花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    カテゴリ:【大人風味】美味なるもの「花の四阿版」 の記事一覧

    美味なるもの 1

    「陛下のお口に合えば良いのですが…」

    自分の裙子(くんす)の裾を握り締めて
    頬染める僕のお嫁さんは、自信なさげに言葉を紡ぐ。

    「普段から、宮廷料理を食べ慣れている陛下には
    私の庶民の正月料理は、質素でお口に合わないかも知れませんよ?」

    傍らで、もじもじと恥ずかしげに言葉を継ぐ夕鈴に
    僕は、君の言葉を打ち消すように優しく微笑んだ。

    「そんな事は、無いよ。
    君の料理は、いつもどれも美味しいよ。」

    「僕は今朝から、
    ずっと夕飯を楽しみにしていたんだ。」

    「お腹がぺこぺこだよ~夕鈴。
    早く食べよう?」

    子供のように、せがむ僕に
    夕鈴はクスリと笑った。

    「はい。
    ちょっと待っててくださいね。」

    夕鈴が、卓の上に用意された土鍋の蓋を開けると、
    香ばしい美味しそうな香りがした。
    すぐに僕の胃をくすぐる。

    ぐぐぅ~~……

    僕のお腹も、早く食べたいと啼く。

    「今夜は、お粥なんだね。
    美味しそう!!」

    「はい。
    今日は1月7日の正月行事。
    七草粥の日ですからね。
    七草粥にしてみました。」

    「今日だけしか、食べられない。
    特別なお粥なんですよ。
    一年の無病息災を願う、特別なお粥なんです。」

    白くトロッとした粥に色鮮やかな野草の緑。
    ふわりとした暖かな湯気が、土鍋からたちのぼる。

    フツフツ…と、まだお粥が熱く沸き立つ土鍋から、
    夕鈴は、朱塗りの碗に、粥をよそいながら、はなし続ける。

    「今年も陛下が、元気な一年を過ごせますように…と、
    心を込めてお作りしました。」

    炭火で焼いた、小さな餅がぽんとお粥の上に乗せられた。



    お粥を両手で持つ夕鈴は、ニッコリと微笑む。

    「はい、どうぞ。
    熱々ですから、食べる時は気をつけて下さいね。」

    僕の目の前に、熱々の碗が差し出された。
    夕鈴から、茶碗を受け取ると僕は、一度卓に茶碗を置いた。

    「夕鈴、ありがとう!!
    いつも美味しい料理をありがとう。」

    「だけど、ちょっと熱そうだね。

    夕鈴、冷まして、
    僕に食べさせてくれる?」

    少し困ったように眉を寄せて、
    僕は小犬のような瞳で懇願する。


    夕鈴は、瞳を大きくさせて驚いた。
    言葉も出ない。

    夕鈴のみるみる薄紅色に染まる様も、可愛い。

    もちろん一人でも、お粥は食べられる。
    だけど君と一緒なら、
    もっと美味しいに、違いない。

    「熱いのは苦手なんだ。
    お願い、夕鈴。

    僕の膝に座って、
    僕に食べさせて……」

    今度こそ、困った顔で戸惑う
    君の手首を引き寄せて
    半ば、無理やり僕の膝に座らせた。

    「陛下、子供じゃないのですから、
    ご自分で食べられますよね。」

    君を軽く抱きしめて、僕は囁く。

    「このとおり両手が塞がっていて、食べられない。
    お腹が、空いたよ、夕鈴。
    君が、食べさせて。」

    真っ赤な顔の君は、
    僕を睨みつけるように、僕を見た。

    君の顔は、正直だ。
    何に葛藤しているのかが、僕にはよく分かる。
    羞恥と仕事とで揺れる心。
    君の瞳は、言葉より雄弁だ。
    笑いを堪えて、君の名を甘く呼んだ。

    「……夕鈴。」

    はぁ…

    「陛下、今回だけですよ。」

    諦めたようなため息と共に、夕鈴が碗を持った。
    粥を一さじすくい取った。
    そのまま夕鈴は、ふぅふぅとお粥を冷ましはじめた。

    僕の思惑は成功した。
    君の可愛い姿を真近で、愛でながら僕は最初の一口を待った。

    …続く


    2014.01.08. 分館からの転載
    2014.01.16. 改訂
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    美味なるもの 2

    私は、至近距離で
    国王陛下の膝の上でお粥を冷ます。

    まじまじと冷ます様子を陛下に見つめられて……
    時折、優しく頬笑まれて
    私の顔が熱くなった。

    なるべく意識しないようにと、
    ひとさじの粥を冷ますことに専念するも
    陛下の温もりが、集中を妨げる。

    私は、どうしても
    陛下を意識してしまう。

    ……困った。

    ふぅふぅ……と
    何度か息を吹きかけて、
    なんとかひと匙分を冷ますことができた。

    「陛下、冷めましたよ。」

    「食べさせて、夕鈴。
    あーーーん。」

    陛下の開いた口に、震える手でお粥を運ぶ。

    お粥が、陛下の衣に落ちたら大変!!

    私は、細心の注意を払いながら・・・
    最初の一口を陛下の口に運んだ。

    「美味い!!
    ほんのり塩味で、優しい味だね、夕鈴。
    もっと、食べたいな。」

    そう言ってニコニコと嬉しそうに笑う陛下は、
    まるでツバメの雛鳥のように
    大きく口を開けた。

    私はそのたびに、
    お粥を冷まして、陛下の口に運ぶのだった。

    繰り返される
    不可思議で甘い時間。

    市井の普通の娘の私が、
    国王陛下の口にお粥を食べさせるだなんて
    信じられない。

    もう少し、普通は警戒するのではないの?

    懐いたような小犬陛下の様子が微笑ましい。

    陛下に信用されていることが、
    私は、誇らしくもあり嬉しかった。

    無邪気に、あーんと口を開けて、
    次の粥をねだる陛下が、愛しくなる。

    だんだん私は、親鳥になったような気分がしてきて
    可笑しくなった。

    なんだか陛下が、とっても可愛い……

    だけど本人の目の前だから、笑うに笑えない。

    私は見つからないように、
    そっと頬の内側を噛むんで笑いをかみ殺した。

    ……続く



    2014.01.09. 初稿・分館からの転載
    2014.01.16. 改訂

    美味なるもの 3

    そろそろお腹も膨れた頃、
    君のお腹がくくぅ……と鳴いた。

    僕にお腹の音を聞かれたことで
    恥ずかしくて、顔が真っ赤になった夕鈴。

    そうか……君はまだ食事をしていなかったんだね。
    僕は、もしかして
    君の分のお粥まで食べてしまったのか?


    「夕鈴、お腹が空いたの?」

    「い…いいえ、先ほど味見をして
    夕食は、済ませてしまいました。」

    くぅ…

    「先ほどから、お腹が鳴っているよ!?
    ほんの少しの味見だけでは足りないよね。
    気がつかなくてごめんね、夕鈴。」

    「今度は、僕が君に食べさせてあげる!」

    「とっ とんでもないっ!
    そんなことをして
    李順さんに知られたら、絶対に怒られます。」

    全力で拒否する彼女の態度が気にいらない。
    僕が君を心配しているのに、
    君の心配は李順に怒られることなのか?

    ーー面白くないな。

    今、君の空腹を満たそうとして心配している僕より、
    君の口から他の男の名が出るなどと……
    たとえ李順であっても聞きたくはなかった。

    本気で面白くない。

    むぅ…と不愉快な気持ちになった。
    君に対して僕は、心が狭い。
    この気持ちを君に隠せない。

    君が他の男のことで、心を占めているのは許せない。
    荒れ狂う胸中が、収まらない。

    赤い瞳が、スッ…と細められた。

    「私では、嫌なのか?」

    纏う空気を、小犬陛下から狼陛下に
    鮮やかに変えて、僕は私になる。

    ――君に問う。

    君は、僕の思惑など知らず、僕を手痛く拒絶した。

    「いいえ、陛下のお手を煩わせなくとも、
    お粥ぐらい自分で食べられます!」

    君にとって 、僕は関心さえ持ってもらえないなどと……認めたくはなかった。

    私の腕の中の可愛い兎が、たまにとても憎らしい。

    こんなにも私を翻弄するのは、君だけだった。


    ……続く




    2014.01.10. 初稿・分館からの転載
    2014.01.16. 改訂

    美味なるもの 4

    「一人より二人で食べると、
    美味しいんだよ。」

    「君が、僕に食べさせてくれて
    食事が、美味しかったんだ。
    だから君にも味わってほしいな。」

    嫉妬という醜い感情をキレイに隠して、
    黎翔は夕鈴に懇願した。

    「僕は、君に美味しく食べてもらいたいんだ。」

    叱られた小犬のように、うなだれて
    ……僕は君に囁く。

    君が小犬陛下のお願いに、
    弱いと知っていての僕のズルさ。
    どんな手を使ってでも、僕の手ずから君に食べさせたい。

    ……数秒の沈黙。
    ため息と共に、夕鈴は言葉を紡ぐ。

    「しかたがない人ですね……
    今回限りですよ。」

    新しい粥を、椀によそう夕鈴。

    僕は、ドキドキしながら
    彼女から匙(さじ)を受け取った。

    「夕鈴、お粥の椀だけ持っててね。」

    彼女の持つ椀から、お粥を一匙すくい、
    夕鈴の見よう見まねで、フウフウ…とお粥を冷ましだす。

    冷めた頃合いを見図り、
    夕鈴に合図を送った。

    「夕鈴、冷めたよ。
    ハイ、あーん。」

    夕鈴は真っ赤な顔で、おずおずと小さな口を開けた。
    黎翔は、そこにお粥を差し入れた。

    薄紅色の花弁のような唇に、
    お粥がかすめて、ぽってりとお粥が付いた。


    ……唇から、零れ落ちそう。
    夕鈴が慌てて……舌先でお粥を舐め取った。

    夕鈴のなにげない動作が、エロテックで艶(なま)めかしい。
    黎翔は、夕鈴の口元から目が離せなかった。

    「陛下、ちゃんと食べさせて下さい。
    零れちゃう…」

    「夕鈴が恥ずかしがって、
    小さく口を開けるから零れたんだよ。」

    「今度は失敗しないから、
    大きく口を開けてね。」

    そう黎翔は、言ったものの……

    夕鈴が苦情を訴えるだろうとも、
    もう一度アレを見たいと黎翔は思ってしまった。

    白濁した粥を舐めとる
    エロテックな夕鈴を見たいと願ってしまった。

    何度も夕鈴に食べさせては、
    自分の心と葛藤する。

    いつの間にか、お粥は、
    椀の底が見えるまでに減っていった。

    ……続く。

    美味なるもの 5

    あと少しで、お粥が無くなる……

    名残惜しいような君とのひととき。

    僕の我慢も限界だった。
    愛しい君を抱いて、何もしない平和な時間。

    「夕鈴。
    コレが最後の一口だよ。


    僕の知らない君が見たい。

    君の口に運ぶ一匙を 君の口からワザと零した。

    「ごめん、夕鈴。
    失敗しちゃった。」

    ああっ!
    陛下っ!
    また!

    再び、君の唇に付いたお粥。
    予想どおり、怒りだす君は、
    お粥が落ちる前に、ピンク色の舌先で舐めとった。

    その様子をじっ…と見つめていた僕は、
    夕鈴から、空になった椀を奪うと、静かに卓に置いた。

    「夕鈴、美味しかった?
    満足した?」

    「はい。
    ありがとうございます。」

    君は、そう言って僕の膝から降りようとする。

    だけど…僕は、

    「夕鈴、まだ顔にお粥が付いてるよ……」

    君を抱き直して囁いた。
    お粥が付いた夕鈴の唇から、
    僕はお粥を唇で舐め取ってあげた。
    びっくりして、固まってしまった夕鈴。

    柔らかな君の唇に付いた粥は、甘かった。

    「美味いな……」

    ゆっくりと君から粥を舐めとると
    僕は、妖艶に微笑んだ。

    君の何気ない所作が僕を散々煽っていたんだ。

    この味を、もっと味わいたい。
    もっと君を堪能したい。


    「……夕鈴。」

    僕は、うなじを引き寄せ、君に口付けた。

    じっくりと味わってあげるよ、君を。

    柔らかな唇は、どんな美酒よりも甘く僕を酔わす。

    ――――美味なるもの――――

    君は、僕の愛しいご馳走。

    もう僕は、この腕の中の愛しい獲物を逃がすつもりは無かった。


    ー美味なるもの・完ー



    お粗末さまでした。
    大人風味程度の作品は、残すことにしました。
    初稿・激大人味「美味なるもの」 は、分室・蜜書庫でお楽しみください。

    2014.01.16.さくらぱん