花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    2012年10月 の記事一覧

    スポンサーサイト

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。

    『Hallowe'en~ハロウィン~』・・・・はじめに

    ●こちらは、ハロウィン用の短編・詩文を一つにまとめたものです。本日のハロウィンまで、少しづつ公開してきました。
    もしも・・・・仮装でなくて、本物だったらの短編・ヴァンパイアのタネから、次々とタネが落ちてきました。
    ヴァンパイアでは、少し陰惨な流血表現を含みます。
    完全捏造・パラレルですので、狼陛下のイメージを壊したくないかたは、お勧めしません。それでも、いいよという優しい方のみ閲覧願います。

    それでは、さくらぱんのHallowe'enを、どうぞ皆様お楽しみください。

                        2012.10.31.さくらぱん



    【詩文】『Hallowe'en~ハロウィン~』プロローグ

    【短編】『Jack-o'-Lantern~ジャック・オ・ランターン~』

    【短編】『black cat~ブラック・キャット~』

    【短編】『werewolf~ワー・ウルフ~』

    【短編】『black cat~ブラック・キャットⅡ~』 

    【短編】『Chiroptera ーキロプテラー』

    【短編】『Trick or Treat~トリック・オア・トリート~』※少し流血注意です。

    【短編】『Jack-o'-Lantern~ジャック・オ・ランターンⅡ~』

    【短編】『Hallowe'enの奇跡~ハロウィンの奇跡~』 


    おまけ
    【短編】パラレル・メルヘン『魔性の月』※大人風味 もしも夕鈴がバンパイアだったら

    スポンサーサイト

    【長編】IF設定・パラレル踊り子『緋色の衣Ⅹ―ひいろのころも―』




    ・・・続き

    『私を癒したいと申したな。・・・・では夕鈴、私にお茶を淹れてくれないか?』

    「・・・お茶を淹れるのですか?'」
    「それで、陛下は癒されるのですか?」

    『・・・ああ。』
    『・・・・お茶を飲みながら、君の旅の話が聞きたい。』

    「お安い御用です。」
    「それで、陛下が癒されるのでしたら、心を込めてお淹れ致しましょう」

    ぱぁぁぁぁ・・・・と光りが弾けたように笑顔になった夕鈴。
    これで、陛下を癒すことが出来る。
    聞いてよかったとばかりに・・楽しそうにお茶を淹れはじめた。

    その様子を苦笑しながら、黎翔は夕鈴を見つめる。

         ・ ・
    黎翔の選択は、正しかった。

    夕鈴は、何も知らない。

    男女の秘め事も、寵愛という言葉さえも・・・

    楽しそうに旅の様子、踊りの練習のこと、一座のことを黎翔に話す夕鈴。


    にこにこと、真っ直ぐに見つめるはしばみ色の大きな瞳。

    その瞳が嬉しくて、いつの間にか黎翔も笑顔になっていた。

    お茶を飲みながらの楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

    明け方の薄明かりが窓辺を彩る。

    陽が昇ろうとする明け方の空。

    いつの間にか夜明けが来てしまった。

    夕鈴を見ると、眠そうに眼を擦っていた。

    ここで、昼まで仮眠を取らせるわけには行かない。

    侍女を呼び、夕鈴を預けた。

    「陛下、楽しかったです。」

    半分眠たげなはしばみ色の大きな瞳。
    その幼さに、黎翔は、クスリと笑った。

    『・・・・夕鈴、待って・・・・』

    侍女に伴われて、黎翔の部屋を辞そうという時、
    黎翔が夕鈴を引き止めた。

    そのまま、額にちゅっ・・・軽い口付け・・・・

    『君に、寵がまだだった。』
    『今夜もおいで・・・待ってるから。』

    顔を真っ赤に染めて、額を両手で押さえた夕鈴。
    びっくりしたおおきなはしばみ色の瞳がまん丸になる。

    口をぱくぱくさせながら・・・・こくんと頷いた。

    その様子が、とても可愛い。
    黎翔と夕鈴の運命の一夜が、こうして明けたのである。


    ・・・・続く
    続きを読む

    【茨王18】逆転パラレルメルヘン※キャラ崩壊・やはり大人味

    ☆こちらは、逆転パラレルメルヘン【茨王】の続きです。

    もう、やはりというか、なんというか。なるべくしてなったさくらぱん大人味。

    OKの方のみ、お読み下さいませ。

    大人味が苦手な方はUターン推奨です。

    では、OKな方だけどうぞ、お楽しみ下さいませ。

    続き…


    100年もの長きにわたるまどろみからの解放…

    夕鈴は、寝台の端に座り、狼王を見下ろす。

    伏せられた狼王の睫毛は、長くて・・・頬に影を落とす

    容姿端麗・眉目秀麗というのは、こういう人のことを言うのだろう・・・・。

    深紅の薔薇の寝台に眠る王に、

    夕鈴は目覚めの口付けを施すために、狼王の両脇に手を着いて

    ゆっくりと身を重ねていった。

    さらさらと蜂蜜色した髪が流れ落ち、狼王へと落ちていく・・・・

    はしばみ色の瞳は、羞恥で揺れ動き、熱を帯び潤みだす・・・・・

    睫に落ちる白玉の光

    徐々に近づく狼王の顔。

    夕鈴は、いたたまれなくなり、ゆっくりと瞳を閉じた。

    震える睫。

    首筋まで、羞恥で薔薇色に染まる肌。

    寝台に手を着く指先までもが赤い。

    華奢な身体は震えが止まらない。

    かすかに震える淡い色の唇。

    近づいていく・・・・・それに・・・・あと少し。



    ああ・・・・

    羞恥で、おかしくなりそう・・・・・早く終わらせなくては。



    そう思うものの・・・狼王に掛かる呪いのせいなのか

    なかなか重ならない唇。


    壁の二人のシルエットは、もう一つになっていた。



    ー【茨王】・完ー



    まだ、皆様平気よね。たぶん、ここまでは、絵本の王道展開。

    『☆はっぴい・はろうぃん☆』・1

    ・・・・お妃様、今夜は、こちらをお付けになり陛下をお待ちくださいませ。

    その日、突然侍女に手渡されたのは、見たこともない不思議な形をしたものだった。
    それは薄くて大きさは手のひらに乗るくらいで、表面を撫でると柔らかい布の触り心地で。
    縁を金糸のレースで縁取られて、中央に大粒の緑柱石を配し、見たことの無い綺麗な鳥の羽がついたもの。

    (でもこれを「付ける」って、一体どこに??)


    「これは、何でしょうか? 見たことが無い品ですが」
    ・・・・西の国の献上品で《ますかれいど》という仮面らしいですわ。

    首を傾げて問いかけた夕鈴に、侍女は丁寧に説明をしてくれた。
    どうやらこれは目元を隠すものらしい。
    でも、李順さんのメガネとは違って、これは正体を隠す時に使うとのこと。


    ・・・・もうすぐ、陛下がお渡りになります。

    そう告げた侍女が、夕鈴の手の中にある"仮面"を指差す。
    そうしてにこりと微笑んだ。

    ・・・・こちらをつけて老師のもとにいくそうですわ。
    「老師のもとですか・・・?」

    これと老師に何か関係があるのだろうか。
    先程から疑問は尽きない。

    けれど、全ては陛下の指示。
    だったら夕鈴が取る行動は他になかった。

    「分かりました。こうですか?」

    それを自分の目にあててみる。
    でも、これを次にどうしたら良いのかが分からない。


    ・・・・お妃様失礼致します。

    察した侍女の1人が後ろにまわって 夕鈴の手からそっと仮面を取る。

    ・・・・お手伝いいたします。

    夕鈴がきょとんとしている間に、彼女は伸びる紐を夕鈴の頭の後ろに回して固定させた。

    (何だか縁の大きなメガネをしているみたい。)


    ・・・・まぁ、瞳の色が映えて、大変お美しいです。

    瞳をキラキラとさせて侍女が褒める。

    ・・・・陛下の目は、確かですわね。

    お世辞だと分かってはいるのだけど、こう正面から言われると恥ずかしくて堪らない。


    「・・・・・ありがとう。」

    今はそういうのが精一杯だった。








    《幕間》 数刻前の老師

    《なんじゃい。きょうは、献上品がお菓子ばかりじゃの。》
    卓の上に並べられたそれらを一つ一つ確かめて、いつもと違う品々を疑問に思う。
    しかし、さすがは献上品。どれを見ても涎が落ちそうなほど美味しそうなものばかりだ。

    《こんなにあるんじゃ・・・食べきれないの。》
    悪戯を思いついたような顔で老師はニタリと笑む。


    《・・・・どれ、わしが、少し手伝ってやろうかの。》
    そう言って、"選別"するために、献上品の山に手を伸ばした。











    ・・・・陛下がお渡りになられました。

    侍女が告げる声に夕鈴はぴょこんと顔を上げる。
    そうして立ち上がり振り返ったところで、待ち人が姿を現した。

    『ただいま、夕鈴。』
    「おかえりなさいませ、陛下。」
    いつもの挨拶、いつもの光景。
    2人が笑み交わす間に、心得た侍女達は音もなく退出していった。


    『夕鈴、綺麗だね。』
    2人きりになった途端に小犬に戻った陛下がふんわりと微笑む。
    『仮面の色が、深いグリーンだから、君の瞳が引き立って、とても綺麗だよ。』
    若い芽の淡い色ではなく、大樹の深い深い緑。その色だからこそ夕鈴の大地の色が映えるのだと。
    甘い微笑みと甘い声でそう言いって、彼は夕鈴の目元に口付けた。


    IMG_9541.jpg


    (か、仮面の上からで良かった・・・)
    内心でこっそり息を吐く。顔が赤いのも仮面だと隠れてくれるはず。
    そこにほんのちょっと、本当に少しだけ、残念かもなんて思ってしまった気持ちは押し込めた。



    「これはなんなのですか?」
    『西の国のお祭りで、【はろうぃん】なる楽しいお祭りがあるんだって。』

    はろ・・・? 聞き慣れない言葉、異国の発音。
    全く想像が付かない。

    『何でも、仮装してお菓子を貰う日なのだそうだ。』
    「楽しそうですね。あ、だから仮面なのですね。」

    "仮面"で"仮装"して、老師に"お菓子"を貰いに行く。
    これが"はろうぃん"という祭りなのかと理解した。

    「陛下も素敵です。」
    陛下もまた、目元を仮面で隠していた。
    「陛下は黒の仮面なのですね。」
    陛下の紅い瞳に黒はよく似合う。

    『そう、だから老師のところにお菓子を貰いにいこう。きっと、楽しいよ。』
    「はい。行きましょう。陛下。」
    差し出された手に夕鈴は自分の手を重ねる。
    すると黒い仮面の向こうで紅い瞳が嬉しそうに笑んだ。


    『あ・忘れてた。お菓子を貰うには、一つだけルールがあるんだ。』
    人差し指を口元に当てて、楽しそうに陛下がウインクする。

    『とりっく・おあ・とりーと』

    陛下の薄い唇から紡がれたのは また知らない言葉だ。

    『お菓子をくれないといたずらするぞ、って意味だよ。』

    悪戯をされたくないならお菓子を渡すしかない。
    はろうぃんはお菓子をもらう日なのだから、確かに適当だ。

    「とりっく・おあ・とりーと」

    口に出してみてもやっぱり馴染まない。
    何かの呪文みたいだと思った。

    戸惑いながら声に出してみた夕鈴に、彼は「上手だよ」とまた微笑んで。

    『・・・さあ、お菓子を貰いにいこうか。』

    夕鈴を部屋から外へと誘い出した。










    《幕間》二人が居なくなった夕鈴の自室

    ・・・・さあ、みなさん、この部屋のお菓子を撤去しましょう。

    妃の部屋に全員を呼び戻してそう言ったのは女官長。

    ・・・・陛下のご指示です。

    疑問は全て、それで片付けられる。
    それ以上知る必要もないのだと。



    ・・・・・あの、寝室の敷布は? 女官長?
    ・・・・取り替えておきましょう。

    ・・・・・寝台に花びらをまくのは?
    ・・・・そこまでは

    張り切りすぎの彼女達に女官長はこっそり苦笑いする。
    しかし、表に出すのは冷静な顔のまま。

    ・・・・花瓶の花を新しくする程度にしてください。


    さすがは後宮に仕えるだけのことはあり、手際よく作業は進む。



    ・・・・もどられるまで、すぐ。皆様、急ぎましょう。

    女官長の言葉に全員が頷いた。


    ・・・続く
    2012.10.31.

    【短編】『Hallowe'enの奇跡~ハロウィンの奇跡~』 

    赤い月が輝く ジャックの浄化の焔が立ちのぼる

    願うのは、奇跡

    愛しい娘の復活。ジャックの願い。

    オレンジ色のジャックの焔は、月に向かって立ちのぼる

    浄化の火の粉が落ちる

    その色は、魔物を滅する破魔の色。

    銀色の火の粉が落ちる

    静かに静かに降り積もる

    アリスとジャックに降り注ぐ

    くず折れた二人の影が地面に落ちる

    銀色の火の粉が降り注ぐ・・・

    それは、ジャックの願い・ジャックの望み

    ピクリと、長耳が揺れ動く

    銀色の粉の中でアリスが起きた

    朝の目覚めのように伸びをする。

    金茶の髪、はしばみ色した長い耳の可愛いアリス

    ジャックの願いは、叶えられた。

    代わりに動かないジャック

    かぼちゃ頭の可愛そうなジャック

    再び開いた大好きなはしばみ色の瞳を見れないなんて・・・

    彼の瞳は、黒く穿ち  光りは見えない。

    「ジャック・・・あなたが、助けてくれたの?」

    銀粉に半分埋もれたその姿

    「ありがとう・・・」

    ぽろりと、透明な涙が零れ落ちる

    ジャックの頬を濡らす。

    アリスは、ジャックにキスをした。

    お別れと、感謝と真心を込めて、ジャックの唇に。

    パリーーーーーーーーン

    ガラスが割れるような音。空気にヒビが入る。

    ぱらぱらと剥がれ落ちるかぼちゃの頭

    ジャックの呪いが解ける

    見る間に、黒髪の端正な顔の青年が・・・・

    アリスは、驚いたまま動かない

    青年の瞳が開く

    ーーーーー赤い紅い瞳

    アリスが、びくりと身を震わせる

    その顔は、狼男・ヴァンパイアのもの。

    その瞳は、狼男・ヴァンパイアのもの。

    『アリス、生き返ってくれたんだね。』

    『呪いを解いてくれて、ありがとう、アリス。』

    温かな言葉。

    その声は、ジャックのもの。

    温かな優しい紅い瞳。

    その瞳は、ジャックのもの。

    「あなたは、ジャックなの?」

    いつの間にか、浄化の銀色に姿を変えた月

    月光に輝く銀粉の中で

    アリスとジャックは、抱(いだ)きあう。

    お互いの無事を確かめ合うために。

    優しい紅い瞳が見つめる先は、愛しいはしばみ色の瞳。

    ジャックは、愛を囁く

    『アリス、愛しているよ。』

    『ずっと前から、愛していたんだ。』

    重なる二人の唇・・・・柔らかな優しい抱擁

    復活を遂げて、望みを叶えたジャックに祝福を!!!

    森の中で金の瞳の小さな獣が、
    ウインク☆しながら宙返りして闇夜に消えた。


            ―Hallowe'en~ハロウィン~・完―

    【短編】『Jack-o'-Lantern~ジャック・オ・ランターンⅡ~』

    『僕は、間に合わなかったんだね』

    かぼちゃ頭のジャックは、悲しげに

    地面にうち捨てられた長耳兎のアリスを掻き抱く

    紅い焔の瞳が、悲しげに揺れ動く

    『僕の声は、聞こえなかったのかい?』

    『何度も、探したんだよ・・・・君を』

    まだ暖かいアリスの首筋に 赤い二つの穿つ傷跡

    痛ましげに傷をなぞる ジャックの白手袋が血で染まる

    『アリス・・・アリス・・・・僕の愛しい君』 

    『僕は、間に合わなかった』

    『せめて、僕の破魔の焔で、君の穢れを浄化してあげる』

    ジャックの唇が首筋の傷をなぞる

    ちろちろ・・・と炙る オレンジの焔

    ジャックの唇が離れると、アリスの首筋は白い綺麗な首筋に

    穿った穴は、もう見当たらない。

    もうどこにも、傷など見当たらない。

    ジャックとアリスに赤い月

    嗤う月に影が掛かる 嘲笑う魔女の横顔

    《奇跡を望むか?》

    赤い月が問いかける

    《その娘の奇跡を願うか?ジャックよ!!!》

    《願うならば、望むが良い。今夜は、ハロウィン。》

    《魔物たちの夜》

    《お前の破魔の力を解き放てば、お前の望みは叶うであろう。》

    《その代わり破魔の力は、使えなくなるであろう。》

    《それでも、望むか? ジャック》

    【短編】『Trick or Treat~トリック・オア・トリート~』※少し流血注意です。

    『Trick or Treat~トリック・オア・トリート~お菓子をくれなきゃいたずらするよ』

    真っ赤な瞳のヴァンパイアが、長い耳のアリスに問いかける。

    アリスは、籠ごとお菓子を差し出す。

    「はいどうぞ。」
    「これで、いたずらするのは、やめてね。」

    ホッとして、ヴァンパイアに、にっこり笑った
    はしばみ色の瞳のアリスは、金茶の髪を靡(なび)かせながら、ヴァンパイアに無垢な笑顔で笑った。

    (だって、お菓子があるのですもの。)
    (ヴァンパイアでも、怖くないわ。)

    アリスの鮮やかな微笑み。
    煌めくはしばみの瞳、揺るがない自信。

    ・・・・だけど、
    ヴァンパイアは、籠を受け取らない。

    もう一度アリスに問いかける。

    『Trick or Treat』
    『僕が欲しいのは、このお菓子じゃない。』
    『君は、お菓子を用意できなかったね。』


    ・・・・・嘘つきなヴァンパイア。

    アリスを捕まえ、紅い瞳で魅縛(みばく)する

    静かな時

    のけぞり晒されるアリスの白い首筋

    「・・・・・・・ぁ」

    プツンと―

    長い牙がゆっくりと・・・・

    白い首筋に流れる

    赤い・・・・あかい・・・・二本の血筋

    『美味しかったよ。お菓子をありがとう。』

    紅い瞳は、愛しげに少女にキスをする。

    ヴァンパイアの腕の中には、少女が一人。

    お菓子は君だったんだよ。

    嘘つきなヴァンパイア

    ばらばらと・・・

    散らばり転がる色とりどりのキャンディー

    ・・・・・赤い月

    今夜は、ハロウィン

    《魔物たちの宴》

    【短編】『Chiroptera ーキロプテラー』

    漆黒の翼を持つものが、空を飛び行く

    闇の森をどこへ行くというのか?

    Chiroptera ーキロプテラー   蝙蝠よ

    冷たい闇の住人達の御使いよ

    その漆黒の黒墨(こくぼく)の瞳で、今日の生け贄を探せ!!!!

    温かき血潮の生け贄を!!!

    漆黒の闇の森・全ての Chiroptera に告ぐ

    温かき血潮の生け贄を我の元へと一刻も早く導け!!!

    紅き瞳の我のもとに・・・・


    Chiroptera ーキロプテラー  
     ラテン語で、こうもりという意味です。

    【短編】『black cat~ブラック・キャットⅡ~』 ※パラレル

    《ねぇ…お嬢ちゃん、ここから先は、行かない方がいいわよ》

    暗闇の森の中で、黒髪の綺麗な

    黒猫アリスが、樹の枝から、話かける

    三角耳に長い尻尾。

    真っ赤な唇で、木の枝に座る

    真っ赤な舌で、ペロリと唇を舐めた。

    その顔は長耳兎のアリスの顔と同じ

    琥珀に金を溶かした瞳が、光る

    《この先は、お嬢ちゃんには、危険だわ。》

    《早く森からお逃げなさい》

    《ジャックが、貴方を探してる。》

    《ほら…あなたを呼ぶ声が聞こえるでしょう》

    《ジャックの呪いはあなたにしか溶けないのに…》

    《それても、貴方は、森の奥へ進むの?》

    長耳兎のアリスは、こくりと頷く

    私の見つけたいものは、この先にあるのかもしれないから・・・

    何を探しているのか?

    長耳兎のアリスには、それさえも分からない

    ただ・・・

    迷い無い足取りで  森の奥へと足取り軽く 進んでいく

    《ちゃんと、忠告したわよ。お嬢ちゃん》

    真っ赤な色の嗤う満月。 黒々と飛び行くジャックの影・・・

    《かわいそうな…ジャック》

    《・・・貴方の声は、アリスには届かない。》

    《こんなにも、貴方は、彼女を心配しているのに》

    《本当にかわいそう・・・・》

    最後の言葉は誰のため?

    ジャック? それとも、長い耳のアリス?

    金の瞳は、闇の森の奥へ・・・・

    その瞳は、何を見ているのか?

    黒猫アリスは、謎めく笑いを残したまま、夜の森に解けて消えた

    【短編】『werewolf~ワー・ウルフ~』

    まぁるい月が紅い。

    遠くで狼の遠吠えがする・・・・

    闇の森に赤い月を見上げる一人の男

    紅い月を映しこんだような紅い赤い瞳

    ざわりと・・・黒髪が逆立つ

    紅い月が輝く・・・佇む男を照らし出す。

    そこに、長耳アリスがやってきた。

    闇夜の深い森に佇む人への不審を覚えず

    無防備に近づくアリス

    アリスが近づく男が何者かも知らず・・・

    ーーージャックの警告の声
    《アリス・アリス・気をつけて!!!》
    頭の奥で木霊する。
    だけど、アリスには、届かない。

    地を這うような低いうめき声

    ビクリとアリスの耳が反応する

    その声は、佇む男から、発せられた声

    紅い月に、雲が掛かる

    雲が切れた時、男は消えて、一匹の大きな黒狼

    アリスを捕まえ その背に乗せた

    そのまま、更に奥の暗闇の森へとアリスを連れ去る

    ーーージャックの警告の声
    《アリス・アリス・気をつけて!!!》
    頭の奥で木霊する。
    だけど、アリスには、届かない。

    《アリス・アリス・気をつけて!!!》
    ーーージャックの声は届かない

    ジャックの声は遅かった。

    【短編】『black cat~ブラック・キャット~』

    黒い毛並みの小さな獣

    ゆっくりとした足取りで長耳兎のアリスの目の前を通り過ぎる

    迷子のアリス・・・・

    いつの間にかシルクハットの兎を見失う。

    小さな黒豹が優雅に横切る 金の瞳がアリスを射抜く

    意味ありげなその視線

    古い迷信が頭をよぎる


    black cat 黒猫が前を横切ると不吉なことが起きる
    or
    black cat 黒猫が前を横切ると幸運なことが起きる


    どっちなの
    どっかしら・・・・

    小さなハートの白斑(エンジェルマーク)

    エナメルの光沢・黒い毛皮・金色の瞳の小さな獣

    貴方は、私に何をもたらすの???

    暗闇の森に消える間際に

    金の瞳がキラリ☆

    black catが、片目を瞑りウインク☆した気がした。

    【短編】『Jack-o'-Lantern~ジャック・オ・ランターン~』

    廻る・・・・廻る・・・時計の針
    長い坂道を転がるように走り抜ける
    シルクハットを被り 時計を持ったうさぎを追って

    森の入り口のジャック・オー・ランタンの光が届かない
    暗闇の森へと
    長耳兎のアリスが走る
     
    ジャックが叫ぶ

    『アリス、アリス、戻っておいで!!!』
    『僕の魔よけの光が届かない、森の奥へ行くのはおよし。』
    『森は、魔物たちが潜んでいるよ。』
    『戻っておいで、アリス!!!』

    兎に夢中のアリスの耳には届かない。
    誰の声も聞こえない。

    兎に誘われ 深い森の中へ
    更に・・・・ 更に・・・・ その奥へ

    ひらひらと翻る水色のドレス
    長い耳がぴょんぴょん飛び跳ねる。
    金茶の髪が闇の森に消える

    そのアリスの後を 心配したジャックが追いかける
    かぼちゃ頭のジャック
    紅い瞳がアリスを探す
    魔よけの光りが暗い森を照らす。

    アリスの軌跡を ジャックは追いかける
    彼もまた森の奥へ  魔物が潜む森の中へ

    わんわん。


    IMG_9596.jpg  IMG_9597.jpg




    続きです。




    夕鈴の部屋には庭から入ってみる。
    ちょうど朝の支度が終わったのか寝室から侍女と一緒に夕鈴がでてきた。

    よかった。

    夕鈴は本当にいた。


    夕鈴!
    そう声をかけたかったのに、口から出た言葉は

    「わん!」

    「あら?犬?」
    僕の声に反応して夕鈴が近づいてくる。
    「お前どこから来たの?」
    庭への出入り口で座り込んだ僕にむかい、夕鈴は座り込んでそう聞いてきた。

    わ、夕鈴のアップだ。
    いつも僕がこれくらい近づくと、真っ赤になって顔をそらしちゃうのに今は夕鈴の方から僕に近づいてきてくれてる。なんか、新鮮だ。

    もっと側に寄りたくて、夕鈴の膝に前足をかけてみる。
    「人懐っこいのね。誰かの飼い犬かしら?」


    そのまま夕鈴が僕を抱き上げた。
    わわ。
    視界が変わった。いきなり高くなるってちょっとびっくりするな。


    いつも抱きしめる夕鈴は華奢で、力を入れ過ぎたら折れちゃうんじゃないかと心配になる時があるけど、今は僕を優しく抱きしめてくれていてすごく柔らかくて暖かい。それにいい香りもしてるし・・

    ああ、犬のままでいてもいいかもな。
    このままなら、めんどくさい机仕事もしなくていいし。
    ずっと夕鈴と一緒にいられそうだし。

    「飼い主を探して参りましょうか?」
    「そうですね。心配してみえるかもしれませんし、お願いできますか?」

    侍女たちが出ていくと、部屋には僕と夕鈴だけになる。
    「飼い主さん、見つかるといいわね」

    夕鈴がゆっくりと僕を撫でてくれる。
    気持ちいいなあ・・

    僕は調子に乗って夕鈴のほっぺを舐めてみる。
    「ふふ。くすぐったい」
    夕鈴が可愛く笑うので、調子にのってもっと舐めてみた。
    夕鈴のほっぺはすべすべしてるのに柔らかい。ホントにお饅頭みたいだ。



    「お妃ちゃん。あれ・・その犬どうしたの?」
    窓から顔を出したのは浩大だった。

    「迷い犬みたい・・それより浩大、こんな朝早くどうしたの?」
    「いやさ~陛下来てないよね?」
    「陛下?陛下がどうかしたの?」
    「寝台がもぬけの殻だったって李順さんが心配してて・・お忍びに行くとも聞いてないし、探してくれてって頼まれたんだよ」

    どうやら僕の不在に、李順が気付いたんだな。
    さて、どうしたものか・・ここで名乗っても口から出るのが『わん』だけじゃ説明もできない。


    「陛下・・どうしたのかしら?昨日の夜も何も言ってみえなかったけど・・」
    「まあ、すぐ帰ってくるとは思うけど?あの人自分勝手だからさ~」

    浩大・・お前そういう風に僕を見ていたわけだ。

    「とりあえず、見かけたら部屋に戻るように伝えてよ。じゃあ俺もう少し見まわってみるから」


    浩大が窓から消えると、部屋にはまた僕と夕鈴だけになる。

    「・・陛下・・・何でもないといいけど・・」
    ポツリと夕鈴がつぶやいた。
    見上げると心配そうな夕鈴の顔。

    夕鈴、僕ここにいるよ?

    そう伝えたいのに口から出るのは犬の鳴き声だけ。
    夕鈴の表情は晴れない。


    ああ、戻りたいな。

    犬になってしまって初めてそう思った。

    こんな哀しそうな夕鈴の顔はみたくない。
    いつもの様に抱きしめたら、真っ赤になって怒り始める夕鈴の方がいい。

    抱きしめられるより、抱きしめたい。
    犬よりいつもの珀黎翔に戻りたい。







    「・・・っていう夢を見たんだ」
    「はあ・・不思議な夢ですね」
    「うん。目が覚めて鏡で自分を見た時、犬じゃなくてホントに安心したんだよ」
    「そうですか・・・・で、あの陛下?」
    「うん?」

    「・・・その夢と、こうして私が陛下に抱き上げられて離してもらえないのとどういう関係があるんですか?」
    「言ったでしょ?抱きしめるより、抱きしめるほうがいいな~って実感したんだよね。だからそれを堪能してるんだよ?」
    「あんまり関係ないと思うんですけど・・い~加減降ろしてください!」
    「ヤダ」
    「ヤダじゃありませんよ!だって夢だったんでしょう?」
    「うん、ホントに夢でよかったよ」


    ー完ー



    夢オチ・・



    2012.11.01.とんとん

    【詩文】『Hallowe'en~ハロウィン~』プロローグ


    真夜中のハロウィン
    血のように真っ赤な嗤う月が、地上を照らす。
    家々の玄関先には、オレンジ色の魔よけの光
    Jack-o'-Lantern

    闇の世界の住人が動き出す
    『今夜は、森へ行くのはおよし』
    『ハロウィンの森は、闇の世界が息づいている』
    『何があっても知らないからね』

    Jack-o'-Lantern
    Jack-o'-Lantern
    守っておくれ。
    闇の世界の住人たちから、人間を!!!

    Jack-o'-Lantern
    Jack-o'-Lantern
    お願いだから
    その魔よけの光りで追い払って
    闇の世界の住人たちを!!!

    Jack-o'-Lantern
    Jack-o'-Lantern
    頼りにしてるよ
    Jack-o'-Lantern その魔よけの光を!!!

    【茨王19・完】逆転パラレルメルヘン※キャラ崩壊・さくらぱん大人味

    ☆こちらは、逆転パラレルメルヘン【茨王】の続きです。

    もう、やはりというか、なんというか。なるべくしてなったさくらぱん大人味。

    OKの方のみ、お読み下さいませ。

    大人味が苦手な方はUターン推奨です。

    では、OKな方だけどうぞ、お楽しみ下さいませ。

    続きを読む

    【長編】黒龍『紅龍3ーこうりゅうー』

    夕鈴の美味しい手作りお弁当を食べ終えた陛下。
    ご機嫌で、菩提樹に寄りかかり、透き通る空を眺めた。

    秋晴れの空は、雲ひとつ無く深い青で澄んでいる。
    うららかな秋の木漏れ日が、菩提樹の梢から降り注ぐ・・・・

    陛下にとっては、とても気持ちの良い一日だけの休暇。
    無理を言って李順にスケジュール調整させた甲斐があった。

    草原を渡る風が、葉ズレのかそけき音楽を奏でる。
    遠く響く、黒龍と紅龍の蹄の音。

    眼前に広がる至福の風景。

    静かに流れる穏やかな景色
    眩しい秋景色に、黎翔は目を細めて、
    草原を駆け抜ける愛馬を眺める。

    仲の良い愛馬たちは、並んで草原を駆け抜けていった。
    黎翔の髪と頬を撫でる風が心地よい。

    隣にいる夕鈴を見ると
    暖かな昼の陽射しに夕鈴は眠気に誘われていた
    金茶の髪が、身体の揺れにあわせて輝いていた。
    はしばみ色した、瞳は、まどろみを帯びてとろんとしている。
    菩提樹の下で、こくりこくりと夕鈴は、眠たそうだった。
    まるで、子供のようだなと、黎翔はくすりと笑った。

    『夕鈴、眠そうだね。』
    『朝が、早かったからかな?』
    『僕の肩を貸してあげる。』

    こてん・・・・

    「・・・・ふぁい。ぁりがとぅ。ござぃます。」

    相当、眠たかったのだろう・・・・
    そのまま夕鈴は、僕の左肩に頭を預けて寝入ってしまった。

    すぅすぅ・・と静かな夕鈴の寝息が聞こえる。
    柔らかな陽射しが、今度は、僕をまどろみへと誘う。
    暖かな君のぬくもりと心地よい重み。
    左肩の君が愛しい。

    黎翔も、左肩の夕鈴の頭にコツンと頭を預けた。
    目を瞑ると、余計に君のぬくもりを感じられる。
    頬をくすぐる君の髪の感触。
    香りよい君の香油が鼻を擽(くすぐ)る
    髪に混じる、お日様の香り。
    より確かに、君の存在を感じられる。

    僕もまどろむ君に身体を預けて、一緒に夢の中へと入ろうか・・・
    夢の中での、君と僕は、いったいどんな関係なのだろう・・・
    現実の僕らより、進展しているといいな・・・
    そんなことを黎翔は、つらつらと考える・・・



    秋の降り注ぐ陽射しの中で、二人は、幸せな世界の一部になる。
    それは、愛馬に起されるまでのほんの数刻の時。

    二人にとっては、つかの間の穏やかな或る貴重な一日だった。
    明日から、また忙しい忙殺された時間を過ごす。


    休日の時計の針は、ゆっくりと進む。
    いつしか寄り添い、まどろむ仲の良い黎翔と夕鈴。
    蜂蜜色した時にすべてがとろんと甘く穏やかだった。

    和やかな楽しいゆめなのだろう・・・
    二人は、いつしか微笑みを浮かべていた。

    至福の時に包まれた二人は、蜂蜜よりも甘い夢に浸るのか?
    その答えは、二人にしかわからない。

    爽やかな秋風が、一陣吹いてくる。

    静かな景色に、菩提樹の葉がくるくると踊りながら地面へと
    風に流され落ちていった。

    誰にも邪魔することの出来ない休息時間

    陛下と夕鈴の二人のまどろみ時間は、誰にも邪魔できないのです。


                     ー完ー

    【長編】IF設定・パラレル踊り子『緋色の衣ⅩⅠ―ひいろのころも―』

    ・・・続き

    その晩も…その次の晩も…夕鈴は、黎翔に呼ばれて部屋を訪れる。

    二人が、朝まで、部屋でただお茶を飲んで語らっているだけなのだということを、誰一人知らない。

    夕鈴が、黎翔の部屋を通うようになってしばらくして…

    劇的に黎翔が一つ変わったことがあった…

    目に見えて、黎翔の表情が以前より明るくなり…氷点下の不機嫌な日がまったく無くなったこと。

    これも、それも、寵愛するあの踊り子の存在が大きいのだとまことしやかに噂された。

    明日にも、陛下はあの踊り子を寵妃として正式に召し上げるのではないかとまで噂された…

    知らないのは、噂の当の本人。

    夕鈴だけ…








    今夜も、黎翔の呼び出しで後宮の渡り廊下を歩く夕鈴。
    いつの間にか、目隠しの道順もだいたい覚えてしまっていた。


    …続く



    2013年
    05月09日
    17:40

    『☆はっぴい・はろうぃん☆』・2

    「とりっく・おあ・とりーと!」

    老師の部屋に押し入って、早速例の言葉を告げる。
    目を丸くしている老師のことは気にせずに、夕鈴は手のひらを広げて差し出した。

    「老師、お菓子をくれないと、いたずらしちゃいますよ。」
    ふふふと仮面の下の目を面白そうに細めて続ける。

    来る途中にも陛下からいろいろと話を聞いた。
    とっても楽しいお祭りだなーと思って、そのうちに気分が高揚してきたのだ。

    『あるだろう、老師。出せ。』
    そう言う声の主は、夕鈴からは見えない背後で冷たいオーラを放つ。
    黒の仮面の下から紅い瞳が鋭く睨みつけ、老師の背中がぶるりと震えた。


    《なんじゃい。お菓子って・・しかも二人ともそのかっこは、なんじゃ??》
    「西の国のお祭りなのですって・・・」
    陛下から聞いたことを老師に楽しげに説明して聞かせる。
    本当に楽しいお祭りなのだということを夕鈴は一生懸命話した。

    「お菓子 無いんですか?」
    一通り話し終えた後も、老師の手からお菓子は出てこない。

    楽しみにして来たのに、と。
    しょんぼりと夕鈴が肩を落とせば、後ろのオーラがさらに温度を下げる。

    『老師、知ってるぞ。昼間のこと。』
    静かな静かな声に、びくりと老師の肩が跳ね上がる。
    『素直に出したほうが・・・身のためだとおもうが・・・』

    オーラの向こうに何かが見える。
    仮面の奥の紅色は刃物のように鋭い。

    これに逆らえる者などいるはずがない。


    《年寄りの楽しみを奪いおって・・・》
    小声でぶつくさ言いながら、老師は渋々とくすねたお菓子を返した。









    ・・・・・おかえりなさいませ、陛下、夕鈴様。

    2人が部屋に戻ると、女官長が拱手で出迎えてくれた。
    彼女の後ろには女官達も並んで控えている。全員を見渡して夕鈴も軽く返事を返した。

    ・・・・・いかがでございましたか?
    「たくさん、お菓子をくださったわ。」
    柔らかい声音で問う女官長に、夕鈴も笑顔で答える。
    「何故かたくさんあって・・・たくさんいただいたの。」
    そうして嬉しそうに、女官長に籠を見せた。


    「陛下、」
    ふと何かを考えついたらしい夕鈴が、くるりと 陛下の方を振り返って手持ちの籠を陛下に見せる。

    籠の中には色とりどり、大小様々なお菓子。

    「二つお菓子を取ってくれませんか?」
    『二つだけ?』
    「はい、私と陛下の分と。」
    選んでくださいと、さらに籠を彼の前に差し出した。
    「三個でも構いません。陛下用に二個でも。・・・私は、一つで良いですから。」
    彼女の笑顔に彼も意図を察したらしい。
    くすりと陛下が笑った。
    『私も一個で良い。―――二個か。』
    どれにしようか・・・と、楽しげに指先を籠の上で彷徨わせる。
    どれでも美味しそうな菓子だ。どれを選んでもらっても夕鈴は構わない。
    ただ、陛下が何を好むかに興味があって、軽やかに動く指先を目で追っていた。

    『これで良いか、夕鈴。」
    程なくしてそれほど大きくない二つが選ばれる。
    夕鈴はそれに満足げにハイと頷いた。


    「では、女官長。」
    再び女官長の方に向き直った夕鈴がにっこりと笑顔を作る。
    「とりっくおあとりーとと言ってください。」
    彼女にとっても聞き慣れないであろう言葉に、女官長の表情が珍しく戸惑いの色に変わった。
    ・・・・・とりっくおあとりーと・・・・ですか?
    「はい。どうぞ。」
    こくりと首肯して先を促す。
    籠は夕鈴の前でぷらぷらと揺れている。夕鈴の後ろでは陛下が面白がる風に見ていた。

    ・・・・・とりっくおあとりーと

    望む通りの返答に夕鈴は笑みを深める。
    「はい。お菓子ですわ。他の皆さんと分け合って食べてください。」
    そう言って、手に持っていた籠を前へと差し出した。

    ・・・・・夕鈴様、宜しいのですか?
    「こんなにあると私たちだけでは、食べきれませんもの。」
    私と陛下の二人だけなら、陛下が選んでくださったあれで十分。
    「どうぞ、食べてくださいな。」

    ・・・・・ありがたく、いただきますわ。ありがとうございます。夕鈴様。
    そう言って、女官長は、夕鈴からお菓子がたくさん入った籠を受け取った。




    『・・・女官長。』
    ・・・・・済みましてございます。
    陛下が呼ぶと、心得た女官長が頭を下げすぐに返事を返す。
    その返事に軽く頷く彼を夕鈴はきょとんとした目で見ていた。
    「・・・・?」
    何の話だろうと夕鈴は首を傾げるが、二人の会話はそれで済んでしまったようで それ以上は互いに何も言わない。
    夕鈴に何も伝わらないのは知る必要がないからだろうか。
    それを十分知っているから追求は諦めた。

    『今日は、もう良い下がれ』
    ・・・・・かしこまりました。
    女官長が下がって礼を取ると、控えた女官達もそれに倣う。

    ・・・・・夕鈴様、失礼いたします。
    「おやすみなさい。女官長。皆さんも」
    静かに下がっていく彼女達が出て行くまで、演技を崩さず二人で見送った。


    ・・・続く

    『☆はっぴい・はろうぃん☆』・3

    『ふぅ・・・楽しかった。でも、咽喉が渇いちゃった。』
    完全に人が引いてしまうと早速小犬陛下が現われた。
    『夕鈴、僕お茶が飲みたいな。』
    ふにゃりと笑み崩れる陛下に、夕鈴はくすりと笑う。
    「そうですね。せっかく老師から美味しそうなお菓子をいただきましたし。」

    陛下の手の中にあるお菓子をつつくと、陛下は何故かそれを握り込んだ。
    ・・・渡してくれないと準備ができないのだけど。

    『―――夕鈴。お菓子ほとんどあげちゃったけど、ほんとに良かったの?』
    あんなに嬉しそうにしていたのにと。
    窺うように少し屈んでくる、優しい陛下に夕鈴は笑う。
    「良いんです。お菓子をもらうあの遊びが楽しかったので。」

    籠いっぱいのお菓子、どれも美味しそうで。
    ・・・でも、今ここにあるのだけで十分と思う気持ちも本当。

    (だって、陛下と一緒だったから―――― )

    それが楽しかったから、だからそれだけで十分。
    声に出せない本当の言葉は、そっと胸の奥に隠した。


    「今ご用意します。少々お待ちください。」
    陛下からお菓子を受け取ろうとして、「あ」と気がつく。

    「その前に、コレ外すの手伝ってくれませんか?」
    夕鈴が指差すのは深いグリーンの仮面。
    もうだいぶ慣れたけれど、視界を少しだけ暗くしているそれだ。
    「どうやって取るのかわからないんです。」
    付ける時は侍女に手伝ってもらったから、正直どうなっているのか分からない。
    そう訴えると、良いよと快諾した彼は夕鈴の後ろに回り込んで、しゅるりとますかれいどの紐を解いた。

    『外したよ。夕鈴。』
    はい、と 渡されたそれを傍近の卓に置く。
    その拍子に仮面の端に飾られた鳥の羽がふぁさりと揺れ動いて落ちた。

    「ああ・・・ これで、よく見えます。」
    見慣れた視界に安堵する。
    すると陛下の長い指がするりと頬を掠めていった。
    『仮面もいいけど、僕も君のかわいい顔が見れて嬉しい。』
    そのまま流れるような動作で髪をひと房絡め取り、軽くそこに口付けられる。
    物慣れた動きに対応しきれなかった夕鈴の顔は真っ赤に染まった。
    「・・・あああぁありがとうございます。」
    思いきり挙動不審に手をバタバタさせる夕鈴に、陛下はくすりと笑って手を離す。
    指に絡みついていた長い髪はどこか名残惜しげに解けて落ちた。

    「今、ご用意しますね!」
    途端にぱぱっと距離を取る。
    まだおさまらない動悸を誤魔化して奥に逃げた。










    ぱたぱたと足音が遠ざかる。
    それを見送ってから、黎翔は窓辺に近づき月を見上げた。

    漆黒の空に、冴えた月明かり。
    今夜は、満月だ。

    美しい月明かりで庭木に影が出来ている。
    昼間の太陽が作る濃い影ではなく、どこか儚げな薄い色。

    ―――月を見上げたふりをして、側にいるであろう浩大に話しかけた。


    『浩大。そこにいるな。』
    声は返らないが、気配が動いてそれを知る。

    紅い瞳は月を見つめたままで、言葉のみを屋根の上に向けた。

    『今夜は、ここはもういい。』
    今宵の夕鈴の警護を解き、代わりに別の命を与えることにする。
    『月が明るい。・・・鼠を片付けろ。』

    冴えた月明かりに光る冷たい紅い瞳が、月を見ていた。
    やがて雲が月を隠し、それを見つめて酷薄に笑む。


    こん・・・ここん・・・こん。こん。

    どんぐりが、屋根から一個、落ちてき。
    ころころ転がって・・・・ぽつんと庭に影を落とす。

    ―――そのまま、浩大の気配が消えた。












    「おませしました・・・・・・あら?」
    いつもの場所に陛下がいなくて視線を巡らせる。

    いつもなら、笑顔で何かしら言ってくれるはずなのに。

    瞬間的に焦燥に駆られるけれど、すぐに窓辺に佇む陛下の後ろ姿を見つけて胸を撫で下ろす。
    無意識に止まっていた足を前に進めて彼のそばに寄った。

    「陛下、どうしましたか?」
    『いや、月が綺麗だとおもって・・・』
    振り向いた陛下は月の光ように柔らかく笑む。
    可愛い小犬のそれに夕鈴も笑み返して隣に並んだ。










    「ほんとう・・・月が綺麗ですね。」
    隣に並んだ夕鈴が月を見上げてほぅと息を吐く。

    『ああ・・・綺麗だ(月を見ている君が・・・)』
    月ではなくそんな彼女を見つめて返す。
    月を見ている彼女はそれには気づかない。


    窓辺の優しい光りに照らされた夕鈴
    ほのかな月明かりに顔に照らされて影が出来る

    白い肌は、さらに月光で輝きを増し
    ほんのりと薄紅色した口唇は、弧を描き微笑みを湛える
    はしばみ色の瞳に、月明かりが灯る


    月を見ていた君が、僕を見てくれた。
    金茶の髪が、夜風になびいて、後れ毛が金色に輝いている。
    うっとりとした、潤んだ瞳で、にっこり僕に微笑んだ。

    「陛下、月を愛でながらお茶にしましょうか?」




    『美味しいね。』
    両手で温かいそれを包み込むように持つ。
    窓辺まで椅子を持ってきて、二つ並べて二人で座った。
    座るともっと月がよく見える。

    『夕鈴が入れてくれたお茶が一番美味しいよ。』
    「お菓子も、とっても美味しいです。」
    お菓子を少しずつ囓って食べる夕鈴はとても嬉しそうだ。
    大事に大事に・・・というのが見て取れて、そんな可愛い夕鈴に自然と顔は綻ぶ。
    『お茶が美味しいから、お菓子も美味しく感じるんだと思うよ。』
    「陛下、いくらなんでも、誉めすぎです。」
    照れて俯くそれすらも可愛いなと思った。


    老師からの戦利品の小さな兎のお饅頭。
    なんともいえないつぶらな赤い目の可愛らしい兎だ。

    なんとなく、夕鈴に似てる気がして、これを選んだ。
    ホントに食べたいのは、君なのだけど・・・今は、これで我慢。我慢。

    白い身体にちゃんと耳も顔も焼印で付いている。

    一口食べて驚いた。黄色の黄身餡と思っていたものは、かぼちゃ餡だった。
    しっかり、かぼちゃの味がする。
    不思議な気持ちで、美味しく頂いた。



    「・・・・あの、陛下はいつまで仮面をはずさないのですか?」
    お菓子はすっかりお腹の中、月を見上げていた視線をこちらへと移した夕鈴が素朴な疑問とばかりに尋ねる。
    彼女の視線は黎翔の目元。黒い仮面は付いたままだ。
    「飲み辛くありませんか?」
    彼女が何気なく言ったその言葉に、マスカレードの中の紅い瞳がきらりと光った。

    まさか、兎のお饅頭で君の事を考えていたなんて、君は思わないのだろうな。

    ゆっくりと、黎翔の唇が弧を描く。
    どうして今まで外さなかったか、今から教えてあげるよ。


    『とりっくおあとりーと』
    今日だけの呪文をいたずらっこの瞳で告げて、黎翔はにやりと笑った。
    『夕鈴、とりっくおあとりーと! お菓子をくれなきゃいたずらするよ?』
    「・・・今食べたばかりじゃないですか。」
    何を言っているのかと怪訝な顔をする彼女に さらに笑顔で迫る。

    『もっと、お菓子がたべたいな。(君というお菓子が)』
    「ええっっ!? ・・・だから、陛下の分を二個とってて言ったのに。」
    今更言われてもと夕鈴がブツブツ言うが気にしない。

    (だってわざとだし。)

    『夕鈴、とりっくおあとりーと』
    かたん・・・と椅子が軽い音を立てる。
    笑顔のまま立ち上がってゆっくりと夕鈴に近づいた。

    「ちょっ・・・ちょっとお待ちください。今ご用意します。」
    迫る黎翔を必死で押し留め、慌てて夕鈴も立ち上がる。
    脇をするりと抜け出した彼女は小走りで裏へお菓子を取りに行った。





    彼女が消えた向こうで何やら物を動かす音がする。

    (そんなことをしても無駄なのにね。)
    すでに罠は張った後。
    もう少ししたら夕鈴の声が聞こえてくるはず。

    「なんで――― ないっ。無いっ一個も無い。お菓子がなぁ――い!!!」
    案の定、しばらくして彼女の叫び声が聞こえてきた。

    黎翔の口の端が上がったのは彼女には見えない。




    「すみません・・・」
    さっきとは対照的にとぼとぼと、夕鈴が申し訳なさそうに戻ってくる。
    黎翔は即座にしょぼんとした顔を作って出迎えた。

    『一個も無いの? 夕鈴。』
    彼女にはおそらく垂れた耳と尻尾が見えている。
    うっと唸る姿が目に入った。
    「ごめんなさい。陛下。」
    彼女は項垂れながらも、おかしいと首を捻る。
    「おかしいですね、ホントに一個も無いんです。」

    ないのは当たり前。
    撤去を命じたのは黎翔なのだから。

    全ては、この"いたずら"のため。

    『とりっくおあとりーと』
    「っ」
    うるうると潤んだ瞳で、ちょうだいと差し出す両手。
    ううっと葛藤する夕鈴を前にさらに催促してみた。



    『夕鈴、お菓子がないんじゃ・・・しかたないよね。』
    ふぅ、と溜め息を残して手を下ろす。
    彼女がホッとしたのを目で確認してから、罠に嵌った兎に告げた。
    『気が進まないけど、僕 夕鈴にいたずらするね。』
    「え!?」

    彼女の顔から血の気が引いていく。

    だが、残念ながら逃す気はない。


    『かわいそうだから、夕鈴に選択権をあげる。』
    夕鈴が固まってしまったのを見て、黎翔は柔らかい声音で告げる。
    小犬を装った狼が、彼女のためと言わんばかりに猶予を与える・・・フリをする。

    『1.僕が君にキスをする』
    黎翔の指先が、夕鈴の唇に触れる。

    『2.僕が、君が眠るまで子守唄を歌ってあげる・・・・眠るまでね。』
    黎翔が笑むと、夕鈴の肩がビクリと震えた。

    『3.寒くなってきたから、君の隣で添い寝してあたためてあげる。』


    「~~~~っ!?」
    僅かに緩んでいた表情は再びガチガチに固まっている。
    その顔色は赤だか青だか、月の光では色まで分からないけれど、


    『さあ、夕鈴どれがいい?』






    夕鈴は、くらりと世界が廻った気がした。

    ますかれいどをつけた紅(あか)い瞳のその色が深い紅色(くれないいろ)に。
    知らない瞳の陛下は、まるで唆す悪魔のようだった。


    選択は、限られている。

    ・・・・・夕鈴が選んだ選択は?




    運命はいかに・・・『☆はっぴい・はろうぃん☆』


    ・・・続く


    続きを読む

    『☆はっぴい・はろうぃん☆』・4【3つの選択肢】

    【3つの選択肢】『☆はっぴい・はろうぃん☆』その後の続き・・・・夕鈴の選択


     選択は、あまりにも少なく

     夕鈴の選択肢は、たったの3つ

     壁際にじりじりと追い詰められていく、哀れな獲物

     涙目で、見上げる赤は、濃い紅(くれない)の美しい狩人の瞳。

     ―――――――魅入られるその瞳、  

     漆黒の仮面の下で、焦燥感を煽る 獲物を狩る狩人の瞳が煌めく。                           



    『夕鈴、逃げてもムダだよ。』
    綺麗な綺麗な笑顔で、夕鈴を追い詰めていく。

    『お菓子がないんだから。』
    ね? と可愛らしく告げながら、仮面の奥の瞳は鋭く輝く。

    とりっくおあとりーと――― 聞き慣れない異国の言葉。
    お菓子をくれなきゃいたずらするぞ という意味の、今日だけ通じる呪文。

    『ハロウィンのルールに従わなければね。』
    (・・・本当は白陽国にはそんな祭りなど無いし、君が従う義理などないんだけど・・・)

    けれど素直な獲物は気づかない。
    そのまま罠へと誘われる。



    (そんなの選べないっ)
    じりじりと後ずさりながら、夕鈴はどうにか打開策を練る。
    けれど、浮かばずに逃げ道はだんだん無くなっていく。

    「・・・・えーーと。ほかに、選択肢はないんですか?」
    『これはルールだから、ほかにないんだよ。』
    一縷の望みも木っ端微塵に砕かれた。
    『残念だったね。夕鈴。』
    「・・・・・そんなぁ//////・・・。」

    ・・・・とんっ
    今にも泣き出しそうな兎は、とうとう壁際まで追い詰められた。

    黎翔は、夕鈴の頤(おとがい)を捉えて選択を促す。
    はしばみ色の瞳を仮面をつけた見知らぬ人が覗き込む。


    『夕鈴、お菓子がないんじゃ・・・しかたないよね。』
    覚悟は決めた?と追い詰めた狼が尋ねてくる。
    『もう一度、ゆうりん。君に聞くよ?』



    『1.僕が君にキスをする。』
    黎翔の親指が、夕鈴の唇を掠める。

    『2.僕が、子守唄を歌う。』
    顔を近づけた彼が耳元で低く囁く。

    『3.君の隣で添い寝。』
    近づいた熱がそっと離れて、紅い瞳が夕鈴を見つめる。


    『さあ、夕鈴選んで?』
    真っ赤になって固まる夕鈴に、綺麗なヒトが微笑んだ。



    ぐるぐる廻る世界の中、陛下の紅い瞳しか見えない。
    紅い瞳に囚われる

    陛下の赤い舌が、ぺろりと自分の唇を舐めた。
    その様は、まるで狼が舌なめずりしてるように見えた。


    ・・・・・夕鈴が選んだ選択は?

    運命は!?




    ☆はっぴい・はろうぃん☆ 3つの選択肢

    こちらから希望する選択肢を選んでください。


    『1.僕が君にキスをする』(※注:がっつり大人味♪)

    『2.僕が、子守唄を歌う。』

    『3.君の隣で添い寝。』

     

     ―――さあ、狩人の狩りの行方は?

    『とりっく・おあ・とりーと』ハロウィンの実

    ●こちらは、白陽国SNS地区での投稿作品。
    さくらぱん&Y白友・ピクシブよゆままのコミュ形式コラボ
    相手の文に、続けて繋げて書く方式です。

    ハロウィンに行われました。
    完全捏造・お馬鹿の実が入りました。
    本編設定の軽い乗りのコメディ・コラボ話。
    イメージ壊れたくない方は、読むのを控えてください。
    OKの方は、続いてお読み下さいませ。

    プロローグ


    西の国のハロウィンの時期に、またまたあの使者がやってきました。
    たくさんの黄色いかぼちゃを抱えて・・・・今回も、謁見の間にて話が盛り上がっている様子。

    うわぁーーーー!!!
    陛下が、喜んでいますよ。
    今回も、何かが起こる予感に、期待が膨らみます。


    西の国の使者については、こちらをお読みくださいませ。
    西の国の使者1
    【短編】今日は何の日「はぐの日」

     西の国の使者2
    【短編】『sign-サイン-』 ウィンクの日企画
     
    『とりっく・おあ・とりーと・1』 

    たくさんの黄色いかぼちゃが王宮から後宮へと運ばれてきた。
    そのかぼちゃは、なにやら中身がくり貫かれており、顔のようなものが描かれている。

    王宮の執務室から、後宮の夕鈴の自室待まで・・・・
    黄色のお化けかぼちゃの列。
    オレンジの隊列が続いていた。

    いつもの時間、政務室への日参をしようと自室を出た夕鈴は、
    いつもとは違う 渡り廊下

    毒々しいまでの鮮やかなかぼちゃの隊列に、
    ぎょっとして、愕いた。
    慌てて、側にいた。侍女に尋ねる

    「これは、どうしたのですか?」

    《お妃様、すみません。私にも、何もわかりません。・・・・が、陛下の指示だそうですわ。》

    また、なにやら良からぬ予感に、夕鈴はぶるりと寒気を覚えた。

    「しかも・・・・これ・・・・顔みたいですわよね。」

    夕鈴はあまりにも毒々しい黄色のかぼちゃの列に、ビックリする。

    「そうですわね・・・・お妃様、中身をくりぬいて作られていますわ。」

    ――――わ~~~~勿体無い!!!中身は如何したの???何処へ??

    あくまで夕鈴には食材となるべきかぼちゃの
    この姿に共感が持てないでいるのである。

    それに大量のかぼちゃが一斉に此方を見ていて、
    心の奥底を覗かれているようで落ち着かない。

    「一体なんのために???」

    ポツンと呟いた夕鈴の疑問を答えてくれる人物が、此方に歩いて来た。

    『夕鈴・・・私を置いて何処へ行こうというのだ。』

    「陛下・・・いやですわ。政務室へですが・・・陛下こそどちらに。」

    『いや・・・君にこのかぼちゃ達を披露しようと思って。』

    「この・・・・かぼちゃ・・・。何だか此方を見ているようで・・・・少し怖くて・・・・。」

    そのまま両手で顔を隠す・・・・。
    そんな仕草が愛おしくて、僕はガバッとイキナリ抱きしめた。

    「や・・陛下、いきなり何するんですか!!!」
    「は・・離してくださいませっ。」
    (恥ずかしいぃ~)

    『君が、あまりにも可愛らしいことを言うものだから・・・・』
    『君の目に、君の怖いものを見せないように、しただけだよ』
    『とっさ、だよ。・・・・ついな。』

    「・・・・つい、ですか?」

    してやったりの狼顔で、謝られても・・・・ねぇ。
    夕鈴は、疑念がつい湧いてしまう・・・涙目で陛下を睨みつけていた。

    足元の嗤うかぼちゃを見る。
    なんだか、私たち笑われてるみたい・・・・。

    むぅ・・・・

    「陛下、このかぼちゃくり貫かれてますよね。」
    「中身は?」
    「もしかして、捨てていませんよね?」

    夕鈴は、先ほどの疑念を、陛下に質問してみた。

    『我が妃は、そう言うと思ったよ。』
    『大丈夫、捨てていないよ。』
    『今頃、王宮の厨房でかぼちゃ料理になっていることだろう。』
    『お昼は、かぼちゃ尽くしだよ。』

    陛下はそういって、得意げに笑った。
    見えないぱたぱたが、誉めて! 誉めて!! と振られていた・・・・。←

    『さすがに、食べきれない量があってね。』

    夕鈴は、オレンジの隊列を眺めた・・・・
    た・・・確かに。
    二人では、無理・・・・・呆然と眺める。

    『それで、料理長が《パンプキンクッキー》なるものを今、作っているんだ。』
    『出来たら、王都の孤児院に持っていく。』

    「子供たちに配るのですか?」

    『いや・・・そこで販売をする。』
    『王宮料理人手作りパンプキンクッキー』
    『健康によさそうだし、売れると思わない?夕鈴???』

    「売れると思います。・・・・・あの、陛下。」

    『なに?夕鈴?』

    「白陽国って、そんなに財政難なのですか?」
    「だったら私、もっと質素倹約を・・・」

    『違うよ。夕鈴。』
    『売上金は、孤児院の運営資金になる。』
    『彼らの自立にもなるしね。』

    「そうなんですか。陛下。」
    「質素倹約。もっと、節約できるムダが後宮にあると思ったのに・・・」
    「ご披露できず残念です。」
    「スミマセン、勘違いしておりました。」

    柳眉を下げ、本当に残念そうにている夕鈴。

    『・・・ったく、君は・・・(可愛すぎるよ)』

    引き寄せた腕の中で、額にKISSをした。


     『とりっく・おあ・とりーと・2』 

    夜になり、くり貫かれたかぼちゃの一個一個に、蠟燭の明かりが灯された。
    焔が揺らめき影が、かぼちゃの瞳で揺れ動く。

    いつの間にか、夕鈴の自室の庭にも、かぼちゃの笑い顔。
    自室にいても、とても落ち着いてなどいられない。

    昼の陛下の言葉が思い出される
    《『君の目に、君の怖いものを見せないように、しただけだよ』》 

    (陛下のうそつき・・・)

    なぜ庭にまで、笑うかぼちゃを増やすのか。
    オレンジ色の灯に、憂鬱なため息。

    夜のかぼちゃの明かりは、ユーモラスでもあり、不気味だった。
    数え切れないほどの笑うかぼちゃ・・・

    すべてがこちらを見ている・・・・
    くり貫かれた空ろなかぼちゃが見ている・・・
    空虚な瞳。

    (いやぁっ!!!!)

    耐え切れなくて、夕鈴は、部屋を出ようとした。
    たくさんのかぼちゃが、部屋の出口の夕鈴を見ていた。

    踵を返して・・・部屋に戻ろうとしたそのときに・・・白いものが。

    『とりっく・おあ・とりーと?』

    固まる夕鈴。
    総毛だつというのは、こういうことを言うのだろう。
    鳥肌がたっていた。

    (白いものがしゃ  べっ   て     る?)

    『とりっく・おあ・とりーと?』

    (は???とりっく・おあ・とりーと・・・・・・? )

    ざわざわざわざわ・・・・・うぞぞぞぞ・・・・逆立つ産毛

    (なんか出たぁ!!!)

    『きゃあああぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ』

    ばきっ


    気付いたら、殴ってた。

    グーで。

    『痛いよ。夕鈴。』

    「はへっ・・・陛下!!!」

    白いものは、よく見たら寝台の敷布
    その中から現われたのは、陛下の姿。

    (ばきっ・・・ってさっき殴ったよね。私。)

    まだ、ジンジンする右手のぐぅを見る。

    さーーーーーーーーーーーーーーーーっ

    「きゃあ。ごめんなさい、陛下。」

    陛下が撫で摩る、陛下の顔に添えた手をどかして
    自分の殴った跡を見る。

    『・・・・結構、利いたな』

    「ごめんなさい。」

    『いや・・・僕も愕かせて悪かった。』

    「本気でびっくりしたんです。」
    「・・・・つい。ごめんなさい。」

    『分かっているよ。僕もごめんね。』

    ・・・・陛下の被っていた敷布に目をやる。
    今日の陛下は、どこかオカシイ。

    思い切って聞いてみた

    「どうして、こんなもの被ってたのですか?」
    「かぼちゃも・・・」
    「今日の陛下は、どこか変です。」

    心配顔で、見つめる夕鈴。
    部屋に招き入れられ、長椅子に座る僕に
    冷たい手巾で殴った跡を手当てしてくれている。

    驚かしたのは、僕なのに・・・なんて、優しい。
    ふぅ…
    そっと、ため息をはく。

    『ゆうりん』
    『とりっく・おあ・とりーと』

    淋しげに陛下が小さく呟く
    うな垂れた耳と尻尾が見える気がする。
    気落ちした小犬みたい。
    うるうるとした赤い瞳が、静かに夕鈴を見ていた。

    (・・・・?)
    「先ほどからの・・・・それ、何ですか?」

    小首をかしげて、夕鈴が質問する。
    なんか・・・夕鈴には、罪悪感がうまれていた。
    なんかとっても、悪いことしたみたい。

    (・・・・この瞳に弱いのよ。)

    『今日さぁ、西の使者が来たんだ。』

    (・・・・・!!! 西の使者!!!)
    悪い予感!!!

    『《はろうぃん》ってお祭りを聞いた。』
    ・・・・ますますもって・・、嫌な予感。

    『凄く楽しそうなお祭りだったから、真似してみたんだ。』
    『まさか・・・・夕鈴に殴られるとは、思わなかったよ。』
    (・・・・!!!!!)

    『かぼちゃのおばけを飾って、魔除けにして』
    ・・・アレなのか・・・

    『とりっく・おあ・とりーと』
    『お菓子をくれなきゃいたずらするよ』
    『そういって、お菓子を貰って、いたずらしても怒られない日なんだって。』
    ・・・・ホントに?

    『夕鈴は、危険が多いから、しっかり魔よけしなきゃ・・・。』
    ・・・・はぁ。

    なんか間違っていることに気付かない陛下たち。←(笑)
    それぞれが、それぞれに思い悩む、一夜だった。

    笑うかぼちゃは、次の日には、すっかり撤去された。
    西の国の使者が来たときは、
    注意しなくては・・・必ず、陛下が、何か起こすから・・・・



    次の日の朝、執務室にて
    目の周りがパンダ顔の陛下の顔に
    様々な憶測が、飛び交ったという。

    ☆お・し・ま・い☆
    よゆまま+さくらぱん作・コラボ作品

         

    終了しました。終わったら、オバカサンでしたね。
    西の国の使者が、来たときは、いつも、陛下がオバカサンです
    陛下は、本当に、いつもチャレンジャ―☆

    【長編】IF設定・パラレル踊り子『緋色の衣ⅩⅡ―ひいろのころも―』






    ・・・続き

    後宮のなかほど・・・
    角を折れた時に、その声は聞こえた。

    『今日も、陛下の許に呼ばれたか・・・』
    『陛下は、本当に、おぬしのことが、気に入ったようのじゃのう・・・』

    皺がれた老人の声に、夕鈴は、声のしたほうへと振り向く。
    目隠しをしているために、姿が分からない。

    『コレ、何処を見てるんじゃい。ワシは、コッチじゃ。』

    「そう言われても・・・姿が見えないもの。」
    「仕方が無いわ。」

    『ふむ・・・それもそうか。』
    『これ、そこのもの。その娘と話がしたい。目隠しを解いてやれ。この張元が許す。』

    ・・・はい。

    突然、目隠しを外されて、夕鈴はビックリする。
    陛下の部屋までは、目隠しのはず・・・・
    この老人のたった一言の言葉で、目隠しは外された。

    きっと、身分の高い人なのだろう。
    いったい、この老人は何者なのだろうか?

    『なるほど、澄んだ綺麗な瞳をしておる。素直そうな娘じゃ・・・陛下が気に入るわけじゃな。』

    意外と小さな老人は、白い顎鬚撫でながら訳知り顔で訊ねてきた。
    つぶらな瞳が、温かな光りを宿していた。
    どうやら、悪い人ではないらしい。

    『これで、ワシが見えるか?』

    「おじいさん、何者なの?」
    「陛下のお父さん・・・・って感じじゃないよね。」
    「・・・何者!?」

    『ワシか、ワシは後宮を取り仕切る後宮管理人 張元じゃ。』
    『おぬしに、聞きたいことがある』

    「なんでしょうか?」

    『陛下は、よくして下さるか?』
    『おぬし、昼は、よく眠れておるのか?』

    「陛下は、いつも優しいわ」
    「昼も、一座でしっかり眠むれているけど・・・。」

    『そうか。それはよい。』
    『おぬしは、陛下のお気に入りじゃ』
    『身体を壊しては、大変じゃからのう。』

    『こう毎晩毎晩では、お主も大変じゃて・・・』
    『陛下も、若いからのう・・・』

    苦笑しつつも、嬉しそうな張元。

    「私は、ちっとも大変ではないわ。」
    「むしろ楽しみだもの。」

    その言葉に、張元は目をみはる。
    夕鈴の隣に居た侍女も、ぽっと頬を染めた。

    『ずいぶんと素直な娘じゃわい。』
    『おぬしは、恥じらいというものを持っておらんのか。』

    呆れた張元の声。
    意味の分っていない夕鈴は、素直に答える。
    二人とも、会話がかみあっていないことに、気付いていなかった。

    「恥じらいって・・・ホントのことだもの。」

    まあ・・・問題はあるが、根は素直そうだし・・・後は、お妃教育で・・・ぶつぶつ・・・

    張元は、苦笑しながら、言葉を続ける。

    『おぬし、陛下のことをお慕いしておるか?』
    『どうじゃ・・・このまま陛下のお傍で仕えてみたいとおもわぬか?』

    「陛下をお慕いしているかどうかは、分らないけれど。」
    「陛下のことは、好きよ。」

    「仕えたいとは、思わないわ。」
    「私は、流れの民だもの。」

    「傍に居たいとは、思うけれど、それは無理ね。」
    「私は、家族と共にあるの。」

    張元の質問の意図が分らないものの。
    今の気持ちを夕鈴は口にする。
    その言葉は、張元の予想の範疇の言葉だった。

    『ーーーーー陛下を好きといいつつ、家族を捨てられぬか。』

    『おぬし、陛下から寵を賜っているのじゃろう?』

    その言葉に夕鈴は、真っ赤になり袖で顔を隠した。
    コクンと一つ頷く。

    『だったら、何故じゃ・・・』
    『陛下より、家族を選ぶとは・・・まあ、よい。』

    『娘よ。心に留めるがよい。』
    『きっと、どちらかを選ぶ時がくる。』
    『おぬしの心に素直になることじゃ・・・』

    『だがな、きっと陛下はおぬしが居なくなれば、嘆かれるぞ。』
    『ここに、留まる選択肢を忘れないことじゃな・・・』
    『おぬしの為に、もう一度、よく考えるがよい。』

    そういうと、夕鈴から去って行った。
    小さな後姿の張元の言葉を、のちに夕鈴は思い出すことになる。

    ・・・続く


    2013年
    05月10日
    07:50

    【長編】黒龍『紅龍2ーこうりゅうー』

    訪れた草原は、夏の面影は無く、すっかり秋の彩りに染まっていた。

    可憐な白や薄紫色の野菊と
    金色(こんじき)の女郎花(おみなえし)の花が咲き乱れ、
    薄(すすき)の銀の穂花(ほばな)が、爽やかな秋風にそよぐ。

    装いの色や空の色は、変われども・・・
    やはり、ここは落ち着く場所で あることには変わらない。

    伸びやかな空気は、王宮に無い自由を感じる。
    夕鈴の初めての遠乗りの場所を
    ここに決めて やはり良かったと黎翔は思った。

    隣の夕鈴を盗み見る。
    草原に向かい、自分と同じように明るい笑顔の彼女。

    普段の堅苦しい妃然とした笑顔でなく、
    下町同様の彼女の生来の気質が溢れた
    生き生きとした伸びやかな笑顔。
    その笑顔が黎翔は、大好きだった。

    厚手の毛織(けおり)の敷き布を
    黒龍の鞍から取り外した黎翔は
    草原の真ん中の丘に生える
    菩提樹の大樹の根元に 厚手の毛織の敷き布を敷いた。

    初夏に 小さな金色(こんじき)の鈴のような
    芳(かんば)しい花をつけていた菩提樹は
    夏の緑の装いを変えて 、秋色の赤の装いになっていた。

    うららかな秋の一日。
    鳥のさえずる声も、心を和ませる。
    そよそよと頬を撫ぜる秋風さえも、心地良い。

    くるくると廻りながら、菩提樹の種が地上へと落ちる。

    初秋の秋草が咲き乱れる草原。

    二人が休憩する場所として
    見晴らしの良い菩提樹の小高い丘は
    格好の休憩場所だった。

    黎翔は、いつものように黒龍の馬具を外し、黒龍を野に放す。
    草原へと駆け出す黒龍。

    夕鈴も、紅龍の鞍に付けた皮袋から、
    今朝、心を込めて作ったお弁当を取り出すと、
    黎翔に手伝ってもらいながら、紅龍の馬具を外してあげた。

    先に馬具を外した黒龍が、紅龍を待つ。
    乱れ咲く秋草の女郎花(おみなえし)の花を背に
    黒龍が草原の入り口にて
    紅龍を待っていた。

    二頭は身軽になった身を軽やかに躍(おど)らせ、
    秋の草原を自然のままに一直線に駆け抜ける。

    まるで、競争をするがごとく
    自由気ままに秋の野原に遊びゆく。

    しっとりとした金色(きんいろ)の女郎花(おみなえし)の花と
    柔らかな陽に透ける 輝く銀色の薄(すすき)の穂波、
    彩りを添える野菊の純白と薄紫。

    その中を黒龍の漆黒の軌跡と紅龍の明るい栗毛の軌跡が躍る
    仲むつまじい二頭が寄り添い 秋と自由を喜ぶ。

    時々聞こえる 二頭のいななき。
    幸せな二頭の姿に、夕鈴と黎翔は自然とあふれる笑顔がとまらない。 

    その姿を眺めながら、厚手の敷布の上で、うららかな木漏れ日を浴びた。
    輝きに満ちた草原は、どれもが黎翔と夕鈴を癒やしている。

    吸い込まれそうな澄んだ色の青空が地平線へと続いていた。
    このゆったりとした時の流れに、君が【貴方が】側にいること。

    それが二人にとって、ささやかだけど一番大事な幸せだった。
    緩(ゆる)やかに蜂蜜色した幸せな二人の時間が流れていく・・・・。


    ・・・続く


    2012.10.29.さくらぱん 続きを読む

    【長編】IF設定・パラレル踊り子『緋色の衣ⅩⅢ―ひいろのころも―』


    ・・・続き

    一つの季節が終わり、次の季節が訪れようとしていた。

    流れの民の夕鈴の一座が白陽国に留まりだいぶ時が過ぎた。
    王宮での生活は、満ち足りた生活ではあるものの。
    所詮は、間借りの生活。
    どこか窮屈で、息苦しい。

    それでも、一座の皆は、年若い家族の王の寵愛を喜び
    辛抱強く待っていた。

    彼女が、幸せになることを・・・・

    しかし、一向に彼女が寵妃に召されることはなく
    時が過ぎ、季節が過ぎた。

    一座の皆は、焦りだす。

    このまま、彼女の為に留まることが、本当に彼女の為になるのかということを。



    ある晩、しとしとと・・・柔らかな雨の降る星の見えない夜のこと。
    珍しく政務で忙しい陛下。
    予定の変わってしまった手持ち無沙汰な夕鈴を訊ねる一人の女。

    一座の長であり、母であり、姉でもある彼女のなりわいは、占い師。
    彼女の宣託は、一座の決定であり、皆が従っていた。
    黒いベールから覗く、深い黒曜石の瞳。
    吸い込まれそうなほど美しい瞳は、全てを見つめる。

    『寛いでいるところ、お邪魔するわね。夕鈴。』
    『貴方に、聞きたいことがあってお邪魔したの。』

    『明日の早朝、一座は南の国に旅立つわ。』
    『白陽国での仕事は、もうおしまい。』




    『貴女は、どうする!?』
    『貴女は、陛下に寵を賜っている。』

    『もちろん、ここに留まってもいいし、一緒に明日旅立つのもいい。』
    『夕鈴が、陛下が好きで傍に居たいなら、留まり幸せになりなさい。』

    『私たちと一緒に行くのなら、明日の出立です。』
    『陛下にお別れを言わねばね。』

    深い慈愛の夜の瞳が、夕鈴を見つめる。
    突然の話に、大きなはしばみ色の瞳が揺れた。
    大粒の涙が零れだす。

    「姉さま・・・・私、どうしてよいのか、分らない。」

    嗚咽し始めた妹を、優しく抱き寄せ慰める占い師。
    そのまま、長く癖の無い金茶の髪を撫でる。

    『突然のお話でごめんなさい。』
    『だけど夕鈴は、知っているでしょう?』
    『私たちは、流れの民。長く留まることは出来ない。』
    『鳥のように、自由をこよなく愛する。』
    『翼を無くしてしまったら、私たちは、死んだも同然。』
    『夕鈴、分るでしょう!?』

    「でも、でも・・・姉さま、明日なんて・・・」
    占い師の衣を握り締めて、泣きじゃくる夕鈴。
    衣が濡れるのにまかせて、彼女は夕鈴を抱きしめる。

    『貴女は、陛下のことが好きなのね。』
    『それと、同じくらい私たち家族も・・・・大好き。』

    抱きしめた腕に、きゅっと力を込める。

    『ごめんね。夕鈴、貴女には辛い思いをさせるわ。』

    『白陽国に、私たちは、長く居過ぎてしまったの。』
    『・・・・貴女の幸せを見届けようとしていたのだけれど・・・』

    ーー私には、陛下が、何をお考えになっているのか、わからない。
    そっと、占い師は心の中で呟いた。

    『それも、もう限界。』
    『もうそろそろ、次へと移動しなければ・・・』

    『貴女が、どのような決断をしようとも』
    『例え、離れることがあっても私たちは、家族。』

    『夕鈴、貴女を愛しているわ。』
    『一晩しかないけれど・・・、見方を変えれば一晩もある。』

    『夕鈴、よく考えて貴女の幸せになれる道を選びなさい。』

    そう言うと、占い師は、にっこりと夕鈴に微笑んだ。







    『貴女には辛い決断を強いるけれど、よく考えるのですよ。』
    部屋を立ち去る前に、一度だけ振り向いた占い師は、そう言って立ち去っていった。

    崩おれた夕鈴の耳に、音も無く雨が降る。
    ーーーーー優しい雨の音が聞こえていた。


    ・・・続く


    2013年
    05月10日
    10:51

    『☆はっぴい・はろうぃん☆』・選択肢2『兎の枕唄ーうさぎのまくらうたー』

    『2.僕が、子守唄を歌う。』




    選択肢2『兎の枕唄ーうさぎのまくらうたー』 続きを読む

    【長編】黒龍『紅龍1ーこうりゅうー』

    黄金(こがね)に輝く 欅(けやき)の木立を、先を行く黒龍と陛下。
    王領地の森は、燃え立つような 秋の景色に彩られ、輝きに満ちていた。

    欅(けやき)の木漏れ日に透ける 金色の陽射しは
    幾重にも重なり、陛下と黒龍を照らす
    黒龍が歩を進めるたびに、滑らかな筋肉に沿って
    黒い艶は、木漏れ日に輝く

    いくつもの黄金(こがね)の色の木漏れ日の光輪を弾き、
    本当に楽しそうに陛下は、黒龍との遠乗りを楽しんでいる

    寛(くつろ)いだ陛下の笑顔が眩しい。

    自分との二人乗りの姿しか、今まで見たことの無い夕鈴にとっては、
    いつもと違う 陛下の姿に 今まで私が同乗することで
    思うように楽しめなかったのでは?
    と考えていた。
    本当に申し訳なかった・・・と 夕鈴は考えた。

    陛下から、賜った《紅龍》
    赤みがかる栗色のたてがみ。
    優しい胡桃色に、蜂蜜を溶かしたような双眼
    妃としての私の馬。
    陛下が自ら選び、馬に一人で乗ったことの無い私の為に
    特別な調教を施した牝馬(ひんば)。

    妃の愛馬としてだけでなく、牡馬(ぼば)である黒龍の
    伴侶としても選ばれたのだという
    美しく足の速い強い《紅龍ーこうりゅうー》

    さすがに牝馬としての気品と優雅さに満ちて
    気性は穏やかで、優しかった。

    《紅龍ーこうりゅうー》が、私の元に来てから
    乗馬というお妃教育が始まった。

    むろん、一般市民の私には、馬に馴染みなどなく
    貴族と違い、乗馬訓練など もちろん受けたことなど無い。

    私の乗馬訓練の話は、だいぶ陛下と李順さんは揉めたのだという。

    《今までどうり黒龍の背に乗せるからいい》という陛下と
    《乗馬は、妃教育の必須項目である》という李順さんと。

    なんでも、万が一の戦の折、妃の逃げる算段として
    人質として敵に捕まらない為にも必要なのだということらしい。
    《夕鈴殿の身の安全の為だ 》と、説得したらしい。

    今日は、乗馬訓練を一通り終えての《紅龍ーこうりゅうー》と私の
    初めての遠乗り。
    心配した陛下が、黒龍で付き添ってくれた。

    乗馬訓練の仕上がりに不安を感じていた私には、
    初めての遠乗りに付き添ってくれる陛下の
    その気遣いが、とても嬉しかった。

    嬉しくて 今朝、早起きして二人分のお弁当も作った。

    秋の澄んだ森の空気は、爽やかに私たちを包む

    『夕鈴、疲れない?』
    「いいえ、陛下こそお疲れではありませんか?」
    『いや、僕は疲れないよ。』
    「もうすぐ、目的地ですか。」
    『もう少し先だけど、もうすぐ着くよ。』

    木漏れ日の中で、陛下が私に笑った。

    ゆったりとした歩を進める私達は、
    秋晴れの青空の下、王領地を抜け
    谷を通り、夏に訪れた草原を目指していた。

    夏には、満開の真珠花・・・百合の咲き乱れる草原だった。
    今は、季節が過ぎて、秋の訪れ。
    秋の草原は、夏とは違う彩りを見せているはず・・・・
    百合に代わり
    秋の花々が咲き乱れる草原を目指して・・・二人は馬脚を早めた。


    ・・・続く

    【短編】『天藍の玉響ーてんらんのたまゆらー』

    cimg.jpg


    はらはらと零れ落ちる
    オレンジ色の金木犀の花の下

    輝く太陽が地上を彩る
    降り注ぐ太陽は
    爽やかで柔らかな陽射しを贈る

    或る晴れた日の後宮の庭でのこと

    力強い弦の掻き鳴らされる音と
    五爪で叙情的に掻き鳴らされる二つの音色
    私がお使えするお二人の楽の音が、秋の澄んだ空気に響く

    素晴らしい琵琶の調べは、敬愛してやまない陛下のもの
    優しくそれに追従する月琴(げっきん)の調べは、私がお使えする夕鈴様のもの

    今まで、少しづつ練習してきた月琴(げっきん)の音色は
    お妃教育の賜物


    始まりからの月日を思い出す
    楽器など触ったことなど無いとこぼしていた夕鈴様。

    陛下から賜った月琴(げっきん)は、五色の綺麗な螺鈿細工の4本弦のもの
    膝に乗せ、五本の付爪で弾奏する

    手にする楽器を、悲しげに眺めては、いとおしげに撫ぜていた。

    「思ったとおりに、巧(うま)く音が出ない」

    と悲しげに呟いた日は、一日、二日ではない。
    そのたびに、陛下が慰められ励ましてこられた。

    『夕鈴、焦らないで。』
    『まだ、;練習を始めたばかりでしょう?』
    『大丈夫。夕鈴なら自分の音に出会えるよ。』
    『君の楽器は、きっと君に応えてくれるよ。』

    夕鈴様も、陛下の御心に応え、練習を重ねた。
    今日やっと、陛下と合奏して楽しむまでに上達した。
    ことのほか上達を喜んだのは、やはり陛下と夕鈴様だろう。
    なぜならば、夕鈴様自らが、今日の日を望んだからである。

    昨晩、ほんのりと頬を染め
    月琴(げっきん)を手にして
    おずおずと、陛下に明日の予定と
    合奏のお願いをした夕鈴様。

    その時の陛下の喜びに満ちたご尊顔の輝き
    この日を、どんなに待ち望んでいたか窺がえます。

    陛下の5弦の琵琶は、代々王のみが奏でることを許された
    由緒正しい宝物 (ほうもつ)

    背面(はいめん)の細工がとても見事なもの
    紫檀(したん)で作られた琵琶は、紫檀地(したんじ)の一面に
    白く光る夜光貝と真紅の赤瑪瑙(あかめのう)で、美しく螺鈿(らでん)され
    上方(じょうほう)に向かって、沸き立つような花鳥文様を表現されている

    中心の八弁花の夜光貝と紅い花芯の真紅の赤瑪瑙を細工し
    百花文様を中心に鴛鴦(おしどり)や鳳凰(ほうおう)を配した宝物(たからもの)であった。

    音も素晴らしく、低音域から高音域までよく響く
    代々王達が愛してやまない理由の一つなのだろう。

    陛下の紅い象牙の桴(ばち)が、
    時に激しく・・・・時に穏やかに・・・・・
    陛下の手により、創弦の音が掻き鳴らされる・・・・

    優しく導く陛下の琵琶の音は、
    常(つね)の夕鈴様への日頃の深い愛情を表現しいるかのよう・・・・
    初めての合奏に戸惑われ、緊張されている夕鈴様を優しく導く

    夕鈴様の五指甲で弾奏する月琴の音は、透明に空に優しく響く
    優しい夕鈴様のような繊細な音色
    陛下の琵琶の音に、叙情豊かに盛り上げる澄んだ複層の音色

    響きあう二つの楽器
    掻き鳴らされる四弦と五弦
    絡み合い、複雑に響きあう二つの楽の音。

    金木犀の優しい香りの中、時を忘れ楽の音を楽しむ御二人。
    暖かく降り注ぐ秋の穏やかな一日を、琥珀の音が彩る

    白い菊花が足元で風に揺れる。
    濃い青紫の竜胆(りんどう)の花が美しい。
    後宮の庭は、秋の草木が美しく彩る。

    抜けるように、澄んだ天藍(てんらん)の空の色
    紅く色づいき燃え立つように美しい紅葉の葉色。
    陛下の琵琶の桴(ばち)の形にによく似た、黄金色の銀杏の葉色。
    コントラストの美しい風景と響きあう妙なる玉響(たまゆら)の調べ。


    至福の音、眼福の時が後宮の庭に刻まれる
    私は、この御二人の至福の時に立ち会うことが出来き、無上の幸せなのです



    2012.10.28.さくらぱん



    1/6 本日まで、非公開でした。
    先ほど、凄く素敵なゲームになって帰ってきました。
    大変ご苦労なさったみたい。
    まだ、ゲームしてないんです。
    スチールの確認しただけ・・・・明日だな明日。
    めいさんと、コラボできて、凄く嬉しいです。

    この話は、某お絵かき白友様と続編コラボの話が持ち上がっています。・・・どうなるのかしら??
    例によって、ノープラン。

    【長編】IF設定・パラレル踊り子『緋色の衣ⅩⅣ―ひいろのころも―』




    ・・・続き

    部屋に一人。
    ぽつん・・・・・と一人。

    夕鈴は考えることが、出来なかった。

    ーーー陛下は、好き。

    ーーーだけど、家族は大事。

    どちらか一つなど、選ぶことなど出来ない。

    結論など、できるはずもなく、ぐらぐらと心が揺れる。
    鉛のような身体を引きずって夕鈴は、荷物を纏め始めた。

    出立は、明日。
    それまでに荷物は、纏めなくてはならない。

    長年の経験で、荷物を纏める作業は苦もなく進む。
    長びいた王宮の生活で、荷物もずいぶん増えてしまった。

    夕鈴が、次の荷物を纏めようと、重い衣装箱の蓋を開けた時。
    ーーー中に、あの『緋色の衣』があった。



    …ふっ…くっ…

    …うっ…

    ……っ。



    感情を押し殺して、荷造りをしていた空っぽの夕鈴から、嗚咽が漏れた。

    秘めた想いが、じくじく痛む。

    何も知らない自分だけれど…
    一つだけ分かっていたことがある。

    『―はじめての恋が、もうすぐ終わる―』

    陛下から、額にチョウを受ける度に、心が躍った。
    日を追う毎に、どうしようもなく陛下に惹かれていく自分。

    いつの間にか、陛下が、好きになっていた夕鈴。

    初めから分かっていた。
    いつか、必ずお別れの日が来ることを覚悟しての毎晩の逢瀬。

    踊り子と国王陛下の埋められない溝。
    叶うはずのない、身分違いの恋。

    『初恋は、実らない』

    誰かから聞いた、昔からの諺に、夕鈴は、心底そう頷いた。

    初めて陛下の前で、踊った宴の衣装。
    初めて好きになった優しい人との最初の記憶。

    夕鈴は、緋色の衣を抱き締める。

    毎晩、つのる想いを隠して、陛下に逢えることを楽しみにしてきた。
    それさえも、今夜を過ぎれば、もう会えない。

    ーーーきっと、もう二度と会うことはできないだろう。

    この夜が明ければ、夕鈴の初恋が終わる。
    きっとこの想いも告げずに、終わりを迎えるのだろう。


    ―緋色― それは、想ひの色。
    狂おしく想う恋の色。
    灼熱の焔の色。

    夕鈴の秘めたる想いを現すその色は、もうすぐ終わりを迎える彼女の初恋の色。

    ーーーーその初恋に、葬送の涙を。
    緋色の衣を抱きしめて、夕鈴は新たな涙を流すのだった。

    …続く。


    2013年
    05月10日
    12:25 続きを読む

    『☆はっぴい・はろうぃん☆』・選択肢3『小犬の夜話ーこいぬのよばなしー』

    『3.君の隣で添い寝。』



    選択肢3『小犬の夜話ーこいぬのよばなしー』 続きを読む

    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。