花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    カテゴリ:【中編】 Saint Valentine's Day の記事一覧

    【中編】「Saint Valentine's Day 1」

    摩天楼に、天使の羽根のような純白の雪が降る……

    フワリ…
    フワリ……

    軽くて大きな雪は、瞬く間に、マンハッタンを白く染めた。

    夕鈴は、地上80階の窓越しに、空を見上げた。

    「今夜まで、降り止まないかしら…」

    見つめるハシバミ色した瞳は、陰る。

    今日は、バレンタイン。

    恋人に愛を届ける特別な一日。

    そんな日に、大雪なんて、神様はいじわるだ。

    はあっ…

    夕鈴の気重なため息は、窓ガラスを一瞬、曇らせた。

    暖かな室内を振り向くと…

    「あら…」

    いつの間にか、上司がデスクの上で寝ていた。

    「会長、お疲れなのね……」

    夕鈴は、チラッと腕時計を見ると、定刻会議まであと1時間。

    夕鈴は、まだ仮眠を取れると判断した。

    「せっかくだし、少しでも休まれたほうがいいわ…」

    夕鈴は、ヒールの音をたてないように、部屋の明かりを落とすと、隣の秘書室へと消えた。

    すぐに隣の部屋から、ブランケットを持ってもう一度やって来た。

    「会長、風邪をひきますよ…」

    寝る間も惜しんで働く珀会長。
    初めの頃、会長のこんなにも無防備な寝顔を見るなんて考えてもみなかった。

    「子供みたい……」

    秘書として勤め初めた頃は、こんな隙を見せてくれるなんて考えても見なかった。

    少しでも、信頼を得られてるのかしら?

    そう思うと、なんだか くすぐったくもある。
    身体を冷やさないようにと…会長にブランケットをかけてあげた。

    その時、会長の長い睫がパチリと動いた。

    「夕鈴、今何時だ?」

    「まだ、15時です。」

    「会長、起こしてしまいましたか?」

    「……いや。
     いつの間に、私は寝ていたんだ?」

    「先ほどからです。
    ぐっすりとお休みになられてました。

    まだお休みになっててください。
    定刻会議まで、まだ時間があります。
    休める時に休んでいたほうがいいですよ?」

    「もう十分だよ。」

    自分の肩から滑り落ちたブランケットに気付いた黎翔。
    ふっ……と、目元が和らいだ。

    「これは夕鈴が、かけてくれたの?」

    「はい。
    雪が降ってきましたので、寒そうでしたから。
    会長が、風邪を召されないようにと……」

    「ありがとう、夕鈴。」

    「……いいえ。」

    少し頬を染めてはにかむ彼女は、とても素直に感情が表情に出る。
    それは、ビジネスにおいて駆け引きの多い黎翔にとって、ほっと安心出来る。
    裏の無い人間。

    黎翔が、気を許すことのできる唯一の女性だった。

    「夕鈴、珈琲を頼む。
    いつもより、濃い目がいい。」

    「分かりました。
    ただいまご用意します。」

    夕鈴は、会長室の隣のミニキッチンで、いつもどおりの珈琲を手淹れした。
    ふと気付いて、自分のデスクから紙袋を持ってきた。

    夕鈴が、紙袋から取り出したのは、小さな包みだった。


    ……続く



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    【中編】「Saint Valentine's Day 2」


    昨年のクリスマス。
    社内パーティーの後、黎翔に口説かれた夕鈴。
    密かに憧れていた彼と両思いになれた。

    今年は、初めて迎える特別なバレンタイン。
    だけど平日で恋人としての時間は、アフター5から。

    仕事とプライベートをきっちり分ける彼を
    とても尊敬している。

    仕事にとても厳しい会長としての精悍な顔。
    二人っきりの場の優しい恋人としての甘い顔。

    そのどれもが珀黎翔としての顔だから。

    切り替えが激しくて、時々戸惑うけれど。
    そのギャップも彼の魅力の一つ。

    初めて渡す恋人としてのバレンタインプレゼント。
    やっぱり特別にしたいから。

    「喜んでくれるかしら?」

    夕鈴は珈琲を、
    黎翔に差し出すと、その隣に小さな包みを添えた。

    「コレは?」

    「珈琲の口直しです。
    お口に合うか分かりませんけれど…」

    「開けていい?」

    「……どうぞ。」

    黎翔は、艶やかな金茶のリボンをゆっくりと解いた
    小さな包みの中は、小さな赤い小箱。

    中には、12粒のトリュフチョコレート。

    淹れたての珈琲の香りに甘いチョコレートの香りが広がった。

    「私の手作りです。
    以前、市販のチョコレートは甘すぎると
    言ってたのを思い出したので。」

    「少し不恰好ですけどね。
    濃い目の珈琲には、合うのかなと……」

    「ありがとう!夕鈴。
    嬉しいよ!!!」

    「早速、味見していい?」

    「はい。どうぞ。」

    「夕鈴が、僕に食べさせてくれる?」

    「ええっ!!
    私がですか!?」

    「ダメ!?
    夕鈴。君は僕の恋人なんだから、お願い……」

    うっ……

    うるるっとした、小犬のような視線を向けられて、夕鈴は、たじろいだ。

    ……逆らえない。

    分かっていてやっているんだろうなぁ。

    分かっていても、この瞳には、……逆らえない。

    渡したばかりの箱の中から、一粒選んで摘み、黎翔の口に入れようとした。

    ところが……

    「夕鈴、食べさせ方が違う。」

    「えっ?……あっ。」

    そう言って、黎翔は、夕鈴の手からチョコレートを取り上げると彼女の口へと放り込んだ。

    突然口に入ったチョコレートに、夕鈴が目を白黒させて驚いていると、
    黎翔に身体ごと引き寄せられて唇を奪われた。

    夕鈴の舌先から直に味わうチョコレート。

    舌の上で甘く絡み合い、みるみると溶けて消えた。

    「甘くて美味しいね。
    夕鈴、ありがとう。
    残りは、後で頂くね。」

    荒く甘い息を吐く夕鈴に
    冷静な会長としての黎翔の声が囁く

    「業務連絡だ。夕鈴。
    “今日は、大雪の為、定時で退社するように。”
    各部署に、通達するように。

    折りしも今日はバレンタイン。
    残業は無しで、全社員。
    恋人・家族サービスに努めるように。」

    「……はい、会ちょ…う……」

    「君だけは特別だ、夕鈴。
    あとチョコレートは、11粒。
    全部僕に食べさせないと、君は帰れない。」

    「今夜は帰すつもりはないから……」

    恋人の熱い視線。
    黎翔に至近距離で、下から見詰められて、
    夕鈴はどうしていいのか分からない。

    真っ赤な顔で、燃えるような情熱的な赤い瞳に
    魅入られたように縛られた。

    意地悪な恋人は、彼女に囁く。

    「夕鈴、そんな蕩けた顔じゃ……会議に連れて行けないな。
    ここで留守番するか?」

    そんな彼女に、甘いKISS。






    アフター5は恋人達の時間。
    夜の秘密は、プライベートな会長室の扉の奥に……。




    -Saint Valentine's Day・完―


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