花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【書庫】『誰も知らない物語』はじめに

    白陽国SNS地区の紅珠先生を囲む会コミュニティでさくらぱんが書き綴っている物語です。
    長くなるお話ですが、第二章で更新が途絶えています。

    可愛らしい野草花の名前の白友はこべらさんとお話を書き綴っておりました。
    その方の部分は、楽しみのためにコミュニティに残して
    こちらでは、私が改めて書いたものと差し替えてお届けしようと思いましたが、
    2013.10.12.に、はこべらさんの作品の転載許可をご本人様とコミュ管理人たるさんより頂きました。

    物語は第二章で途中までとなっております

    いずれ、再開する物語ですが、予定は未定となっております。
    ご了承の上お楽しみください。

                                 2013.10.28.さくらぱん


    紅珠物語について、

    LaLa掲載『狼陛下の花嫁』の作中、貴族の娘 汎紅珠が書いた物語の設定。
    人気作家でもある彼女は、陛下とお妃さまの愛の物語を
    豊かな感性と想像力で書き綴っています。

    恐れ多いので、
    陛下は青年、夕鈴はとある娘と表現しています。
    紅珠先生の煌びやかな世界を再現すべくさくらぱん初チャレです。



    目次 続きを読む
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    『誰も知らない物語』 設定

    物語を創めましょう。長い長い物語を
    これは、最初の第一巻。

    誰も知らない物語。
    数奇な運命を歩く二人の物語
    くるくると……紐解いていく。

    最初の一巻きから始めましょう。




    《設定》
    ☆忘れ去られた第二公子
    寵愛の恩寵を忘れられない母に理想の公子像を望まれる幼き日々
    それに疲れたときに運命の少女と出会う
    正妃の星を持つ娘を望む為、自ら王位を望むことになる

    ☆夢読みの占女見習い
    星読みの大婆様より、次世代の国の大占女であり、次の王の正妃の星を持つ運命と読まれている少女
    次世代の正妃との星占のために大事にされてはいるが、いつも一人。
    修行に明け暮れる占女見習いの毎日。

    星が流れ、彼女の星が騒いだために、梅林へ
    初めての夢占・・・そこで運命との出会いを果たす

    幼い少女と公子であろうとする少年との邂逅・離宮近くの占女の梅林から物語は始まる・・・・



    2012年10月21日
    19:15

    『誰も知らない物語1』

    《夢のお話》





    馥郁(ふくいく)たる梅の香りに、空気までもが甘い
    匂い梅の白梅の林に、微かに聞こえる啜り泣きの声
    はらはらと花びらが舞い散る
    幼子のすすり泣き・・・

    白梅の根元に黒髪の男の子
    何時から泣いているのか、黒髪には白梅の花びら
    泣き腫らした赤い瞼と紅い瞳
    大粒の涙を袖でゴシゴシと拭いながら・・・次々と溢れる涙を拭い取った。

    (僕は、・・・・)

    止まらない涙は、彼の・・・・の涙。
    やるせない想いが溢れる。
    止めるすべを知らない。
    誰も教えてなどくれなかった。

    今まで、必要なかったから。
    だが・・・今、必要としていた。

    このままでは、離宮へ帰れない。
    自分は、公子なのだから・・・

    離宮に飛ばされた妃の公子としての恥ずかしくないふるまいを・・・
    誰もが、自分にそう望み
    いつの間にか擬態(ぎたい)が身につくようになっていた。
    賢く聡い強い公子。

    陛下の恩寵を一身に受けていた過去の栄光。
    ソレにしがみついた母でさえも彼に理想の公子を望む。
    過去の栄光を取り戻したいために
    見え隠れする大人の思惑

    ーーー嚙みしめる唇
    誰もが、本当の自分を見てはくれない。
    理想の公子を押し付ける。

    ぱたぱたとした軽い足音。
    泣き声を辿り、小さな女の子が走ってくる
    「見つけた・・・」
    ぱぁっと、はしばみ色の瞳が輝く

    少女は、真っ直ぐに公子に走り寄り
    ちょこんと隣に座った
    びっくりした公子は、紅い瞳で問いかける
    『君は誰?』
    春風のような優しい笑みで少女が答えた。
    「夢を見たの」
    「とっても悲しいのが、伝わってきた。」
    金茶の髪が揺れる
    「行かなきゃ・・・と思って」
    「・・・・来ちゃった」
    「お兄ちゃん、どうしてそんなに悲しいの?」
    少し悲しげな瞳な瞳
    大きなはしばみ色した瞳で、少女は問いかけた。
    純粋で綺麗なその瞳は、真っ直ぐに公子を見ていた。
    いつの間にか、公子の涙は、止まっていた。

    春風に散る白梅の花びら
    うららかな陽の光


    2012年
    10月21日
    19:21

    『誰も知らない物語2』




    少女は夢を見る…… 忘れられた過去の夢


    夢の糸端が梅林に落ちる
    そこで運命の糸車が廻りだしていたことを彼女は知らない。

    廻る……廻る……糸車。
     

    紡ぎだされる運命のより糸・再邂逅の時が迫る……

    『誰も知らない物語3』

    《時雨の雨ーしぐれのあめー》



    月の無い朔の夜
    冷たい雨が降りしきる
    暗闇に銀糸の雨
    ゆらゆらと揺れる手燭の明かりに
    少女はぼんやりと外の景色を眺めていた。
    日中は、陽が差し込めて暖かい一日だったはずなのに
    夕方から降り出した時雨の雨は冷たく彼女の心に滲む。


    何故だろう・・・・
    今夜の雨は、妙に心が騒ぐ
    落ち着かない心が、少女の心を占めていた。

    2012年
    10月21日
    19:23

    『誰も知らない物語4』

    《時雨の雨ーしぐれのあめー》



    ぼんやりと時雨の夜空を眺めていた少女に

    ガタン・・・と

    突然、大きな音が聞こえた。
    屋敷の裏戸の方から聞こえた音に、少女は胸が騒ぐ・・・

    屋敷は、シンと静まり返っていた。
    気付いたのは、少女だけだったらしい。

    音に興味が湧く・・・・・胸騒ぎが止まらない。
    少女は、雨よけの外套を羽織ると、手燭と傘を持って部屋を出た。

    真っ暗な雨の降る庭を、真っ直ぐに横切り、裏戸へと向かう

    頼りない手燭では、ほんのりとしか周囲が分からない。

    少女は、裏戸に手を掛ける

    一瞬の戸惑いと不安。

    だけど、胸騒ぎの原因を確かめたいという興味が勝っていた。

    おそるおそる裏戸を開ける。

    屋敷の外の道は、時雨でぬかるんでいた。

    地面に叩きつけられる冷たい雨。

    物陰に隠れた青年は、息を潜めてソレを見ていた。

    視界が、強い雨によって利かない。

    思ったより、深手を負ってしまった。

    油断していたとしか、思えない。

    まさか・・・王都で襲われるとは思っていなかった。

    大きな屋敷の裏戸がソロソロと静かに開く。

    手燭の灯りに照らされた、まだ 年若い少女の姿に安堵する

    一瞬でも、追っ手の仲間の屋敷では・・・そう思っていた緊張感が緩み

    痛みで、意識を失いそうだった。

    朦朧とした意識の中で、少女の顔がおぼろげに見える。

    ーーーーーーーーーーまさか。

    そんなはずは無い。彼女は、ここには居ないはず。

    驚きに意識が浮上する。

    青年は、梅林の少女を忘れたことなど一度も無かった。

    似ている少女に、夢なのではと考えた。

    (夢は、志半ばで潰え・・・・我が命ここで、果てるか・・・・それも運命(さだめ)。)

    青年は、冷たい雨の中で瞑目する。

    死を覚悟した青年の瞼の裏に、梅林の少女。

    思い浮かべるだけで、幸せになる一度だけ会った少女。

    幸せな記憶に浸る

    青年には、もう何も感じられなかった。

    雨の冷たさも・・・傷の痛みも・・・

    少女は、恐る恐る 裏戸から路地裏を伺う。

    暗い路地裏は、物陰が多く、更に雨で視界が利かない。

    さらに、裏戸を開けて手燭で辺りを探る

    すぐに、ぬかるむ地面に点々と続く血痕を見つけた。

    「誰か、いるのですか?」

    血痕を辿り、そちらへと手燭を掲げる

    暗闇の中、少女のかざす手燭に青年の姿が浮かびあがる

    刺す様な冷たい時雨の雨に

    青年の衣は、濡れそぼり

    その衣は裂けて、鮮血が滲む

    衣が赤に染まる

    流れる鮮血は、地面をも染めていた。


    2012年
    10月22日
    10:40

    『誰も知らない物語5』

    《時雨の雨ーしぐれのあめー》



    地面まで赤く染め、いまだに流れる赤の色に、少女は驚いた。
    見開かれるはしばみ色の瞳。
    少女の持つオレンジ色の手燭の灯りが青年を照らし出す。

    「そこの貴方、大丈夫ですか?」

    少女は素早く青年に駆け寄り、赤い流れを目で追った。
    青年の右腕にその傷はあった。
    衣が斜めに斬られて・・・・刀傷だ。
    血肉の色が、裂けた衣から覗く。
    浅葱色の裂けた衣に紅い花が点々と滲む
    そこから、花だけでなく冷たい雨に打たれ、未だ止まらぬ鮮血が流れ落つ・・・

    「お怪我をなさっているのですね?」
    「ひどいお怪我・・・・」

    オレンジの手燭に照らされた青年の顔は青ざめ、目覚める気配は無い。
    顔色が悪い。
    青ざめた青年の濡れそぼる黒髪から雨の雫が顔に落ちる
    震える唇は、白くて・・
    何時からここにいたのだろうか?
    暗がりに身を潜めるように意識の無い青年。
    少女は、胸を痛める

    青年を気遣い、少女は傷を調べようと青年の右腕に手を触れた。
    そのとき、青年の左手は、少女の手首を捉え、右腕に触れるのを拒んだ。

    『何をする!!!』
    『お前は、誰だ。』

    青年の誰何の声
    手負いの野生の獣のような鋭い眼光


    激しい紅い瞳が凪いだはしばみ色の瞳を真っ直ぐに捉える
    険しい紅い瞳が少女を射竦める


    ぎりぎりと青年に握られた手首が万力で締め付けられているように、痛む。
    怪我人とは、思われぬ強い力で、少女の手首が握られていた。

    少女は気丈にも、それらには、怯まず

    「良かったですわ。意識はあるのですね。」
    「大丈夫。」
    「貴方の傷を診るだけです。」
    「私は、この屋敷の主(あるじ)」
    「貴方は、わたくしの家の前で、倒れておりました。」
    「貴方の傷を見させてくださいませ。」
    「わたくしは、薬師の資格をもっています。」
    「この手を離してくださいませんか?」

    青年に、少女は穏やかに話しかけた。
    少女は、青年に安堵するよう優しい笑顔を向けると、もう一度問いかけた。

    「わたくしに、貴方の傷を見させてくださいませ。」

    2012年
    10月23日
    19:11

    『誰も知らない物語6』

    《時雨の雨ーしぐれのあめー》





    真っ直ぐな、はしばみ色の瞳が青年の瞳を捉えた
    逸らさない瞳 清らかで純粋な心配の思いで見つめる 少女の強い強い眼差し
    少女の瞳が青年の命のともし火を見極める
    青ざめた青年の顔と未だ流れる血の色に、少女は眉を顰(ひそ)めた
    はしばみ色した大きな瞳が心配で陰る

    掴まれた青年の手が真冬の氷柱のように、とても冷たい。
    冷たい雨に打たれて・・・体温が低下しているのだろう
    容易に想像がついて、一刻も早い治療が必要と判断した少女は
    青年に告げた

    「屋敷から人を呼びます」
    「ここで、しばらく待っていてくれませんか?」

    青年の記憶の少女と重なる とてもよく似たはしばみ色の瞳
    暖かく柔らかなその色と
    少女の耳馴染みの良い 柔らかな声に安堵する青年

    先ほどまでの痛いくらいの緊張感が薄れる
    青年は、少女に話しかけた。

    『この傷では、どこにも行けない・・・・』
    『待つしかないな。』

    青年は、ふっ・・・と少女に笑うと彼女の手首を離した。
    少女を見つめる青年の瞳は、優しい紅(くれない)の色をしていた。

    手燭の灯りにその色は、とろりとした美しい清らかな瞳で輝き
    少女は、初めて青年の瞳の色に気付いた。
    しばし・・・時と場を忘れ、少女は青年を見つめる。
    雨に打たれた手負いの青年は、とても美しい紅(くれない)の双眼(そうがん)を持つ
    漆黒の髪の美しい青年だった。

     

    2012年
    10月25日
    20:46

    『誰も知らない物語7』

    《時雨の雨ーしぐれのあめー》




    『・・・すまない・・・・』

    微かな呟きとともに、少女の手首を掴んでいた手が離れた。

    そのまま、ゆっくりと、青年の腕がだらりと地上に落下する。
    先ほどまでの勢いの或る覇気に溢れた声は、立ち消え
    紅(くれない)の双眼(そうがん)は、闇に閉じられようとしていた。
    急にか細くなった呼吸。


    急変した、青年の様子に少女は青ざめる
    (急がねば・・・この方の命が危ない)

    「お気を確かに。・・・・今、人を呼んで参ります。」

    少女は青年から、急いで離れ踵を返すと屋敷へと走っていった。

    青年の耳にざあざあと雨の音が響く・・・
    ざあざあと・・・聞いたことの無い波の音が響く・・・
    いつの間にか白黒の視界の中、青年の世界は、闇に閉じられようとしていた。

    少女が泣きそうな顔で、何かを叫んでいた。
    その声は、濃すぎる闇で聞き取れない。

    彼女が私から、離れていく・・・
    暗転し閉じられようとしている世界の中で、点々と紅い花が咲く
    暗い紅のその色が世界に増えていく

    最後に、青年の見たものは、屋敷の裏戸に消える少女の姿。

    裏戸に消えた少女を見届けることは出来ず、青年の世界は、暗闇に飲まれた。

    ざあざあと・・・・音がする。  見たことの無い海の打ち寄せる波のようなその音

    冷たい時雨の雨に打たれながら、青年の意識は、闇に飲まれた。

    消えかかる自分の命を一人の少女に託して。
     


    2012年
    10月26日
    13:15

    『誰も知らない物語8』

    《覚醒》




    ・・・・   ・・・・・。     
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・ここは・・・
     

    ・・・・・・・・。
    漆黒の闇の中・・・・ゆらゆらと漂う意識。

    青年の沈んでいた感覚が、目覚め始める

    最初に、濃い漢方薬のすえた匂いが鼻についた。
    独特の乾燥薬の香りに、顔をしかめた。

    次に、額にヒンヤリとした冷たい感触
    ・・・・・ああ・・・気持がいい・・・・
    冷たさに心から、安堵する

    そして、額の冷たい感触といれ変わるように、暖かなぬくもり柔らかな感触
    それが誰かの手だと気付いたとき
    青年の瞳は、ゆるゆると開き、漆黒の闇の中から意識が覚醒した。

    最初、青年の目に飛び込んできたのは、柔らかな栗色の髪
    漆黒の世界にいた青年には眩しい。
    陽の光を弾く少女の髪だった。

    次いで、気遣わしげな深いはしばみ色の瞳。
    その瞳が、青年の様子に気付いて
    明るく輝く。

    「やっと、気がつかれましたか?」

    嬉しそうな少女の柔らかな笑顔。
    青年の額へと差し出された白い腕。

    額から、ぬくもりが消え、また冷たいものがかわりに乗せられた。
    今までのめくもりは、少女の手だったことを青年は知った。

    身体が重い。頭も廻らない気がする。
    見慣れない。見知らぬ場所に、目の前の少女に青年は、呟いていた。

    『・・・・ここは、どこなんだ。』

    起き上がろうと、努力をすると、全身に痛みが走り動けない。
    呻く自分の声が、もどかしい。

    たくさん質問したいことがあるのに、痛みに負けた身体が厭わしかった。


    「まだ動いては、なりませぬ。」

    慌てて少女は、青年を支えて元のように楽に寝かしつけた。

    「意識が戻られたご様子に、安堵いたしました。」
    「もう大丈夫。」
    「命の危うい危険は、脱しました。」

    「貴方さまは、傷を負われ、熱に浮かされておりました。」
    「いまだ、傷は癒えず・・・熱も高いまま・・・・」
    「起き上がるのは、今しばらくは無理にございます。」
    「今、薬湯をお持ちします。」
    「少々、お待ちくださいませ。」

    しばらくして、少女が薬湯を持ってきた。
    漢方薬特有の匂いが鼻につく。

    「止血と消炎と鎮痛作用の薬湯です。碁連(オウレン)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、厚朴(こうぼく)等が入っています。」

    「コレをお飲みになって、また、お休みくださいませ。」
    「今、お身体を支えます。」

    「お飲みになってくださいますよね?」

    そういうと、華奢な身体のどこにそんな力があったのかと思うくらいに、
    あっさりと青年の背を起して、そこに枕を差し入れた。
    青年が楽な位置に調整する。

    「一人でお飲みになれますか?」

    少女は、窺がうように青年に問いかけた。

    2012年
    11月30日
    14:06


    漢方は、効能を調べて並べただけのさくらぱんの捏造です。
    薬師ではありませんので、ごめんなさい。
    お薬っぽい雰囲気だけいただきました。
    そしてお味が、想像できない。
    激マズイ??

    『誰も知らない物語9』

    《覚醒》


    『済まないが、器を一緒に支えては、もらえないだろうか?』
    『せっかくの薬湯を取り落としたくはないんだ。』

    「分かりましたわ。」
    「…こうですか?」
    『…すまない。』

    青年は、ようやく苦味のある薬湯を、少女のおかげで飲み干すことができた。

    『くっ…ぶっ…っ』 『ゴホ…ゴホッ…』

    「大丈夫ですか!?」

    最後に、飲み干す時に碗の底、濃い溶け残りが喉に詰まり、青年は、勢い良い咳き込んだ。

    少女が、慌てて、薬湯の入っていた碗を受け取り、背中をさする。

    何度も何度もさするうちに、咳きも治まってきた。

    少女が尋ねる。
    「落ち着いてきたようですね。」
    『ありがとう。もう大丈夫だ。』

    「お水は、入りますか?」
    『…いや、いらない。』
    『それより、聞きたいことがあるのだが、聞いてもいいだろうか?』
    「はい。何でしょう?」
    「何なりと聞いて下さい。」

    「でも、その前に無事、薬湯もお飲みになられたようですし…」
    「傷口が開いてしまいます。」
    「お休みの姿勢にもどしますわね。」
    「質問は、それからですわ。」

    そう言うと、手慣れた様子で、青年の背中に挟んであった、枕を除いてまた、床につかせたのだった。


    2012年
    12月04日
    20:43

    『誰も知らない物語10』 はこべらさん作

    書いて良いのかな~、雰囲気壊さないかなーとドキドキしつつも
    紅珠先生の世界の放つ魅力には逆らえないので、僭越ながら続きをポチポチしちゃいます(^_^;)

    ***
    少女に支えられて床に横たわった後、青年は再び口を開いた。

    「君は――。」

    昔かの地の梅林を訪れたことはないか。
    …あのときの少女なのではないかと言いかけて、青年は口をつぐむ。

    (――聞いてどうするというのだ、私は。)

    仮に目の前の少女が『梅林の少女』だとしても―…。





    「どうかなさいましたか?
    …傷が、痛みますか…?」

    言葉を途切れさせて押し黙った青年を心配した少女が声をかける。

    「いや…。」

    青年の返答に少女は安堵したようで、ほっと息をついた。

    「それならば良いのですが…。無理はいけませんわ。もう少しお休みになってくださいませ。
    次にお目覚めになられたときには粥を用意しておきますね。」


    少女は微笑んで、出来るだけ青年の傷に障らないようにふんわりと上掛けをかけた。

    『誰も知らない物語11』 はこべらさん作

    何とか今月中に青年を寝台から動かしたい…!
    と、自分の中で妙な方向に火がついてしまったので続きを書かせてもらいました。

    **
    遠くから小鳥のさえずりが聞こえる。

    柔らかな日の光を感じた青年は、ゆっくりと覚醒した。

    「―――。」

    「お早うございます。」

    声のする方に首を傾けると、椅子に腰掛けている少女と目が合った。少女は青年の顔色を見た後で、にこりと微笑む。

    「昨日よりもお顔の色が良くなられたようで何よりですわ。
    出来たら粥と薬を召し上がっていただきたいのですが――っ、
    何をなさっているのですか!」

    寝台から無理に起き上がろうとして顔をしかめる青年を、少女は慌てて制止した。

    「何故そのようなお体で動こうとなさるのですか!
    …あなた様は、命に関わるほどの状態だったのですよ!?
    今だって、傷が酷く痛むはずです。
    まだ横になっていてくださいませ!!」

    「…もう大丈夫だ。」

    青年は少女の制止を緩やかに押し返し、再び寝台から起き上がろうとする。

    「―――っっ。」

    少し体を動かすだけでも、激しい痛みが青年の体を貫く。
    痛みに顔を歪める青年を見た少女は青ざめ、必死になって青年に懇願した。

    「お願いです。無理なさらないでください!
    …お願い、ですから…。」

    少女の双眸からぽろぽろと涙が溢れだす。
    それを見た青年の動きが止まった。

    「―――。」

    「…あなた様にとって、この場所はお体を休めるのに不本意かもしれません。
    ですが、もうちょっとだけ、せめてお体の痛みが十分に退くまではこちらでお休みくださいませ。」

    「だが―…。」

    「…どうか、私の我が儘を聞き届けてください…!」

    「―――。」

    瞳いっぱいに涙を湛えた少女の懇願に、青年は無言で頷いた。


    ***
    「では、粥と薬を用意して参りますね!」

    すぐに戻りますから、と言うと金茶の髪をたなびかせながら少女は部屋から出て行った。

    『誰も知らない物語12』 はこべらさん作

    (――それにしても。)

    少女が出て行った方角を見つめながら、青年は思った。

    (見れば見るほど、あの時の少女に似ている。)

    それは姿形だけでなく。
    人の為にその感情を揺り動かす様が酷似しているのだ。

    「―――。」

    青年は小さくため息をついた。


    **
    「お待たせいたしました!」

    盆に粥の入った椀と薬湯を載せ、少女が戻ってきた。
    少女は青年のいる寝台近くの椅子に腰掛け、卓の上に盆を置く。
    そして粥の入った椀を持つと、匙でひとすくい粥を掬って青年の口元へと運んだ。

    「どうぞ。お口に合えば良いのですが…。どうかなさいましたか?」

    目を見開いて、差し出された匙と少女と交互に見つめる青年の様子に、少女は少し首を傾げる。

    「いや…。自分で食べられる。」

    そう言うと青年は少女から匙を受け取ろうと、体を起こして手を動かした。

    「っっ。」

    動かしたと同時に体に走る痛みに青年が顔をしかめる。

    「無理をなさってはいけません。私に出来ることはさせていただきますから、あなた様はお体を治すことだけ考えてくださいませ。」

    少し哀しげな表情を浮かべながら少女が言う。その少女の様子に青年はしばし押し黙ったが、

    「――君には世話になりっぱなしだな。…では、頼む。」

    と言うと、少女が差し出した粥を口に含んだ。


    **
    少女の献身的な世話の甲斐もあり、数日後には青年は寝台から自力で起き上がれるようになっていた。





    とりあえず、青年が動けるようになりました(^_^;)
    個人的目標達成です