花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【長編】『楼蘭』―夢逢瀬編―43  黎翔SIDE

    楼蘭





    ―黎翔SIDE―

    滑らかな指どおりの良い綺麗な髪が、
    サラサラ……と、私の指先から零れ落ちる。

    いつの間にか私は、愛しい彼女を胸に抱き締め
    素直な美しい金茶の長い髪を指梳いていた。

    星影は、囁く……優しく穏やかな夜。
    ……腕の中に抱きしめた
    愛しい夕鈴との別れの夜の
    切なくも幸せな時間の再来。

    これは、たぶん夢なのだろう……
    黎翔は、“夢だ”と、直感で知った。

    だけど、なんて幸せな夢なのか。
    夢であっても彼女に、また会えることが嬉しい。

    繰り返し私は、彼女に甘く愛を囁く。
    自分の声が、見知らぬ者のように響いた。

    震えて……擦れる自分の声。
    愛に恐れ、愛を乞う。
    恋焦がれる青年そのものの私は、オウムのように愛を繰り返し
    愛しい夕鈴に愛を乞う。

    「愛しています、夕鈴。
    貴女を私の妻にしたい。
    どうか……是と。
    是と言ってほしい」

    静寂の星降る夜のロブ=ノール湖畔。
    幾万の星々が、星鏡のロブ=ノール湖に映しだされていた。

    言葉では、伝えきれない
    迸り滾る熱い気持ちを込めて
    夕鈴の柔らかな唇に
    何度も触れ、口付けた。

    黎翔から夕鈴への情熱の誓い。

    繰り返し、夕鈴の柔らかな唇に酔いしれ
    「愛している」……と伝えた。

    音も無く静かに流れ落ちる彼女の涙。
    頬に、瞼に、震える睫に口付けた。

    細い華奢な肩が、嗚咽に震える。
    私は、愛しくて切なくて、ギュッと強く彼女を抱き締めた。

    ますます泣き崩れる夕鈴。
    何も言わないけれど
    伝わったのは、王女としての重責と切ない思い。

    はしばみ色の瞳は涙に曇り、何も写さない。

    夕鈴……君は何を怖れる?

    繰り返し囁き口付けた、私の愛は空しく通過するだけなのか?

    その秘密を、私に明かして……
    君を縛る重責を取り除きたいんだ。

    諦めかけたとき……
    ようやく応えた夕鈴の言葉が、私の胸に突き刺さった。

    ――――私は、国の為に嫁がなければならない。
        
    ――――黎翔様、好きよ。

    ――――たぶん初めて、お会いしたときから。
          気づくのが、遅かったけど
          出会うのが遅すぎたけれど

    ――――貴方に恋してよかった。
          この想いを胸に秘めて、嫁ぐことができる。
          ありがとう

    ――――だから許して……      私の我侭を。
          貴方を、私の運命に巻き込みたくないの。


    ――――だからお願い。
          ぜんぶ忘れてください……      私のことを。

    ――――ぜんぶロプ=ノールの星鏡が見せた夢だと思って……
          私は、幻(まぼろし)なのよ。

           


    夕鈴、君を幻(まぼろし)などには、させない。
    忘れることなど、できない。

    君は、「私を好きだ」と言ってくれた。
    少しでも私に望みがあるのならば、私は諦めない。

    あと、少し……あと少しで、君の憂いの秘密が聞き出せる。
    もう少しなんだ……夕鈴。

    私を待っていてくれ!!!




    ――――――――夢だというのに、生々しい感触。
    伝わる微熱に、私の心は熱く乱される。

    抱きしめた君を離さない。
    離したりなどしない。

    別れの夜と違い。
    ――――夢では、熱く口付ける黎翔に、
    いつの間にか彼女も応え、たどたどしくも熱く口付けを交わす。




    二人の対の耳環(じかん)が
    熱い二人の鼓動にあわせて、呼び合い呼応するかのように
    鮮やかに熱く輝いていた。

    互いしか見えていない二人は、そのことに気づかなかった。


    ……夢逢瀬編44  夕鈴SIDEへ 続く。


    2016.03.14.改訂
    2012.11.16.初稿
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    【長編】『楼蘭』―夢逢瀬編―44  夕鈴SIDE 1

    楼蘭




    ー夕鈴SIDE 1ー

    ああ……
    また、この夢……

    夕鈴は、苦しげに身を捩(よじ)り逃げようとするも。
    ……漆黒の暗闇に失墜する自分を、大鷲に変化した武帝が無情にも捕まえる。

    鋭い猛禽類の鉤爪は夕鈴の柔らかな皮膚を引き裂き、ゆるゆると鮮血が流れ落ちた…

    武帝の
    血も凍りつく、深淵の恐ろしい闇の眼差し
    この冷たい瞳から、私は逃れられぬのか!?
    交わされる冷たい口付けに、夕鈴の身体が大きく震えた。

    自らを、贄と差し出したあの日以来…

    繰り返し…繰り返し
    夕鈴の夜を苛む悪しき夢。






    ……諦(あきら)めの未来の自分。

    ――夕鈴!――

    いつものように深淵の闇に深く沈む
    自分に呼びかける。

    闇を切り裂く一条の強い光!
    温かな陽光にも似たその閃光。

    湧く希望のような自分を呼ぶ声。

    あの声は……





    ――――黎翔さまっ!







    溢れる涙が止まらない

    ~~っ!!!

    鉤爪に捕らわれ逃げられぬまま……
    夕鈴の片耳だけの翡翠の耳環(じかん)が
    暗闇の中、鮮やかな明るい緑に輝いていた。

    ……夢逢瀬編45  夕鈴SIDE 2へ続く。


    2016.03.14.改訂
    2012.11.16.初稿

    【長編】『楼蘭』―夢逢瀬編―45  夕鈴SIDE 2 夢逢瀬編・完

    楼蘭




    ー夕鈴SIDE 2ー

    夕鈴!

    (黎翔さまっ!)

    呼ぶ声に見上げれば、
    切り裂かれて覗いた 真っ青な空

    どこまでも澄んだコバルトブルーに光る青空と眩しい太陽の光輪。
    差し込んだ眩しい天空の光から彼女に手を差し伸べる人影。

    「夕鈴っ!」

    夢の中で巨大な大鷲の鉤爪に囚われたまま、夕鈴は叫んだ。

    「……○○○○○さまっ!」

    確かに愛しい人の名を、呼んだはずなのに、
    その声は、まだ濃く残る闇に囚われて声にならない。

    無音の闇に、愛しい声だけが木霊する。

    「夕鈴!
    ……夕鈴!」

    「……黎翔様」

    涙ながらに諦めに似た落胆で夕鈴が呟いた声は、以外にも大きく木霊して……
    次の瞬間、パリリ……と、漆黒の闇が跡形もなく剥がれ落ち消えていた。

    闇に慣れた目に、眩しい光の洪水。
    眩しくて目がくらむ。

    目を開けていられなくて、彼女は目を瞑った。











    どれくらい、そうしていたのだろう。
    目を開ければ……そこは暖かな見慣れた景色。

    穏やかで静かなロブ・ノールの岸辺。
    星明りが、湖面に光りを灯す星鏡の夜

    (温かい……)

    何時の間にか暖かい腕に包まれて、誰かの胸に抱かれていた。
    心安らぐその人の温もり……無言で髪を撫でられ指梳かれていた。

    静寂が心地良い。
    夕鈴は、この温もりを知っていた。

    先ほどの闇の冷たさや、恐怖も絶望も薄らいでいく。
    ……萎縮した心が、少しずつ緊張が解きほぐされていった。

    ただ……怖かった名残の涙だけが、夕鈴の頬をぽろぽろと零れ落ちた。

    「……夕鈴」

    耳朶に囁かれる、はじめて心響いた自分を呼ぶ甘美な声
    優しく抱かれ、耳朶に繰り返し告げられる

    「愛している」……と言う囁き。

    クラクラとほろ酔いながら、ゆっくりと……はしばみ色の瞳を開けば、
    暖かな焔の色の綺麗な瞳で見詰められていた。

    「黎翔様……」

    好きな人に抱かれていることを知り、頬染める夕鈴。
    安堵で温かな涙が零れた。

    啄ばみ繰り返される
    黎翔からの甘美な口付けは、どんな美酒よりもほろ酔う。


    (すき……
    私、黎翔様が好き……)


    忘れようとした恋心は、新たな涙を彼女にもたらす。

    星鏡に寄り添う恋人達は、運命を知る。

    逆らえぬ恋の運命。

    星々は祝福の光を贈った。

    「貴方が好き!」

    夢の中なら……
    こんなにも貴方に、素直になれるのに……

    黎翔からの甘い口付けに応え……熱い吐息を零す夕鈴と
    愛する夕鈴に酔う黎翔の
    対の翡翠の耳環(じかん)が仄かな光を放ちながら、
    輝いていたことを夕鈴は知らなかった。



                  ―夢逢瀬編・完―



    再会編・46へ 続く

    2016.03.15.改訂
    2012.11.16.初稿