花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【お知らせ】クリスマス企画

    【花の四阿】クリスマストリプルコラボ企画☆メルティkiss大作戦

    下記は【花の四阿】のクリスマス企画。
    12/24に公開いたします。
    メルティkissの世界観を狼陛下で表現してみようという企画です。
    ただいま準備中。予約投稿となります。
    クリスマス・イブまでお待ちください。

    第一弾 “イラスト”ダリ子さん&“SS”さくらぱん    11.29.完成
    【短編】本誌設定ぴあ切なの実『雪原の雪うさぎ』※ダリ子さんの萌え

    第二弾 “イラスト”麻杉慎さん&“SS”さくらぱん    11.29.完成
    【書庫】本誌設定ぴあ甘の実「狼陛下の花嫁―冬のくちどけ―」    1.  2.  3.

    企画当日、ピクシブの麻杉慎さんのご自宅でも、コラボ品がUPされることが決まりました。
    よりたくさんの方にコラボ品を見ていただけるようになって、嬉しいです。
    イラストの感想は、リンクしますので、直接ファンレターとしてピクシブにお願い致します。

    もちろん「花の四阿」に届けられた、コメント・拍手コメントは、各絵師様・書き手様にお届けします。
    お気軽にお寄せください。          2013.11.30.さくらぱん


    第三弾 “イラスト”さくらぱん&“SS”Sanaさん     12.22.完成
    【短編】本誌設定ぴあの実 「ふゆのもり」   

    こちらは、現代パラレル縛り となります。
    第四弾 瀬津音さんのメルティkiss 1.   2 .
       
    ※題名は、作品末尾にあります。
        12/06 ピュアの御連絡を頂きました。ありがとうございます。 
        12/17 お約束どおり、現代パラレルのピュアピュアを二枚納品していただきました。
            瀬津音さん、ありがとうございます。



    下記は分館【秘密の味は蜜の味】のクリスマス企画☆メルティkiss大作戦
    こちらは、現代パラレル縛り となります。

     
    第五弾 大人味「白のseason」 “SS”さくらぱん

    第六弾 激大人味「緋のseason」1 2  3 4 おまけ  “SS”さくらぱん  

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    【日記の祭典】クリスマス特別企画 「メルティkiss大作戦 」

    下記は【日記の祭典】のご案内です。



             
             
                              
         20131224meltykiss.png     
        
    おりざさん☆陛下の花園に、12/5クリスマス企画のバナーを作っていただきました。ありがとうございます。)    

    【花の四阿】だけでなく、メルティkissの世界観を各自ブログにて、
    「狼陛下の花嫁」で表現してみようという企画です。
    12/24に下記の各ブログ・ゲストの有志メンバーの自宅で公開致します。


    尚、本企画は、株式会社 明治 様とその商品には、一切何の関係もございません。
    ご迷惑になりますので、お問い合わせを、なさらないようお願い致します。
                                   2013.12.06.さくらぱん





    クリスマス・イブとなりました。
    皆様、お楽しみくださいませ。



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    エントリーNO.1
    さくらぱん ブログ名「花の四阿」

     
        メルティ kiss大作戦ご案内の頁
    【花の四阿】こちらは、ピュアピュア設定縛り となります。
    分館【秘密の味は蜜の味】こちらは、蜜縛り となります。 (入館にはパスが必要です。ご用意ください。)

    エントリーNO.2
    おりざ様 ブログ名「陛下の花園」</span>
          メルティ kiss大作戦コラボ作品 「つぶつぶイチゴのメルティKiss」編( 前編 ・中編 ・後編

    エントリーNO.3 
    よゆまま様 ブログ名「遥か悠遠の朱空へ」
          メルティ kiss大作戦作品1 「スゥィート・キス」 現代パラレル
          メルティ kiss大作戦作品2 「秘密の贈り物」
      
           

    エントリーNO.4
    さかなや様 ブログ名「あっちこっち」
         メルティ Kiss大作戦「雪のような口付けを」     方淵x紅珠のお話
          
         

    エントリーNO.5
    麻杉 慎様 pixiv.ご自宅
          メルティ kiss大作戦作品 「狼陛下の花嫁ー冬のくちどけー挿絵」


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    企画に参加していませんが、クリスマスのお話をたくさんUPされています。よかったら、どうぞ 
    高月慧ネン様 ブログ名「兎と狼のラビリンス」

          
          
    ※高月慧ネンさんへのSNSさくらぱん日記39000hitキリリク
                       現代パラレル「白のseason」大人味   12/24up 
                       現代パラレル「緋のseason」激大人味   12/24up

    2013.12.23.現在



    【書庫】 狼陛下の花嫁―冬のくちどけ―

    こちらは、クリスマス企画 第二弾 “イラスト”麻杉慎さん&“SS”さくらぱん  のコラボ
    【中編】本誌設定ぴあ甘の実「狼陛下の花嫁―冬のくちどけ―」です。

    ◆本誌設定
    ◆臨時花嫁
    ◆蕩ける甘さ
    ◆ピュアの実

    慎さんの素敵イラストと共に、
    メルティーkissな蕩ける甘さをお楽しみください。


    securedownload.jpg   
    (2013.11.26.挿絵☆麻杉慎様)




    2013.11.29.【中編】本誌設定ぴあ甘の実「狼陛下の花嫁―冬のくちどけ―」  1

    2013.11.29.【中編】本誌設定ぴあ甘の実「狼陛下の花嫁―冬のくちどけ―」  2

    2013.11.29.【中編】本誌設定ぴあ甘の実「狼陛下の花嫁―冬のくちどけ―」  3


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    【コラボ】「狼陛下の花嫁―冬のくちどけ・1―」






    「夕鈴、いま帰った。」

    私は狩り場から帰ると、まっすぐに愛しい妃の元へと向かった。

    しかし……部屋には、彼女の姿は無くて。
    かわりに、一人の女官が答えた。

    「恐れながら、陛下。
     お妃様は、庭を散策中です。」

    「この雪の中をか!?」

    「……はい。
     陛下が、お寒い思いをしているのに、
     ご自分だけ、暖かな室内にはいたくない と言われまして……
     
     陛下が、出かけられて すぐに、
     お一人で 外へと、向かわれました。」

    君らしい言葉に、苦笑する。

    「お妃様に、お知らせして参りますので、
     陛下は ここで、しばらくお待ちいただけますか?」

    「いや……いい。
    私が、赴こう。」

    女官の行動を私は制した。



    私は、夕鈴の部屋から庭へと出た。
    庭の奥へと続く 曲がりくねった道。

    降り積もった雪の上に、くっきりと一人分の小さな足跡が続く。

    たまには、君を捜すのも悪くない。
    君の姿を求めて、私は足跡を辿った。

    途中、凍りそうな紅椿の花枝の雪を落とし、
    凍りついた水溜まりの薄氷を割り、
    木の枝に小鳥たちの為に林檎を刺して……

    君の楽しんでいる姿が目に浮かんでくる。
    その場に、居なかったことが、悔やまれる。

    君の足跡を辿っているだけだというのに……

    生き生きとした鮮やかな君の姿が、瞼(まぶた)の裏に浮かんだ。

    ――――愛らしい君が、愛しくてたまらないよ 夕鈴。

    ずっと……君のそばに居たい。

    急に早く、会いたくなって自然と小走りになった。




    腕の中の君へのおみやげが、暴れたけど……

    「もうすぐ、お前の主(あるじ)に会えるから…」

    と、宥(なだ)めすかした。

    君は、気にいってくれるかな?
    笑ってくれるかな?
    期待と不安が入り混じる。

    再び、降り出した雪が私の心を急かす。

    ――――夕鈴!

    君に、早く会いたい!

    君へと、駆ける気持ちが止まらない。

    ……この先に君が居る。

    降り積もった雪に残る 
    愛しい君の幻と足跡をどこまでも追いかける。

    狭いはずの後宮の庭が、とても広く遠く感じた。


    ……続く。 


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    【コラボ】「狼陛下の花嫁―冬のくちどけ・2―」


    「――夕鈴!」

    「陛下!!」

    ようやく見つけた君は、私の声に振り向くと、輝く笑顔で走って来てくれた。

    「おかえりなさいませ!」

    「お早いお帰りですね!
     狩りは、いかがでしたか?」

    まだ整わぬ息を弾ませて、
    彼女は、一生懸命に私に問いかける。

    私をまっすぐに、優しく見つめてくれるひと。
    皆が怖れる狼陛下を、彼女だけは恐れない。

    「夕鈴、両手を出して
     ……君におみやげがあるんだ!」

    「……なんですか?」

    不思議そうに小首を傾げる君。

    素直に両手を差し出した夕鈴の腕の中に、
    私は、おみやげをそっと手渡した。

    …………!

    「わぁ!
    野生のうさぎですね!!」

    「白くてフワフワしてる……可愛い!」

    思い描いていたとおりの君の言葉。
    嬉しそうな、耀く笑顔。
    林檎のように真っ赤な顔で、うさぎに優しく微笑む夕鈴。
    柔らかな小さな手で、うさぎを撫でている

    その仕草に、姿に、私の心はゆっくりと和んでいく。

    「これ、どうしたんですか?」

    「君に見せたくて、生け捕りにさせたんだ。」

    「陛下、ありがとうございます!」

    うさぎを優しく撫でる夕鈴の鼻が赤い。
    そういえば、私が狩りに出かけてすぐに庭に出たのだっけ…

    チラチラと降り出した雪に、君が震えている気がして……そっと、その頬に触れた。

    「……陛下?」

    思った通り、君の林檎のような頬は、氷のように冷たくて……
    私は、少し眉を寄せた。

    「夕鈴、部屋に戻ろう!
    身体が冷えてるよ!
    女の子が、身体を冷やしちゃダメでしょ?」

    「平気です。
    寒くないですよ!」

    「それに……
    せっかく陛下が、帰って来たから、二人で雪が見たいです。」

    恥ずかしそうに、呟く彼女の言葉。
    俯く耳朶が、薔薇色に染まる様を、愛しく見つめた。

    君のめったにしない我侭は、私を喜ばせる。

    妃には、めっぽう甘い狼陛下。
    君がこんなに可愛い妃だと知ったら、世間は噂を納得するのにと思う。

    可愛い君の我侭を叶えたいけど……ここじゃダメだ。
    風邪をひいてしまう。

    「いいよ、夕鈴。
     こっちにおいで……」

    私は手を繋いで、風当たりの無い四阿に連れて行った。

    ここだと雪の降る庭が、良く見える。

    私は、長椅子に座って、外套の袂を開いて見せた。

    「夕鈴、寒いから早くおいで……!」

    君を手招きする……そっと私の膝に座るように促した。。

    君は最初は、戸惑っていたが、
    おずおずと恥ずかしそうに私の膝に座ってくれた。

    そのまま……君を外套で、暖かく包み込むように抱き締める。

    「これなら、君も私も暖かい。」

    「……ホントですね。」

    「あったかい。」

    君は嬉しそうに、クスッと笑った。

    「なんか贅沢ですね。。
     きっとバイトで、王様に温めてもらうのは、私ぐらいですね。」

    「君は、特別だからね。
     私の唯一無二の愛する妃だから……」

    「ふふっ……
     演技と知ってなかったら、惚れそうですよ。
     ……その台詞。」

    私の本気は、いつも君には伝わらない。
    ツキンと私の胸を小さな痛みが走った。





    「わぁ……綺麗!」

    降る雪を眺めて、君が儚げに笑う。

    このまま消えてしまいそうな君を閉じ込めてしまいたい。

    強く抱き締めたくて……
    でも、出来なくて……


    切ない想いで、君を見つめた。

    ……続く。 


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    【コラボ】「狼陛下の花嫁―冬のくちどけ・3―」


    「あ!……忘れてた。
     陛下 おみやげ、ありがとうございました。」

    「あの……この兎、
    後宮で飼ってもいいですか?」

    上目遣いで、強請る(ねだる)君の可愛らしい小さなお願い。
    もとより君へのお土産なのだから、気にしなくてもいいのに……

    「君の兎だ。
     好きにするといい。」

    「ありがとうございます!」

    チュッ……

    突然、私の頬に触れた君の甘い唇。



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    (2013.11.27.挿絵☆麻杉 慎様)


    真っ赤に頬染める君が、小さく呟く。

    「陛下、大好き……」

    キュッと兎を抱きしめて、可愛らしく微笑む君を
    私は、もう手放せない。

    狼陛下のこの心を、甘く溶かすことのできる奇跡の乙女。
    この甘さをもっと欲しいと強請るのは、罪なことなのだろうか?

    降り積もる雪を君と眺めて……寒さを忘れて、君を抱きしめる。






    私の心を動かすのは、いつも君だけ。

    温かな熱で私を満たしてくれるのは、君一人だけ。

    私の心を優しく包み込み、いつも甘く溶かしてくれる愛しい女性(ひと)






    I have nothing in the world without you.

    君以外 何もいらない。 欲しくない。

    ――――――――君だけが、私の愛しい妃。

    I love only you.





    ―狼陛下の花嫁―冬のくちどけ・完―




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    【短編】本誌設定ぴあ切なの実『雪原の雪うさぎ』※ダリ子さんの萌え

    『……もう、泣かないで。』

    『君が、溶けてしまうよ……』

    (まぶた)に落ちた、優しい口付けとあなたの言葉に
    ……私の心は、切なさを増してゆく 。 


    チラチラと…雪原(せつげん)に舞い散る雪の花

    明け方に降りはじめた雪は、
    私達の足跡を、
    瞬く間に消して、周囲の景色を変えた。

    ……穢(けが)れない世界に、二人っきり。

    あなたの心を垣間(かいま)見て、その優しさに触れるたび
    私は切なくて、涙を零(こぼ)す。

    『――――もう昔のことなんだ。』

    『僕の為に、もう泣かないで……』

    「だって、……へ…いか。」

    あなたを想うと、切なくて苦しくて……

    ――――言葉に、出来ない。

    感情が震えて、涙が零れ落ちる。

    『僕の代わりに、そんなに泣かないで……』

    (まぶた)に触れた……優しいあなたのぬくもり。

    再び触れた……あなたの口付けは、切ないほど優しくて……
    私の心を、キュッと締め付けた


    雪原に舞う雪 

    (挿絵☆ダリ子さん)


    今年 初めて降った初雪は、切ない想いを閉じ込める。
    すべてを閉じ込め、静かに私の心に降り積もる。

    『風邪をひいてしまうよ、夕鈴。』

    フワリと、私の首にかけられた
    愛しいあなたの温もりが、私を温める。

    優しく柔らかな、陛下の愛に包まれて
    私は、感情が溢れて泣き出した。

    はらはらと……大粒の涙が
    瞳から、零れ落ちる 。

    きれいな 綺麗な 透明の雫。










    雪原(せつげん)の雪うさぎ

    何も知らない……雪うさぎ

    あなたの為に
    泣くことしかできない、雪うさぎ

    「両目が、赤く染まるまで泣いたら 、
    きっと君は溶けてしまうよ……」

    私を気遣う 優しい言葉と共に、あなたはクスッと笑ってくれた。

    切ないほどに愛しいあなた。

    ――――“心から愛しています”

    あなたの愛に包まれて、私はますます泣き濡れる。








    ……雪が降る。

    …………雪が降る。

    ――――切ない想いが、降り積もる。

    あなたの大きな愛に包まれて
    切ない想いが、私に降り積もる。

    穢れない恋が、冬の空に融ける。

    ――――今年も季節花(きせつばな)が、静かに降る。

    世界は、白銀の世界に変わる。

    穢れない私の恋を、純白の大地に閉じ込めて、
    あなたに抱(いだ)かれ、泣き濡れる

    ――――この涙が止まるまで。



    ―雪原の雪うさぎ・完―


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    【短編】IF設定「賢者の瞳・クリスマスの日の贈り物」※汎兄妹秘話

    ◆クリスマスネタ
    ◆捏造注意!!!
    ◆本誌設定・兄妹秘話
    ◆幼い紅珠と小さな水月おにいちゃんしか出てきません。
    ◆水月さんが髪を大事にする理由と紅珠が物語を書くきっかけ妄想
    ◆むちゃぶり設定。

    それでもよければ、どうぞ。 





    私は、自室で書棚を整理していた時に、懐かしい絵本を見つけた。
    それは異国の物語「賢者の贈り物」

    何度も読んで、古ぼけて擦り切れた表紙をひと撫でする。
    この本には、特別な思い入れがあった。

    穏やかな冬の陽射しが差し込む自室
    暖かな窓辺に椅子を引き寄せて、私は絵本を片手に無造作に座った。
    そのまま……懐かしい思い出と共に、私は本を開く。

    時を重ねた特有の古紙の香りと琥珀色した陽射しの匂い。
    sepia色した思い出と共に、私はページをめくる。

    遠い異国情緒溢れる、美しい装丁の絵本をめくると……
    暗記するほどに何度も読んだ懐かしく優しい文章。

    古ぼけて擦り切れたその絵本は、大切な妹・紅珠との思い出の品。

    瞬く間に懐かしいsepia色の思い出が、
    つい最近の記憶のような鮮やかな原色となって蘇ってくる。
    私は、つい……懐かしさで笑みが零れた。


    011.gif  

    「水月にいさま、それから?……それから?」

    瞳を耀かせて布団の中で、小さな妹は物語をねだる。

    「紅珠、もう寝る時間だよ?
     ……もう十分読んだと思うけど?」

    「おねがい……にいさま。
     もう少しだけ……お話を聞かせて?」

    「水月にいさまの聞かせてくれるお話は、
     とっても面白いの……だから……ねぇ、お願い。」

    「しかたがないね、紅珠は。
     じゃあ、もう少しだけだよ?」

    「ありがとうっ!
     水月にいさまっ!」

    私は、いつの頃からか妹・紅珠に、絵本の読み聞かせをするようになっていた。
    毎晩、瞳を耀かせて物語を読んでと、せがむ妹。

    国内の絵本は、読みつくしてしまい、
    今夜は、取り寄せた異国の絵本を読み聞かせた。

    白陽国に住む私たちには、馴染みのないクリスマスの物語。
    それでも紅珠は、空想の翼を羽ばたかせてうっとりと話を聞いてくれた。

    「……おしまい。」

    物語の終わりを告げる私の言葉と同時に、妹の口から

    ほぅっ……

    と感歎のため息が零れた。

    物語の余韻に浸る夢見心地の妹は、まだ異国の物語に引き込まれているのだろう。
    黒曜石の大きな瞳が、うっとりと夢見るように耀いていた。

    「おにいさま、心温まる素敵なおはなしですわね。」

    「やっと満足したかい?
    今夜は、もうおやすみ紅珠。」

    妹の額(ひたい)に、おやすみの口付けを一つ落とすと、
    私は、絵本を読むため、一つだけ点けていた灯りを落とそうと立ち上がった。

    ところが……妹の小さな手がそれを拒む。
    いつの間にか袖をつかまれていた。

    「……?。
     どうしたの紅珠?」

    「水月にいさま。
     私もクリスマスに、水月にいさまに贈り物がしたいわ。」

    顔を紅潮して、わくわくしている妹の小さな願い。
    その気持ちが、私にまで伝わってくる。

    「いいよ。
     だけど、私ばかり貰ってもなんだから
     私も紅珠に贈り物をあげるというのは、どうかな?」

    「えっ! いいの?
    水月にいさま、ありがとうっ!」

    紅珠は、布団から飛び起きて、私を嬉しそうに抱きしめてくれた。

    「贈り物を、楽しみにしているよ!
    さあ、 風邪をひくといけない。
     今度こそ、もう寝ようね、紅珠」

    「はい、水月にいさま、おやすみなさい」

    「おやすみ、紅珠」

    ……今度は、素直に紅珠は眠りについた。


    まもなく小さな寝息が聞こえてきて、
    私は静かに紅珠の部屋をあとにした。

    こうして兄妹で、お互いに贈り物をしあうことになった。

    (何がいいだろうか?)

    (妹の喜ぶものとは、なんだろう?)

    私は悩みながら、自室へと戻る。

    ふと見た空は、冴えた星の耀く綺麗な夜空だった。 



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    その日から、私は妹の様子を観察することにした。

    汎家の末姫として生まれた彼女は、何不自由なく暮らしている。
    彼女は、父から欲しいものは、すべて与えられていた。
    ありきたりの贈り物では、喜ばないことが容易に想像がついた。

    “紅珠が喜ぶ贈り物”

    これは、難しい課題だった。
    今まで、妹の生活になど興味が無かったのに、初めて妹のことに興味が沸いた。

    普段、私は、人には興味が無いのだが、、
    初めて自分以外の誰かを気にして興味が湧いたのは紅珠だった。

    観察し始めて、妹の新たな一面を知る。
    表情豊かな素直な性格。
    隠し事は、苦手らしい。
    それでも彼女には、秘密があった。

    ――――その秘密に気付いた私は、妹への贈り物を決めた。

    贈り物の手配をして、その到着を待つ。
    今から、妹の喜ぶ顔が浮かんでくる。

    彼女は、気に入ってくれるだろうか?
    ビックリしてくれるだろうか?


    ――――期待と不安。
    微かな希望。

    自分がこんなにも、わくわくしているのは初めてだった。

    絵本に描かれていたクリスマスの日付まであと少し。

    私は、未来の妹の喜ぶ姿が、瞼の裏に浮かび
    楽しみに日を待つようになった。 




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    当日のクリスマスの夜。

    華やかな異国の飾りつけをした汎家の居間。
    大きなクリスマスツリーの前で、兄妹達はプレゼントを渡しあう。

    おずおずと、恥ずかしそうに差し出した紅珠からの贈り物。
    小さな包みを受け取ると
    私は、「ありがとう」と微笑んだ。

    紅珠は、可愛らしい花飾りのついた贈り物を私から受け取り
    受け取って、すぐにその重さに驚いた。
    見た目よりずっしりと重い私からのプレゼント。

    「まぁ、何かしら?
    開けていい?
    にいさま」

    「いいよ。
     私も君のプレゼントを開けていいかな?」

    「もちろんですわ。
     気に入ってくださると、いいのだけれど……」

    紅珠は、座った膝の上で、私からのプレゼントを開けた。
    最初に目に飛び込んできたのは、錦の布に包まれた漆塗りの木箱。

    「……?」

    ますます不思議そうに、小首を傾げて箱を開けると……

    紅珠は、息を呑んだ。

    そこには、紫色を基調にした美しい石でつくられた硯があった。
    生き生きとした花鳥が浮き彫りにされた特注品の美しい硯とそれに見合った硯箱。

    「……っ!!!」

    紅珠は、驚きで声が出ない。
    みるみる顔が紅潮し、喜びを露にした。
    大きな黒曜石の瞳が見開かれて、まじまじと信じられないいった面持ちで
    芸術品のような硯に見入っていた。

    「水月にいさま……これは……」

    「紅珠は、自分で物語を書き綴っているんだね。
     
      書き手は、ちゃんとした硯を持っていなくてはね。

     まだ紅珠は練習用の硯しかもっていないだろう!?
     それでは、良い作品は、産み出せないよ。

     この硯を使って書いてくれる?
     そして、作品が出来たら私にも見せてくれるかな?」

    自分が物語を書いていたことを、水月にいさまが知っていたことに
    紅珠は驚いた。

    紅珠は、そのことを今まで誰にも話していなかったのに……。
    隠していたことを、どうして水月にいさまが、知っているのだろう?

    幼いながらも、絵本の読み聞かせをきっかけに、物語を書き始めた紅珠。
    さらに物語を書くことを、応援するかのような兄の贈り物。

    紅珠は、顔を真っ赤に染めて、兄の首へすがりついた。
    嬉しくて、嬉しくて、たまらなかった。

    「水月にいさまっ、ありがとう!!!
     だいすきっっ!!!」

    紅珠の作品を楽しみにしているし、応援しているよとの証の硯。
    大好きなにいさまの応援に、紅珠は嬉しくて兄の頬に口付けた。

    私は、弾けるような眩しい妹の笑顔が見れて満足した。
    ところが紅珠は、すぐにシュンと落ち込んでしまった。

    「どうしたの……紅珠?」

    「あぁ……こんなことなら、もう少し水月にいさまへの贈り物を考えるべきだったわ」

    黒曜石の大きな瞳から涙が、滲み出す。

    紅珠からの贈り物は、水色の上質な絹のリボン

    「水月にいさまの髪が、私は大好きなの。
     綺麗な色で、癖が無くて……陽に透けるとキラキラ輝いていて」

    「最近、髪が長くなった兄さまは、髪をよく纏めていらっしゃるから……
     私のお気に入りのリボンを差し上げたかったの……」

    「紅珠、ありがとう。
     素敵な贈り物だよ。
     大切に使わせてもらうよ」

    そう言って、私は紅珠に優しく微笑んだ。
    それで、ようやく泣き止んだ妹も微笑むのだった。





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    (2013.12.10.挿絵☆さくらぱん)





    いつの間にか空から、チラチラと雪が降っていた。

    私がふわりと受け止めた雪は、手の中で瞬く間に融けた。
    いつの間にか陽射しが無くなり、どんよりとした灰色の雲

    (……どうりで寒いと思った)

    私は、絵本を閉じて窓を閉めた。





    そこへ控えめに入室を望む声。
    明るい妹の声だった。

    「お兄さま、新作が出来ましたの。
     お茶を楽しみながら、読んでいただけますか?」 




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    今も紅珠の物語は、兄が贈った硯を使って、書き綴られている。

    私の髪が綺麗で大好きという紅珠の言葉に、私はあの日から髪を伸ばし始めた。
    紅珠からの贈り物のリボンは、いまも大切に私の手元にある。

    ――――幼き日の思い出と共に。


    ―賢者の瞳・おしまい―

    2013.12.08.






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    【短編】本誌設定ぴあの実『ふゆのもり』※Sanaさんの萌え



    冬になった。
    この季節は政務も落ち着き、国王夫妻は冬の離宮に休暇を取りに行く。

    すらりとした木々の幹の上では、もつれあった大枝、小枝がしだいに広がっている。
    絡み合った木の根の間には洞穴や雪道ができる。
    地面の上ではを冷たい風がうなり、凍りついた草の間を駆け抜けていく。

    「よく振りますね」

    窓に息を吹きかけると、息は凍りおとぎの森のようになった。

    「明日は大丈夫でしょうか」

    夕鈴は長椅子に腰かけている黎翔を振り返った。

    「明日には上がると思うよ」


    この冬、数日間だけ黎翔は国王であることを止める。
    情勢が落ち着いたからこそ取れる休暇を夕鈴はどうしても取らせてあげたかった。


    「雪が止んだから、すぐに出かけましょうね」

    意気込む夕鈴に黎翔は微笑んだ。







    あくる朝早く、辺りがぼんやりと明るくなると、二人はすぐに出かけた。
    深い雪を分けて行く。
    夜の間に積もった雪はまだ柔らかく行く手を阻む。
    まもなく日が昇ると、かわいいらしい鳥のさえずりが聞こえてきた。
    ナナカマドの茂みに鳥が止まっている。
    赤い実の房はどれも雪の帽子をかぶっていたけれど、鳥たちはその赤い実を美味しそうに食べていた。

    王都では見る事のない風景に夕鈴は興味深く見惚れた。

    「夕鈴、先は長いよ?」
    「はい・・・」

    真っ白な無垢な雪上に、二人で足跡を刻んでいく。
    夕鈴はもちろん先が長いのは分かっていた。
    けれど普段見る事のない冬の景色から目を離すことができなかった。

    どんどんと進んでいくうちに、雪の深く積もった森に入り込んだ。
    高い木も低い木も雪が積もり怪物のようになっている。
    龍もいれば、犬もいる。

    「陛下!すごいですね!」

    王都とは違う雪景色に夕鈴は興奮する。
    嬉しそうに振り返る夕鈴の姿に黎翔は目を細めた。

    「僕の育った場所を君が楽しんでくれると嬉しいよ」

    そんな風に夕鈴が立ち止まっていたからか、目的地にたどり着く頃にはもう辺りが暗くなり星が輝きはじめた。

    その時、たき火の灯りが見えた。
    7人の男たちがお茶を沸かしていた。


    「遅かったな!」
    「お久しぶりです!」

    その声に黎翔は足を速めた。
    笑ったり、喜んだり、叫んだり、抱き合い、肩をたたき合い、その場は賑やかになった。

    「お湯も煮えたし、中に入るか」
    「やっと連れてきてくれたお嫁さんに風邪をひかせてもいけないしね」





    小屋の中は暖かく、明るかった。
    大きな暖炉には明々と炎が踊っていた。
    大きな卓があり、その上には沢山のご馳走が並んでいた。
    王宮で食べるような繊細なものではない、猟師の料理だ。
    この冬にこれだけのものを用意するのは大変だろう。
    この人たちが陛下と会えるこの機会をどれほど心待ちにしていたかが窺い知れる。

    大きな卓の真ん中に私たちは並んで腰かけた
    陛下は懐かしげに皆を眺め、うなずいてから話をした。

    「またこうして一緒になれて嬉しく思う。私が一番苦しい時に助けてくれた君たちがいなければ今の私はなかったからな」

    即位前に親しくしていた人たちに会いに行くとは聞いていたけれど、この人たちは陛下にとってそれほど大切な人なのだ。
    私は改めて7人の男たちを見回した。

    「ここにいる間は私は王ではなく、あの頃と同じ一人の男だ。同じように接してもらいたい」
    「じゃあ黎翔と呼ぶぞ。私たちもお前と会えて嬉しい。あの頃は一緒に山を駆け巡って楽しかったな」
    「ああ、立場があるだろうが出来るだけ長くいてくれたら嬉しいぞ」
    「堅苦しい事は抜きにして楽しもう」

    屈強な男たちが嬉しそうにしている様子はどこか面白い。
    私は思わず微笑んだ。

    「嫁さん連れてきてくれたんだな」
    「お前たちがどうしても連れて来いと言ったんだろう?」
    「だけどまさかこんなところまで付いてきてくれる嫁さんだとはな」
    「王を手玉に取る絶世の美女だという噂だったが」

    こればかりはどこに行っても逃れることは出来ないのね。
    陛下が縁談除けに大げさに言うから、どこに言っても意外そうな顔をされる。

    「手玉に取られてるぞ。お嫁さんに逆らえないからな」
    「ウソ!この前だって私がどんなに言っても下町に行くって言う事聞いて下さらなかったじゃないですか!」
    「私は君に骨抜きにされているからな。わずかな時間でも離れるのが辛いのだ」
    「もう!都合のいい時ばかりそんな事言うんですから!」

    黎翔はどんな状況でも夕鈴に対して甘い言葉を囁く姿勢を貫く。
    夕鈴はこんな私的な場でまで妃を愛するふりをしなくてもいいのにと膨れる。
    黎翔はそんな夕鈴の髪を宥めるように撫でた。

    「いや~、あなたがそんなに女に夢中になるとは思いませんでしたよ」
    「確かに骨抜きにはされてるようだな」
    「もう!みなさんまでそんなことおっしゃらないで下さい!」
    「いやはや、可愛らしい奥方だ」

    男たちに笑われ夕鈴は恥ずかしくなった。
    愛しい人の大事な存在だと人に言われるのは嬉しい。
    それがたとえ幻だったとしても。

    宴は盛り上がり、昔の陛下の話に声を上げて笑ったり、驚いたり、青ざめたりと夕鈴は忙しい。
    間違えて飲んでしまったお酒に目を回して眠り込んでしまった夕鈴を黎翔は抱き上げた。

    「良かったな、見つかったんだな。お前だけの人が。安心したよ」

    ポツリと呟かれた言葉に黎翔は腕の中のぬくもりを抱きしめた。

    「僕と一緒にいて不幸にならないかな」
    「彼女はお前に惚れてる。大事にしてやれよ」

    黎翔の目が大きく見開かれる。

    「何驚いてるんだよ。嫁さんだろ?嫌いな奴につきあってこんな雪深い場所まで来ないぞ」
    「そうだといいな」

    黎翔は眠る夕鈴の額に口づけた。




    翌朝は見事な快晴だった。
    この北の地で冬に青空が広がることは珍しい。
    男たちは元気に雪原に飛び出していく。
    少ない時間を一刻たりとも無駄にしないように。

    夕鈴は楽しそうな男たちの様子を見守る。
    雪原を走り回り、雪玉をぶつけあり、はじけるように笑いあう。

    そんな無邪気な黎翔の遊ぶ姿を夕鈴ははじめて見た。

    「あんなお顔もされるのね。・・・・・かわいい」

    男たちは夕鈴にいいところを見せたいと張り切ってどんどんと盛り上がって行く。

    誤って飛んできた雪玉から黎翔が守る。
    二人はそのまま雪原に倒れ込む。


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    「ひゅ~!熱いね!」

    冷やかされて夕鈴は真っ赤になる。

    「羨ましいだろ?お前たちもさっさと嫁を貰え」

    黎翔はニヤリと言い返す。
    幸せな男にはおしおきだと雪玉が黎翔に集中する。

    男たちのじゃれ合いを夕鈴は楽しく見守った。




    遊んだあとは、凍った森を抜けて小屋まで戻る。
    そこの木々は白くきらめく針だらけの衣装に包まれていた。
    ほんのちょっと触っただけでも、きれいなうすい氷や雪は、さらさらと枝を離れ、まるで滝みたいに、木から滑り落ちてくる。

    一人の男が一本の木に登った。
    すると雪や氷が雪崩のように降ってきて、しばらくの間、黎翔や夕鈴は、雲みたいにもやもやした中に隠れてしまった。
    再び二人が出てきた時は、上から下まで真っ白な雪だらけだった。

    その姿を見てみんなで体を振るわせて笑いあった。

    「もう!陛下のお友達ってみんな陽気で悪戯好きなんだから!」
    「普段は真面目な顔をしてるくせにな」
    「いやいや国王陛下を真っ白けに出来るのは今だけだしな」


    静寂の森が笑い声で満ちる。
    祝福するように光が降り注ぎ、凍った森はキラキラと白く輝いた。







    楽しい時間は過ぎるも早く、帰らなければいけない刻限が迫ってくる。
    あれほど笑い合っていた男たちは、今ではもうしゃべらなくなっていた。

    「もう帰らなければな」

    黎翔は重い口を開いた。

    「ああ、そうだな。国王なんて難儀な商売につきやがって、まともに会えもしない」
    「まさか継ぐと思わなかったよ」
    「でも安心したよ。いいお嫁さん貰って良かったな」

    黎翔は微妙な表情で微笑む。

    「なんだよ!また遊びに来ればいいじゃないか!」
    「そうだ!また嫁さん連れて来いよ。その時までには俺も嫁さんを捕まえとくぞ」
    「お前に黎翔みたいなかわいい嫁さん見つけられるわけないだろ!?」
    「俺だってモテるんだからな!」

    寂しさを振り払うように賑やかに会話をする。
    夕鈴は寂しそうな黎翔の手を握った。




    「ずっとあそこに居たかったですか?」

    たどり着いた離宮で、夕鈴は黎翔の為に暖かいお茶を入れながら聞いてみた。

    「あそこにいるのは楽しい。でも僕の役割はここにある」

    寂しそうな黎翔の様子に夕鈴は思わず寄り添った。
    声に出せない愛しさを込めて。

    「僕には妃がいるからいいんだ」

    抱きしめる黎翔の背に夕鈴も泣きそうな思いで手を回した。

    バイトじゃないですか・・・・。 




    「また僕と一緒にあそこに行ってくれる?」
    「はい」

    もしも許されるのであれば共にありたい。

    目を閉じた夕鈴に黎翔はそっと口づけた。




    DSCN0783-20.jpg


    2013年11月30日 16:51

    【現代パラレル】ピュア「瀬津音さんのメルティ作品 1 」

    《恋人ながらまだキスすらお預けな正しい交際期間中。
    黎翔さん我慢な時期設定でお届けいたします。(=人=)ナムー》

                                 2013.12.17.瀬津音


    今年の瀬津音さんの狼陛下納めだそうです。
    貴重な作品を、ありがとうございます。
    題は作品末にあります。
    ピュアピュアな瀬津音ワールドをお楽しみください。       
    最後になりましたが、瀬津音さんへのコメントは、直接ご本人様にお届けします。
    お気軽に、お寄せください。  
    (拍手数と皆様のコメントのご報告に、いつも瀬津音さんは喜んでおります。)

                                  さくらぱん












    暗くなるはずの空は微妙に明るく、いつもとは異なる色を醸し出していた。

    これは―――雪だ。

    普通の女子高生、汀夕鈴はぼんやりと遥か頭上を見上げつつも、歩む足を止めない。右手には学校指定のバッグ。左手にはほんの少しの気休めになればと手作りクッキーが入っている。しかも近所の豆腐屋からもらったヘルシーなおから入りクッキーだ。彼女は材料費の割には上出来なそれにほくほくしつつ弾むような足取りで、ある一つのビルに入った。

    「こんばんは、汀さん」
    「こんばんは。御苦労様です」

    入口の警備員にぺこりと頭を下げる。自分の娘程の年齢の夕鈴に警備員は微笑みかけ内心思った。

    ―――ああ、こんな子がうちの馬鹿息子のところに来てくれれば…いや、いかん!この子は社長の―――

    彼の思考はそこで半強制的に終了した。いや、させたと言った方が正しいだろうか。これ以上考えても否生産的であったし、何より―――

    「―――あの、これ」

    ちょっとはにかんだ笑顔に再び「うちの嫁に…」と横に逸れた思考を中断し、差し出された物を見る。小さくラッピングされたクッキーを反射で受け取ってしまった。

    「おからクッキーですけど、少しお腹の足しにして下さい」
    「でも―――社長に」

    そう、彼が警備する白陽コーポレーションの社長はI T業界の寵児の名を欲しいままにし、その頭脳とビジュアル故どんな女でも欲しいままに出来るものの、彼が溺愛しているのはこのごくごく普通の女子高生なのだ。
    しかもその執着の度合いは異常なまでで。このようなシーンを見られたら最後、職を失うどころか命すらも危うい。
    しかし彼女はからっと笑ってみせる。

    「大丈夫です!黎翔さんがそんなちっちゃい事言うわけないですから!」

    いや、充分貴女に関しては心ちっちゃいですから!

    突っ込みたいのは山々だが賢明にも口には出さない。
    牽制か。はたまた天然なのか。
    まあ多分この子の場合は後者であろうと当たりをつけつつ、ありがたく受け取る。

    「すまないね」
    「いいえ!雪が降りそうですし、風邪ひかないように気をつけて下さいね!」


    じゃあ、と軽く右手を振って自動ドアを潜る彼女を手を振って見送る。そして小さなクッキーを制服のコートのポケットにそっと入れると、甘い物好きで夕鈴ファンの妻へのお土産にしようと心に決めた。一度、弁当を持って来た時に鉢合わせ、すっかり彼女の魅力にとりつかれてしまったのだ。

    でも―――一つくらいは先にくれよ?

    次の交代時には普段飲まない紅茶を飲もうと密かに決め、彼は改めて前を向く。
    そしてふと気づくと、白い物がふわふわと舞い降りて来ていた。




    顔パスと言えど、彼女は一人一人に立ち止まり「こんばんは」と頭を下げる。当初は女子社員の目の敵にされていた彼女も、今ではごく普通に『社長の最愛の恋人』と認識されている。
    それでも彼女はただの掃除婦として勤務していた頃と同じように挨拶をする。そこまで行くともう彼女の性分なのだろう。片手を挙げて挨拶する者もいれば、無視する者もいる。それでも夕鈴はさして気にもせず、ある一室へと歩みを進める。
    ―――そして着いた先は重厚なドアの前。
    ノックをしようと右手を挙げた時、中からタイミングよくドアが開いた。慌てて避けると開けた人物がにこりと笑う。
    ああ、この人も大分変わったな…と思わず思ってしまうのは本人には内緒だ。

    「―――いらっしゃいませ。夕鈴さん」
    「こんばんは。李順さん」
    「どうぞ。お待ちかねですよ」

    秘書である李順が入れ違いに部屋から出る。

    「すみません、遅くなって」
    「―――大分おかんむりですよ。予告されていた時間からかなり遅れましたから」

    こそり、と囁かれた情報に眉を下げ、もじもじと制服の裾を弄る。

    「実は…再テストで」
    「…またですか」
    「あ!でも前よりも点は上がって「夕鈴!!」

    室内から響いた声にびくりと身体が強張る。微かに青ざめた彼女に苦笑しつつ李順は夕鈴を室内へと通してさっさと消えた。

    あ、ああ!李順さんっ!!せめて室内まで一緒に…

    「夕鈴!!」

    再度呼ばれた己の名に、彼女は視線を下に下に向け、敷き詰められた絨毯に穴でも開けようかという勢いで凝視しながら恐る恐るその室内へと足を踏み入れた。

    「―――夕鈴」

    先程よりは荒々しくなかったものの、黎翔の声が響く。夕鈴はびくびくしながら視線を上げると―――どっかりとレザーの社長椅子に座った紅い瞳と目が合った。
    いや、会ってしまった。

    「こ、こんばん「遅い」

    目を眇められ、ぴしりと身体が固まる。

    「遅くなるまでにおいでって言ったでしょう?もう暗いよ?」
    「…はい」
    「心配なんだよ」

    ああ、この目には勝てない。

    「本当なら学校まで迎えに行きたいぐらいなんだけど」
    「や、やめてください!それだけは!!」

    あの目立つ車で校内に横付けなんて!
    以前のあの騒ぎを再び起こしたら、それこそ先生の心証が悪くなる。

    ―――そ、それに…。

    「…楽しみを奪わないてください」
    「―――え?」
    「ここに来るまでの間…すっごく楽しいんです」

    黎翔さんは楽しみに待っててくれているだろうか。―――自分が来る事を。
    いつ来るか、わくわくして。
    持参したおやつを二人で食べて。
    どんな話をして。
    どんな言葉を交わそうか。

    「~~~~~…っ!」
    「すっごく楽しみなんです」

    そう恥ずかしげに微笑む彼女をどうしてくれようか、と不埒な思いが脳裏をよぎる。
    可愛すぎる、自分の恋人は。
    限りなく、純粋過ぎて、彼には眩しいくらいなのだ。―――手に触れる事すら戸惑うくらい。

    「今日はおからクッキー、持って来たんです」

    ごそごそとバッグを漁り、はいっとラッピングされたクッキーを取り出す。そして勝手知ったるとばかりにお茶の支度を始めた。
    楽しそうなその後ろ姿に彼は再び目を眇める。今の紅い瞳は―――愛しさで満ち溢れていた。





    ざっと書類を片付け。来客用のソファに落ち着くとブラックコーヒーと共に待ちに待ったおやつが供される。

    「もう夜ですから、お砂糖とミルク、少し入れた方が眠りに響きませんよ」

    そんな言葉と共に置かれたカップからは香ばしい香りが辺りに漂っている。
    対して彼女は紅茶だ。今日はミルクティーにしたようで、黎翔の向かいにティーカップを置き、お盆を脇に置いて座る。
    隣に座ろうと考えないところが如何にも彼女らしいのだが、些か残念な面も否めない。
    それでも彼は紳士らしく彼女の一日の出来事を尋ね、今日体験した事を一つ漏らさす残らず聞き取る。普段知らない所で可愛い彼女の一面を他人が見るのはしゃくだけれど―――自分も彼女の全てを知りたいから。黎翔は心の中で自嘲しながらコーヒーを飲み、彼女の話に耳を傾けた。



    どれくらいたった頃か。
    ふと会話が途切れ夕鈴が窓へ目を向けると、そこには白い物が漂っていた。
    彼女はソファから立ち上がり足早に窓へ寄る。「夕鈴?」と尋ねる黎翔の声も耳に入らぬ程、彼女は外の世界に釘付けとなった。

    「―――雪」

    しんしんと降り注ぐ雪は超高層の最上階故遮る物もなく、不思議と明るい空から舞い降りて来る。ぺたりと両手と額を大きな窓にくっつけた彼女は首を上下に振りながら白くてぼたん大の雪が地上に降りて行くのを見守っていた。

    「積もりますかねー?」
    「…さあ?ねえそれよりこっちでお茶の続きをしない?」
    「え、あ…はい…」

    生返事にむっとする。
    柔らかなその茶色の瞳に己の姿だけを映して欲しい―――というのは我が儘なのだろうか。
    華奢な背中を眺めつつ、ため息をつく。この白陽コーポレーションを一代でここまで築き上げたこの珀黎翔を、ここまで溺れさせるこの汀夕鈴というただの女子高生を―――僕は一体どうすれば良いのだろう。

    「―――夕鈴」

    ぽつり、とその名を呼んでみても、彼女の意識は既に外。―――彼は全くの蚊帳の外だ。返事すら返してくれない。
    黎翔は子供っぽくも口を尖らせ、むうっとその背中を睨む。
    面白くない。
    誠に面白くない。
    雪に彼女を盗られるなんて。
    こんなにも淋しい想いをさせているのもそっちのけで、彼女は空と地上を見比べている。

    ―――まるで雪が恋人みたいだ。

    そんな子供っぽい思考に捕らわれた恋する男を誰が止められるだろう。

    その目に自分を映して欲しくて。
    その唇で自分を呼んで欲しくて。

    黎翔は音もなく彼女の背後へ近づいて一気に彼女を抱き上げる。

    「きゃ…っ!」

    ぐらりと傾いだ身体に思わず彼の首へ腕を回し、頬を膨らませながら睨んでも黎翔は至極満足げだ。

    「あ、危ないですよ!黎翔さん!!」
    「大丈夫だよ。君を僕が落とすわけないし」
    「そ、そういう問題じゃ…っ!と、とにかく降ろして…」
    「やだ」

    きっぱり断言した黎翔は唖然と黙り込んだ彼女を抱き上げたまま、コート掛けに掛かっていた二人分のコートと紙袋を取ると、社長室のドアを開ける。

    「ちょ、こんなままで…降ろして「空に一番近い所へ行こうか、夕鈴」

    そう甘やかに囁き、真っ赤になった恋人を、彼は漸く自分を見てくれたとばかり嬉しそうに外へと連れ出す。

    そしてその先には―――


    ……続く

    【現代パラレル】ピュア「瀬津音さんのメルティ作品 2 」

    「うわあ…」

    一般社員が立ち入れない屋上。夕鈴はその景色に目を見張る。
    一面の、白、白、白。
    そして周囲には空、空、空―――。

    「―――すごい…」
    「この辺りでうちのビルより高いところはないからね」

    屋上はヘリが発着出来るようになっており、フェンスすらない。

    「あんまり端へ行かないで。落ちるよ」

    そんな言葉も耳に入ったか怪しい。既に夕鈴は彼の腕から逃れ、声を上げながら誰一人踏み跡のない真っ白な雪へと飛び降りた。

    「きゃーっ!すごいーっ!!」
    「夕鈴」
    「真っ白ー!」

    ごろごろと転がる様子はまるで子供。かと思いきや、ててて…と向こうへ駆けて行き―――ばたりと倒れた。

    「ちょ…っ!夕鈴!!」

    慌てて彼女へと向かう。ここ数十分で降り積もったであろう雪は踏まれる事のなかった屋上では程よく積もっているとはいえ、踝よりほんの少し上辺りまでしかない。そんな所で尚且つ下がコンクリートならケガをする可能性だって―――
    焦る彼が近寄って目にしたのは

    「えへへーーーっ」

    幸せそうな彼女の笑顔。

    ああ。
    ああ、もう。

    鼻や頬を真っ赤にして笑う彼女に脱力すると共に―――。
    ほんのちょっぴり怒りが沸いた。

    なんで、なんでそんな顔して笑うの。
    相手は『僕』じゃないのに。

    そう思うとふいに彼女の笑顔を崩したくなってしまう自分の悪い部分が顔を出す。
    夕鈴は上下左右に両手両足をバタバタさせると「見てみて下さい!」と言わんばかりにこちらにくるりと反転する。

    「天使の出来上がり!」

    ぷつん、と何かが切れた。






    「―――じゃあ」

    持って来た紙袋から何かを取り出し、せっかく綺麗にラッピングされた物をビリビリと破る。驚きに目を見張る夕鈴そっちのけで無用になった紙くずを放ると、彼女に向かってゆっくりと倒れ込む。

    「ちょ… っ!黎翔さ…っ!」

    迫り来る黎翔の顔を直視出来なくて、夕鈴はぎゅっと目を閉じる。
    ―――しかし、いくら経ってもぶつかって来る気配はなく。そろそろと恐る恐る目を開けると、がちんと固まってしまった。
    ほんの10cm程の目の前に。
    吐息が暖かく相手の鼻に掛かる距離に。
    睫毛の一本一本までもはっきりと数えられる距離で―――彼は彼女を見つめていた。
    その紅い瞳はただただ茶色の瞳を見つめていて…夕鈴はこくりと息を飲む。
    辺りは下の喧騒から離れ、酷く静かで。雪に全てを遮られたかのように、二人しか存在していなかった。

    「―――れ…しょ、さ…」

    ささやかな声が耳朶を打つ。
    黎翔は漸く己を映したその瞳に満足し、小さく微笑んだ。

    「これを纏えば雪の天使…かな」

    夕鈴の両肩近くに置かれた手には真っ白いファーが掴まれていて。よくよく見るとそれは純白のマントだった。

    「そして僕は闇の悪魔」

    す…っと目を細めると紅い瞳が艶を増す。コートからワイシャツ、ネクタイに至るまで黒ずくめの彼は、己が言うようにまるで底知れぬ闇からやって来た悪魔のように―――夕鈴にとっては未知なる何かを秘めているように見える。

    「悪魔は天へは行けない」
    「―――れ…」
    「だから天使を欲する」
    「―――…っ」

    ゆっくりと上がった右手が。細く長い指先が。夕鈴の髪を優しくなぶる。するりと指から逃れた髪は白い雪の上に零れ落ち、黎翔はその行方を見ながら小さく笑った。

    「…れ、い…っ」

    白磁の肌がほんのりと色付く。
    その頬を二本の指で輪郭をなぞる。

    「君が欲しい」

    一瞬の沈黙の後―――どっかん!と音を立てるかのように一気に真っ赤になってぶるぶると震え出した。
    そんな彼女に苦笑しながら、指と同じ場所を唇でなぞる。

    震えていたって構うもんか。
    彼女はこの手に堕ちるのだから。

    黎翔は仄かに漂う少女の薫りを思う存分吸い込むと。
    おもむろに立ち上がって乙女にあるまじき両手両足を広げた、所詮大の字と呼ばれる格好で寝転がったままの夕鈴に微笑みかける。

    「…っしょ…っ!?」

    ガバッと起き上がったその頭には雪がまとわり付いていて、まるで白い羽根のよう。
    彼はコートの裾を翻しながら室内へと続くドアへと向かう。

    そして、ふと立ち止まると、上半身だけで振り返る。
    そっと唇に人差し指を当てて囁いた。

    「―――本気だよ」




    【悪魔が天使を愛する時。】

















    「―――もう、もうもうもう!」
    「…そんな怒らなくてもいいんじゃない?」
    「だって…だってだって、キ「スされちゃうかと思った?」
    「~~~!!!」
    「…今からご希望にそってもいいけど」
    「いやいやいや!遠慮しときます!!」
    「…傷つくなあ」
    「ところでこれ…ありがとうございます!」
    「気に入った?」
    「はい!今度出掛ける時に着ていきますね♪」
    「めいいっぱいおしゃれしてくれると嬉しいな♪」
    「…っ、わかりました!」
    「じゃあ差し当たり我が社の忘年会に。ドレスは僕が選ぶからね」
    「………え?ドレスって…これフェイクファーじゃないんですか?」
    「…………あ、えーっと…」
    「ちょ、まっ、これ、もしかして毛皮とか「あー…すっかり冷えちゃったねー!温かいコーヒー飲みたいな♪」
    「ちょっと、何誤魔化してるんですか!!待って!黎翔さん!?」





    ☆おしまい☆



    【イラスト館】コラボ「sanaさんへのコラボ品 1 」

    sanaさんへの納品したコラボ作品です。
    続きに、線画を納めています。


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    【イラスト館】コラボ「sanaさんへのコラボ品 2 」

    sanaさんへの納品したコラボ作品 2 です。
    続きに、線画を納めています。


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    【イラスト館】「賢者の瞳」お初☆水月さん

    さかなやさんに、1月の誕生日のプレゼントとしてお渡ししたものです。

    髪の長い線の細い美人さんは、昔から好きです。
    それで、強ければなおのことよし。
    水月さんも、細身の剣だったら強いぞ。の設定あります。
    芸能系強いので、剣舞が上手いという設定です。
    私では、お話しにならないからなぁ。
    さかなやさんに、呟いてこようかな。

    うちの母は着付けができる人なので、よく幼い頃から御着物は着せてもらっていたのですが・・・・
    思いっきり着かたに、捏造が入りました。
    何でしょう。コレは一体。

    ヘンだなぁと、思いつつ。色を塗ってから気付きました。
    気付くの遅いっ。
    サラリと見てくださいね。

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