、
    先ほど謁見の間で、かい間見た厳しい王の顔では無く、
    温かく優しい父の顔をしていた。




    ……黎翔編・41へ 続く



    2016.03.08.改訂
    2012.11.13.初稿 続きを読む

    【長編】『楼蘭』―黎翔編― 39  ※要注意!古代パラレル

    楼蘭




    次の朝、黎翔は謁見するために王宮へと向った。


    最初の楼蘭王の印象は、なんて穏やかな人なのだろうと思った。

    玉座に座る比龍王その人は……
    夕鈴姫と同じ金茶の髪
    ハシバミ色した優しい瞳
    ああ……似ている。
    親子なんだなと血の不思議さに、つくづく驚く。

    「お初にお目にかかる楼蘭の比龍王。
    私は、西方の白陽国を治める珀 黎翔と申します」

    「貴殿が白陽国国王殿か……
    無事で何より、珀国王殿」

    「先触れの使者の到着から、だいぶ遅れましたな。
    心配しておりました」

    温かな出迎えの挨拶に、夕鈴姫を思い出した。
    黎翔は、なんだか無性に姫に会いたくなった。

    同じ色の瞳が、姫を思い出させるからだろうか?










    ……どうやって
    姫のことを切り出そう?

    昨夜から出せない答えに思案している間にも、
    さらさらと楼蘭王との謁見の時間が過ぎていく

    謁見も終わりに近付く頃、黎翔の何かに気付いた比龍王が、
    冷たく鋭い慧眼で黎翔に問いかけた。

    「珀国王殿。
    なにやら話したいことが、あるご様子」

    「私も、比龍王に尋ねたきことがあります」

    「なるほど……

    では、別な時にゆっくりと貴殿と話がしたい。
    王宮に部屋を用意させよう。
    連れの者達と存分に寛がれよ」


    ……黎翔編・40へ 続く


    2016.03.08.改訂
    2012.09.02.初稿

    本誌設定【長編】 緑風―至福の刻・後編― 

    緑風






    新緑の優しい風が吹き渡る

    「陛下。
    もう、そろそろ……
    私をここへ呼び出した理由を教えてください」

    腕の中の夕鈴が居心地悪そうに…
    真っ赤になりながら、モジモジ……と呟く

    恥ずかしがり屋の君は、
    甘い僕との触れ合いに、未だ慣れない……

    また、それが初々しい花嫁らしくて
    周囲の者も、まさか君が雇われた“臨時花嫁”とは気がつかない。

    君のぎこちなさも、極端に恥ずかしがり屋の性格ゆえのことなのだろうと
    思われているのだろう。

    抱き心地の良い君を
    僕は、いつまでも抱き締めていたいけど……
    これ以上、君が困るのを諦めた。

    だって、この先に甘く触れ合うチャンスがあっても、
    僕に警戒して逃げそうだったから……

    君が僕を避けて逃げるなんてことは困る。
    すっっごく困る。

    「実家に帰らせてください!」

    ……なんて君に言われたら……
    考えることも嫌だけど、きっと僕は仕事が手につかない……
    君を下町まで追いかけてしまうよ。

    「大袈裟です!」
    と君は一刀両断にバッサリと、つれないことを言うけど、
    僕の不安は増す一方だから仕方がない。

    君の一挙手一投足が、僕を突き動かす。
    君の笑顔が僕を勇気付ける。

    “君なしでは居られない”……だなんて
    どこかの恋物語のようだけど
    君と出会うまで、ホントのことだとは思いもしなかった。

    至近距離でありながら、君の問いに答えない無反応な僕に
    心底困った顔をする夕鈴。






    分かった!
    お手上げだよ!

    君に意地悪しているつもりは無いんだ
    僕は近くの侍女に頼み、卓に置いた小さな包みを持って来させた。

    「夕鈴、君の待ち望んでいた品だ!」

    小さな四角い包みを、夕鈴の小さな掌に乗せた。

    肌触りの良い包みは、良質の絹。
    しっとり重い小さな包みに、夕鈴の顔はぱぁぁぁ……と輝いた!

    「陛下、
    お茶ですね!」

    「そうだよ!
    君と一緒に飲もうと思って、老師に頼んでおいたんだ」

    「荷が届いたら、
    一番良い茶葉を、すぐに持ってくるようにね!」

    「陛下!
    ありがとうございます♪」

    夕鈴の本当に嬉しそうな輝く笑顔に、僕も釣られて笑う。

    先触れの使者に伝えた君の
    この輝くような笑顔が見たかったんだ!

    「では早速!
    陛下の為に、お茶をお淹れ致しますねっ!」

    夕鈴は嬉しそうに、ピョンと僕の膝から降りると、
    すぐに、僕の目の前でお茶を淹れはじめた。

    輝く季節に、緩やかな時が過ぎ行く……
    僕は君と過ごす、こんな時間が、大好きだ。

    二人で居ることの幸せの意味を知る。
    心がなんだか温かくて君と過ごすだけで癒される。


    いつか君が本物の花嫁になっても、
    変わらぬ時が過ごせたらいいな。

    そんなことを僕は願わずには居られない。

    お茶を淹れてくれる僕の大好きなお嫁さんの姿を見守りながら、
    穏やかで平和な時間に包まれている僕は、世界一幸せ者だと感じていた。


    ……続く

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    【長編】『楼蘭』―黎翔編― 38 ※要注意!古代パラレル

    楼蘭






    黎翔達が跳ね橋を通過中に
    陽気な門番が呼び止めた。

    「旅の方、比龍王への謁見と言っておったな。
    今日の謁見の時間は、もう過ぎた。

    今夜はどこかの宿で一泊して
    明日、王宮へ行くとといいだろう」

    「ありがとう!
    そうするよ」

    いつの間にか、すべて沈んだ太陽。
    涼しく澄んだ夜風が吹き渡る。

    楼蘭の街は、夜の顔を見せ始めていた。

    様々な国の言語が飛び交い、
    肌の色・髪の色・瞳の色が違う沢山の人々で賑わう街は、
    明るく活気に満ちていた。

    王宮に続く大通りだけでなく
    街の人々が普段使う生活道路にも
    ふんだんに篝火が灯り、エキゾチックな町並みの濃い陰影を作る。

    異国情緒溢れる国際貿易国家の一面を、早くも見せていた。

    色町の女たちは、カラフルな薄絹で客を手招き誘う。
    その白く細い腕(かいな)で、長旅に疲れた男たちを慰めた。

    酒場から、賑やかな笑い声。
    酒場から、あぶれた客たちは通りにある屋台で、
    お互いの旅の無事を祈り、一期一会の出会いに感謝して、
    酒を酌み交わして陽気な酒宴が行われていた。

    時には、夜の女たち向けに、
    様々な絹織物や宝飾品を客に見せる露店を構え、
    ちゃっかり連れの男客に買わせて、商売をしている商人も居た。

    混沌とした活気溢れる楼蘭の街


    天空に浮かび輝く美しい月
    浮かび上がる巨大な月影を街に落とす
    楼蘭の街の奥に、静かに眠るように佇む王宮とストゥーパ

    秘密を握る比龍王の居城は、夜に存在を示す。


    黎翔たち一行は大通りに面した1階に大きな酒場のある
    比較的治安の良さそうな宿に決めて、早々と明日の謁見に備えた。

    宿の者は、駱駝たちを酒家の裏手に連れて行き
    水と干草を与え、砂漠越えを労うのだった。



    …………黎翔編・39へ 続く



    2016.03.08.改訂
    2012.09.02.初稿 

    【長編】『楼蘭』―黎翔編― 37 ※要注意!古代パラレル

    楼蘭





    地平線に赤く滲(にじ)む
    大きな太陽がタクラマカンに沈みゆく……

    刻々と変化する
    燃えるような赤い城壁(じょうへき)

    砂岩(さがん)で作られた堅牢(けんろう)な城壁は
    燃えるような夕陽に照らされ、
    黎翔の目の前で、鮮やかな薔薇色に染まった。

    城壁を幾重(いくえ)にも取り囲んだ掘水も、
    照り返された夕陽に薔薇色に染まる。

    燃え上がるような夕焼けに染まる
    赤銅色(しゃくどういろ)した砂漠の城砦都市

    明日も晴れると約束しているかのような夕焼け空。
    たなびく雲も赤く……

    城壁の向こうの数基のストゥーパは 
    夕陽を背に暗褐色(あんかっしょく)の影を見せ、そびえ立つ

    ようやく黎翔達は、楼蘭王都の城門に辿り着いたのだった。

    砂漠と城門とを繋(つな)げる掘の跳ね橋は上げられており、
    城郭(じょうかく)の中には入れない。

    黎翔達は、跳ね橋の対岸に立て看板を見つけた。



    ――ここは楼蘭。
    中に入りたい者は、この半鐘(はんしょう)を鳴らせ!
     
    砂漠を越えてきた者、これから越える者は歓迎しよう。
     
    だが、我が国に仇(あだ)なそうとする者は、即刻立ち去るがいい―



    黎翔は、指示されたとおり半鐘を鳴らした。


    かぁあぁぁぁぁぁぁーーーーーーん

    城壁を越えて高らかに響く
    鐘の音。

    城門の小窓が開き
    跳ね橋の門番の顔が顔を出した。

    「何用か?」

    門番の誰何(すいか)の声が響く。
    黎翔は朗々と門番に答えた。

    「私は白暘国から来た珀黎翔と申す者。
    砂漠を越え比龍王に会いに来た。
    開門されたし」


    「ようこそ
    楼蘭王国へ…
    今、開門する。
    しばし待たれよ!」

    ガラガラと古めかしい滑車と
    金鎖の重い音がして、
    大きな跳ね橋が城門から下りてきた。
    それに伴い城壁の中の都が現れる。

    輝く光に溢れた楼蘭の街は、大変な賑わいをみせていた。

    ようやく姿を現した楼蘭王国の首都・楼蘭。
    謎に包まれたオアシスの貿易国家・楼蘭王国

    夕鈴姫を手に入れる鍵を持つ 
    夕鈴姫の父・比龍王の治める地

    黎翔は、ついに首都・楼蘭にたどり着いたのである。

    ……黎翔編・38へ 続く。



    2016.03.08.改定
    2012.09.02.初稿

    【長編】『楼蘭』―黎翔編―36 ※要注意!古代パラレル

    楼蘭





    昼夜(ちゅうや)駱駝を駆り、急ぎ幾つもの砂山を越えて来た黎翔に、やっと旅の終わりの兆し

    地平線に幻のように揺らめく“ストゥーパ”仏塔の影。

    砂山をひとつ越える毎に近づく
    幾つものストゥーパは、楼蘭王宮の象徴。

    駱駝を進ませるたびに、ストゥーパの影は大きくなるも……
    なかなか街の影までは、見えない。
    どれだけ高く大きな塔なのだろうか?

    「……まだ、着かぬのか?
    いったい、どれだけの距離があるのか?」

    流れる汗が、目にシミる。

    駱駝を全力で駆るも、行く手を阻む砂の壁に、黎翔の苛立ちが募る頃

    無情にも太陽は西に傾きはじめ
    砂漠に沈もうとしていた。

    ……黎翔編・37へ 続く





    2016.03.07.改定
    2012.09.02.初稿

    【詩文】Orion

    夜の静寂(しじま)

    音の無い静寂(せいじゃく)に
    我は溶けゆく……

    想いは遥か

    幼き日のこと……
    まだ見ぬ未来(さき)


    今に揺れ動く想い

    ----尽きぬ憂慮

    頭上に遥か
    オリオンは静かに輝く

    地上のちっぽけな
    私を見下ろして…



    【長編】『楼蘭』―黎翔編― 35  ※要注意!古代パラレル

    楼蘭





    数十メートル級の熱砂の砂山を
    陽炎(かげろう)のような黒影が揺らめく。
    駱駝(らくだ)が、数十頭…炎天下の砂漠を乾いた砂煙(すなけむり)をあげて駆け抜けていく。

    砂の大地は、灼熱(しゃくねつ)の太陽を照り返し
    赤味を帯びた金色に燃えて輝く。

    どこまでも果てしなく広がる砂の海。

    隊列はタクラマカン砂漠を北へ、
    北へ……

    黎翔は、首都・楼蘭を目指し猛然と駱駝を走らせた。


    黎翔たちが通り過ぎた後は、駱駝の踏み散らした足跡が南から続くも
    砂塵によりサラサラとあっという間に跡かたも無く消え失せた。

    頼るべき道標(みちしるべ)も無く、季節により砂山の位置さえも変わる大地。

    砂漠に強い駱駝(らくだ)でさえ、音をあげ息を荒げる……その厳しさ。

    ジリジリ…と肌焼ける日差しをものともせず先陣を切って駱駝を駆るは……

    日除けフードを目深(まぶか)に被り、眼差しは遠く遥か【楼蘭王宮】を目指す黎翔。

    疾風迅雷、砂塵(さじん)をあげて疾走する颯爽としたその姿。

    風を孕(はら)みフードを翻(ひるがえ)しつつ……砂山を駆け上がるその姿は

    幾度もの内乱と粛清の戦で、ついた彼の畏怖の二つ名

    “狼陛下”
    の名に相応しいものだった。

    “……夕鈴!”

    愛しい姫をこの腕に抱く為に……固い決意で、駱駝に更に鞭を打つ。

    時折、感じる……
    どうしようもなく湧きあがる不安と焦燥に先を急がせど、
    隊列を飲み込みそうなほど、巨大な砂漠の砂山が彼の進路を阻む。

    我が身が引き裂かれるような恋する姫との別れから、五日目。

    もう、そろそろ【楼蘭王都】に着くはずだった。

    この長旅の終わりの予感。
    期待と不安に苛まれつつ……
    “一刻でも早く楼蘭王に会いたい!”と駱駝を急がせる黎翔だった。

    まだ見ぬ彼女の父王が、二人の未来の鍵を握る…と、そう信じて。


    ……黎翔編・36へ 続く。


    2016.03.06.改定
    2012.09.01.初稿

    本誌設定【長編】 緑風―至福の刻・前編― 

    緑風







    輝き煌く新緑の世界
    池越しに見る翡翠宮からの眺めは、穏やかで心和む。

    黎翔は、四阿の長椅子に座り景色を眺めながら……
    最愛の妃を待ちわびていた。

    ――そこへ、夕鈴の訪れを知らせる先触れの声。
    黎翔は、ワクワクしながら、その双眸を閉じた。

    聞こえてくるのは、池渡る爽やかな風の音。
    少しずつ近付く、彼女の柔らかな絹擦れる音。
    涼やかな装飾品が奏でる音。

    薫るは、風渡る陽だまりの匂いと若葉の香り。
    瑞々しい花ような彼女の香り。

    「陛下。
    お待たせ致しました。」

    ―――ー知るは

    背後から、そっと黎翔の目元を覆い隠した
    彼女の小さくて柔らかな掌。
    うなじに、かかる熱い吐息。

    「夕鈴。
    どうして目隠しするの?」

    「だって
    ……恥ずかしいんです。

    侍女の皆さん、これでもかって、いうくらい飾り立てるのですもの。
    宴でも無いのに……このようなこと」

    少し疲れたように可愛らしい小言を言う夕鈴。

    「目隠しなんてされたら、
    せっかく美しく装った君が見れない……
    あきらめて僕に見せて!」
    僕は、クスクス……と笑いながら、彼女の両手を掴んで、
    目隠しをそっと外した。

    「ねぇ……夕鈴。
    お願いだから、
    僕の正面に回りこんでくれる?

    それまで目を瞑っているから……」

    「陛下?
    ……???
    いいですよ」

    彼女が移動する音がする。
    日当たりの良い僕の正面が陰り、花の香りがぐっと近付いた。
    僕の緊張感と期待が、嫌が応にも高まる。

    「陛下。
    もう目を開けてもいいですよ!?」
    クスクス……と、今度は彼女が楽しそうに笑った。

    僕は、ゆっくりと目を開けた。
    期待で、ドキドキ……と胸の動悸が高鳴る。

    僕の目の前には、輝く太陽を背に受けて
    僕の女神が眩しく微笑んでいた。

    金茶の髪が陽に透けて、ときめくほどに輝く。
    半分結い上げた髪から覗く、華奢な白い首筋。

    恥ずかしそうに潤んだ
    大きなハシバミ色の瞳が、僕を見つめ
    上気した顔は、頬だけではなく……耳朶や首筋までもを薄紅色に染めていた。

    ツンと上向く唇は、ぷるんと柔らかそうで……
    甘酸っぱい杏色に輝く口元に、僕は口付けて齧りたくなった。

    そよ風を孕み、なびく若葉の薄衣が、僕を誘う。



    あっ!

    僕は、夕鈴の細い腕を引き寄せ……僕の膝に乗せた。

    「素敵だよ。
    僕の可愛い奥さん」

    「…ぁりがとぅございます」

    パッ…と散った彼女の朱に染まる顔を、僕は見逃さなかった。
    僕にしか見せない可愛い顔。

    ……っ!

    ン。

    僕は、すばやく君の唇を奪うと満足して、君をギュッと抱き締めた。

    「…………////っ!
    へいかっ!」

    「ゆーりん、真っ赤だ。
    かわいいな……」

    侍女が見守る中、僕に抵抗できない君を、更に引き寄せ抱き締める。
    とまどう君のささやかな抵抗など、気にならなかった。

    君の抵抗など……僕には甘い誘惑にしかならない。
    無自覚で無意識な僕の花嫁

    僕を酔わせ夢中にしてゆく
    無邪気で無垢な君の生き生きとした美しい魅力

    「へーか……」
    抵抗をやめた夕鈴が、微熱めいた瞳で僕を呼ぶ。

    「ゆーりん……」

    今度は彼女に、性急すぎない確かめるような口付けを贈ると
    夕鈴は小さな甘い吐息を零した。


    時が止まればいいのに……と思うほどの甘やかな刻が、二人に過ぎていく
    どちらともなく離れた唇に、心寂しく思うぐらい……僕は幸せだった。

    僕は、胸いっぱいに君の香りを確かめた。
    腕の中の君は、陽だまりの太陽の香りと芳しい花の香りがした。



    ……至福の刻・後編へ続く



    2016.03.05..初稿 続きを読む

    【長編】楼蘭 ―王宮編 34 ※ 要注意! 古代パラレル 王宮編 完

    楼蘭






    蒋(しょう)将軍に優しく背を撫でられながら、夕鈴は昔を思い出していた。

    あれは母を亡くした12歳のある日。
    楼蘭王国に突如現れた東の大帝国・漢の軍勢。

    統率された押し寄せる人の波。
    圧倒される漢の軍事力。
    その軍を束ねる、初めて見た漢の皇帝。

    煌びやかな鎧・兜を身に付け
    雄牛のような大きな軍馬に跨り、夕鈴を馬上から見下ろした。

    「そなたが、楼蘭王の娘、夕鈴姫か?
    なるほど母親に、面差しがよく似ておるな……」

    夕鈴に興味がひかれた武帝は、
    馬上から降りて、夕鈴に近付いてきた。


    「髪の色は、父譲りか。
    藍鈴姫(あいりんひめ)は美しい黒髪だったな。
    だが、そなたは綺麗な金茶の髪をしておる」

    冷たく値踏みされるような武帝の視線。
    不躾なほど、しげしげと見られて、亡き母と比べられる夕鈴。

    冷たい視線に晒され……
    ただ武帝に対し“怖い……”という感情がうまれていた。

    「国を救いたいか!? 
    夕鈴姫」

    突然の武帝の問いに、幼き日の夕鈴姫には、すぐに理解できない。
    何も答えられず……武帝の話だけが、淡々と先に進んでいく。

    圧倒的な国力の差を見せ付けられて
    夕鈴が、選ぶべきものは何もなかった。

    「選べ。
    国の未来か!?
    …そなたの未来か!?」

    ……っ

    「国を選ぶなら、そなたは私に嫁ぐがよい。
    さすれば、祖国は余が守ろう。
    断るのなら、この場で楼蘭王国を滅ぼす。

    嫌なら私の寵妃になるがいい……
    どちらを選ぶ?
    夕鈴姫」

    拒否権など、もとより無い。
    はじめから質問の答えなど、わかっている茶番だった。

    「私の国を守ってください……」

    青ざめ震える12歳の夕鈴の幼い唇に、武帝の唇が触れた。
    冷たい契約の口付けだった。

    武帝との口付けは、閉ざされた未来の契約。
    背筋につめたい冷や汗を感じて、ガタガタ震える眠れぬ夜を過ごしたあの日。

    あの日と同じ戦慄と悪寒。
    武帝との忌わしく重い記憶が蘇るごとに、
    思い出すのは黎翔との甘やかな口付けの記憶。


    ――――黎翔様っ!!!

    夕鈴は遙か遠く……砂漠を旅する楼蘭に向かう愛しい黎翔に想いを馳せ、
    新たな涙を流すのだった。

    彼女もまた、定められた運命の道を歩み始める。

    幼き日から彼女をずっと守っていた、ロブ=ノールの離宮を離れ……
    産まれ故郷・父王の待つ王宮へと旅立つのだった。


    ―王宮編・完―

    …続く。



    2016.03.04.改訂
    2012.08.31.初稿 続きを読む

    【長編】楼蘭ー王宮編ー33 ※要注意!!!古代パラレル

    楼蘭








    「お久しぶりね。
    蒋(しょう) 将軍、お父様はお元気かしら?」

    離宮の四阿は、まだ夜明け前。
    漆黒の湖に、篝火が明々と四阿を照らす。

    簡素に着替えた夕鈴は、昔なじみの懐かしい将軍の顔を見つけると
    嬉しそうに老将軍に近付いた。

    「姫様。
    火急の用件につき
    早朝からの謁見を、お許しいただきありがとうございます。
    王は変わりなく、お元気でございます。

    それにしても……
    しばらく見ないうちに、益々お美しくなられましたなぁ。
    年々、今は亡きお妃さまに似てきておりますぞ……」

    「将軍、堅苦しい世辞はもうよい。
    それよりも火急の用件とはなにか?」

    「わざわざ……
    将軍が密使とは、穏やかではありませんね」

    「姫様。
    気を確かに、お聴きくだされ
    御父君・楼蘭王より、ご伝言です。

    「皇帝より密使あり
    至急、王宮に戻るように」との仰せです。

    私と共に至急お戻りください。
    王が王宮でお待ちです」

    「そうですか。
    武帝の……」

    「どうやら今回は今までどおりでは、はぐらかせないご様子。
    王の苦渋の御決断。
    姫様、私と共に
    王宮にお戻りくださいませ……」





    「……とうとう時が来たのですね」

    夕鈴は沈鬱な面持ちで、蒋(しょう)  将軍をジッ…と見つめた。

    父と同い年の、この老将軍には、
    何度も忙しい父の代わりに、夕鈴の心を支えてくれた。
    離宮を出るということは、故郷を告げ……親しい人々との別れを意味していた。

    (そう、とうとう……)

    夕鈴の瞳から、ツツー……と涙がひと筋、頬を流れた。

    ……っ

    「~~っ」

    蒋(しょう)  将軍は、静かに泣き始めた姫に親心にも似た胸の痛みが走る。
    娘同然に見守ってきた姫を抱きしめ、謝罪した。

    「姫様っ
    申しわけありませぬ……」

    「私も辛い。
    あなた一人に、国の命運を押し付けるのは……」

    「蒋(しょう)  将軍……
    昔から分っていたことです。
    大人しく参りましょう」

      ……っ

    父のように慕う
    蒋(しょう)  将軍に、やさしく背を慰められながら
    夕鈴の涙は、止まらない。

    頭では分っていても、心が苦しかった。

    ロプ=ロール湖は、対岸が見えないほど濃い朝霧に包まれていた。
    先の見えない景色は、彼女の心にも似て晴れない。

    もうすぐ夜明けが近い
    夕鈴は、昨日と違う新しい一日を迎えようとしていた。

    …………王宮編・34へ 続く。




    2016.03.04.改訂
    2012.08.30.初稿 

    【長編】楼蘭ー王宮編ー32 ※要注意!!!古代パラレル

    楼蘭




    楼蘭王の密命を受けた使者の到着の知らせは、
    まだ離宮の夜も明けぬ早朝だった。

    滑らかな絹の掛け布に身を潜りこませ、薄絹の夜着に身包んで
    夕鈴姫は、いつものように寝台でスヤスヤと眠っていた。

    金茶の長い癖のない髪は、扇のように絹の敷布に広がる。
    閉じられた睫は、微かに震えて覚醒の時を待っていた。
    淡い色の唇から微かな寝息……


    夕鈴は離宮の自室 白い帳が幾重にも重なった寝台で、
    ぐっすりと子供のように丸くなって眠っていた。

    ……ひ……さま。 
    ……姫様、お起きください。

    ……ん
    なあに……?
    もう朝なの?

    まだ外は暗いわ?
    どうかしたの?

    夕鈴様。
    王宮から、姫様に密使が参りました。
    楼蘭の将軍が密使です。

    なにやら急用とのことで……
    姫様に、謁見を願い出ております。

    いかが致しますか?

    ……急ぎ。
    お召し物のご用意を……


    昔から、夕鈴付きの侍女の揺り起こす声に気付き
    夕鈴姫は、まどろみから目覚めた。
    寝台から身を起こし、侍女に答える。

    「将軍が密使とは穏やかじゃないわね。
    お父様に、なにかあったのかしら?」

    「急いで会う必要がありますね。
    謁見の用意をしてください。
    教えてくれてありがとう」

    「将軍は、お父様の信も厚い。
    私(わたくし)も、昔から良く知っています」

    「ここで、お会い致しましょう!
    お通しして……」



    姫様、それはいけません。
    ……万が一、武帝のお耳に入りましたら姫様に、災いが起きます。
    どうしてもと仰るなら、
    簡単にでも、お召し替えをお願いいたします。




    夕鈴は、嘆息すると……

    「分かりました。
    急いで着替えましょう……用意をして」

    「支度が出来る間。
    将軍には離宮の湖畔の四阿にて、お待ちくださいと伝えてください」

    夕鈴姫は、そう言い残すと支度をするべく
    奥の続き間へと消えた。


    ……王宮編・33へ 続く



    2016.03.02.改訂
    2012.08.30.初稿 
    続きを読む

    【長編】楼蘭ー王宮編ー31 ※要注意!!!古代パラレル

    楼蘭 




    当時、漢の武帝は26歳、夕鈴姫は12歳。

    一回り以上も年の離れた男の下に、誰が好き好んで嫁にやろうなとど思うものか。
    母を亡くしたばかりの娘を気遣い、比龍王は武帝に嘆願する

    せめて姫が大人になるまで、故郷に留めることを父は願った。



    武帝の間者からの眼の届かぬところ

    漢を恐れた他国が、姫に刺客を送り続けることが予測された。
    他国からの間者からも、眼に届かぬところ

    王家の者と、その一部の神官しか知らぬ場所
    彷徨える湖、ロプ=ノールの離宮に夕鈴姫を隠して早5年。
    その間、自由に過ごせていた夕鈴姫の娘時代は、もうすぐ終わる。

    今の、漢の武帝は31歳、夕鈴姫は17歳。
    開き始めた花の蕾の年頃。
    恋も知らぬであろう娘に、心で比龍王は詫びた。

    王宮に戻れば娘の運命は、確実に変わる。
    動き始めた夕鈴姫の過酷な運命を想うと、父として胸が痛い。

    ……もはや神域ロブ=ノールの奇跡に、娘の運命を委ねるしかなかった。




    「誰か、離宮に使いを…… 
    夕鈴姫を王宮に呼び戻せ!」

    父王・比龍王の断腸の想いの決断。
    重い姫の重責に、誰しも頭を垂れたのだった。



    ……王宮編・32へ 続く。




    2016.03.02.改訂
    2012.08.31.初稿

    本誌設定【長編】 緑風―芽吹きの季節― 

    緑風



    「陛下。
    助けてっ……!」

    小さな悲鳴と共に、黎翔の背中に小さくて柔らかな衝撃!

    黎翔は、池の四阿に渡る橋のたもとで、急に呼び止められた。
    最愛の夕鈴の声を聞き、一瞬刺客かと思い緊張が走る。
    黎翔を周りこんだ夕鈴を背に庇い、辺りを鋭く伺うと

    ……そこには、彼女を狙う刺客など影も形も居なかった。

    訝しむ黎翔。

    夕鈴付きの侍女達が、庭を数人走ってきていたが、
    黎翔の姿を見つけると、皆うやうやしく頭を垂れた。

    いったい、誰から逃げてきたのだろう?
    夕鈴は、誰から「助けて」欲しいのか?

    夕鈴から詳しい事情を聞こうと、黎翔が彼女の方に振り向くと
    ……彼は息を呑んだ。

    息を弾ませ、胸の動悸を両手で抑える夕鈴は、常の慎ましい姿と違い、
    宴に赴くような軽やかで煌びやかな衣装を身に纏い、
    碧玉や白玉で身を美しく装っていた。

    匂いたつ朝露を纏った若葉を思わせる新緑の衣装。
    朝餉の時と同じ化粧が、黎翔には少し惜しかった。

    「夕鈴、キレイ……
    どうしたのソレ?」

    事情が呑み込めず…
    間抜けな賞賛の言葉を呟く黎翔に…

    彼女は、美しく装った外見にそぐわない顔で、
    黎翔を恨みがましく涙目で、ねめつけた。

    「陛下がイケないのです。

    “君の輝く笑顔が見たい”などと…

    先触れの御使者に、伝えるのですもの。
    私付きの侍女たちが、喜んで張り切って
    私を飾りたてたのです」

    「私……
    途中で、逃げてきました!」

    ピンクの唇を尖らせて、拗ねたように抗議する夕鈴。
    身長差があるとはいえ、上気した頬で涙を浮かべた大きな瞳で
    僕を見上げるのは反則だよ、夕鈴。

    「ごめん。ごめん。
    ……でも、ホント綺麗だよ!

    夕鈴、もっとよく見せて!」

    怒っても、拗ねても、君は可愛いだなんて言ったら……
    君は、ますます怒りだすだろうか?

    喜怒哀楽を、まったく僕の前で隠さない君は、王宮では稀有な存在。
    生き生きとした君を見ているだけで、灰色の僕の世界は、極彩色の輝きをみせる。

    質素倹約を美徳とする君は、不必要に自分を飾りたてるのを好まない。
    財政難な僕の国で、 君の考えは価値のあることだけど…

    君が美しく装った姿を、時々見たいなと願うのは、僕の我が儘なのだろうか?

    夕鈴は、呆れ怒りつつも……しかたがないと
    僕の目の前で、くるりと一回転してくれた。

    金糸の縫い取りがされた若草色の薄衣。
    風に揺れる袖から、腕の白い肌が透けて見えた。
    袂からは慎ましい襟に反して、鎖骨が…胸元が…透け見える。

    碧玉と白玉を陽に輝く髪に編み込み、流れる金の簪が風に軽やかな音をたてて耳を楽しませた。

    金糸、銀糸を織り交ぜた巾の広い錦の帯を、細い腰にキュッと巻き、
    豊かな胸が強調されて、彼女の女性らしさが強調されて魅惑的だった。

    着飾る夕鈴は、仮とはいえ僕の花嫁。
    仮で、こんなにも僕の胸をときめかすのに、
    もしも本物の花嫁となったのならば、どんなにドキドキと狂おしいのだろう?






    「陛下、お妃さま。
    失礼致します!
    お妃さま、お支度の途中でございます!
    お部屋にお戻りくださいませ!」

    「夕鈴。
    諦めたほうがよい、鬼ごっこは終わりだそうだ。
    お迎えがきたよ……」

    「……でも。
    陛下を待たすわけにはいきません!
    どうか、このままで……」

    君に“助けて”と目で訴えられても……
    僕の心は決めていた。



    「いや大丈夫だ。
    私は、まだ来たばかり。
    それに美しく装った君が見たい。

    ……君の支度が整うまで四阿で待とう」

    「ぅ……
    でも、でも」

    「……夕鈴。
    動くな!」

    「え!?
    あ……はい?」

    ?????

    素早く夕鈴の頤を捉えて、そのピンクの紅の唇に僕は唇を重ねた。
    びっくりした夕鈴のハシバミ色の瞳が、更に大きくなる。

    僕は、真っ赤になった夕鈴を腕に捉えたまま……
    後ろに控えていた、先ほどの夕鈴付きの侍女と夕鈴に話しかけた。

    「今朝の化粧のままでは、この衣装に似合わぬな。
    紅が薄い……」

    たった今、口付けたばかりの夕鈴の唇をしげしげと吟味すると、
    彼女の顔が益々真っ赤になった。

    「そうだな。
    スモモが良い。
    瑞々しく食べ頃の齧りたくなるスモモの実のような
    オレンジかがる紅の色」

    「……夕鈴」

    とん……と背中を軽く押して、彼女を侍女へ引き渡した。

    「かしこまりました」

    律儀な侍女の控えめな声に重なり、夕鈴の声。

    「んもぅ。
    ……しかたがない人ですね。
    しばし、お待ちください」

    「夕鈴。
    楽しみに、しているよ!」

    僕は足取りも軽く翡翠宮へと続く、池の橋を渡る。
    美しく着飾った君を待つために……


    ……至福の刻・前編へ 続く


    2016..03.02.初稿

    唐突に、彼女の口紅の色が気に入らなくて、口付けで拭う陛下が書きたかったんです。

    芽吹きの季節は、恋の季節陛下の幸せ度高くてすみません。

    【長編】楼蘭ー王宮編ー30 ※要注意!!!古代パラレル

    楼蘭 




    皇帝の使者が、居なくなった謁見の間で、
    楼蘭国王・比龍王は、物思いに沈み動けないでいた。

    この『楼蘭』は、シルクロードの要衝
    南北の天山北道・天山南道の合流地でもある『交易都市・楼蘭』

    オアシスの豊かな水の恵みは、タクラマカン砂漠を越えてきたキャラバンの人々を癒し、
    そして多くの旅人を、タクラマカン砂漠へと送り出してきた。

    西域地区36ヶ国の内でも特殊な立地条件。
    砂漠において豊かな水の恵みと、貿易による枯渇することのない
    豊かな国庫は他国にとって、あまりにも魅力的だった。

    『楼蘭』を狙う国は多く、たびたび首都は戦の炎に包まれた。
    その都度、騎馬戦上手な『楼蘭軍』が活躍をみせ、国を堅固に守ってきたのである。

    比龍王は深い溜め息を吐き、玉座に疲れたように身を沈めた。
    傍らの空の王妃の玉座を見る。

    比龍王の正妃・藍鈴 妃―あいりん ひ―
    『西方の宝石』と謳われた美しい寵妃は、先の戦で亡くなっていた。

    楼蘭妃のあまりの美しさに、彼女の為に度重なる争奪の戦が起きた程である。

    先の戦も、藍鈴妃が火種だったと噂された。
    最後、楼蘭王宮は炎に包まれ
    正妃は、敵の手に落ちる寸前に自害し尊い命を散らした。

    ……自分の所為で、国が炎に包まれた
    責任を感じての覚悟の自害だったという。

    次々と正妃付きの侍女たちも、それに習い命を散らす。

    炎に包まれた楼蘭王宮。
    正妃の部屋で自らに刃を向けて血の海に沈む女達……

    その地獄のような光景を、幼き日の夕鈴姫は、逃げる間際に見たのだという。
    狂ったように燃え盛る炎と、影絵のような女達の末路。
    深い悲しみに満ちた光景は、今も姫を夢で苦しめる。

    比龍王は、愛する人を守れなかった。
    彼女の自害を止めることが叶わなかった。

    戦に勝ち、攻めてきた敵国を退けたものの……

    王が妃を助けに、王都に着いた頃には、すでに彼女は自害しており、
    炎上する炎に包まれた王宮は焼け落ちる寸前だった。

    年若い侍女、数名に守られて、呆然と炎の王宮を見つめる夕鈴姫を
    父である比龍王が見つけられたのは、奇跡だったのかもしれない。


    その頃から急速に勢力を伸ばしてきた
    漢の帝国の皇帝・武帝。

    その勢いは止まらず、昇竜のごとく拡大する東の強国。
    女・子供でさえも容赦しないという残虐な国。

    そんな不穏な漢帝国が、楼蘭に意外な行動にでる。
    内外共に疲弊し痛手を負った楼蘭王国に、手を差し伸べてきたのである。

    王都が炎上した楼蘭を、漢帝国が武を持って諸外国から守ると提案してきたのである。
    ただし、それにはある条件がついていた。

    条件は、12歳という年若い夕鈴姫を、武帝の寵妃にすること。
    比龍王は、国が疲弊したまま……漢との戦の覚悟で断ろうとした時に、
    異を唱えるものが居た。

    夕鈴姫、本人である。
    必死に、父王を説得したという。

    二度と炎に包まれる母国は、見たくない……
    この身を差し出すだけで、この国が助かるのなら
    喜んで武帝のもとに嫁ぎましょう……と。

    その面差しは亡くなった母にそっくりで、
    父に向ける眼差しの強さは、揺るぎない固い決意が溢れていた。

    ……藍鈴(あいりん)。
    君が、もし生きていたのなら何と言うだろうか?

    「それでも父親ですかっ?」、

    罵倒されそうだな……

    比龍王は、今は主無き空の玉座に、寂しく呟き力なく微笑んだ。

    夕刻のオレンジ色した陽射しが、
    誰も居ない謁見の間に細長く床を輝かせていた。




    ……王宮編・31へ 続く。




    2016.03.01.改訂
    2012.05.30.初稿