花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【書庫】アリスの口付け 瓔悠&さくらぱん 第一弾

    こちらは、2015年の Hallowe'en party  期間限定トピックにUPしたYコラボです。
    実は、2015年4月のぷちおんりーに出品しようと思っていた……最初の原稿でした。

    ところが、頂いたページ数に収まる気がせず、急遽【Yコラボ】陽だまり曜日に変更しました。

    【Yコラボ】陽だまり曜日  は、旧ハンネ・よゆままさんとしての最後のコラボ
    【Yコラボ】アリスの口付け は、新ハンネ・瓔悠さんとしての最初のコラボ

    途中、瓔悠さんの手首の負傷もありつつ、完成が危ぶまれましたが・・・
    瀬戸際の彼女の強い意志で完成することが出来、無事Hallowe'en party に間に合うことが出来ました。

    二人とも、萌えをギュッと詰め込んだつもりです。
    長いお話ですけど、お楽しみください。

    2015.11.07. さくらぱん





    書庫は、追記に折り畳んでおります。









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    【Yコラボ】アリスの口付け 1

    眩い西陽が、私の影を伸ばす……
    もうすぐ陽が暮れようとしている時間帯。
    夕闇が迫る空は、淡いラベンダー色に染まりだしていた。
    街の灯りが、煌く星のように一つずつ増えていく……

    そんな時刻に何故か私は
    今、話題のテーマパークの入り口で、ひとり佇んでいた。

    テーマパークのゲート前の時計は、午後5時半を指している。
    黎翔さんとの待ち合わせ時間は、午後5時。
    なのに、いくら待っても黎翔さんの姿は見えない。


    「遅いなぁ~~
    どうしたのかしら?」


    左右、どちらの道から来るのか分からなくて、
    さっきから私は、左右の道を見ながら待ち人顔だった。

    今日は、普段忙しい黎翔さんからの急な誘いで
    来たというのに、誘った本人がまだ来ない。

    「明日の5時に○○遊園地前で。」

    珍しく 用件だけの短いメール。

    (よっぽど忙しいのかしら?
    だったら、無理してデートしてくれなくてもいいのに……)

    そう思ってしまうのは、
    大好きな彼を思うからこそだったけれど。

    こうして実際デートの誘いがあると、
    やっぱり ウキウキしてくる気持ちを、私は抑えられなかった。
    そんなことを考えていた時だった。


    ……
    …………

    ドン

    Σ!!!!
    「んぎゃ!
    だっ…誰っ?」


    急に背後から、ギュっと抱き締められて大きな衝撃……

    ち…痴漢っ?
    むね…胸触られてるぅ……

    「ゆーりんっ!
    ごめん。
    お・ま・た・せっ!」

    「その声は黎翔さん!?」

    ぃ…一瞬、心臓が止まったよ~~
    黎翔さんのバカッ!バカッ! バカッ!


    右でも左でもなく……
    突然、背後からギュウギュウ……に、抱きしめてきた恋人に
    私は物凄くびっくりしたのだった!

    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 2

    嘘でしょ?! 嘘でしょ?! 嘘でしょ?!

    ぎゃああああぁぁ~~~~

    なんで?
    なんで? ……後ろから?

    「黎翔さんっ!
    もう驚かさないでください!」


    予想もつかない方向からの
    突然の恋人の出現に
    私の心臓の動悸が治まらない。

    まだバクバクという心臓は、耳の奥で耳障りな音をたてていた。
    私は瞳に大粒の涙を浮かべて、彼に抗議した。

    「心臓が止まるのかと思いました!
    普通に来てくださいっ!
    普通にぃぃぃ~~!」

    「いつ?
    いつ、来たんですか?」

    「私、左右の道を見てましたけど、
    車も人も、何一つ通りませんでしたよ?」

    「なんで遊園地の中から来るんですか?
    他に入り口なんて、ありましたっけ?
    私、 待ち合わせの場所を間違えました?」

    矢継ぎ早に、黎翔さんに質問をしてしまうのは
    この恥ずかしい状況を一刻も早く改善して欲しいから。

    私は、黎翔さんの腕の中から逃れようと
    身をよじって離れようと、努力してはみたものの……無駄だった。

    私を強く抱き締めて、離してくれない恋人は、
    実に楽しそうに、クスクスと笑いながら、私の耳元で囁いた。

    「間違えてないよ。
    時間に遅れたのは悪かった……
    ゆーりん、しばらく会えなかったけど……
    元気だった?」

    ひゃあぁぁぁぁぁぁぁ~~~~

    声無き悲鳴。

    久しぶりに会う恋人の生の囁き。
    腰砕けそうになる色気ある魅力的な声が、吐息混じりに私の耳朶を嬲る。

    (ひゃあ!
    ここは、遊園地の入り口ですよっ!
    他人の目もあるし、はやく早く私を開放してくださいぃぃぃぃぃ~~)

    そんな恥ずかしい状況。
    なのに久しぶりに出会えた嬉しさで、私は林檎のように真っ赤に顔が染まるのだった。

    ふと見渡すと、なぜか私と彼の二人しかここには居ない。
    平日の夕方とはいえ、いま話題の遊園地。
    なぜか帰るお客さんが一人も居ないことが、とても不思議だった。


    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 3

    私が不思議そうにしていると、それに気付いた黎翔さんが説明してくれた。

    「あれぇ!?
    伝えてなかったっけ?
    ここは僕が所有する遊園地だよ。」

    「今夜は、ゆーりんと僕の貸切にしたんだ」

    「いつも会えなくて寂しい思いをさせてごめんね。
    デートも満足にできないし……」

    「……別に寂しいなんて
    私、ひと言も「Σ痛っ!」」

    抱き締める力が、一瞬強くなり……
    私は、痛さで悲鳴をあげた。

    「夕鈴、強がらなくていい…… 僕は知ってる。

    優しい君が、いつも寂しい思いを
    我慢していることを……」

    「僕も、君に会えなくて寂しかったんだ。
    恋人なのにね……ごめん」

    ポツリと言った黎翔さんの寂しそうな声に
    肩越しで振り向いた私は、
    傷ついたような瞳と視線が、かちあった。

    その瞳はすぐに消え去り…小犬のような明るい瞳が変わりに輝いた。

    「 僕、久しぶりのデートだから、
    今夜を、ずっと楽しみにしてたんだ!
    今夜は、いっぱい遊ぼうね、ゆーりん!」

    私より年上で世界中を飛び回り、その辣腕ぶりで
    「狼陛下」と呼ばれている黎翔さん。

    いつも忙しくて、時間の取れない彼が、
    わざわざ私とのデートの時間を作ってくれたのだと思うと
    それだけで、とても嬉しくなる。

    「ありがとう、黎翔さん」

    微笑んだ私に、黎翔さんが無邪気な小犬のような笑顔を返してくれた。

    いつもは大人びた彼なのに、今日はホントに子供みたい。

    ……なんだか今日の黎翔さん、可愛い。

    黎翔さんの嬉しそうな様子に、私もつられて嬉しくなる。
    ドキドキ……と、心臓が踊りだす。
    ハミングと、スキップを同時にしたい気分。

    今から始まる遊園地デートに、いやでも期待が高まった。

    「さあ、遊ぼう、ゆーりんっ!
    時間が勿体ないよ!」

    私の手を引きながら、テーマパークのゲートを二人でくぐって中へと入った。

    ……ホントに子供みたいだわ。

    待ちきれないといった雰囲気で、
    今にも遊園地を、駆け出しそうな彼の様子に、私はクスリと小さく笑った。


    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 4

    そういえば待ち合わせてのデートって……
    これが初めてかしら!?

    いつもだと、黎翔さんが家まで迎えに来るか、
    学校の近くまで迎えに来てくれていた。

    しかも途中で、仕事の呼び出しが入ったり、
    いいところで邪魔が入ったりして、デートは中止になっていた。
    まともにデートが終ったことがないのが、悲しい現実だった。

    ……今日は、そんなこと無いといいな。

    チラリと掠めた不安を、黎翔さんの楽しげな笑顔が打ち消してくれた。

    今日は黎翔さんの雰囲気が、いつもと思うのは気のせいかしら!?
    久しぶりのデートだからかな?

    ……きっと、そうだね。
    だって、私もドキドキしてるもの。

    握られた大きな手を握り返して、遊園地のゲートを一緒に進んだ。

    入ってすぐに、黎翔さんから握られた大きな手をパッと離されて、
    私は大きく戸惑った。

    「ここからは、しばらく男女別々なんだ。
    ここは不思議の国のアリスのテーマパークだからね。」

    「お客さんは、アリスの登場人物になりきって遊ぶんだ。
    あの建物で着替えておいでよ。
    僕も着替えて、向こうの出口で待っているからね。」

    イタズラっぽい笑顔を残して、黎翔さんは着替える為に
    男性用の入り口に姿を消した。


    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 5  鏡の中のアリスな私

    「「「いらっしゃいませ♪
    Alice in Wonderlandに、ようこそ!」」」

    建物に入ると、コミカルで軽快な衣装を身につけた3人のお針子たちが、
    私を待っていた。

    「「「いつもですと、お客様にお好きなご衣裳を選んでいただくのですけれど……
    今日はオーナー直々の御指示で、
    お嬢様には、こちらのお衣装に着替えていただきます。」」」

    あっという間に、ふわりとした水色ワンピース。
    白いエプロンをつけて、スカートの中には、ご丁寧にドロワースまで穿いて
    長い金茶の髪は丁寧に梳られて、半分だけ結い上げた髪に
    ワンピースとお揃いの水色の大きなリボンが飾られた。

    鏡の中に映る私は、すっかりお伽の国のアリスの主人公そのものだった。


    「「「とても、お似合いですわ♪
    さあ!
    オーナーが外でお待ちです♪
    行ってらっしゃいませ、アリス様。
    楽しい夜を!」」」

    お針子たちは楽しげに歌い踊りながら、笑って私を送り出してくれた。

    煌びやかな夜のイルミネーションとPOPで楽しげなBGM。
    出口から出た私を待っていたのは、発光きのこが弾む
    摩訶不思議な世界。

    その中にシルクハットの背の高い紳士が一人。
    柔らかな黒髪を、夜風に靡かせて
    帽子を取って、軽くお辞儀をする私の恋人、黎翔さん。

    「やっぱり、ゆーりんは可愛いね♪
    まるで本物のアリスみたいだ。」

    「黎翔さんも、カッコイイです……////」

    「僕は、帽子屋だ。
    ゆーりん専属のね。」

    私に、軽くウィンクを贈る黎翔さん。

    イルミネーションに、優しく煌く黎翔さんの紅い瞳が綺麗で……私に微笑む黎翔さんの微笑みが優しくて
    私は思わず、ぽぉっと見とれてしまった。

    「さあ遊ぼう、ゆーりんっ!
    時間が勿体ないよ!」

    差し出された手に手を重ねて、二人だけのロマンティックなシュチエーションに、否が応でも期待が高まる。

    近くのカラクリ時計が、賑やかに鳴った。
    ドキドキのアリス・デートのはじまりの合図。

    煌びやかな色彩に煌く噴水が立ち昇る
    まるで星が落ちてきたかのよう……

    私たちは、噴水とカラクリ時計が終わる前に不思議の国へと駆け出していった。


    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 6  光りの中のメリーゴーランド

    「ねぇ!?
    アレに乗ろうか?」

    まだ息が整わない私に、黎翔さんが指差すアトラクションはメリーゴーランド。

    「えっ!?
    アレですか?」

    メリーゴーランドなんて、
    小さな子供のとき以来、乗ったこと無い。

    「うん♪
    僕、ゆーりんと一緒に乗りたいな!」

    手を握られたまま黎翔に連れられて、メリーゴーランドの前にやって来た。

    そこには煌びやかな鞍を付けた白馬に、勇猛な黒馬。
    花があしらわれた馬車に、キラキラ光る七色ガラスで彩られた馬車。

    まるでお伽話から抜け出たように美しい色彩に溢れたメリーゴーランド。
    煌びやかな電飾に彩られた、メルヘンな世界が目の前にひろがる。

    「メリーゴーランド
    綺麗ですね。」

    「そう??」

    自分がデザインさせたメリーゴーランドを
    恋人に褒められて、黎翔は少し嬉しくなった。

    「では、アリス 。
    メリーゴーランドへ、ご案内致しましょう!」

    ニッコリ微笑んで黎翔さんは、私をさっと抱き上げた。
    水色のスカートがフワリと揺れ、私の身体が宙に浮く。
    そのまま黎翔さんの腕の中に納められた。

    「キャッ。」

    急な恋人の行動に、私は小さな悲鳴を上げる。
    でも悲鳴くらいで、黎翔さんは私を降ろしてはくれない。
    落ちそうになった不安定な身体を、私は黎翔さんの首に腕をまわして支えた。

    黎翔さんに抱きかかえられたまま……ゲートをくぐり、
    スタッと、一番豪奢な白馬の上に、チョコンと降ろされた。

    すかさず黎翔さんは、
    私の後ろに跨がると、二人乗りで白馬に乗った。

    「なんで?
    黎翔さん、白馬は他にもありますよ!」

    「なんで…って。
    僕は、君と乗りたいんだ!
    ……夕鈴は嫌なの?」

    「だって……貸切なのに。
    なにも、二人乗りしなくたって……」

    「ゆーりん。
    こういうのは恋人と二人乗りだから、楽しいんだよ!」


    うわっ!
    ち…近いっ!
    ///////恥ずかしい~~

    夕鈴は、恥ずかしげに身を捩らせて、
    涙目で訴えている……その仕草が可愛い。

    困ったな。
    ますます困らせたくなる……
    僕は、彼女を困らたい気持ちを心の中でたしなめた。


    ジリリリ……
    発車のベルが鳴った。
    始まりの合図と共に、メリーゴーランドが、ゆっくりと廻りだす。

    白馬から降りようとしていた私を

    「……危ないよ」

    と、黎翔さんは抱え直してくれた。
    だけど、どさくさ紛れに私の額にkissをしてくる。

    僕は、Kissしたとたん真っ赤になった可愛い恋人を抱えて、くるくると廻るメリーゴーランドを楽しんだ。
    何度君を困らせても、このイタズラだけは楽しい。

    僕にとっても、いつ以来のメリーゴーランドだろうか?
    久しぶりに乗るメリーゴーランドは、子供の頃とは違う楽しさに溢れていた。

    温かくて……

    くすぐったいほど、嬉しくて……

    すごく楽しい。

    きっとそれは、ゆーりん。
    君が僕にくれた贈り物。

    僕たちは、煌びやかに輝く光の渦に飲み込まれ
    つかの間の光のメリーゴーランドの時を共に過ごす。
    ささやかな楽しみと共に……

    私の頬を啄む黎翔さんを、誰も止める者も咎める者も居なかった。

    メリーゴーランドが止まる頃。
    私は、すっかり茹で上がってしまっいた。
    腰砕けた私を抱えて、黎翔さんはご機嫌で耳元で囁いた。

    「もう一回乗ろうか?」

    冗談じゃない!
    メリーゴーランドの動く間中、顔にkissの雨なんて……

    こんな恥ずかしいこと、二回も乗れないっ。
    パクパクと恥ずかしさで声が裏返った。

    いいえ。
    もう、結構です!」

    慌てて真っ赤な顔で、ピシャリと断った。
    黎翔さんは残念そうに、じっと私を見つめて

    「……ダメ!?」

    「もう、無理です。
    黎翔さんだけで、乗ってきてください。
    私は、ベンチで休んで待っていますからっ!」

    「ゆーりん、それじゃ乗る意味が無い。
    君と乗るから楽しいのに……」

    黎翔さんは、まだ何か言いたげだったが
    今度は、すぐに諦めてくれた。


    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 7  ハートの女王の広場にて

    メリーゴーランドで腰砕けた私を、休ませる為に
    黎翔さんは、パークの中央にある大きな広場に連れてきてくれた。
    ここからは、ハートの女王のお城が正面に見える。

    突然、お城の方向から色鮮やかな花火が上がった。
    赤や黄色、緑や青、紫やピンクといった華麗な光の花が、
    次々と夜空に咲いていく。

    「わぁ~~♪
    綺麗!」

    私が瞬きも忘れて、花火に魅入っていると……

    「ゆーりん♪
    お腹が空いたでしょ!?
    はい、コレ♪」

    黎翔さんから、チュロスとコーラが手渡された。
    いつの間に、買いにいったんだろう?
    気がつかなかった……

    「ありがとうございます♪
    ちょうどお腹が空いていたんです//////
    嬉しい♪」

    そういえば、お昼から何も食べてない。
    ゲンキンな私のお腹は、食べ物に反応し、
    “くくぅ~~”と、お腹が鳴るのだった。

    聞こえてないよね?
    今の音?

    私は、チュロスとコーラを受け取りながら、
    黎翔さんにお礼を言った。

    「ちゃんとした食事でなくてゴメンね
    せっかくの遊園地だし、たまには外もいいよね。
    それに、君とここの名物のチュロスがたべたかったんだ♪」

    「それに、この花火を合図に、
    もうすぐパレードが、ここを通るよ!」

    「パレードですか!?
    わぁ、楽しみ♪」

    このパークの名物“イルミネーションのパレード”が見れると知って、
    私は顔を輝かせて喜んだ。


    …………
    ……………………


    パレードを待つ間
    二人で、チュロスを頬張っていると……


    「ぁ……
    ゆーりん、動かないで!」

    驚いた黎翔さんの声。
    黎翔さんの手が、私の顔に伸びて簡単に捕らわれた。

    チュロスを頬ばっていた私は、驚いて食べるのを止めた。
    黎翔さんに引き寄せられて、黎翔さんの顔が……唇が、私の顔に近付く。

    え?

    ……え??

    何が起こっているのか把握できなくて
    でも恥ずかしくて、耐えられなくて、ぎゅっと目を瞑ったら
    私の唇あたりで、湿った温かく柔らかな感触。

    Σ!

    んぎゃ!

    いま、ペロッて……ペロッて

    ぺろって黎翔さんに舐められたっ!?
    私はkissに驚いて、瞬く間に湯気が出た。

    「ゆーりん、ご馳走様 。
    チュロスの砂糖が、ついてたよ」

    嘘!
    ヤダ、子供みたいっ!
    恥ずかしい~~~

    恥ずかしさで身悶える私をよそに、
    黎翔さんは、涼しげな顔。

    「ゆーりん、可愛い♪

    あっ、こっちにも……」

    また口付けようとする黎翔さん。
     もうその手は通じませんよ!
    私は、とっさに両手で口を隠した。

    「もう砂糖は、ついてません!」

    口付けしようししていた黎翔さんは、私に狙っていた場所をガードされて
    とても残念そうな顔をして、諦めたように見えた。
     
    私がホッ…と油断したその時。
    すかさず……

    “chu!”

    と、今度は、私の額にkissしてきた黎翔さんっ!

    私は、黎翔さんの突然の行動に驚き、
    防ぎきれなかった悔しさと恥ずかしさで、顔が火照てって仕方が無い。

    たった今、kissされたばかりの額が熱い。
    私は、額を手で押さえて、恥ずかしくて身悶えた。

    「そんなところにお砂糖は、つきませんっ!」

    焦り怒る私の絶叫の声と黎翔さんの明るい笑い声が、
    静寂のパーク内に響いていた。



    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 8  万華鏡のようなパレード


    華やかな音楽と煌びやかなイルミネーションが、目の前を行き過ぎる。

    夜のパレードは、七色の吐息。
    不思議の国の夢空間。

    甘い粉砂糖がけのチュロスを頬張りながら見る
    真夜中のパレードに、私は夢中だった。

    綺麗に飾りつけられた車には、
    不思議な格好をしたおとぎ話の主人公達が、
    軽やかなステップを刻み踊りながら、私達に手を降ってくれる。

    少し顔を紅潮させてパレードを見つめる私を
    隣に居る黎翔さんが、いつの間にか肩を引き寄せていた。



    ……
    …………


    デートを決めて良かった。
    瞳をキラキラと輝かせて、とても楽しそうな彼女。
    パレードの音楽に合わせて、リズムをとる姿も、可愛い。

    今回のデート時間を捻出するため、
    僕は、今日まで仕事を少々無理してきたが、
    楽しそうな彼女の様子に、それまでの苦労が報われた気がした。

    こんなに楽しそうな彼女の姿を見るのは、本当に久しぶりだった。

    あっという間に、チュロスを食べ終わった僕は、
    夕鈴の肩を引き寄せながら、囁く。

    「どう?
    楽しい?
    どうせならパレードに混ざって、僕らも踊ろうか!?」

    「いいえ、いいです。
    楽しいけど……
    パレードで踊るなんて恥ずかしいですから……」

    僕を見つめる君の瞳がイルミネーションに彩られ、輝いている。
    このまま、ずっと夜が明けずに 君と一緒に過ごせたらいいのに……

    こんなに愛らしい君と、ずっと見つめていたい……
    いっそ、今夜は帰さないか……
    僕は浅はかな考えが浮かんだ。

    僕の君への想いは、パレードの光のように流れて
    留まることを知らない。

    今日は、僕たちの特別なデートにしたい。
    夢のように楽しい 僕たちの最高の思い出に……

    僕は、更なる君の笑顔が見たいんだ。
    そのための準備を、少しずつ進めてきた。

    僕の人生をかけた計画は、ここまで順調だ。
    こんなにも楽しそうな彼女は見たことが無い。

    あとは…………
    最高のロケーションとシュチュエーションで、あの計画を実行するのみ。










    僕は、彼女の唇に今すぐkissしたい衝動を抑える代わりに
    彼女を自分の方へと、ゆっくりと引き寄せるのだった。


    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 9 怪しいバイト

    煌びやかなパレードの中、
    黎翔さんの隣で、夢見心地で幸せな気分に浸る私。

    流れる光の洪水の中……
    ふと黎翔さんとの
    不思議な運命的、出会いを思い出していた。

    ……
    …………
    ……………………

    出会いは、
    今から3年前。

    私がまだ高校生の時で……。
    父の、あの一言がキッカケだった。

    「夕鈴。
    割のいいバイトがあるんだが……」

    「バイト?」

    「ほら、
    お前バイトを増やしたいって、
    前に言っていただろ!?」

    「確かに言っていたけど、
    よく考えてみたら、
    時間のやりくりが大変かなぁ~って……」

    「そんな心配いらない、
    バイトだよ」

    「ある会社ビルのフロア清掃なんだが……
    “割がいい!” “時間の融通が利く!” “高校生でもOk!”
    ……と、なかなか条件が良くてなぁ。
    いま夕鈴が、かけもちしているバイトを全部辞めても、
    バイト代が増額になるんだよ。

    ……ほら!?
    なかなか、いいバイトだろ!?」

    「とうさん。

    そんな夢のようなバイトが、あるはず無いじゃない!
    また、騙されたのよ!」

    「そんなことないぞ!
    それってウチの会社の本社ビルだし……」
     
    「雇い先は、本社の秘書課だから
    絶対大丈夫だって!
    父さんが保証する!!」

    父さんと、そんなやり取りをした数日後。

    人の良い父さんが、騙されたこと数知れず……
    好条件のバイトに、かなり疑う気持ちを持ちつつも……
    私は、そのバイトの面接を受けることにした。

    面接官は、結構イケメンの眼鏡の青年だった。
    “社長の秘書をやっています”と
    簡単な自己紹介をされた。

    (この人、若い人みたいだけど社長の秘書だなんてエリートなのね)

    てっきり人事部のおじさんが、面接官だと思っていた私は、
    いつもの面接と違って、変に緊張してきた。

    銀縁の眼鏡越しに、値踏みされているような厳しい眼差しに圧倒された。

    実はこの人、めっちゃ怖い人?
    それとも面接だから、こんなに怖く感じるのかしら?
    やだ、手のひらに変な汗が出てきちゃった。

    「貴女が、応募者ですね」

    「はい!
    宜しくお願いいたします。
    汀 夕鈴です」

    「元気があって、宜しい!
    ところで貴女、高校生と伺っていますが……」

    「はい…………そうですが?」

    「高校生ですか……
    それは、ちょっと例のバイトに、
    採用するというわけには、いきませんねぇ……」

    「はい??」

    「いえ、こちらの話です。
    一応、確認だけはしておくと致しましょうか!?」

    「確認ですか?」

    「ええ。
    率直に聞きますが……貴女、彼氏は居ますか?」

    この会社は大丈夫なのかしら?
    と思ったのは、この時だった。

    だって、ただのフロア清掃のバイト面接で
    彼氏の有無を聞かれるとは思わなかったから。

    私は今までのバイト先をすべて辞めて、
    この面接に臨んでいた。

    落とされるのは絶対に困る!

    食べ盛りの弟がいる、うちの家計は毎月、火の車。
    進学を望む弟の塾代も、バカにならない!
    私の脳裏に、可愛い弟の顔が浮かんで消えた……

    絶対に、このバイトを受かってやるっっ!
    太ももの上で重ね合わせた両手に力が入った。

    私は、この変な質問が仕事にどう繋がるのか疑問を持ちつつ……
    分らないまま正直に答えた。

    「いいえ、居ませんが……
    それが何か?」

    「そうですか。
    それならば、結構です」

    「汀 夕鈴さん
    貴女を採用いたします!」

    「は、はいっっ!
    有り難うございます。
    一生懸命、頑張ります!」

    こうして私は、このバイトを始めることとなった。



    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 10  不思議な出会い

    そして始めた
    ビル清掃のアルバイト。

    このビルは、大きくて広くて、
    思ってたより結構大変だった。

    確かに割は良いかもしれないけれど、
    その分すべて清掃するには、体力も必要だった。

    私は中途半端なことが大嫌いだから、
    “やるなら完璧に!”を、遂行していた。

    だからバイトを初めて3か月、このビルで働く人の顔なんて
    誰一人として覚えることなんてなかった。


    あっ、一人だけいた!!
    あの時の眼鏡の面接官だけ。

    兎に角、それくらい一生懸命に
    ビルの清掃に精を出していた…。


    ****


    「君が新しいバイトの子??」

    フロアの床の頑固な汚れを、ゴシゴシ拭いていた時に、
    不意に頭上から、声が降ってきた。

    俯いたままの私の耳に届いた声は、
    低いけど、温かみのある声質で……。

    まず、その声に惹かれた。

    その声に導かれ、私は顔を上げた。

    目に飛び込んできたのは…印象的な深紅に輝く瞳。
    私を見据える瞳は、力強くて
    視線を逸らすことが出来なかった。

    私の傍らに佇むのは、すらりとした長身。
    仕立ての良いスーツに、身を包んだ若い男性。
    顔だちも涼やかで、キリッとしたイケメンの青年だった。

    きっと、女性社員の憧れの的なんだろうなぁ~と容易に予想出来る顔立ち。
    まぁ、私には関係ないことだけれど……。

    そんなことを考えていた私は、その人の返事を一瞬遅れてしまった。

    「えっ、はいっ、
    そうです!」

    「そう…君が」

    「?」

    その人はその一言を呟くと、
    私を見詰めたまま黙ってしまった。

    私はどう返答してよいのか分からず、
    モップの柄を握りしめたまま固まった。

    広いフロアには、私たち二人だけしかない。
    お互いが黙りこくったことで、辺りになんとも気まずい静寂が漂う。

    私は掃除を再開したくても、
    その人の視線が気になって動きだせない。

    「あの…私。
    ここのお掃除をしたいんですが」

    「ああ、どうぞ」

    そんなこと言われたって、出来っこない。
    見つめられたままだから……。

    「…私、何かヘンですか?」

    彼は私の何が気に掛かっているのか?
    すごく気になって訊いてみた。

    「ヘン?
    いいや、別に」

    別に?
    そんな事、無いでしょう。
    じゃあ、どうしてただの清掃バイトを
    じっと見てるっていうのよ?

    私の中で、疑問符が飛び交う。

    ええい!
    もう知らない!!

    私は、再びモップを動かし、
    何事も無かったかのように、ごしごしと床の掃除をはじめるのだった。



    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 11  チェンジ ザ バイト

    それから、数日後。
    秘書課のイケメン眼鏡青年に、私は呼び出されていた。

    私、何か失態でもした?
    イヤ……そんなことはないはず。
     
    フロアのモノを壊したりはしてないし…
    通行する方には十分に気を付けて邪魔にならないようにしていたし。
    思い当たる節なんて何一つ無い!

    「あの……
    お呼びだと聞いてきました」

    「ああ、汀 夕鈴さん、お待ちしてました。
    どうぞそちらへ」

    イケメン眼鏡青年は私をソファーへと誘う。
    私は言われるまま、ソファーに腰かけた。

    「さて、貴女に
    今日は別のバイトをお願いしようと思いまして、お呼びしたんです」

    「別のバイトですか?」

    「はい!それはもう、破格値のバイトですよ」
     
    「破格値?」

    私の頭の中で、お札がちらつく。
    イケナイ!イケナイ!!そんな浅ましいことを考えちゃ…。
    私はすぐさま頭を振って、浅ましい考えを追い払った。

    「それはどんなバイトなんですか?」

    「社長の婚約者に、なってもらいます!!」

    「はい?
    いま何と仰いました?」

    私は、耳を疑った。

    「だから、社長の婚約者です」

    「はぁ??
    無理です!!!そんな事。
    だって、私…
    社長さんのお顔すら存じ上げてないんですよ」

    「えっ?
    おかしいですね……

    社長は、貴女に会ったと言ってましたが…」

    私、社長さんと会ってる?
    何処で?
    やっぱりこのビルの中だ……よね。
    そんな人いたっけ?

    私は必至で記憶の蓋を開けて、まさぐるようにそれらしい人物を探す。

    元々フロア清掃なんて下を向いいるから、
    思い当たる人なんて、そんなにいるわけがない。

    じゃあ、もしかしてあの人?
    先日、フロアで会ったすっごくカッコよかった人。
    でもあの人だとすると、若すぎる。

    う~~ん、やっぱり。
    こんな大きな会社の社長さんなんだから
    そんな若い人なわけないわよね。
     
    でも私を婚約者の身代わりにするんだったら、
    社長さんがおじさんじゃおかしすぎる。
    となると…やっぱりあの人?

    いくら考えても私の中で、納得がいく人物が思い当たらない。
    観念した私は、目の前の眼鏡青年におずおずと訊いてみた。

    「あの……社長さんって、もしかして…お若い方だったりします?」
    「ええ、21歳ですよ」

    あの人だ!この前の……。
    でもあんなカッコいい方だったら、
    私なんかが婚約者のフリなんてしなくてもいいと思うけどなぁ~。

    「私なんかで務まるんでしょうか?」
     
    「さぁ、それは分かりませんが、貴女は一応彼氏もいないということですし…
    何しろ社長が『貴女を!』と希望しているので…」

    その言葉に、私は驚いた。
    目の前のイケメン眼鏡青年は、ため息を吐き出す。

    「私を指名しているんですか?」

    「はい……
    こんなどこにでもいるような高校生を
    偽婚約者にしなくてもいいと思うんですけどね」

    まったく納得がいかない渋い表情を浮かべる眼鏡の青年。
    私は何と答えていいかわからず、曖昧な笑みを浮かべた。


    そうして気がつけば、清掃バイトから偽婚約者バイトに
    ガラリとバイト内容が変わっていた。




    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 12  狼陛下

    そして私は毎日のように、この本社ビルへと足を運んでいた。

    社長の偽婚約者なんて
    ご大層なバイトを引きうけた私は、
    それらしい振舞いの講義を、受けさせられていた。

    更には、全身のサイズまで測られて……
    服まで一点ものが貸与された。
    あくまで貸与だけど。

    しかし普段着から、下着。
    身につける宝石類から、パーティドレスまで…

    どれだけ金掛けるのよ、たかが偽婚約者の為に!!
    と、叫びたくなるくらいのモノだった。
     
    それこそ普通の高校生が、着ることなんてないであろう、ブランド物の服で。
    正直言って服に縛られているような感覚まで、味わう羽目になった。

    しかも肝心の社長さんとは会うことも無く、
    これで本当にバイト代もらってもいいのかしら?と
    申し訳なく感じる始末。

    「はぁ~~~。
    なんで私、こんなバイトを請け負ったのかしら?
    肝心の社長さんとは会えないし…
    もしかして、もう偽婚約者なんて必要なくなったのかしら?」

    私は講義の行われる広い会議室で
    誰も居ないことをいいことに、一人呟いた。

    「そんなに社長に、会いたいのか?」

    私の言葉に間髪入れずに、後ろから掛けられた声。
    驚きのあまり、ビクッと心臓の鼓動が跳ねた。

    誰も居ないと思っていた会議室。
    突然、響いたもう一人の存在……
    私の背筋は、ピピツと、伸びた。

    もしかして私の独り言、聞かれた?
    偽婚約者のことがバレた?
    これってかなりマズい状況よね!

    私は怖くて振り返ることは出来ず、そのままだんまりを決めこんだ。
    でもいつまでもこのままというわけにもいかず……ビクビクしながら振り返ることにした。

    そこに立っていたのは、先日フロアで会ったイケメン青年だった。
    そう……この大企業のトップ、珀社長その人だった。

    「あっ、その、あの、いや、そうじゃなくて!
    初めまして、私、汀夕鈴と申します」

    「知っている」

    「ですよね…」

    「社長さん!一つ訊いても「社長さん、ではなくて黎翔さん!」」

    「はい?」

    「だから、黎翔さん!と呼ぶ!!」

    いきなりそんな事言われても、
    そんな呼び方出来るような器用な私じゃない。

    それでも威圧感に圧倒され、
    小さく囁くように『黎翔さん』と呼んだ私は
    頬を染めて俯いた。

    「聞こえない」

    「………いじわるですね!!」

    「まぁ、私は『狼陛下』なんていう通り名があるから、
    いじわるなのかも知れないな」

    聞いたことがある。
    あれは確か…フロア清掃で聞こえてきた会話の中に
    しばしば『狼陛下』って言葉。

    『陛下』ってどんだけ、ご大層なのかしら?
    どんな人がそう呼ばれてるのかな?って
    興味を覚えたことまで思い出した。

    その人が今、私の目の前にいる。
    そう呼ばれるに相応しい立ち姿で……。

    私は知らず知らずのうちに、見惚れていた。
    視線が外せなくなるほどに。


    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 13  運命

    程なくして、私の偽婚約者のバイトは
    いよいよ本格的になった。

    社長さん…もとい黎翔さんは
    あちこちのパーティに、私を付き添わせた。

    突然、降って湧いたような婚約者の存在。
    何処に行っても注目されることになった。

    男性たちのいぶかしむような視線。
    女性たちの鋭い視線。
    時には化粧室で、あからさまな嫌がらせなんてのもあった。

    でも私は兎に角、頑張った。
    黎翔さんの婚約者に見えるように、言動に気を付けた。
    黎翔さんの偽婚約者として……。

    おかしなもので、私は少しでも家計の為になればと
    この特別なバイトを引き受けたはずだった。

    ……なのに、いつの頃からか
    黎翔さんの役に立ちたいと思うようになっていた。
    多分、その時にはもう好きになっていたんだと思う。

    その洗礼された仕草に。
    その信念に満ちた瞳に。

    そして私は、知ってしまった。
    黎翔さんの二面性を。

    狼陛下と小犬陛下の二つの顔を。

    醸し出す雰囲気の違いに、最初は戸惑ったけれど、
    でも段々どちらの黎翔さんもいいなって思う私がいた。

    くつろいだ時に見せる小犬も。
    誰からも畏怖される狼も。
    どれも、私を魅了した。

    でも私は、ただのバイトであって、
    雲の上野存在の黎翔さんに、恋するなんておこがましい。
    だから、絶対にこの恋は秘したままバイトに精を出すつもりだった。

    『好きなんです……』

    何度、そう告げたくなるのを我慢したかしら。
    何度、枕を濡らす夜を過ごしたかしら。


    そして………あの夜が訪れる。

    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 14  星空の告白

    それは、あるパーティの帰りだった。
     
    取引先の創立何十周年かのパーティに、
    いつも通り私は、ドレスアップして黎翔さんと出席していた。
    黎翔さんは濃紺のスーツに身を包み、カッコよさを際立てせていた。
    会場では黎翔さんが、良家のお嬢様たちの視線を一身に受けていた。

    いつも通り…のはずだった。
    パーティが終ったら、そのまま家の付近まで送ってもらって、
    それで今日のバイトも終るはずだった。

    その日は黎翔さんの一言で、ちょっとスケジュールが変更になった。

    「夕鈴。
    今日は、もう少し時間もらってもいいかな?」

    「……はい。
    大丈夫ですよ!?」

    「ありがとう」

    そう言って、黎翔さんは微笑んだ。
    私も何だか嬉しくなって、微笑み返した。

    そして連れていかれた場所は、星が綺麗な丘の上だった。
    空には、零れ落ちそうな星々が瞬いている。
    月も西に沈んで、冴えた星だけが夜空に鎮座する。

    「綺麗ですね~」

    「そうだね」

    「はいっっ!
    街中ではこんなに綺麗には見れませんよ」

    「喜んでくれて良かった」

    「有り難うございます」

    黎翔さんと私は、しばらくの間
    隣に並んで空を見上げていた。
    一言も発することなく…静かで、穏やかに流れる刻。

    しかし、その静寂も黎翔さんの一言で破られた。

    「好きなんだ」

    「!?」

    それは一瞬のことで、不覚にも聞き逃してしまっていた。

    「聞こえた?」

    「何がですか?」

    「だから僕は、
    君が好きだって事!」

    「はい、聞こえまし…
    って!
    えっっ~~~」

    「そんなに驚かなくても…
    傷つくなぁ~」

    「いや、黎翔さん。
    冗談なんでしょ?」

    「冗談なんかで、
    愛の告白なんてしないよ」

    「………」

    「夕鈴?」

    「…………」

    「夕鈴????」

    私の目の前で、黎翔さんは掌を左右に振る。

    「ねぇ、夕鈴?」

    私の薄茶の瞳から、スゥーと一滴、涙が零れていた。

    「えっ?夕鈴。
    泣くほど嫌だった?
    困らせてごめん!
    もう言わないから!!
    冗談だよ!
    うん、冗談っっ!!」

    黎翔さんは慌てて、訂正の言葉を紡ぐ。
    それを聞いた私は、左右に首を激しく振った。

    「違うんです!!!
    私…嬉しくて。
    だって、私もずっと前から
    黎翔さんの事、好きだったから……」

    「夕鈴…じゃあ。
    僕の恋人になってくれるの?」

    「勿論です!
    いえ、私で良ければ、お願いします」

    そうして、黎翔さんは私の身体を引き寄せて
    優しく抱きしめてくれた。

    私は夢なんじゃないかという疑いを、
    黎翔さんの身体を抱きしめ返すことで現実の事なんだと受け入れた。


    嬉しくて、幸せで。
    絶対、忘れられない星夜の事………。


    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 15 銀の馬車

    「ゆーりん、ゆーりんっ?
    聞いてる?
    ゆーりん?」

    「ぁ……黎翔さん」

    ちょっと懐かしい記憶に浸っていた私は、心配そうな黎翔さんの声で現実に引き戻された。
    私の瞳を覗き込む、心配げな彼の瞳。

    いけない、今デートの最中だったわ……

    「ごめんなさい、聞いていませんでした。
    何ですか?」

    もう疲れたのかと聞いてくる彼に、笑顔で大丈夫と伝えた。

    「……そう?
    なら、いいんだけど。

    「僕、何度もゆーりんの名前を呼んでも
    全然気づいてくれないから心配しちゃった」

    「君とのデートが楽しくて、少し無理させたね。
    ゴメンね、ゆーりん……」

    しゅんとなった黎翔さんは、いつもの辣腕ぶりを発揮する
    狼陛下な社長じゃなくて…… 、

    今は落ち込んだ小犬のよう……
    今にも、きゅーーん、きゅーーんと鳴きだしそうで……
    心配をかけてしまった私は、胸がちくんと痛くなってしまった。

    せっかく彼が時間を作ってくれた
    貴重なデート を楽しまなきゃね。

    私は、きゅっと心をこめて、彼を抱き締めた。
    「心配してくれて、ありがとう」と囁く。
    黎翔さんは、やっと安心したのか私に微笑んでくれた。


    「ゆーりん、ゆーりんっ!
    ほら見て!
    女王様の馬車が来たよ!」

    金と銀の光に包まれて、まばゆい馬車が鈴音を鳴り響かせながら
    近付いてきた。

    絵本のハートの女王様は、怖くて意地悪だけど……
    このパークのハートの女王様は、とても美人で優しい笑顔の
    素敵な女王様だった。

    私が、ぽおっ……と見とれていると、私の目の前で馬車が止まった。

    優雅に女王様が馬車から降りてくる。
    会釈されたので、慌てて返した。

    女王様に促されるままに、黎翔さんと私は眩い馬車に乗る。
    乗り込んだと同時に、馬車の扉が閉められた。

    「黎翔さん??
    女王様が、まだっっっ……」

    「大丈夫だよ、ゆーりん」

    一緒に女王様も乗るものだと思っていた私は、ハートの女王様を広場に残して、馬車が走り出したことに驚いた。

    馬車はパレードを抜け出して、風のように走ってく。
    やがて小高い丘を頂上目指して駆けて行った。

    流れ星のように現れ消え行くパークの光。

    「大丈夫。
    ゆーりんは、何も心配しなくていい」

    微笑みながら隣に座る黎翔さんに、しっかり抱き締められて
    私はようやく安心してきた。

    やがて、パークを見下ろす頂上広場に着いた。
    馬車を降りて展望台まで、ふたり手を繋いで歩いてく。

    「ゆーりん、
    疲れてそうだったから、ここまで連れてきてもらっちゃった」

    悪びれもせずケロリと白状する黎翔さんは、
    いつものワンマン社長で……

    少し過保護すぎるわ……私は、彼に呆れる気持ちと彼の優しさに、ついつい笑みが浮かんでしまう。

    二人で見る眼下の景色は、発光きのこたちが織り成す不思議な世界。
    ハートの女王様の城が、遮るものが無くて近くに感じられたた。
    白亜の城に、真っ赤な薔薇の花の美しい映像が映し出されている。
    パークの夜景の美しさに、知らず感歎のため息が漏れていた。

    「わぁ…綺麗」
    「本当だ…綺麗だね」

    私は照れ隠しで、パークの夜景に夢中になったふりをした。
    繋いだ彼の大きな手を、ギユッ…と強く握り締めて
    小さく「ありがとう」と呟いた。

    隣で黎翔さんが笑った気配がした。

    もぅ!
    何もかも、お見通しなんだから……
    素直に、お礼を言っただけじゃない。
    そんなに笑わなくても……

    素直じゃない私は、少し膨れっ面で夜景を見ていた。
    そんな私に黎翔さんは、クスクス笑いながら
    優しく背中から抱き締めてくれた。

    「ゆーりん、好きだよ」
    「黎翔さん……私も」

    彼のぬくもりに包まれながら、しばらく二人で甘い夢に浸るのだった。



    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 16 てんとうむしのライド

    「へくちッっっ!」

    甘いムードを、私のくしゃみが吹き飛ばした。

    「ゆーりん、風邪ひいた?
    寒くなってきたね」

    「風邪ではないと思いますけど……
    確かに寒いですね」

    「デートの続きをしようか?
    おもいっきり遊べは、寒さなんてきっと吹き飛ばすよ」

    「ゆーりん、近くに、
    このパークで一番人気のアトラクションがあるんだ。
    やってみない!?」

    「いいですね。
    やりましょう」

    「こっちだよ。
    ゆーりん」

    黎翔さんに手を引かれやってきたのは、小さなトンネルの入り口。
    この奥にアトラクションがあるという。

    薄明かりのヒカリゴケが淡く染める細いトンネルを、
    二人肩を寄せ合い進んでいくと、……やがて水の流れる大きな川の音が聞こえた。
    まだ位置的に山の中だけど、洞窟風の開けた場所に抜け出た。

    大きなテントウムシ型の丸いボートが、人工の川にプカプカ浮かんでいる。
    赤や黄色、青、緑、橙色、ピンクといったカラフルなテントウムシ型の乗り物は、
    透明なドーム状の密閉型の屋根がついていた。

    見ようによっては、カラフルな水玉UFOみたい。
    なんだかユーモラスで可愛い雰囲気で、微笑ましいのだけれど……これがパークで一番スリリングな乗り物なのだと言う。
    乗り込んでから、黎翔さんに説明されて私の顔は青褪めた。

    ウォーターボートスライダーと、コーヒーカップとジェットコースターを足して、三で割ったもの。
    訳のわからない彼の説明が、私の恐怖心を煽る。

    覚悟も無いまま…アトラクションのライドに乗り込んでしまった私。
    容赦なく透明なドームの屋根が閉められた。
    アトラクションの案内人のお姉さんの眩しい笑顔が恨めしく感じる。

    「お客様、危ないですから、お席にお座りください。
    楽しんできてください……いってらっしゃいませ♪」

    アトラクションの案内人のお姉さんに送り出されて、あっという間にライドは川の流れに乗った。
    私たちの乗ったライドは、すぐに曲がりくねった流れを、順調に出発していった。

    「ゆーりん
    ……ドキドキするね」

    「黎翔さん…………」

    密閉空間に、二人っきりになったのに、このドキドキは恐怖心から来るドキドキで……ダメだわ。緊張してきた。
    私は、ライドの中央にあるハンドルのような捕まり棒を
    がっちり両手で、握り締めるのだった。

    ……最初は小さな滝を落ちながら、緩やかな流れをたゆとうように下っていった。
    時折ライドは山の外に出て外の夜景を楽しめた。
    岩山には夜にも楽しめるように、光る花々が咲いていて、とても綺麗だった。

    「ゆーりん
    そんなにガチガチに緊張しなくていいよ。
    もっと楽しもう!」

    「Σ!
    黎翔さんっっっ!

    なななななななななななっ
    何するんですかっっっっっーーーーーーっ」

    突然、ハンドルを回し始めた黎翔さん。
    回すとライドが、コーヒーカップのようにくるくると廻り始めた。

    ライドの下に強力な磁石が埋め込まれているそうで
    水の上でも、遊園地のコーヒーカップと同じ動きが出来るらしい。

    水の流れと、ライドの回転運動……
    ライドの動きが予測不能で、私はすでに目を回しはじめていた。

    私が楽しめたのは最初だけ……後は、恐怖の連続だった。
    強烈な渦潮に巻き込まれたり……不規則にぐるぐる廻り右に左に水の動きに翻弄されるテントウムシに、私は胃が押し上げられる感覚を覚えた。

    だんだんと大きくなる滝は、着地も予想外で……
    何度も、大きな水飛沫がかかった。

    ラストの大滝では、ライドが宙を飛んだ。
    そのまま高波を上げながら水中を勢いよく、ライドは突っ込んで進む。終点まで絶叫続きののあっという間の時間だった。

    「大丈夫?
    ゆーりん?」

    「大丈夫……れないれふ
    ちょうと、ひゃふませて」

    終始、元気で楽しそうな黎翔さんと違って、私は乗り物酔いが酷くて……支えてもらってようやく歩けたほど。

    噂に違わぬ絶叫系アトラクションに、私の咽喉は枯れた。
    ドームの屋根のおかげで、濡れなかったけれど、全力で叫んで寒さは吹き飛んだ……むしろ今は暑いくらいだ。

    黎翔さんには悪いけど
    …………もう二度と、乗りたくない。



    「次は、何して遊ぶ?」

    パークの地図を見ながら、本気で悩む元気な彼に……

    もう乗り物はこりごり…………乗りたくないと
    私は、目の前のミラーハウスを指差した。

    「ミラーハウス?」
    「はいっっ!」

    あそこなら、怖い思いなんてしないから。
    まさかあんなことになるなんて、この時点で私は思いも寄らなかったけど……。

    「いいよ」

    ニッコリ微笑んだ黎翔さんは、私の手を引いて歩き出す。
    私は、繋がれた自身の指が熱を帯びているのを感じていた。

    暖かい………。
    ホンワリと嬉しさを噛みしめて、私は自然と笑みが浮かんでしまっていた。



    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 17  恋の迷路 

    入口につくと、黎翔さんはさりげなく私の手を離した。

    「夕鈴、ここのミラーハウスは普通のモノとはちょっと違うんだ」
    「違うって何が…あっ、ホントですね。
    入口が二つだわ」
    「うん、ここはそれぞれの入口からはコースが違っていてね。途中では合流出来るんだけど、ゴール間際で合流するんだ。だから競争しようよ。どっちが先に相手を見つけられるのか」
    「競争ですか?イイですよ!私負けませんから」
    「じゃあ、後でね」

    そう言うと、黎翔さんは鏡の国の入口へと身体を滑らせた。
    私も慌てて黎翔さんとは違う入口から中へと駆け込んだ。


    私は右手を鏡に触れながら進んでいく。
    鏡が途切れた先を曲がる。
    そしてまた鏡に触れる。

    それを何度も繰り返す。
    何度曲がったのか?
    もう忘れてしまったくらい曲がったと思う。

    でも黎翔さんには会えない。
    段々、本当にこの道で大丈夫なのか心配になってきた。
    実はこのままいくと行き止まりで、私は永遠に抜け出せなくなるような感覚に囚われる。

    見えるモノは、鏡だらけ。
    当たり前のことだけど……。

    周りの鏡に自分の姿が写り込み、無数の『私』が生まれる。
    そしてその『私』は『私』を見詰めている。

    何だか、怖いって思えてきた。
    一人きり。
    誰もいない。
    黎翔さんさえ……。

    両手を胸の前で組んで不安を取り除こうとした。
    その両手は冷えていた。
    先程まで感じていた黎翔さんの温もりは消えていた。

    私は黎翔さんがいないと、ただのちっぽけな私だ。
    何の取り柄も無い。

    考えていると足は止まってしまう。
    歩かないと、黎翔さんには会えない。

    「早く、進まないと…黎翔さんに先を越されちゃう」

    自分を叱咤するように、声を出す。
    空元気でもいい。
    今は黎翔さんに会うことだけを考えよう。

    私は進んだ。
    ただ、前に。
    兎に角、前に。
    力強く踏みしめて。
    心の中で、黎翔さんの笑顔だけを思い描いて。



    「夕鈴!!!!!」

    声が聞こえる……。
    私を呼ぶ声。
    大好きな低めの声音。

    「黎翔さん!!!!!!」

    声を出して自分のいる位置を黎翔さんに知らせる。

    ここにいるの。
    私はここにいるの。


    角を曲がった先に、黎翔さんがいた。
    両手を広げて、私を迎え入れる。

    「僕の勝ちだね」

    そう言って笑った黎翔さんの笑顔が眩しく見えた。



    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 18  空に一番近い場所で……

    ……楽しい時間は、あっという間に過ぎていく。


    もう時計の針は、23時だった。
    まだまだ遊び足りない気がするけれど……もうすぐデートの時間が終わりを告げる。
    僕たちは、お互いに何も言わなくとも、自然と寄り添っていた。


    ……
    …………
    ……………………


    ミラーハウスで、それぞれ離れ離れで、お互いにお互いを探していた私たち。
    このまま離れ離れのまま……はぐれちゃったらどうしよう。

    そんな馬鹿な考えが浮かんで、私は本気で悲しくなった。
    ミラーハウスで迷いながら、黎翔さんを探し求めた道のり。

    ほんの少しの時間、離れていただけなのに……
    とても長い間、離れていたように感じた。

    だから出会えたときは、ものすごく嬉しかったし、心の底から、ホッとして安心した。

    出会った瞬間、黎翔さんが力強く抱き締めてくれた時は、
    心から湧き上がる想いを止められなくて
    ボロボロと子供みたいに彼の胸で泣いてしまった。

    ぎゅっと握り締めたこの温かな手を、もう二度と離さないで……
    離れたくない!
    あんな思いは、もう二度と味わいたくないの。

    黎翔さんと繋がれた手が熱い。

    私の頬を流れた涙の痕が乾いてく……
    泣きじゃくった私のひどくみっともない顔を見られたくなくて
    私は俯いた顔を上げられず……黙って彼に連れ添って歩いた。

    「どこか静かな場所に行きたい……」

    「いいよ。
    何処に行こうか?……」

    ぽつりと呟いた私に、黎翔さんが、うなづく。
    急に甘えん坊になった私は、黎翔さんの肩にもたれて……
    ゆっくりパークを、あてどなく歩いてく。

    甘く…切なく……

    君の温もりを感じて……

    お互いにお互いを、唯一無二の存在。
    無くしたくないと再認識したから……


    …………

    ……………………

    ………………………………


    やがて大きな観覧車の前まで歩くと……

    「観覧車に乗ろうか?」

    優しく囁く黎翔さんに、私はコクンと肯いた。

    二人で観覧車に乗り込むと
    私は彼の肩に頭をあずけて夢見心地で瞳を閉じた。

    肩越しで伝わる彼の温もり。

    「ゆーりん
    見て、夜景が綺麗だよ」

    ゆっくりと瞳を開けた私に飛び込んできたのは……
    眼下の星空と見紛う景色。

    観覧車が、ぐんぐん高度を上げていくと
    おとぎの国が、ますますオモチャ箱に見えた。

    とくん……
    とくん……………とくん……………

    息遣いさえ聞こえるような静かな密室に
    ぴったりと寄り添うと、自分の心音が彼の耳にも届きそう。

    静かな美しい時間に
    私は、身も心も黎翔さんに委ねるのだった。


    ……
    …………

    僕の肩で、夢見心地の夕鈴。

    とろんと濡れたようなハシバミ色の瞳に、
    煌く地上の星々のような夜景が映りこむ……

    「ゆーりん?
    疲れて眠くなった?」

    「ううん……
    眠くない」

    突然、彼女は僕の胸に飛び込んできて
    僕の背中を抱き締めた。

    「黎翔さん……
    私を抱き締めていてね。
    離さないで……」

    「どうしたの?
    ゆーりん?」

    「なんでもないの。
    ねぇ、ぎゅっと抱き締めて………」

    彼女から、甘えてくれるなんて普段は無いから
    僕は、すごく戸惑いつつも嬉しくて………

    こんなチャンスは二度と無いかも……
    僕は、壊れ物を扱うかのように優しくギュッと抱き締めた。

    僕の両腕に、僕の大事な宝物。
    僕の心まで温める、沁み渡るような……優しい彼女の温もり。

    「ゆーりん。
    …………愛してる」

    「私もです。
    …………黎翔さん」

    僕は、しっとりとした大切な人の存在を感じつつ
    柔らかな身体を愛しんだ。
    彼女の髪から、甘い香りが香る。

    今なら……言える?
    僕は、彼女に言わなきゃいけないことがある!

    彼女の甘い香りに、促されて……
    僕は、とうとう告白をする決心をした。

    「ねぇ、ゆーりん。
    聞いてくれる?」

    「はい?
    何でしょうか?
    黎翔さん?」

    少し緊張したような黎翔さんの固い声に
    私は、少しだけ身を離した。

    真剣で、ちょっと怖い顔。
    彼の緊張が私にも伝わって、私まで緊張してきた。

    至近距離で見る彼の顔は、
    夜景に照らされ、彫りの深い顔立ちが際立って見える。
    燃えるような深紅の瞳が、私をジッと見つめていた。

    もう貴方以外、何も見えない。
    きっと私は酔ってるの。

    …………貴方に酔わされ、その瞳に。
    身もココロも魅入られ、瞳が逸らせない。

    珍しく、なかなか言い出さない黎翔さん。
    言いよどむ彼に、
    私はもっと緊張してくるのがわかった。


    ……続く

    【Yコラボ】アリスの口付け 19  イタズラな花火

    身も心も、ふわふわだった。
    彼の腕の中は、すごく気持ちいい。

    緊張しつつも夢見心地な私は、
    黎翔さんの言葉を素直に待ち耳を傾けるのだった。

    黎翔さんが、息を呑む気配。
    ようやく決心がついたみたい。

    「ゆーりん。
    僕は、君“ひゅるるるる~~”
    “ドドーーーンッッ!”」
    「きゃあ!」


    突然の私たちの乗った観覧車の近くで、眩い閃光。
    雷よりも大きな轟音で鼓膜が破れそうになる。
    空気が震える。
    鳴り響く爆発音と苛烈な閃光に驚いた私は、両目を瞑り両耳を両手で塞いで、黎翔さんの胸に顔を埋めた……

    その間も、黎翔さんは、何かを私に囁いていたが……
    音に掻き消されて何を話していたのかまったく聞こえなかった。

    「……今の何?」

    また静かになった観覧車に、再び静寂が訪れたが……
    私の肩を抱いたまま……私の肩に顔を埋めて
    彼は固まってしまった。

    そういえば、さっき言ってくれた話は、何だったのかしら?
    まったく聞こえなかった。

    「……李順め。
    まったくタイミングが悪い……」

    舌打ち気味に小さく呟く黎翔さん。
    どうしてここに、秘書の李順さんが出てくるの?
    何が、タイミングが悪いの?

    「……何の話ですか?
    黎翔さん……」

    「……なんでも無いよ。
    それより僕の声、聞こえた?」

    「ごめんなさい……
    大きな音に驚いて、聞こえませんでした」

    「……やっぱり。
    失敗か」

    がっくりと肩を落とした黎翔さん。
    何がなんだか分らないけれど……
    彼のうなだれて落ち込んだ様子に
    私は悪いことをしてしまった気分だった。

    なんと言葉をかけてよいか分らず……
    私は、黎翔さんの頭をそっと抱きしめるのだった。

    ……続く

    完【Yコラボ】アリスの口付け 20  アリスの口付け

    どれくらいそうしていたのだろう。

    「ありがとう、夕鈴。
    もう大丈夫だから……」

    ポツリと静かに黎翔さんが呟いた。
    少し、気恥ずかしそうに頬を染めて
    いつも以上に優しく微笑んでくれた。

    私、黎翔さんを慰めることが出来た?

    「そうみたいですね」

    ようやく見れた彼の笑みに、私はほっと一安心して
    彼に微笑み返した。

    ひとつ。
    黎翔さんの額に、慰めのkissをして、彼の顔を見つめた。

    「……大丈夫ですか?」

    夜景を写し、真っ直ぐな視線の彼の瞳に
    私が映る。

    至近距離で見つめられて、今度は私が頬染める番だった。


    「……夕鈴。
    君に、聞いて欲しいことがあるんだ」

    「さっきは、失敗したから……
    も一度、言うね。
    よく聞いて欲しい」

    彼の膝に抱き抱えられて
    いつの間にか、彼に左手を握られていた。

    「夕鈴。
    僕と結婚して欲しい。
    君と幸せな家庭を築きたいんだ」

    黎翔さんは、私の左手の薬指に、ティア・ドロップ型の大きなダイアモンドの婚約指輪を、ゆっくりとはめてくれた。

    驚いて、その大きな指輪を見つめる私に
    黎翔さんは……ゆっくりと、私を見つめたまま指輪をはめた左手にKISSをした。

    まるで王者の風格。

    “逃がさないよ。
    ゆーりん”

    その瞳は、雄弁だった。
    な…なんで、ここで“狼陛下”なの!?

    「僕の花嫁は、君しか居ない。
    ゆーりん」

    「黎翔さん……」

    真摯で綺麗な深紅の瞳が、私を射抜く。
    嘘でも冗談でもなく、黎翔さんが本気だということが分かった。

    「YESなら
    君から僕にKISSして……僕のアリス」

    もちろん、YESだけど……
    私から黎翔さんにKISSするの?
    プロポーズは嬉しいけど、返事が恥ずかしい。

    私が顔を真っ赤にして躊躇っていると

    「……これでは返事をもらえないっか!
    じゃあ、ゆーりんに返事が貰えるように、
    僕は目を瞑っているね」

    小犬のように無邪気に、笑う黎翔さん。
    くすくす笑いながら、瞳を閉じた。

    …待ってる!?
    うわあん…そんなに期待して待たないでっっ!!!

    私は、仕方なく返事をするべく彼の肩に両手を置いた。
    躊躇いながらも、少しずつ彼の唇に唇を重ねるために近付ける。

    ――震える唇が、彼に触れた時。

    シュ……
    “ドドーーーンッッ!”」

    また、外で花火が上がった。
    でも、今度は花火の音なんて聞こえない。

    “ド「ドーーーンッッ!”」
    何度も閃光で眩しく辺りが光る中…

    夕鈴からの口付けは、いつの間にかお互いを求める
    激しい口付けに。

    彼女の頭を抑え…貪るような彼の口付けを
    夕鈴は、たどたどしく応えてく。

    “答えはYESよ。
    ……あなたを愛してる”

    言葉は無くとも、お互いに伝えて……
    花火が終るまで口付けは止まらない。

    “この先ずっと……
    いつまでもあなたを愛してる”










    ……お幸せに。


    ーアリスの口付け・FINー

    【Yコラボ】アリスの口付け あとがき

    これで「アリスの口付け」は、完結です。
    長編になると予測していましたが、実際こんなにも長くなるとは
    思ってもいませんでした。
    コラボ中、よゆも私もページが増えるたびに大笑い。
    大変楽しいコラボでした。


    各自ブログで手直ししてUPしています。
    各自違う味で再びお楽しみいただけるかと思います。
    ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。


    2015.10.31.
    瓔悠&さくらぱん