花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【長編】現代パラレル『Christmas Carolークリスマス・キャロルー1』

    ※こちらは、現代パラレル『クリスマス・キャロル』です。
    現代パラレルが苦手な方は、閲覧を控えてください。
    それでもかまわないかたは、どうぞお楽しみください。


    拗ねた小犬の彼が、背中にすがりつく…

    『ねぇ夕鈴。僕イヤなんだけど…』
    『夕鈴、行かないで、僕と居ようよ。』
    『今夜はクリスマス・イブなんだよ』
    『僕、ずっと楽しみにしていたのに…』

    確かに、12月に入ってからの彼の様子を、
    夕鈴は身近で見てきただけに…
    今の彼の落胆ぶりも
    この現在の状況もしかたないかなとも思う。

    本当は、自分も彼とクリスマス・イブを過ごしたい気持ちは、ある
    夕鈴も、初めて過ごす彼とのクリスマス・イブを楽しみにしていたのだ。

    だけど、めったに無い親友明玉の『お願い』に、彼より親友を取ってしまった。
    明玉が風邪をひいてしまい、バイトのピンチヒッターを快く
    引き受けてしまったのだった。

    楽しみにしていたクリスマス・イブを夕鈴自らが壊してしまった。

    後ろ髪ひかれつつも、すでにピンチヒッターの連絡は、バイト先に
    連絡済みだった。

    玄関先で、白の編み上げのロングブーツを履きながら・・・背中に縋る
    恋人に

    『ごめんなさい・・・行ってきます。』

    と、小さく呟いた。

    振り向いて見送る彼は、まるで捨てられて戸惑っている小犬のように
    見えない耳と尻尾がうな垂れていた。

    黎翔のじとっ・・・・とした視線が痛い。
    夕鈴の良心と恋心がズキズキと痛む。

    「ううっ・・・・ほんとにごめんなさい。」

    はァーーーーーーーーーーーーーーーー

    黎翔は、心の澱を吐き出すかのように長くて重い
    深いため息を吐き出した。

    こうと決めたら、けっこう夕鈴は、頑固だ。
    約束は、必ず守る。そして、とても優しい。
    それは、彼女の美徳なのだけど、今日はそれがとても恨めしかった。

    ため息を零して夕鈴をじっと見詰めた。
    彼女は、眉をへの字にして、本当に申し訳ないと
    心から思ってくれている。
    これ以上責めてしまったら、夕鈴がかわいそうだ・・・けれど

    『夕鈴・・・バイト先どこだっけ?』
    「○○○ですけど・・・」
    『・・・後で行くよ。』
    『夕鈴、気をつけて行っておいで・・・・。』

    そう言って夕鈴の額に素早く口付けて、夕鈴を送り出した。
    真っ赤な顔をした彼女を玄関のドアが閉まるまで見送った。
    ・・・・続く

    2012.12.23.
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    【長編】現代パラレル『Christmas Carolークリスマス・キャロルー2』

    ※こちらは、現代パラレル『クリスマス・キャロル』です。
    現代パラレルが苦手な方は、閲覧を控えてください。
    それでもかまわないかたは、どうぞお楽しみください。



    華やかなピンクのイルミネーションが飾られた街路樹。

    クリスマス・キャロルが流れる街角で、チラついてきた雪が、クリスマス気分を盛り上げる。

    街行く人々に声をかける夕鈴が居た。
    「いらっしゃいませ―♪」
    「美味しいクリスマスケーキはいかがですか?」

    にこやかに、笑顔を振りまき道行く人々に声をかける夕鈴。

    夕鈴のバイトは、クリスマスシーズン限定のバイト。
    真っ赤なAラインのワンピース。襟元・ワンピースの裾・袖口に白いフワフワなファーがぐるりと付いており、胸元に3つのファーボンボンの付いた膝丈のサンタワンピース。
    真っ赤に白いファーが縁取りされたサンタ帽子を被って、自前の白いロングの編み上げブーツを履いた可愛らしいサンタの恰好。

    その姿で、街のケーキ屋さん『チロル』の店の前で、『クリスマスケーキ』を売る店頭販売のバイトだった。

    「ありがとうございます。」
    「生クリーム7号ですね。」
    「3000円になります。」
    「5000円おあづかりします。」
    「2000円のお返しです」
    「ありがとうございました。」

    元気いっぱいの可愛いサンタに、街行く人々は、微笑みかける。
    聖なる夜は、賑やかに駆け足で時が過ぎる…
    夕鈴が、バイトを始めて1時間足らず…何故か、ビジネススーツを着たお客さんばかりが、ケーキを買っていった…

    残るはあと一つ【5号の生クリームのクリスマスケーキだけ】…

    このケーキが、売れれば、明玉のピンチヒッターは終わり、約束は果たされる。

    できれば『…後から行くよ』と約束してくれた、黎翔さんに買って欲しかった。

    バイト中、夕鈴の目の前を、幸せそうなカップルが、何組も通り過ぎた。

    すれ違うたびに、黎翔さんを思い出して…

    夕鈴は、空を見上げた。

    …雪が降る
    ふわりと舞い落ちる

    冷たくて…
    儚くて…
    とても美しい…
    雪の華。

    (…早く来て…黎翔さん。)

    先ほど別れた、恋人の寂しげな顔が思い浮かぶ。

    残ったたった一個のケーキを見つめて
    呟いた。

    「このケーキ、黎翔さんと食べようかな…」

    黎翔さんへのお詫びに買って帰ろうかしら?
    早く帰れるし…

    そう思った時、お客さんがやって来た。

    ・・・・・続く



    2012.12.23. 続きを読む

    【長編】現代パラレル『Christmas Carol-クリスマス・キャロル-3』

    ※こちらは、現代パラレル『クリスマス・キャロル』です。
    現代パラレルが苦手な方は、閲覧を控えてください。
    それでもかまわないかたは、どうぞお楽しみください。


    ・・・・・続きです。


    駆けてきたのか?
    吐く息も、白い小さなお客さま二人。
    勢いをつけて、夕鈴の目の前に現われた。
    幼い姉と弟らしい可愛いい小さなお客さま
    (うわっ…可愛い。昔のわたしと青慎みたい…)

    『「ケーキ下さい。」』

    夕鈴の手のひらに置いたのは、五百円玉四枚。
    握りしめてきたのか、夕鈴はまだ温かい硬貨を受け取った。

    『「わたし達、お小遣いを貯めて、お母さんにクリスマスケーキを買いに来たの…」』

    『「サンタのお姉さん、わたし達が持ってきたお金で買えるクリスマスケーキはありますか?」』

    夕鈴は、たった一つ残っていた5号の生クリームの
    クリスマスケーキを姉弟に見せた。

    「ごめんなさい。今残っているのは、これしかないの。」

    「全部で、二千円あるから、このケーキで良ければ、買えますよ。
    どうしますか!?」

    『「わぁ…」』

    夕鈴から、クリスマス・ケーキを見せられた、二人は喜んだ。

    『「それがいい!!」』
    『「サンタのお姉さん、これください!!」』

    二人は、声を揃えて喜んだ。

    「分かりました。ちょっと、待っててね。」
    「生クリーム5号ですね。」
    「2000円になります。」
    「2000円ちょうどおあづかりしました。」
    「はい、どうぞ。」

    しっかりと、ケーキの入った箱を姉弟に手渡します。
    夕鈴は、ケーキの箱に二人のために
    真っ赤なリボンも添えてあげました。

    『「わぁ・・・綺麗。サンタのお姐さん、ありがとう。」』

    二人は、リボンに喜んで、瞳を見合わせ喜びました。

    「気をつけて、帰ってね」

    『「はいっ!!!!。サンタのお姐さんさようなら」』

    そういって、大事そうにケーキを抱えて、姉弟は帰っていきました。
    とうとう、夕鈴は、バイトのケーキ全部売り切りました。

    最後の一個ぐらいは、黎翔さんに・・・・そう思っていましたが、
    最後のお客様が、あんな素敵なお客様でしたから、
    後悔はしていませんでした。

    むしろ最後の一個が、残っていてくれて、
    あの素敵なお客様に買われていって良かったと思いました。

    姉弟が、消えた街並みを見詰めます。
    何だか、夕鈴は、幸せな気分でした。
    心が、ほっこり温かいそんな気持ちです。

    クリスマス・キャロルが流れます。
    雪の降る煌びやかな幸せの街を
    祝福の歌が響いていました。

    いつの間にか夕鈴は、幸せな微笑を浮かべていました。

    ・・・・続きます。

    完【長編】現代パラレル『Christmas Carol-クリスマス・キャロル-4』

    ※こちらは、現代パラレル『クリスマス・キャロル』です。
    現代パラレルが苦手な方は、閲覧を控えてください。
    それでもかまわないかたは、どうぞお楽しみください。


    ・・・続き

    そんな優しい微笑みを湛えるサンタ・夕鈴に、後ろからふわりと抱きしめる人。

    『…ゆうりん』
    『やっと、来れたよ。バイト終わった!?』
    優しい抱擁と共に、黎翔さんの声…。

    「はい。黎翔さん。」
    『ふふっ・・・何だか幸せそうだね。夕鈴。』
    「はい。実は、・・・・」

    後ろから抱きしめたまま、夕鈴は、今の出来事を話していた。
    黎翔も、嬉しそうな夕鈴の姿についつい、つられて微笑む。


    「・・・・・・・・。」
    『・・・・・どうしたの?夕鈴。』
    突然、黙ってしまった、夕鈴を気遣い黎翔が声をかけた。

    肩越しに、夕鈴の顔を覗き込むと、涙目の凹んだ顔の夕鈴がそこにいた。

    「せっかく、来ていただいたのに、黎翔さんの分のケーキが無いんです。」
    みるみると溢れそうな涙は、零れるばかりで・・・・

    『夕鈴、大丈夫だよ。』
    『僕が、持ち帰りたいのは、ケーキじゃないから。』
    『僕が欲しいのは、君・・・・・夕鈴サンタだよ。』

    夕鈴の涙が零れそうな瞼に、優しくKISSをした。

    「・・・黎翔さん。」

    とたんに恥ずかしそうに身じろぎしながら、頬が赤くなる。
    そんな素直な恋人が愛しくてたまらない。
    黎翔は、もう一度今度は、赤くなった頬に素早くKISSをして耳元で囁いた。

    『もう、君を持ち帰っていいよね。』
    『さあ、そのままでいいから、荷物を取っておいで・・・』
    『夕鈴、家に帰ろう。』

    「はい。」

    二人手を繋ぎ、寄り添いながら家路に急ぐ。
    街並みにはクリスマス・キャロルが静かに流れていた。

    街路樹に飾られたピンクのイルミネーションが、
    きらきらと二人の周りに華やかに煌めく。

    雪の積もる足元に真新しくついた二人の足跡。

    穏やかで幸せなクリスマス・イブの恋人達。
    二人を祝福するかのように聖なる夜に、クリスマス・キャロルが響いていた。




    ーChristmas Carol・クリスマス・キャロル 完ー


    2012.12.24.
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