花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    とりっく ぉぁ とぅりーと?

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    とりっく  ぉぁ  とぅりーと? 2


    …たたたたたっ!
    すばやく走り去る白い影。


    楽しげに、きらめく赤い瞳。

    今朝から見かけるソレを、
    隣に居る陛下は、面白そうに見つめていた。

    その光景は……普段の王宮では
    ありえない光景。

    もしかして
    もしかしなくとも、
    あの白いモノは、人間。

    四阿で頬杖をつきながら気怠げに寛ぐ陛下に、
    李順は問わずにはいられなかった。

    この珍事の理由を知って居るだろう人物に。

    「……あの陛下。
    アレはいったい?」

    「アレとは?」

    「あそこの木の影で、隠れているつもりの人物です!」

    「あれは、敷布を被っていますが……
    もしかして、もしかしなくとも、夕鈴殿ですか?」

    「……ああ。
    かわいいだろう?

    今朝から、ずっと私の後をついてきている。」

    ……今朝から?
    妃にあるまじき、あの格好で?

    李順は、軽い目眩を覚えながら、
    ……先ずは、止めさせなければ……と、
    白い物体のもとへ歩きだそうとした。

    ところが、ソレを阻止する鶴の一声。

    「注意せずとも良い!
    コレは、遊びだ!」

    「いったい何をはじめたんですか?」

    「ハロウィンのお祭りだそうだ。
    夕鈴は、私を驚かそうと隙間を伺っている。」

    「何も言うな……李順。
    コレは、余興だ。
    ……それに」

    「それに?」

    「今朝は、ずいぶんと遠巻きだった夕鈴が、
    ようやく近くまで来たんだ。」

    「目に入れても、気がつかないフリをしろ!」

    気がつかないフリをしろと言われても……

    あんな目立つもの。
    気が付かないわけがない。

    はやく終わらせなければ……
    仮にも、陛下の寵妃のする行動では無いのだから……

    でも、当の陛下は、この珍事を面白がっている……

    ズキズキ…と余計な頭痛がしてきた。
    痛む頭を抑えてながら、
    李順は、ささやかな抗議をしてみた。

    「陛下、ここは公務の場です。
    遊びは、後宮でやってくれませんか?
    賓客が見たら、どう思われることか?」

    「……それは大丈夫だ。
    幸い、もてなす賓客は居ない。」

    「それに私が気付いていると、バレてしまうではないか。」

    「李順。
    ハロウィンは、10月31日までだ。
    それまでの間だけだ。
    相手は夕鈴だし、害はない。」

    「このまま……
    夕鈴に気付かせること無く
    好きにさせるように。

    ……分かったな!?」

    たたたたたっ……

    また、もう少し近い木へと移動した白いもの。

    きっと、アレで隠れているつもりなんだろうなぁ……

    「はぁぁぁぁ……」

    そのまぬけな姿を、気重なため息をつきながら、
    李順は

    「分かりました。」

    とだけ告げた。

    今は、目障りでも陛下にしたがうのが得策。
    そう判断したのだ。

    黎翔は、くつくつと笑いをこらえて
    可愛い寵妃の行動を愛おしそうに眺めている。

    一時の余興。
    一時の余興。

    呪文のように…唱える
    李順の言葉は、虚しく胸に木霊する。

    Halloweenが終わるまで、あと10日。

    珍事は、続く。
    李順の苦悩も続く。

    とりっく  ぉぁ  とぅりーと? 3

    “パキッっ”

    「…………しぃ!」

    小枝を踏んで、小さな音が響いた。
    夕鈴は、誰ともなく小さな声で咎める。

    自分のほかには、誰もいないというのに……

    大きな木の影に隠れる夕鈴は、誰にも見咎められず
    少しずつ陛下に近づいていた。

    そっと、木の影から四阿に居る陛下の様子を伺うと……
    どうやら長椅子で、うたた寝しているらしい。

    「ここまでは、いいのよ。
    ここまでは……」

    そう。
    イタズラすると決めてから、少しずつ詰めてきた距離。
    もう少しというところで、いつも邪魔が入っていた。

    タイミングが悪い。
    ただ単に、今まではそうだったのに。

    今日の夕鈴は違った。

    陛下の他には、誰も居ない四阿。
    イタズラを仕掛けるのに、絶好のチャンスなのに……

    足が踏み出せない。
    こんなチャンスめったに無いというのに。

    …………ぁ

    夕鈴は、ハタと気づいてしまった。

    陛下にイタズラって、何を?
    何をすれば良いの?

    今まで、陛下に驚いてもらおうと思って
    寝台から敷布を持ち出して被って
    隙を伺っていたけれど……

    肝心のイタズラを考えていなかったことに気が付いた。

    この白いおばけの格好で
    「がぉ……」と
    驚かして、あの陛下が驚くと思う?

    う~~~ん。

    夕鈴の眉間に、皺がよった。

    考えれば、考えるほどに……
    成功する気が、しなくなってくる。

    相手は、あの狼陛下なのだ。
    ついには夕鈴の足は、止まってしまった……

    “君のイタズラ楽しみにしているね、夕鈴”

    陛下の楽しそうな笑顔が、浮かんで消えた。

    ふう……

    「今日は、ダメだわ。」

    もう少し作戦を、練る必要があるみたい。
    せめて陛下の弱点が、分かれば……

    陛下を昔から知っていて、知り尽くしている人物。
    白い髭をたくわえた とある人物が、夕鈴の頭に浮かんだ。

    「相談しても、いいのよね!?
    いつでも相談に乗るぞと、普段から言っているし……」

    「今日は、残念だけど……
    出直してこよ……」

    そっと、四阿の陛下の様子を見たけれど
    ……良かった。
    まだ寝ているみたい。

    どうやら気付かれずにすんだかな?

    少し残念な、名残惜しそうな視線を投げかけた後、
    夕鈴は、くるりと振り向き、白い敷布を被ったまま

    ぱたたたた……

    そのまま、後宮立ち入り禁止地区にある
    老師の部屋へと足早に、向かうのだった。

    とりっく ぉぁ とぅりーと? 4

    「老師っ!
    居りますかっっ!」

    「なんじゃい?
    騒々しいのう…… 「その声は、お妃か?
    ぶふぉ……」」

    後宮管理人である老師は、
    お菓子を食べながら、振り向きざまに
    夕鈴の姿を見て噴き出した。

    ゲホッ…ゴホゴホ……

    「なんじゃ……
    おぬし、その格好は?」

    ケホン。

    「Halloweenのおばけですよ!
    老師が、教えてくれたんじゃありませんか?」

    「Halloweenじゃと!
    ワシのお菓子を、狙いに来たのか?」

    「そうじゃありません!
    実は、老師の知恵をお借りしたくて……」

    「ワシの知恵じゃと?
    なんじゃ?」

    「陛下に、イラズラを所望されたんです。
    でも…何をイラズラしていいのか。
    正直、皆目検討付かなくて……」

    「なんとのう……
    陛下が、
    おぬしに、イタズラしてほしいと?」

    「はい。
    正直、何をして良いやら……
    何か、良いアイデアは有りませんか?」

    「おぬしが、するイタズラなら、
    陛下は何でもお喜びになるじゃろうが……」

    「だが……頼まれれば断れん。
    そこまで、気になるのなら……

    秘策がないわけじゃない
    少しここで待っていなさい。」

    そう言い残すと
    ジャラジャラとした鍵の束を手にとり、
    ふらりと何処かへ行ってしまった。

    とりっく ぉぁ とぅりーと? 5

    しばらくして、老師が戻ってきた。


    「あったぞ…」

    両手で運べる大きさの古びた木箱を老師は、持ってきた。
    背が小さいから、すごく歩き辛そう。

    慌てて代わりに、木箱を持つと…
    開けてみろと言われた。

    中には、見たこともない異国の衣装。

    皮なのかな?
    …どこかで、見たことある動物の毛皮で作られていた。

    一枚取り出し……
    夕鈴は、顔を赤らめた。

    極端に小さな衣装。
    特徴的なデザインは、局部だけしか覆うことができない。

    「……あの。
    //////コレはいったい?」

    「なんじゃ……
    知らんのか。」

    「コレは、じゃな。
    白陽国に伝わる
    伝説の寵妃“雷電姫(らいでんひめ)”の衣装じゃよ!」

    「雷電姫ですか!?
    ……???」

    「そうじゃ……
    その昔、遠い異国の地から我が国にやってきて、
    天空の雷を操り、不思議な術を使ったという
    伝説の姫じゃ。」

    「御伽噺では、無かったんですか?
    そんな伝説の人物の衣装が、
    なんで何故後宮に……?」


    「雷電姫は、実在した人物じゃ……
    雷電姫の美貌に、一目惚れした時の王が、
    求婚して後宮に迎え入れたのじゃ」

    「王の寵愛で子宝にも恵まれ、
    雷電姫は末永く王に愛されたそうじゃ……」

    「その雷電姫にあやかり歴代の寵姫が、
    この衣装を Hallowe'enで、着るようになったんじゃよ!」

    「この衣装には、不思議な術がかけてあってだな……
    まあ、百聞は一見にしかず
    「とにかく試着してみなさい。」

    「…こ……コレを、ですか!?」

    夕鈴は着るのには、心許ない衣装を持って……
    素っ頓狂な声をだした。

    伝説の姫の衣装とはいえ、
    着るのにかなり勇気がいる……

    それに……
    ちょっとサイズが合わないかも……

    夕鈴が躊躇していると、促すように
    老師が、声をかけてきた。

    「せっかく出して来たんじゃ……
    着てみるがよい」

    「陛下に、イタズラをするんじゃろう?
    Halloweenの衣装としては、この衣装はうってつけじゃぞ!」

    躊躇う夕鈴の背中を、老師の言葉が後押しする。

    陛下が、喜んでくれるなら……
    着てみようかな……

    そんな気持ちが、生まれた。

    「では、しばらくお待ちください……」


    ……
    …………
    ………………

    衝立の裏に廻って、しばらくすると、
    夕鈴が慌てたように、声をかけてきた。

    「……ろ……老師っ!
    この衣装、全部ブカブカです!」

    部屋の片隅の衝立の奥で、夕鈴は泣きそうな声で、そう叫んだ。

    「大丈夫じゃ……
    今、衣装が、おぬしの体型を記憶しておる。
    雷電姫の衣装は、 不思議でな、
    どんな人間にでもぴったり合うようにつくられているのじゃよ。」

    「しばらくすると、おぬしの身体に、ぴったりになるじゃろうて。」

    衝立の向こうで、ブカブカで、ずり落ちそうな衣装を手で支えていた夕鈴は、
    みるみるうちに縮む衣装を不思議そうに眺めた。

    ……そして、自分の幼児体型を悲しく思った。

    雷電姫は、ずいぶんと大人な身体だったらしい。
    半分以上も余っていた胸あてが縮み、今は夕鈴にピッタリ…
    引っかかりもなく、ペタンとなった。

    鏡に映る姿は、凸凹もなく
    まるで、子供のようにストン……としていて。
    なかなか夕鈴は、衝立から出ることができなかった。

    「…どうじゃ!?
    身体に馴染んだかの?」

    「……はい。
    ピッタリに、なりました。」

    恥ずかしくて、なかなか衝立から出てこない夕鈴に、
    老師は痺れをきらした。

    「衣装がぴったりになったら、次の作戦じゃ
    早く衝立から出てくるんじゃ」

    「……老師。
    無理です。」


    「しかたがないのう……」

    そう言って、黒い外套を放り投げた。

    その日、後宮立ち入り禁止区域にある、
    老師の部屋では、夜遅くまで密談が続いたという。



    .

    とりっく  ぉぁ  とぅりーと?6

    その次の日から夕鈴は、陛下の後をパタリ…と追わなくなった。
    それどころか、政務室通いも、夜の後宮への陛下の通いも断り
    黎翔は、夕鈴に会えなくなった。

    「本当に、妃は体調が悪いのではないのだな?」

    「はい、 誓って。
    どこも悪くありません。

    ハロウィン当日の夜まで、
    一人にしてほしいとの仰せです。」

    「妃の顔を見て、安心したいのだが……」

    「申し訳ありません、陛下。
    ここをお通しするわけには、まいりません。
    お妃さまから、きつく言い付かっております。」

    「私の妃だぞ、そこをどけ!!!」

    「いいえ、退きません。
    明日の夜には、必ずお会いできます。
    どうか陛下、、もう一日だけお待ちください。」

    夕鈴付きの侍女達は、夕鈴に心酔するものが多く
    融通が利かない。
    だからこそ、夕鈴を守る最後の盾ともなり得るのだが・・・・

    そこまで言われては、黎翔は引き下がるしかった。

    かれこれ、三日も夕鈴に会えていない。
    明日の夜には、会えるという・・・…
    黎翔の心は夕鈴を求めていた。
    小さな柔らかな身体をぎゅっとしたい。
    部屋が明るくなるような晴れやかな笑顔が見たかった。

    「なにか僕、
    ゆーりんに嫌われることしたかなぁ……」

    木枯らしが心にまで、突き刺さるような冷たい夜。
    渡り廊下を歩きながら、黎翔は一人呟いた。

    それでも、明日の夜は必ず会えると約束されている。
    うなだれた見えない尻尾をほんの少しだけ持ち上げて
    黎翔は、明日の夜を大人しく待つことにした。

    必ず、夕鈴に会えると信じて。




    2014.11.01.改定
    2014.10.30.初稿


    .

    とりっく  ぉぁ  とぅりーと?7

    「陛下は、自室に戻られましたか?」

    「はい。
    大変気落ちしたご様子で、お戻りになりました。」

    「……お妃様、
    本当に陛下に、お会いにならなくてよろしかったのですか?」

    「いいのです。
    すべては、陛下のお喜びの為なのですから。」

    「今までは、老師の計画通り。
    明日の夜、陛下にお会いする時には、
    陛下のお喜びは二倍にも感じるはずです。」

    「大事なのは明日のハロウィン。
    陛下に、仕掛けるイタズラが上手くいくといいのですが……」

    「お妃様、大丈夫ですよ。
    衣装は老師がご用意してくださいました。
    おまじないの呪文も、完璧にご暗記なされたのです。
    明日の夜は、絶対に成功しますとも。」

    「……大丈夫かしら?」

    「大丈夫ですとも。」

    その衣装が問題なのだけれど……
    夕鈴の憂鬱は、侍女には伝わらない。

    いよいよ、明日の夜。
    あの衣装を着て、陛下の御前に出るのだ……

    “きっと、似合わないんだろうなぁ。”

    そっと、衣装を盗み見てため息を吐く夕鈴を
    侍女は気がつかなかった。



    2014.11.01.改定
    2014.10.30.初稿.

    とりっく ぉぁ とぅりーと? 8

    「李順、次!」

    「はい。
    こちらは、先日の河川の氾濫で流された橋の
    復旧工事の書簡です。
    私も、目は通しましたが、不備は無いと思われます。」

    「わかった。」

    ……
    …………
    ……………………


    ポン…
    ポン。

    「よし!」

    「李順、次!」

    「陛下、どうしたんですか?
    今朝から、バリバリ働かれて……」

    李順は、未決済の次の書簡を
    黎翔に手渡しながら、首を傾げた。

    「今日は、Halloweenだ。
    残業は、しない。」

    その言葉に、ここ数日間
    極寒のブリザードが吹き荒れた政務室を思い出し……
    ここに居ない後宮に居る人物を思い浮かべた。

    李順は、動機が不純すぎる陛下に
    呆れた冷ややかな目で返した。

    ふぅ……。

    思わず口から零れた、ため息ぐらいは、
    ここ数日の李順の苦労を思えば、
    見逃してくれてもいいだろう。

    「陛下が、やる気になることは、とても良いことです。」

    「普段から、これくらい仕事をしていただければ、
    私もやりやすいのですが……」

    夕鈴殿が、居ないだけで……
    決済が滞り溜まっていった書簡の山。

    このペースならば、
    残業はしなくてもいいだろう。

    昨日までの政務室を思えば、
    多少の忙しさなど、どうでもよくなる。
    決済待ちの書類の数は、山のようにあるのだ。

    この際だから、一つ2つ、新しい事案を混ぜておくのも良いかもしれない。

    そんなことを考えていた李順に
    誰に聞かせるというわけでもなく、陛下が呟いた。

    「…やっと……やっとなんだ。
    今夜ようやく、夕鈴に会えるんだ。
    李順、今日は絶対に残業などはせぬぞ!」

    「……はい。
    分かっております。
    ただ、ここ数日で溜まりに溜まった
    決裁待ちの書簡は、決済をお願いいたします。
    でなければ、残業してもらいますからね。」

    「分かっておる。
    李順、次の書簡だ。」

    ものすごい勢いで決済処理が進む。

    これが、毎日続けばいいのに。

    やる気が漲る陛下の隣で、李順は書簡で
    顔を隠しながら、そっと息を吐き出すのだった。



    2014.11.01.改定
    2014.10.30.初稿

    とりっく ぉぁ とぅりーと?9

    ……陛下が、政務室でバリバリ働いていたその頃。


    夕鈴は、後宮にある夕鈴専用の厨房で、
    侍女たちと大量のかぼちゃと戦っていた。

    「お妃様、かぼちゃの裏ごしは、
    コレくらいの量でよろしいでしょうか?」

    「そうですね。
    もう少し、お願いいたします。
    政務室の皆さんにもお配りしますから。」

    「分かりました。」

    「お妃様。
    油の温度が上がりました。」

    「では、手分けして作業を分業して
    揚げ進めてください。」

    「あなたは、かぼちゃあんを分ける役」
    「あなたは、かぼちゃあんを丸める役」
    「あなたは、丸めたかぼちゃあんに生地をつける役」
    「あなたは、揚げる役」
    「あなたは、揚げた饅頭に砂糖をまぶす役」

    「政務室の午後の休憩までに、
    必ず間に合わせましょう」

    「私は、陛下のお菓子にとりかかります。
    なにか分からないことがありましたら、聞いてください」

    「「「「はいっ!」」」」

    熱気漂う厨房は、まだ独身の侍女たちが集い、
    大量のお菓子を作っていた。
    午後の政務室への差し入れの為にである。

    普段、出会いのきっかけの少ない、政務室の政務官達と、良家の子女である侍女たち。
    出会いのきっかけになればと……
    夕鈴が、はじめた政務室への差し入れも、
    最初は反対派が多かったが……
    その後の政務官たちの見事な働きぶりで、今では公認となった。

    最近では、良縁に恵まれるとかで、
    政務室付きになりたがる者が出はじめたとか。

    ……
    …………
    ………………

    夕鈴は、陛下のお菓子を作りながら……
    老師の言葉を思い出していた。

    “よいか、まず陛下を飢えさせるのじゃ……”

    “飢えさせるって?
    どういうことですか?”

    “これから、Halloweenの夜まで、陛下に会うのは禁ずる。
    おぬしの作るお菓子の差し入れもダメじゃ……”

    “でなければ、この計画はなりたたん。”

    “――どうしてですか?”


    “陛下には、おぬしとおぬしの作るお菓子の両方を断ってもらう。
    お妃断ちをして、飢えてもらうのじゃ……”

    “それでだな。
    当日は、陛下におぬしの美味しいお菓子を食べてもらうがよい。”

    “その中に、○▲◇※**を仕掛けるのじゃ”

    “えっっ!?”

    “なんの疑念も持たずに、
    おぬしの差し出すお菓子を口にするはずじゃ”

    “さすれば、この計画はうまくいく。”

    “それとじゃな、当日は侍女の作ったお菓子を政務室に届けるんじゃ
    おぬしが、今陛下のお菓子を作っている最中じゃと、伝えてな。”

    “きっと陛下は、侍女の作った差し入れのお菓子など口にせぬよ。
    おぬしの作ったお菓子を楽しみにしておるからの…・・・”

    “で驚かれたら…・・・
    、雷電姫の呪文を口にするのじゃ”

    “それで、イタズラは完結する
    good luckじゃ……”

    にかっと笑って、妖しい微笑をした老師が最後に浮かんだ。

    「…・・・大丈夫かしら?」
    「大丈夫ですわ」

    無意識に、言葉に出していたらしい。
    夕鈴の不安を近くに居た侍女が聞いいて、
    機転を利かせて返してくれた。

    とにかくねここまできたからには、計画は後戻りは出来ない。
    陛下に会えなくて、寂しかったのは夕鈴も一緒だったから。

    夕鈴は、とりあえず目の前のお菓子作りに
    集中することに決めた。

    陛下の為に、美味しくなれと願いをこめて。




    2014.11.01.改定
    2014.10.31.初稿

    とりっく ぉぁ とぅりーと? 10

    「夕鈴。
    今、戻ったぞ。」

    「お帰りなさいませ、陛下。」

    夜になり、政務室から直接
    後宮に来た黎翔は、真っ直ぐ夕鈴の部屋を訪れた。

    すでに、先触れが届いていた夕鈴は、黒いマントを羽織り
    拱手して待っていてくれた。

    常とは、違う衣装。
    何も纏わぬ、すらりとした白く細い腕を交差して、頭を垂れている。

    見え隠れる衣装から、異国のものと知り
    その大胆な衣装に黎翔は、ドキリとした。

    そんな動揺を押さえて、変に意識しないように
    黎翔は、平常心につとめた。

    「久しぶりだな、夕鈴。
    会いたかったぞ。

    元気そうで、何よりだ!
    心配したぞ。」

    「申し訳ありません。
    今日の準備に、手間取りました。」

    陛下の片手が上がり、
    人払いの合図で、さぁぁ……と侍女たちが
    音も無く退出していった。

    そのまま……
    何事もなく、二人の会話は進んでいく。

    「昼は、政務室にお菓子の差し入れをありがとう。
    皆が喜んでいた。」

    「喜んでいただき、嬉しゅうございます。
    「お味は、いかがでしたか?」

    「私は、食べてはいないが、旨かったと聞いたぞ。」

    「君が、私の分を作っていると聞いたから……
    食べるのを楽しみにとっておいたんだよ。」

    「夕鈴
    私のお菓子は?」

    「ちゃんと、ご用意してあります」

    「昼間は、食べ損なったから……
    「早く食べたいな!!」

    小犬のように瞳を輝かせて、
    お菓子の催促をする黎翔に、夕鈴はクスリと笑った。

    「そんなに、言われなくとも。
    すぐに、ご用意いたします。」

    「只今、お茶と共にご用意致しますね!
    少々お待ちくださいませ……」


    2014.11.01.改定
    2014.10.31.初稿

    とりっく ぉぁ とぅりーと? 11

    「お待たせしました。」

    「待ちかねたぞ!」

    「大げさですわ。
    陛下。」

    そういいつつも、夕鈴は、なかなか黎翔にお菓子を渡さなかった。

    「……夕鈴?」

    「今夜は、Halloween。
    普通に渡しては、つまらないですわ。
    陛下、「とりっく ぉぁ とぅりーと?」 と、言ってくださいませ」

    「……じゃなきゃ、お菓子はあげれません!」

    「えーー!」

    「陛下、とりっく ぉぁ とぅりーと 」

    「とりっく ぉぁ とぅりーと 。
    言ったよ。
    ゆーりん、早くちょうだい」

    なかなか言ってくれなくて渋る陛下を、ようやく促して、言わせた。

    黎翔に、ニッコリ笑った夕鈴は、それだけで可愛らしくて……

    黎翔は、しばらく見惚れた。
    最近、会えなかったから、夕鈴の笑顔が眩しすぎる。

    「はい。
    では、失礼して……陛下、お膝をお借りしますね♪」

    「……陛下。
    あーんしてください!」

    「私が、食べさせてあげますわ。」

    黎翔の膝にチョコンと乗り、向かい合わせてお菓子を差し出した夕鈴。

    迷いもなく、その手から、一つ口に頬張る。

    砂糖のザラリとした甘さと、カボチャの甘味が口いっぱいに 広がった。

    「美味しいですか?」

    少しハの字眉で、心配そうに、見つめる夕鈴。

    いつもより至近距離なことを気づいているのか?
    いないのか?

    自分の膝から、落ちそうな彼女の腰を支えてあげた。

    「美味しい」と答えると…

    「もう一ついかがですか?」

    と、夕鈴がまた一つ差し出してきた。

    先ほどのお菓子より、ひとまわり小さなそれを迷わす口に入れた。

    ……ところが。



    初稿です。
    後ほど直します。

    とりっく ぉぁ とぅりーと? 12


    不味い……

    どころか、辛かった。
    ゲホ……
    ゴホ…ゴホ…

    「ゆーりん、コレ?」

    「はい。
    カラシ入りですわ。美味しいですか?」

    「Σ……!
    ヒドいよ!
    ゆーりん。」

    「イタズラ大成功ダっちゃ♪」

    にこやかに笑う夕鈴を、涙越して見つめる黎翔。

    可愛らしいセリフと笑顔に、怒るに怒れない。

    その時

    パチッと、青い小さな閃光が走った。

    瞬く間に、バチバチと大きくなり…
    部屋が、一瞬青白い閃光に包まれた。

    ビリビリ…とした感電と、きゃあ!という夕鈴の悲鳴!

    一瞬の出来事だった。



    初稿です。
    後ほど直します。

    とりっく ぉぁ とぅりーと? 13

    目が眩んだ黎翔が、次に見たのは。

    白く柔らかな夕鈴の双丘。
    しかも……

    く…苦しい!

    あろうことか、夕鈴の胸に顔を埋めていた。

    黎翔を庇うように頭を抱え込んだ仕草。
    首筋に かかる甘い吐息に、クラリとする。

    サラリと流れ落ちる金茶の髪さえも悩ましい!

    「夕鈴!
    苦しい……」

    ようやく、つむいだ言葉を聞きとった夕鈴が……真っ赤になって、パッと離れた。

    「申し訳ありません、陛下。
    苦しかったですか?」

    ハシバミ色の瞳が、唇がいつもより近い!

    夕鈴のその姿に、黎翔は驚いて絶句した。

    「…………。」

    「…………?
    陛下?」

    何も言わない黎翔を心配して、夕鈴が言葉をかけるも……
    黎翔は、何も言わなかった。







    しばらくして

    「ゆーりん、
    君の身体……」

    「成長してる……」

    そこに居たのは、紛れもなく夕鈴であって、非なる日常。
    一夜にして、雷電姫の衣装が、はちきれんばかりに色っぽく成長した夕鈴の姿に
    黎翔の視線は、さ迷うばかり……

    いつの間にか、夕鈴の腰を支えていた手が、お尻にあることを夕鈴は、気づいてしまった。

    「えっ!?
    ……あっ
    ウソ!?

    きゃあっ!
    陛下のえっちー!」

    ばちーーーん!

    再び、夕鈴の悲鳴と派手な音が、夕鈴の居室に鳴り響いた。

    「とりっく ぉぁ とぅりーと」の長い夜

    イタズラを仕掛けたのは、誰だ!



    初稿です。
    後ほど直します。

    とりっく ぉぁ とぅりーと? おまけ


    「おっ♪
    いいもん食ってんな~~」

    ひょいと屋根から、顔を覗かせた浩大は、
    大量の揚げまんじゅうを栗鼠のように頬張る老師に、声をかけた。

    「ワシ一人じゃ、
    食べきれん……
    食うか?」

    「食う~~」

    食べはじめてすぐに、大きな雷鳴と、悲鳴が聞こえた。

    耳の良い浩大の耳が、それを夕鈴の悲鳴だと聞き分けた。

    「じっちゃん
    お妃ちゃんの悲鳴が聞こえたよ。」

    「いよいよかのー」

    「じっちゃん、嬉しそうだね!」

    「そりゃ、そうじゃ…ようやく悲願が叶うかもしれんからのう。」

    「……あ。
    またお妃ちゃんの悲鳴!」

    「おおっ…
    ついに陛下が…」

    「じっちゃん、策士だな~~」

    「お妃ちゃんに、アレ内緒にしてたんだろ」

    「何のことじゃ……ちゃんと、伝えたがのぅ。」

    「子宝に恵まれ、末長く幸せに暮らした雷電姫にあやかり、代々の寵妃がHalloween。に着たと伝えたぞ」

    「じれったい二人の背中を後押ししたんじゃ…!」

    「あとは、熱い夜をじゃな……」

    「だから、じっちゃん策士なんだよ!」

    にやりと笑う浩大は老師に、懐から出した酒を勧めた。

    この日、後宮管理人の部屋は、夜遅くまで灯りが灯っていたという。

    後宮の夜は長い。

    果たして老師の思惑通りになるのか?

    神のみぞ知る



    初稿です。
    後ほど直します。

    【イラスト】現代パラレル「ぴいこさんのあげ罠・線画」

    白陽国SNS地区・
    パラレルコミュUP品です。

    ぴいこさんのあげ罠
    設定黎翔さんが夕鈴の鼻にクレープつけちゃった…・・・。 続きを読む

    【イラスト】現代パラレル「ぴいこさんのあげ罠・色鉛筆画」

    白陽国SNS地区・
    パラレルコミュUP品です。

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