花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【一纏め書庫】携帯ユーザー様向け  

    こちらは、携帯ユーザー様に推奨 一纏めの書庫です。一度に、全部纏めて読みたい方向け
    まだ、少ないですが、少しずつ更新します。


    あお祭り

    2012.10.24.『あおの世界』

    2012.10.24.『あおの世界Ⅱ』

    2012.10.25.t『あおの世界Ⅲ』

    『花の四阿』

    2012.05.28.~2012.09.24.『花の四阿』


    黒龍シリーズ

    2012.10.11.『黒龍・激闘編』

    2012.05~2012.06.『白陽国・新橋完成式典 -橋シリーズー』

    2012.08.14. 『守るために・・・』 

    2012.09.22.黒龍『葡萄棚の下で』 ※角砂糖の甘さに注意!!!

    本誌設定
    2013.02.07.『―ONE―』※黎翔の夕鈴への想い

    2013.02.07.『―ONE 夕鈴編 ―』

    メルヘン

    2012.10.01【一纏め長編】パラレルメルヘン『満月うさぎ・望月兎ーまんげつうさぎ・もちづきうさぎー』
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    【ひと纏め】『黒龍・激闘編』2012.10.11.





    ●こちらは、主に六月に書きました。黒龍・激闘編の一ページ総纏めです。
      それなりに長いので、ご注意を!!!





    ☆冴えわたる月  2012.06.26.



    離宮の窓から月が見える

    たそがれに冴えた光を宿す三日月が・・・




    月を見て私は思う

    はるかこの先の時に思いを馳せる

    (この月が、望月に変わる頃 私は、兄上に叛旗を翻す)

    (戦に勝利した時、国を支える重責に耐えられるだろうか?・・・)

    冷たい光が濃い影を作る

    月の光は、私の心にも濃い影を作っていた。


    【詩文】黒龍・激闘編『飲み込む望月』決戦前夜  2012.09.30.

    月明かりのみの
    暗闇の四苛に

    灯りもつけず
    酒杯に映る
    月を眺める

    私の髪を揺らす
    風は冷たく秋風で
    指先で掲げた
    酒杯は漣(さざなみ)をたてる

    墨染の空に
    輝く望月
    激流の流れる雲が
    月を妬んで
    隠そうとする

    酒杯の望月が
    秋風に
    歪んで写る

    卓に置いた
    もう一つの
    酒杯の持ち主は
    ここには居ない。

    なみなみと
    注がれた
    酒杯に
    望月が輝く

    酒杯の中の
    歪んだ望月は
    私の兄上
    現白陽国国王


    酒に溺れ
    女に溺れ
    側近の傀儡と
    化した歪んだ王

    私は明日
    白陽国の為に
    反旗を翻(ひるがえ)す

    さしずめ私は
    この流れる雲なのか?

    嵐が来る
    私の手で巻き起こす
    嵐が…
    大きな嵐がやってくる

    歪んだ望月ごと
    私は酒を勢いよく
    呑み込んだ

    歪んだ夜なら
    切り払えばいい。
    私が朝にするまでのこと。

    …夜明けは近い。
    …決戦の時は迫る。




    2012.09.30.  さくらぱん


    ☆黒龍 跳躍  2012.06.27.

    疾走して助走をつけた黒龍は、漆黒の底の見えない奈落を飛び越える

    軽々と着地した場所は、断崖絶壁の淵より遠く、危なげなく大地の裂け目を飛び越えた。


    作戦を指示した部隊はまだ、崖の向こう側

    ちらりと見ると、崖の向こうで まだ躊躇している

    跳躍力においても、群をぬく黒龍。

    ふっ と黎翔は、笑うと決戦の場へおも向くため、馬首を変え闇夜へと消えた・・・・。


    黒龍 不穏なる月 2012.06.07.


    激流のような墨流れる雲の半月の夜に
    単騎で疾走する黎翔がいた。

    付き従うは、隠密騎馬だったが
    浩大 率いる部隊は、
    はるかに引き離して後方を疾走していた

    騎馬戦において強いと噂される
    隠密騎馬隊でさえも
    本気で疾走する黒龍にはかなわない

    流れる墨染めの景色が
    激流のようにめまぐるしく変化する。

    騎馬用レンズを通した景色は、
    恐ろしく暗かった。
    それでも、黒龍のたずなを握る
    黎翔には、迷いが無い。

    神業ともいえる騎馬術で
    黒龍と共に黒い疾風と化した黎翔は
    李順部隊と挟み撃ちにし
    敵を殲滅するべく崖上を疾走する。

    滲む輪郭の不穏なる月だけがそれを見ていた。 .


    黒龍 激闘編 Ⅰ  2012.06.27.


    いまだ明け鳥の鳴かぬ東雲の空の下
    夜霧とも朝霧ともつかぬ狭間の時

    黎翔の初戦は拮抗し、戦場は麻のごとく乱れていた。

    激しい血煙と興奮状態の怒号が飛び交う最前線に
    黎翔は黒龍の背で白刃をふるう。

    黎翔の重さで敵を屠る両刃の剣は
    時折、鈍い光を煌かせ鎧ごと敵を薙ぎ払う

    極度の戦場における強い緊張感は
    黒龍にも激しい興奮状態を作り出していた。

    敵の馬首と激しくぶつかり競り合う
    黒龍の首の血管は浮き上がり
    ハミを食いしばる口元から泡がほとばしる。

    血走った眼は黎翔と同じ紅眼となり
    敵をひるませ石のようにひるませた。

    その巨大な馬体で睨んだと同時に
    敵を槍ごとへし折り踏み散らしてゆく

    拮抗していた戦況は、いつしか
    黎翔と黒龍の活躍により、黎翔側の優勢に変っていた。

    人馬一体となって、敵を薙ぎ払うその姿は、
    戦場の鬼神さながらの活躍を見せ味方の軍の士気を高めた
    と同時に敵軍を震え上がらせた

    のちに、戦場の鬼神と呼ばれ狼陛下と呼ばれることとなる
    伯黎翔の初陣の姿である。 .


    黒龍 激闘編 Ⅱ  2012.06.27.

    なめし革の握り柄が、汗と敵の返り血とで滑り出す

    馬上の黎翔の両刃の得物は何人を刀錆にしても、刃こぼれする様子もない。

    成人した折に、師匠である将軍から貰った業物は

    黎翔の手に良く馴染んだ

    重量のある得物を軽々とまるで剣舞のように振りかざしてゆく

    いつしか黎翔の周囲には、敵が一人も居なかった


    そのとき、東西から砂埃をあげて、砂塵が近付く。

    陽炎だったゆらめきはその姿をはっきりととらえることができた。

    黎翔の軍に一瞬緊張が走る。しかし杞憂だったらしい。

    挟み撃ちの指示をだした味方の軍だった。

    李順率いる精鋭部隊と浩大率いる騎馬隊である。

    李順軍から単騎で駆け出す李順

    李順の怒声が黎翔の耳に届く

    「部隊揃ってからの一斉攻撃ではなかったのですか?」

    黎翔に怒りながら宥めることができるのは、李順ぐらいだった。

    いたずらが、見つかった笑顔で、黎翔は答える。

    「そう怒るな」

    「先に楽しませてもらっただけだ。」

    そう話す黎翔の瞳は、冷たく酷薄に輝き、愉悦にあふれていた。

    ―完ー
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    ●【ひと纏め短編】『花の四阿』




    ●5月から随時更新しているデビュー作】『花の四阿』。
      とてもさくらぱんには、思い入れのある作品です。


    ☆花の四阿 Ⅰ


    頭上を覆う純白の白木香薔薇
    複雑に絡み合い照り映える緑の隙間から
    見え隠れする澄んだ空の色

    夕鈴は、後宮の片隅にある池のほとりで
    秘密の場所を見つけた

    白木香薔薇、白木蓮、雪柳、・・・
    ひとつひとつが、違う白をもった
    白い花をつける樹木が生い茂り
    天井を織り上げる
    中央には、陽の光が差しており
    はらはらと積み重なる花びらに
    この世のものとは思われぬ
    幻想的な天然の四阿であった .

    ☆花の四阿 Ⅱ


    『・・・君が、私の妃だ』

    頭上を覆う満開の春の花木。
    夕鈴は、降りしきる花びらの中
    ・・・一人佇んでいた。

    はらはらとこぼれ落ちる小さな雪のような花びらは、
    雪の名を冠していても、雪と違い決して溶けはしない。
    彼女に優しく降り積もる。
    ・・・彼の人の言の葉のように。

    触れられた過去の優しい記憶が、今は傍に居ない彼の人を思い出させる。

    引き出された甘い熱の記憶は
    より甘くせつない思いとなり、リアリティを伴って身を焦がす。

    掘り起こされる熱の記憶、彼の人との思い出。

    傍らに居ないのに、彼の人がこの場に居る様な錯覚を感じ
    戸惑いで身を震わせてしまう。

    ・・・こんな想いさえ、本来なら許されるはずもない身分違いの恋。

    身体に刻まれた彼の人との熱の記憶。
    忘れてしまえば、どんなに楽になるだろう。
    ・・・こんなにも貴方が好き。

    思い出すだけで恥ずかしい白昼夢。

    身体に刻まれた熱の記憶は、彼女をいたずらに惑わせ翻弄する。
    自然、自らの身を・・・頬を染めるのは無理もないこと。

    甘く降り積もる白い花庭の四阿。
    唯一、あでやかな薄紅の
    甘やかに匂いたつ花のように染めた夕鈴は、甘い記憶に浸され佇む。




                        -完-

    ☆花の四阿 Ⅲ  石棺の想い  -せきかんのおもい-


    緑濃い四阿の奥
    木立に隠れた天然の隠れ家に
    くずおれて、夕鈴は泣いていた
    自室にて人払いはしていても
    つね日頃から、妃の様子を伺うのが侍女達の仕事
    本当の意味での一人になれる場所など
    ここを見つけるまで、知らなかった。

    陛下に恋焦がれる想いは、
    報われぬ重責となり胸を締め付ける
    息さえもできない・・・
    そんな気持ちに蓋をすべく
    ここにきた・・・梅雨空に重い雲が垂れ込める
    木々に覆われた四阿に霧雨の雫が、伝う。
    かき集めた透明な雫は、ゆっくりと落ち、夕鈴の袖を濡らす。





    報われぬ恋にピリオドを。
    さまざまな思いが溢れて
    心はじくじくと胸をさいなむ。
    いっそ大声で泣き叫びたい。
    この声を誰かに聞かしてやりたい
    そんな思いに囚われる。
    妃としての立場から、そんなことなどできやしないのに。


    「……こんなにも、陛下。あなたが好き……」
    泣き濡れて頬を伝うのは、冷たい涙・・・
    静かに声を忍殺(おしころ)し泣き濡れる・・・・・
    今だけは、自分の恋心のために弔いの涙を

    明日も、偽りの演技ができるように・・・
    焦がれる気持ちにピリオドをつけるために。

    緑濃い四阿の奥
    泣き崩れた夕鈴の側に、
    白く輝くギボオシの花が
    霧雨に重く
    うつむいて咲いていた。




                      -完-

    【詩文】『花の四阿Ⅳ―想いの手紙―』

    貴方を想い
    書き出したこの手紙
    書いては、捨てて…
    捨てては、書いて…
    の繰り返し

    結局、
    いつもと同じように、
    こんにちはで始まる
    無難な手紙になってしまった。

    戦地へ赴く
    貴方に

    ーあの日言えなかった
    想いを書き綴ろうとしたけれど・・・・
    私の想いは、重すぎて
    貴方の負担になるだけ。

    私は、貴方の元に行けなくて
    ここで、貴方の帰りを待つだけだけど・・・
    せめて溢れるこの思いだけは、手紙で貴方に届けたい。

    無難に書き綴られた私の手紙
    結局、書けなかった私の想い
    溢れる想いを、空白の白い部分に託した。

    手紙と一緒に、優しい青の勿忘(わすれな)草を同封した。

    他人まかせの私の手紙・・・
    この手紙が届く頃
    貴方は、何処に居るのかしら?

    今日もまた 貴方に続く この空を見上げる
    貴方も、この空を見ていますか?
    戦地で、頑張っているのですか?
    無理などしていませんか?
    少しでも、私を思い出してくれていますか?

    手紙を読んで、少しでも思い出してくれたら、
    それだけで 私は、幸せです。

    今日も貴方の帰りを待つ一日が始まります。

    どうか、ご無事で・・・

    早く貴方に会いたいです。


    ☆【詩文】『花の四阿Ⅴ-真心-』


    私の手のひらから
    零れ落ちる種は
    私の真心

    貴方の世界に
    種を蒔く

    時には、寄り添い
    時には、遠くから
    耳を澄ませ
    声を聞き
    励ましたい

    時には、力強く
    時には、優しく
    手を取り 
    手を引き
    導きたい

    貴方の心に
    私は種を蒔く

    いつかは
    貴方の世界で
    私の花が
    いっぱいになるように

    私は
    今日も
    貴方の心に
    種を蒔く

    いつか
    芽ぶく
    夢を夢見る


    2012.09.24. さくらぱん
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    一纏め【長編】黒龍『守るために・・・・』




    夏の太陽は、頭上にギラギラと輝き
    地上に陽炎ゆらめく・・・むし暑い或る日の午後のこと


    王宮の外れ
    黒龍のいる馬房と放牧場より遠く

    夕鈴は、侍女を伴い
    騎馬研鑚所に向かっていた

    夏の太陽は、容赦なく夕鈴たちを襲う・・・

    「日当たりが、強いです。」
    「お妃さま、大丈夫ですか?」

    『大丈夫ですよ。皆さんは、大丈夫ですか?』

    「お気遣いありがとうございます。大丈夫です。」
    「もう少しで、目的地に着きます。」
    「そこの道に入れば、目的地が見えます。」
    「そちらにて、お休みいただけます。もうすぐですわ。」

    『もう少しなのですね。分かりました。』

    夕鈴の額に滲む汗を拭いながら、侍女が呟く・・・・

    「申し訳ございません。」
    「お妃様は、ご辞退しましたが・・・やはり、輿をご用意するべきでした」
    「こんなに暑い日にお妃さまを歩かせるなんて・・・」

    申し訳なさそうに話す侍女に、

    『いいのです。私が歩きますと言ったのだから・・・。』
    『すべての責は、私です。』
    『貴方がたに責任はありませんよ。』

    にっこりと夕鈴は、微笑んでみせた。



    ようやく教えてもらった騎馬研鑚所に近づく


    侍女が、先導し夕鈴が進む先
    いくつもの折れ曲がる複雑な迷路のような小道

    梢を高くして、入り組ませた、高い生け垣のそのむこうから
    騒がしい音がする。

    近づくにつれ
    喧騒が大きくなる

    大勢の兵士の猛る声
    熱気溢れる気合の声が、あちらこちらから聞こえる


    土煙と霞む空気に
    地を踏み鳴らす、軍馬のひづめの音が鳴り響く

    激しくかき鳴らす
    金属と金属が激しくぶつかる剣戟音

    陽炎で霞む人影に
    遠くからでも白刃が煌めく・・・

    ここがあたかも戦場のように見えた。

    初めて見る騎馬研鑚所は、すべてが夕鈴を驚かせた。


    夕鈴は、目を見開いて驚く。




    いつも良く行く黒龍の馬房の側の放牧場の広さとぜんぜん違う
    広大な敷地にまず驚く。

    と同時に、ここにいていいものかと思い悩む
    ここは、のほほんとした妃なんかが来る場所ではなかった。

    戦場においての技術を学び、研鑚する場所は
    ぴりぴりとした高い緊張感に包まれていた。
    男たちの熱気が、独特の雰囲気を作る。

    敷地では、大勢の兵士たちが、それぞれの隊毎で訓練の真っ最中であった。
    いくつかのブロックに分かれて、点在する兵士たち。

    ある場所では、隊長の合図で、
    粛々と前後左右と隊列をさまざまに変えていった。
    一頭たりとも乱れない整然さに、夕鈴は、目を見張る

    ある場所では、あらゆる障害が想定されており、
    ぬかるみのある池、川を想定とした堀、うずたかい砂山
    高さのある生垣、間隔を置いた丸太など・・・
    さまざまな障害を次々と、難なく障害を乗り越える兵士たちの様子に
    夕鈴は、はらはらとした気持ちが止まらない。


    また遥かかなた・・・・
    陽炎揺らめく最奥は、疾走する灰色の影
    人馬一体となりいくつもの影が蹄の音とともに
    稲妻のごとく駆け抜けていく・・・・


    そして、ひときわ目を引いたのは、
    騎乗戦闘術の練習。

    先ほどからの剣戟音の源だった。
    舞い散る砂塵とぶつかりあう影の中、激しく白刃が舞うように輝く・・・
    練習用だというのに、あまりに鮮烈なその煌めきに錯覚を起こしそうになる
    ドキドキと動機が早まり止まらない。

    その中に、ひときわ目を惹く人影が・・・・陛下だった。



    近隣諸国からの戦を
    想定した模擬戦は、
    より実戦に近い練習を行っていた。

    刃先を潰し、
    鉛を仕込んだ重量のある練習用の剣

    蒸し暑い夏の午後に、
    振り回すだけでも、
    体力のいるその剣を、
    馬上で自在に操れるまでには、
    相当な鍛錬の時間を必要とする。

    そんな兵士達の戦うなか、
    かつて『戦場の鬼神』と呼ばれた黎翔は、
    異彩を放ち目立っていた。

    愛馬に跨がり、
    足だけで自由自在に、黒龍を操る。

    左手にタズナを握り、
    黒光りする鋼鉄の籠手で
    相手の剣戟を受け止める。

    右手は、軽々と鉛の得物で、
    易々と何人もの兵士達の剣を弾いていく。

    その姿は、
    かつて『戦場の鬼神』と呼ばれた頃を
    彷彿させる活躍ぶりだった。

    熱い熱風が、他国との戦を想定した鍛錬場に吹き付ける
    砂塵が舞い、軍馬のひずめの音が地響きのように大地に低く響き渡る
    熱風より熱く戦う兵士たちのその中に、国王 伯 黎翔の姿があった。

    汗で貼りつく単衣(ひとえ)の衣は、
    黎翔のしなやかな筋肉の動きが分かるほど、貼りつき・・・

    力づくで、軌道を変える重さを増した練習用の鉛の剣
    上腕筋と胸筋が盛り上がり、躍動する筋肉

    白刃と共に、
    滴り落ちる汗が煌めき弾けていく。

    相手をする兵士たちに戦慄が走る

    平和の眠りについていた
    まどろみの『戦場の鬼神』が、
    ゆっくりと目覚め始める

    振るう剣裁きが変化する・・・
    酷薄な愉悦の微笑みに・・・・
    刻々と変化する黎翔の様子に
    兵士たちは、冷たい汗が噴き出るのを感じた。

    目覚めた『戦場の鬼神』は、もう 誰も止めることができない。
    誰も止められない




    兵士たちのどよめきが、
    激しい戦闘中の前線から
    漣(さざなみ)のごとく巻き起こる

    白刃が舞い踊る・・・
    旋風が 砂塵を巻き上げる・・・
    黒龍の甲高いいななきと
    大地を踏みつける力強い蹄の音
    紅く・・・・人を射殺すような鋭い瞳と
    刹那の美しい壮絶な笑みで、
    次々と白刃を振るう黎翔・・・・

    戦場の鬼神の降臨に軍隊は、衝撃が走った。




    黎翔の紅き冷たい瞳は
    相対する兵士の心を凍らせる

    震える剣は、迷いの軌道を描く・・・

    幾度となく、死線を生き抜いた黎翔に
    そんな生ぬるい剣は、効かない・・・

    軌道を読まれ、簡単に剣を弾かれた
    伝わる振動に、兵士は腕が強く痺れた。
    そのまま、くるくると宙に弧を描きながら・・・剣は、地面に突き刺さる。

    黎翔の剣の切っ先が、ひやりと首筋に当てられた。
    「参りました。・・・・」
    兵士が惨敗を認めた。

    『まだまだだな・・・剣筋に迷いがあった。』
    『・・・・もっと、精進するように。』

    にやりと黎翔は兵士に嗤った。




    初めて見る
    黎翔の黒龍での
    戦いぶりに、
    夕鈴は、ため息しか出ない。

    兵士達に混じり、
    黒龍と闘う姿は、
    洗練された剣舞を
    見ているようで…
    美しかった。

    軌跡を描く黎翔の白刃は、途中で軌道を変え、激しく煌めく

    戦い易いように、
    袖が筒状になった
    上着の裾は、
    黒龍の動きとともに、
    はためき揺れ動く。

    何より、
    黒龍と躍動する
    しなやかな力強い動きに、夕鈴は
    強く惹きつけられた。

    激しく闘っていた
    模擬戦は、
    銅鑼の合図と共に、
    ふいに終る。

    その時、初めて黎翔が夕鈴に気付いた。




    夕鈴に気付いた黎翔は、
    すぐそばにいた将軍らしき人物に何かことこと、ふたこと話しかけた
    話しかけられた将軍は、夕鈴を見て、陛下に微笑む。

    黎翔は、黒龍の馬首を夕鈴に向けると
    柵を飛び越えて、まっすぐに夕鈴のもとへ
    あっという間に距離を縮めてやってきた。
    黒龍の馬上から、黎翔が声をかける

    『夕鈴、来てたのか!?』
    『いつから、ここに…?』

    「先ほどから・・・・」
    「・・・黎翔様を見惚れておりました。」

    『どうしてここに・・』

    「お姿を見かけませんでしたので・・・」

    「宰相さまより、こちらに居られると聞きました。」
    「お邪魔でしたか・・・?」

    ぬばたまの髪より、汗がぽたぽたと流れ落ちる
    暑そうな様子に夕鈴は、懐から手巾を取り出した。

    「どうぞ、黎翔様これをお使いください。」

    夕鈴は、流れる汗を拭いてほしいと手巾を黎翔に差し出した。

    『ありがとう。夕鈴。ありがたく使わせてもらうよ。』

    黎翔は吹き出る汗を手布で拭うが、流れる汗は、止まることを知らない。
    全身に服が貼りつき色が濃く変わっていた。額から首筋に汗が伝う。
    乾いた空気で、喉が渇いた。

    黒龍も全身に汗をかいており暑そうだった。
    ビロードの首筋は、噴出すように汗をかいていた。

    『・・・・ここは、暑いな。』
    『夕鈴、黒龍も休ませたい。』
    『あちらに行こう!!!』

    『・・・・・夕鈴。手を。』

    「きゃぁ・・」

    黎翔に差し出した夕鈴の手首を引き、
    身体を引き寄せたかと思うと
    夕鈴の身体は、宙に浮き・・・
    あっという間に
    黎翔は、黒龍の背に 夕鈴を乗せていた。


    黎翔に引き寄せられ、
    黒龍の背に乗せられた夕鈴は
    すぐに気付いた・・・


    たくましい黎翔の腕の中にいることが夕鈴は落ち着かない。

    いつもと違い衣に強く焚き染められた香から
    黎翔らしい爽やかな香の香りと男らしい汗の臭いに惹きつけられる

    汗で濡れた黎翔の身体に単衣の衣が貼りつく
    たくましい黎翔の腕の中に夕鈴は包まれていた。
    普段気にすることなどない、黎翔の男らしさを意識する。
    軍馬である大きな黒龍の背は、揺れて不安定で・・・
    どうしても、危なくて、黎翔にしがみつかなくてはならなくて・・・

    気恥ずかしくて夕鈴は、黎翔に疑問をしてみた

    「黎翔さま」
    「どうして、こんな暑い日に軍事訓練などなされるのですか?」

    『・・・・その話は、涼しいところへいってからしようか。』

    柔らかな微笑で、陛下は笑った。

    騎馬研鑚所の馬房へと向かう
    陽炎たちのぼる道をゆっくりと、二人と一頭は進む。

    さほどかからず、涼しい日陰とたっぷりの水のある目的地に着いた。

    黒龍が嬉しそうに高く嘶いた。




    すぐに、馬番たちが急いでやってくる。

    黒龍を木陰の濃い涼しい場所に誘導する。

    飼い葉おけに
    白い石がはいったもの。
    緑のやわらかな牧草をいれたもの。 
    冷たい清水を入れたもの。

    黒龍の目の前に飼い葉おけが並ぶ。
    冷たい清水を飲み、白い石を舐め始めた。

    黎翔は、先に黒龍から降りると、
    夕鈴を抱えて、黒龍の背から下ろした。

    不思議そうに、夕鈴は、黒龍を眺める。

    黎翔と馬番は、つぎつぎに
    鞍や
    黒龍の黒い鎖帷子などを外し、
    黒龍を楽にしてやっていた。
    馬番たちが黒龍の汗を
    固く絞った布で丁寧に拭いていく。

    その間も黒龍は、白い石を舐め続けるのだった。

    「黎翔様・・・黒龍が舐めているこの石はなんですか?」

    『ああ・・・コレ!?』
    『岩塩だよ。暑いからね。失ったミネラルを補給してるんだ・・・。』

    黒龍の舐める白い石の正体が分かり、
    夕鈴は、暑い中、御苦労様の気持ちで黒龍の首を撫ぜるのだった。



    砂埃と汗にまみれた、
    黎翔は、汗を流してくるといって
    研鑚所の奥へと消えた・・・

    陛下を待ちながら、外の景色を眺める

    広い練習場でいまだに続く、兵士たちの練習

    きっと・・・汗だくになりながら
    練習しているのだろうな・・

    つらつらと眺めながら・・・
    夕鈴はそんなことを思う


    窓辺からは、熱風がねっとりと熱い空気で入ってくる
    炎天下での練習は、酷な気がしてきた。
    先ほどの疑問が湧いてくる。
    ・・・・今度は、答えてくれるかしら?

    長椅子に腰掛けた夕鈴のすぐ側の
    脇机の飲み物の氷が、
    音もなく溶けて崩れた。


    そこへ、陛下が衣装を着替えて出てきた。

    『待たせたな・・・夕鈴。』

    『咽喉が、渇いた・・』

    「あっ!!! 黎翔さま・・それは・・・」

    黎翔は、脇机に手を伸ばし、
    夕鈴の飲みかけのレモネードを一気に飲み干した。


    真っ赤になった夕鈴の隣に座る

    『飲みかけだったか・・・・すまない。』

    いたずらな笑みを浮かべつつ、
    片手で濡れた髪を拭きつつ
    優雅に、夕鈴の手を
    黎翔は手に取り、
    指先にお詫びのキスをした。

    唖然として、ぱくぱくと口がふさがらない
    夕鈴の真っ赤な顔が、更に赤くなる。
    指先までもが朱に染まり・・・涙目の瞳で僕を見つめる・・・

    『夕鈴・・・可愛い。』

    「・・・っ」

    引き寄せて、僕の腕の中に閉じ込めた。

    研鑚所という場所・・・不謹慎さに
    黎翔の腕から逃れようと身をよじる。
    抵抗を許さないかののように、更に強く抱きしめられた

    その時、良い香りが夕鈴の鼻をくすぐる
    先ほどと違い、石鹸の香りが陛下から香っていた。



    視線を感じる・・・気がする。
    ・・・・・・早く離してほしい。

    「・・・陛下、お飲み物をお持ちしました。」
    「夕鈴様のおかわりもお持ちしました。」

    夕鈴付きの侍女が彼女を気遣い、機転をきかせてくれた。

    『・・・ああ、そこに置いてくれ』

    今度は、あっさりと腕を解かれた。

    バクバクと高鳴る鼓動を
    両手で押さえて、
    少しだけ、黎翔から離れてみる。

    効果は、ないであろうが、
    涙目で黎翔を睨みつけた。

    悔しいことに
    私の動揺など気にせず涼しい顔で、
    今度は、ゆっくりとレモネードを飲み始めた・・・・。

    『ほら・・・君の分だ。飲むといい。』

    夕鈴が、受け取り、飲み始めるのを黎翔は待つ。

    夕鈴は、優しい瞳で見つめられ、
    ここが、どこであるのかを忘れそうになる。

    外からの喧騒と兵士たちは、たちのぼる陽炎にゆらめいて見える

    日陰だというのに、額に滲む汗がこの場の暑さを物語っていた。




    ・・・・こくっ
    夕鈴は、一口飲む。

    蜂蜜で甘さをつけたレモンらしい冷たい酸味が咽喉を潤す。
    染み渡る冷たさに、身体も心もほっとする。

    「冷たくて、美味しい♪」

    思わず、にっこりと笑みが零れた。







    落ち着いたところで、先ほど答えをもらえなかった質問を、
    改めて黎翔にしてみる。

    「黎翔さま」
    「どうして、こんな暑い日に軍事訓練などなされるのですか?」

    『夕鈴は、お妃教育をしているから、この国のこと知っているよね?』
    『わが国は、豊かな水源と温暖な気候で広大な穀倉地帯がある。』

    「はい。干ばつ等がない限り、豊かな恵みが天から約束されていますね。」

    『その土地を狙い、たびたび諸外国から侵略されてきた歴史がある。』

    「・・・・・・。」

    『戦は、時を選ばない』
    『過去の歴史では、盛夏のときもあったし、厳冬の時もあった。』
    『真夏のこんな暑い日に練習をするのは、』
    『過去の歴史を忘れない為と・・・』
    『兵士たちの持久力の為。』
    『こんな日だからこそ、万が一の時の練習になるんだ。』

    『それにね。・・・』

    陽炎揺らめく練習風景を眺めて、目を細める。

    『兵士たちが、ここまで一生懸命なのは、ただわが国を愛しているだけではないんだよ。』




    『彼等には、強い信念がある』

    黎翔は、夕鈴から、手元のレモネードを受け取ると、脇机に置いた。
    夕鈴を引き寄せて、耳元で囁き、再び優しく抱きしめる。

    優しい抱擁と黎翔の言葉は、夕鈴の胸を打つ。

    『大事な人を守りたいという強い信念』
    『過去の歴史では、負けた国がどんなに悲惨な道を辿ったのか教えてくれる』
    『彼らには、家族が居る』
    『大事な仲間が居る』
    『恋人や子供もいるだろう・・・。』
    『彼らには、愛する人がいるんだ』
    『守りたい人のために・・・・ここまで頑張っているんだよ。夕鈴。』

    夕鈴を抱きしめる力が強くなる。
    黎翔の真摯で静かな言葉が続く・・・

    『私は、王として彼らの期待に応えなければならない』
    『この国を、焦土と化して戦場(いくさば)になど、したくはない』

    『私も彼らと同じ気持ちなんだ』
    『・・・・愛する国民を守りたい』
    『・・・・大事な国を守りたい』
    『これは、国王としての義務だから・・・。』

    黎翔は、自分に諭すように、ゆっくりと語りかける。

    黎翔が、夕鈴に啄ばむようなキスをした。

    『私も夕鈴。』
    『愛する君を守るよ。』
    『この国と共に・・・・・』

    「・・・黎翔さま・・・」

    ・・・・・ぽろぽろと夕鈴の瞳から涙が零れる
    透明な雫がいくつもいくつも零れ落ちた。

    熱気溢れる鍛錬所から、熱い熱い風が二人を包む。

    交わす瞳には、お互いの姿しか見えない。
    いつの間にか重なる唇
    二人の約束のキスは、真摯で熱いものだった。


                         -完ー


    2012.08.14.さくらぱん

    一纏め【長編】本誌設定『―ONE―』※K白友さんへの贈答品




    友達とハシャぐ君を、僕は遠い存在に感じて戸惑っている。
    君という確かな存在が儚く思えてならない。

    僕の知らない君の今まで過ごしてきた過去の時
    埋めることの出来ない時の空白。

    共有することの出来ない過去が、僕らを引き裂く
    今の僕と君との距離。

    出会って間もない僕達の絆は
    君の友達との絆と違って
    儚いカゲロウのようで、とても不確かだ。

    過去の君と思い出を共有できない寂しさ・・・・
    君が遠くへ行ったような気がしてならないよ。・・・・夕鈴。

    僕の知らない君がここに居る。
    時を遡ることが出来るのなら
    この溝を埋める思い出が作れるのに。


    時を司る神よ、お願いだ。
    どうか夕鈴を連れて行かないで・・・・

    風に攫われたように

    ーーーーー過去の時に、思い出に。

    ーーーーー僕から君を、引き離さないで。

    僕が届かない時の彼方へと連れて行かないでくれ!!!


    おぼろげに映る景色の中で、
    楽しそうに過ごす君を
    僕は遠くから見ていた。

    僕らの未来はまだ見えない
    スタートしたばかりの君と僕
    いったい僕達はどこへ行くのだろうか?






    僕の存在を君は忘れている気がして
    いたずらに、君を後ろから抱き締めた。

    華奢で柔らかな身体は、簡単に僕に引き寄せられた。

    確かで温かな君のぬくもり。
    頬を染めて身を捩り、君は僕から逃げ出そうとするけれど…
    ようやく捕まえた君を、逃がすつもりはないよ。


    僕の存在を思い出してくれた君のことが、嬉しくてしかたがないんだ。
    小犬のように、じゃれついて僕の存在をアピールする。









    ーーーー気がつけば君は、こんなにも
    僕にとって、かけがえの無い存在。

    ーーーー僕のなによりも大事な貴女(ひと)
    僕の心をこんなにも占めている。

    君だけが、その存在で
    前を向く力を 僕にそっとくれる

    さり気ない優しさは、君にとってはいつものこと。
    僕にとっては、特別なこと。

    なにげなさすぎて、きっと君は気付いてないんだね。

    いつもそんなふうに、僕の力になってくれる
    君のことが好きだよ。


    けして変わらぬ気持ちで
    嘘の無いこの心で ただ伝えたい

    『ありがとう』と君に。 

    出逢えたのは、偶然いう奇跡。
    君と出会えたこの奇跡を大切にしたい。


    君にいつか言えるかな? 偽りの無い僕の気持ちを。

    たった一言の勇気

    『君が好きだ』と君に伝えたいんだ
     





     

    この白陽国という王国
    その王宮の最奥ー後宮ーという
    君にとっては、非日常の世界

    侍女達にかしずかれ
    煌びやかな毎日を送る《狼陛下の唯一の妃》という立場の君

    着飾り、かしずかれた君に
    あたりまえに逢える毎日

    僕は君の夫として、
    今日も明日も明後日も君に逢える

    偶然という奇跡がつくりあげた毎日。

    ーーーー偽りの夫婦を演じている僕ら。
    本当は、恋人同士よりも清い関係

    そんな毎日を日々おくっているけど、
    偽りの僕たちの関係にいつかはピリオドをうちたい。

    本物になりたい。
    『君が、好きだ』と言ったら、この関係はどう変わるのだろうか?

    僕の夢は、現実にできるのかな?
    それとも、夢は夢のままなのだろうか?

    ーーーーーこの腕の中に抱きしめたぬくもりを、
    ーーーーー幸せになれる気持ちをくれる君を
    僕はもう、手離すことなんてできないよ。

    夢の彼方までも、君と一緒に居たいと願う僕がいる。

    ーーーーずっと君が僕の隣に居る夢、
    《朝も昼も夜も、君と共に過ごす夢を見る》



    運命なんて言葉はまだ僕らは知らない。

    君へと駆ける僕の気持ちを、君は知らない。

    君の気持ちが、どこを向いているのかなんて、僕は知らない。

    だから、僕らの未来は、誰も知らない。






    最近、君のことが気になって仕方ないんだ。

    気づけば、僕の瞳が君を捜している。

    ーーーー君を繋ぎ止めたい。

    ・・・・君のことばかり考えている僕が居る。

    こんなに眩しくて・・・・ 

    どんどん綺麗になっていく君に 僕は少し戸惑っている。

    そうか、これが恋するってことなんだ。

    気付いた時には、すでに君へと恋に落ちていた。

    君の存在が眩い僕の光だったんだ。







    ーーーー君だけなんだ

    君だけが、僕が信じられる唯一の貴女(ひと)

    かたちの無い僕との約束をずっと守り続けてくれる君

    素直で、いじらしいほどかわいい君を

    僕は、ずっと信じている

    君の言葉は、僕の宝物

    僕に、飾らない嘘偽りの無い言葉をいつもくれる君

    君の言葉は、信じられる

    信じるというこを教えてくれた君との思い出

    危険な夜も、不安な夜も

    君は、揺らがない勇気を僕にくれた。

    たとえ遠く 君とはぐれた夜も

    何も飾らぬ気持ちで

    今より強い心で

    僕は、君を信じ続けたい






    君と

    ーーーー同じものを見て

    ーーーー同じ喜びを分かち合い

    ーーーー同じ涙を流していたい

    君だけが、僕の愛する唯一の貴女(ひと)








    僕らに降り注ぐ
    幾千もの想ひの花びら・・・・

    幾つも・・・・幾つも・・・

    純粋で優しい君の想い
    こんなにも、暖かな君の無償の愛

    愛しくて湧き上がる君への想い
    こんなにも僕は君への愛で溢れてる


    美しい幾千もの想ひの花びら達が
    澄んだ綺麗な青空に
    ・・・・舞い上がり、・・・・・舞い踊る

    幾つも・・・・幾つも・・・
    降り注いでいく

    いつまでも、
    降り止むことの無い 暖かな想い 美しい光

    想ひの花びらが 僕らに降り注ぐ









    いつの間に、君は僕の世界に不可欠な存在となっていたのだろうか?

    気づけば君は、僕にとって、かけがえの無い存在。
    ーーーー僕のなによりも大事な貴女(ひと)

    僕の心をこんなにも占めている。

    君だけが、その存在で
    前を向く力を 僕にそっとくれる

    いつもそんなふうに、僕の力になってくれる
    君のことが好きなんだ。

    手を伸ばせば、届く距離。
    だけど いつまでも変わらない君との距離がもどかしい。

    壊したくない君との関係
    だけど 変わりたいと願う心

    けして変わらぬ気持ちで
    嘘の無いこの心で ただ伝えたい

    『愛している』と君に。 

    出逢えたのは、偶然いう奇跡。
    奇跡 を運命の出会いにしたい。

    君にいつか言いたい。
    嘘・偽りの無い僕の気持ちを。


    たった一つの僕の願い
    『生涯、僕の傍に居て欲しい。』と伝えよう。



     
    ーーーー僕のなによりも大事な貴女(ひと)へ

            you are the only one

                         ―ONE・完―


    2013年
    02月03日
    22:40

    【ひと纏め・長文】『白陽国・新橋完成式典 -橋シリーズー』



    ※こちらは、2012.05~2012.06.に書いた『白陽国・新橋完成式典 -橋シリーズー』の一ページまとめでございます。
    それなりに、長文ですので、ご注意ください。
    それでも、よろしければ、どうぞお楽しみくださいませ。


    ☆新○○大橋開通記念  2012.05.29.

    『触れ』が白陽国に出された

    黎翔が民のために完成を急がせていた
    白陽国に流れる大河の橋が完成した。
    近じか、完成式典を催すとのことである。

    交通の要だった大橋が、昨年の夏の氾濫で崩落してしまい
    物流が滞っていた為である。
    何より、黎翔唯一の妃が民を心配し、心を痛めていた為
    黎翔が工事を急がせたとの噂もある。
    (妃が、『生鮮が痛むと生活が困るから』というのは内緒である)

    不便をかけた民のため、橋に携わった工事人をねぎらうため、式典のほかに出店も出し華々しく行われるらしい。
    子供はもちろんのこと、橋の完成を待ち望んだ大人も2日後に迫る完成式典に目を輝かせた。

    ☆式典前夜・二日前 狼陛下のおねだり 2012.05.30.

    『・・・夕鈴』
    呼ばれて振り向いた時には、すでに黎翔の腕にとらわれていた。

    (あいかわらず、心臓に悪い・・・陛下は意地悪だわ。)
    足音を立てない黎翔の登場はいつも突然で、
    こんなふうに時々侍女よりも行動が早くて、
    突然の背後からの抱擁にドキドキが収まらない。

    好きな人に抱きしめられているのは、嬉しいけれど
    こんなふうに侍女の目があっては恥ずかしすぎる。

    結局、いつも本気で怒れなくて。
    黎翔を涙目で睨むぐらいしかできない。
    ・・・が、今日はそれさえも出来なかった。

    引き寄せられながら、夕鈴の耳元で黎翔が囁く
    『夕鈴、今戻った』
    『おかえりなさいませ、陛下』

    妃の演技のまま黎翔の腕の中で、逃れようと君はささやかな抵抗をしている。
    ・・・私から、逃げようとするのか・・・面白い。

    君の香りが鼻をくすぐる。

    紅く染まる耳元に吐息を届けながら
    さっきより染まった耳元に
    『夕鈴、いい香りだ。』
    『湯上りか?』とつぶやいた。
    『・・・・///っ』
    さらに首筋まで染まり、羞恥に染まる君を見るのは楽しい。

    いつもなら、このあたりで人払いがされるはず。
    今夜の陛下はいつもと違った。

    (侍女の視線が痛い。)
    (もうやめてーっっ)
    (早く陛下、人払いをっ))
    内心の夕鈴の気持ちを知りながら、黎翔と夕鈴の演技はさらに続く

    『夕鈴、式典の準備は進んでいるのか?』
    『今日は、侍女たちと衣装を選んでおりましたが、まだ決まらなくて・・・』
    話を聞きながら、いつものように夕鈴の髪を指に絡ませる。

    指に絡めた髪が、はらりと解けたところで
    後ろに控えているであろう侍女に黎翔は問いかけた。

    『私が見立てた衣装も合わせたか?』
    よどみなく侍女が答える。
    『はい』
    『さすが陛下のお見立てです。』
    『お妃様の白いお肌を引き立て、一番良くお似合いでございましたわ。』
    その答えに満足した笑みで黎翔がうなずくと

    『・・・夕鈴』
    『はい・・・陛下』
    『私が見立てた衣装を式典で着てくれないか?』

    昼間、色の洪水と化した妃の部屋を思い出す
    『はい・・・陛下』
    『・・・陛下の御心のままに』

    (昼間の衣装は、式典のためか普段の妃の衣装よりどれも豪華で選べなかった。・・・あのなかに陛下の見立てた衣装があったなんて。)
    妃演技中の夕鈴には、是としか言えなかった。


    ☆式典前日 後宮の庭  2012.05.30.

    朝食後の暖かなお茶を飲みながら
    夕鈴は妃付きの筆頭女官長の言葉に耳を傾けた。
    毎朝の定時連絡。夕鈴の今日の予定である。

    『・・・・以上が、本日の夕鈴様のご予定にございます。』
    控えめで落ち着いた、上に立つ者の自信に溢れた女官長の声は
    耳に馴染んで、聞きやすい。
    黎翔がみずから、夕鈴につけた女官の中でも一番夕鈴が信頼のおける人物だった。

    『それから、政務殿に近い、第一後宮殿の庭にある池の四珂の花が見頃を迎えております。』
    『午前の政務室での休憩は、そちらにて陛下といかがでしょうか? 夕鈴様。』
    『・・・何の花が見頃を迎えておりますか?』
    『紫の花菖蒲と藤の花です。いつもは地味な庭ですが、この時期だけは見事な色に染まります。』
    『それは、楽しみですね。陛下も楽しまれることでしょう。』
    『では、女官長。そちらにて休憩することにします。』
    『四珂にてお待ちしています・・・と陛下へのことづてを頼みます』
    『分かりました。では、そのように手配させていただきます。』




    先を先導する妃付の女官に案内されながら、第一後宮殿の庭にある池の四珂に向かう。

    確かに、女官長の言うとおり庭の花は見頃を迎えていた。
    凛とした涼やかな濃い紫と藤の優しい香りに庭は包まれていた。
    目に心地良いだけでなく、夕鈴は爽やかな空気に包まれた気がした。

    いつもながら、後宮及び王宮内にかかわらず、夕鈴付きの女官長は庭にまで詳しい。

    『どうして、いつも花の見頃まで庭に詳しいの?』

    臨時花嫁である夕鈴は、後宮の事情に詳しくない。
    傍に付き従う女官長に、日頃の疑問を今日は聞いてみることにした。

    『毎朝、各宮殿の女官長より老師と共に、朝の定時報告を受けております。』
    『特に、筆頭女官長であり、夕鈴様付きの私は後宮殿内における花師・庭師の手配も仕事に入っております。』
    『各殿内の庭の見頃は、必須連絡項目なのですわ。』
    そう言って女官長はやわらかく微笑んだ。



    鳥のさえずりが聞こえる。
    四珂の外は眩しさを感じるほど輝いている。
    政務室の休憩時間には、もう少し・・・
    陛下を思わせる花菖蒲を眺めながら、夕鈴は思う。

    (陛下はもうすぐね。)
    (明日の式典も、今日のような天気だと良いのだけれど・・・)

    その様子を女官長は、やさしいまなざしで見守っていた。


    ☆式典前日 政務室  2012.05.30.

    『李順・・・方淵を呼べ』
    『方淵ですか・・分りました』

    朝から珍しく機嫌の良い陛下が方淵を呼んだ。
    明日の式典の責任者に任命され、忙しいはずなのに微塵も感じさせず陛下のもとへ参じる

    『お呼びでしょうか? 陛下?』
    『方淵・・・明日の式典の準備は滞りなく進んでいるか?』
    『すべて滞りなく進んでおります。陛下。』
    『例の準備も大丈夫だな?』
    『式典の要ですので、抜かりなく手配済みにございます。』
    『分った。明日は滞りなく進ませよ。』
    『御意にございます。』

    方淵が立ち去り、部屋には黎翔と李順だけになった
    『李順・・・明日は式典以外政務は入れるな。』
    『・・・それは『それと夕鈴の予定も入れるな。』』


    機嫌の良い狼に、悪い予感がした李順だった。


    ☆ 花菖蒲 Ⅰ  2012.06.28.改

    夕鈴は、陛下を待ちながら、満開の風景を眺める
    池の畔には薄紫の藤花と濃紺の花菖蒲が、咲き競い合っていた。

    花菖蒲の凛とした葉は、天を向きいっそう涼やかで・・・・。
    藤花は、庭全体に豊かな甘い香りを振りまいていて・・・・。
    池の畔の小道が紫に彩られ重なりあう花々が目に鮮やかだった。

    池に、波紋が広がる
    丸い睡蓮の葉のその間に、波紋が・・・
    魚の気配がするその中に
    周りの景色と青い空が池に映りこむ。

    四苛の外は、幽玄の世界だった。

    そんなまぶしい光の世界を四苛でぼんやり眺めていると
    女官長より声がかかった
    「夕鈴様、陛下のお越しです。」

    陛下に侍女たちと共に拱手した。
    「夕鈴」
    陛下は、夕鈴にすべるように近づくと、表を上げさせ
    そのまま、陛下の指に絡ませた髪に口付ける。
    真っ赤になった夕鈴は、気丈にもお妃演技を続けている。

    「お待ちしておりました。陛下。」
    「お呼びだてして申し訳ありません。」
    「今朝、女官長よりこちらの庭が見頃と報告がありまして、こちらで陛下と一緒にお茶を楽しもうと思いましたの・・・」

    ゆっくりと髪の香りを楽しんでいた陛下が、夕鈴の言葉に四苛の外へ目を向けた。
    輝く世界に目を細める

    「確かに、花が見頃だな。」
    「我が妃と共に、花を愛でようか!?」

    夕鈴のすべらかな頬を撫ぜながら

    「女官長、お茶の用意はまだ良い。」
    「その前に、妃とともに、庭に下りる」

    女官長は、拱手し無言の肯を返した。


    ☆ 花菖蒲 Ⅱ  2012.06.28.改

    池の周囲の小道に沿って二人は進む。
    頭上には、けぶる甘い香りの藤の花。
    足元には、涼やかな色の花菖蒲が風に揺れる。
    甘い香りに二人包まれながら二人っきりで歩いていた。

    侍女たちは、すべて四苛に残してきた。
    ここには二人以外、誰も居ない。

    池の半分を廻った時、夕鈴から声が掛けられた。

    「・・・あの、陛下質問いいですか?」
    「何!?夕鈴?」

    二人向かい合い視線を合わせる。
    そのまま夕鈴の右手を掬い取り
    手の甲に口付けて、夕鈴の言葉を待った。
    離れた侍女からは、これで睦言をしているようにしか見えない。

    真っ赤に染まる顔で、次の言葉を探す君の姿に
    私はつい過剰な演技で困らせたくなる。

    「こんなこと、陛下に聞くのは変ですが・・・」
    「他に聞ける人いなくて・・・・・」

    「何でも聞いて 夕鈴。」

    「あの・・明日の式典は、私は何をすればよいのでしょうか?」
    「具体的には、何も聞いていなくて・・・」
    「教えて下さい。陛下」
    困り顔の君に答える

    「何もしなくていいよ。」
    「しいて言えば、美しく着飾って橋の上で私を待っててほしい。」
    「それだけでいいよ。」
    不安げな表情の君に安心できるよう柔らかく微笑む。

    「えっ それだけですか?」
    「後は、私の指示に任せて」

    「夕鈴、あした橋の上で待っててね。」

    甘い一陣の風が二人の髪を撫ぜていった。
    ぴちゃん。
    池の魚が跳ねた音がした。

    ー花菖蒲・完ー



    ☆ 『式典前夜・小犬陛下のおねだり』  2012.05.30.

    『・・・夕鈴。 是と言ってくれないか?』
    夜、後宮を訪れた陛下は夕鈴の指に指を絡ませながら囁く

    まだ侍女を下がらせていない為、妃の演技をやめるわけにはいかない。
    『陛下・・・昨夜の衣装の件でしたら、大丈夫ですわ。』

    『夕鈴、衣装の話ではない。 ・・・是と言ってくれないか?』
    今度は、指に口付けながら陛下は更に言葉を重ねる。
    (・・・困っている姿もかわいいなぁ)

    『返答に困ります、陛下。』
    『何に是と答えるべきなのか、先に用件を教えてください。』
    (衣装の件でないなら、なんだろう。・・・悪い予感がするわ。)

    『後で二人っきりになったら、用件を話す。』
    今度は、別な指に口付ける。
    『夕鈴・・・とにかく是と言ってくれ。』

    何がなにやら分からない。
    とにかく追い込まれてる気がする。
    夕鈴が是と言わない限り、人払いも用件も陛下は言わない気らしい。
    いたたまれないこの状況をなんとかしたい。
    早く終わらせたい。

    (悪い予感しかしないんですけど・・・)

    深いため息を一つ吐き夕鈴は承諾するしかなかった。


    ☆ 『式典前夜・小犬陛下のおねだり』Ⅱ   2012.05.30.

    やっと、人払いが済み、二人っきりになった自室。

    『今の何なんですか? 陛下!!』
    『用件を早く言ってください!!』

    なかなか言わない黎翔に夕鈴が切れた。
    それなのに、ほわほわと夕鈴の入れたお茶を飲んでいる。
    『やっぱり、夕鈴の入れたお茶は美味しいなぁ』
    (・・・恥ずかしくて怒った顔もかわいいなぁ)


    『僕のお嫁さん最高だね。』
    満面の笑顔で、にっこり笑うと夕鈴にもお茶を飲むよう席を促した。

    (なんか、すごくご機嫌!? 陛下。)
    ますます悪い予感しかしない。

    赤みが取れたものの、まだ涙目で睨んでいる夕鈴に黎翔は用件を切り出した

    『夕鈴、是と言ってくれてありがとう!』
    『夕鈴なら是といってくれると思ってた。』

    盛大に振っている幻の尻尾に昨夜にはない胸騒ぎを感じた。

    『老師に町娘の衣装の用意を手配させたんだ。』
    (・・・!)
    『明日、式典が終わったら、浩大に案内させるから抜け出そうね。』
    (・・・!!!)
    にっこりご機嫌に笑う黎翔に、頭痛しかおぼえない。

    すでに夕鈴の承諾は先ほど得たため、断定口調だ。

     夕鈴の悪い予感は的中した。
    (・・・青筋たてて怒るおっかない李順さんの顔が目に見えるんですけど・・・)
    夕鈴は、青ざめた顔で陛下に引きつった笑いをするしかなかった。

                      ー小犬陛下のおねだり・完ー


    ☆ 白陽国・新橋完成式典 Ⅰ  2012.05.31.

    ぬけるような青空の下
    浄化の爆竹が鳴り響き、賑やかな楽の音が重なる
    低く響く銅鑼の音
    粛々と愛馬・黒龍の歩を進めるのは、この国の王『伯黎翔』
    付き従う、貴族と兵士の隊列。
    その列の奥に花籠に乗った国王・唯一のお妃。

    なかなかお目にかかれないその姿を一目見ようと
    沿道には、民が詰め掛けていた。

    『 ・・・すごい。人だかりだわ。』
    爆竹の勢いが増す。
    (方淵・・・ちょっとやりすぎなんじゃない?)
    厳重に守られた花籠の中にまで火薬のにおいがする。

    容易に外から覗かれない造りの花籠は、黎翔がこの日にあわせ作らせた特別仕立てである。
    中からは、巧妙に隠された覗き窓から、御簾越しに外を楽しめる造りになっていた。

    銅鑼の音が大きく三度響く。
    爆竹の勢いが更に増した時、花籠が止まった。
    どうやら、式典を行う橋に着いたらしい。

    覗き窓から深紅の布地が見え、陛下の声がした。
    『・・・夕鈴』
    『私は、先に対岸へ船で行く』
    『対岸から合図をするまで、しばらくこのまま花籠で待っていてほしい。』
    『李順を置いてゆく。李順と共に花籠に乗ったまま橋の中央で私を待っていてくれ。』
    『はい・・・陛下』
    そしてそのまま陛下の気配が消えた。


    ☆ 白陽国・新橋完成式典 Ⅱ  2012.05.31.

    水音が遠ざかる音に反して、楽の音が賑やかになった。
    花籠の周囲を寿ぐように紅白の二匹の獅子が踊る。
    陛下が対岸を渡るまでの間、民が飽きない配慮らしい。
    密かに妃が飽きない配慮のほうが強いかもしれない。

    獅子舞を見る楽しげな子供たちの様子に、夕鈴は微笑んだ。
    (・・・・本来なら、私もあちら側で楽しんでいるのにな。)

    陛下の渡る対岸にも同じ二対の獅子がいるらしい。かすかに重なる楽の音で、それが窺えた。

    『夕鈴様。大丈夫ですか?』
    覗き窓から水色の式典用女官服が見えた。
    花籠に乗ったままの夕鈴を気にして、女官長が声をかけたのだ。
    『大丈夫よ、女官長。陛下は無事、対岸へ着いたかしら?』
    『はい。ご無事にお着きのようでございます。』
    『夕鈴様。もうしばらくご辛抱を。そろそろ合図が来ると思われます。』


    『・・・夕鈴殿。鏡の合図が出ました。花籠が動きます。お気をつけ下さい。』
    緑の官服が見えた。李順さんだ。

    いよいよ式典が始まる。
    花籠に乗った夕鈴に緊張が走る。鳴り響く銅鑼の音を合図に流れるように花籠が進んだ。


    ☆ 白陽国・新橋完成式典 Ⅲ  2012.05.31.

    (・・・これが陛下が作った新しい橋)
    足元は堅牢な黒い石を複雑に組合わせ、しかし硬い石を使っているであろう表面は、細かい刻みが模様のように全体に施されている。これならば、雨で滑ることもなく実用的だ。
    花籠が前後に揺れないことを考えると限りなく水平な造りの設計になっていることが伺える。橋幅は広く荷車二台が楽に交差できそうだ。
    対して、橋の欄干は白い石の見事な透かしが全面に施され、百花繚乱の華麗な透かしから足元と同じ黒い石が覗く造りになっている。
    諸外国の商人も通過するであろう、その橋は確かに国力を示すほどの見事な出来栄えであった。

    石工職人の見事な透かしに飽きることなく眺めていた夕鈴は、花籠が静止したのを気づかなかった。

    『夕鈴様、もうすぐ陛下がお越しです。花籠からお出になってください。』
    女官長の合図で花籠の扉が開け放たれた。
    女官長に手伝ってもらいながら、ようやく夕鈴は花籠から開放された。

    ようやく現れた狼陛下唯一の妃に、その場に居た者、すべてが釘付けになる。

    風に孕み幾重にも重なる鮮やかな深紅の衣装。
    妃の白い肌を引き立てる衣を、精緻に施された金糸の鳳凰の刺繍が舞う。
    川風に乱れぬように計算され、いつもと違い高く結い上げられた金茶の髪は、陽に当り金色に輝く。
    涼やかな音のする金の歩楊は風に揺れ音を奏でていた。
    それらは、夕鈴にとても似合い彼女を引き立てていた。

    ようやく花籠から開放された夕鈴は、御簾越しでない景色をようやく楽しめた。
    橋の中央にある川上、川下側に正方形にせり出したこの場所は、他の場所とは造りが違っていた。

    川上、川下に向かっている手すりに、それぞれ二頭の龍の彫り物が施してあり、睨みをきかせていた。ちゃんと龍玉まで持っている。
    ちょうど四頭の龍が橋を守っている形である。これがこの橋のシンボルになるのだろう。


    ☆ 白陽国・新橋完成式典 Ⅳ  2012.05.31.

    『夕鈴殿、陛下です。』
    李順さんの声に、慌てて拱手する。

    夕鈴が来た方向と反対側の方角から
    黒毛の愛馬・黒龍に乗った黎翔が近づいてくる。
    着ている陛下の衣装は、夕鈴と同じ深紅。
    黎翔の二つの瞳の色。
    豪奢な衣には、四神が白金糸の精緻な刺繍で施されていて、馬上で宙に舞う。
    夕鈴と完全なる一対であった。


    『待たせたな、夕鈴。』
    『お待ちしていました。 陛下。』

    黒龍から降りると夕鈴の手を取り、川上のほうへと向かう。
    いつの間にか、祭司が王と妃を待っていて、川上に向かって橋に祈りを捧げた。

    祭司から小箱が王に手渡され、黎翔は夕鈴と向かい合う
    『夕鈴、銅鑼の音が三度鳴ったら、この箱を開けてくれ』

    黎翔から橋へ祈りの寿ぎが紡がれる。
    王の声が止んだとき、銅鑼が三度空に響いた。

    黎翔の手元にある小箱を夕鈴が開ける
    中から二匹の薄紫の蝶が空に舞い上がった。
    王と妃の蝶は、絡み合いながら空へ舞ってゆく

    王の蝶が舞い上がった瞬間、いつの間にか皆の手にあった小箱が開かれ一斉に蝶が飛び立つ。

    蝶が放たれた瞬間
    王の瞳は、嬉しそうに輝く妃の顔を見ていた。





    『これで式典は終了だよ。ゆうりん。』
    空の小箱を祭司に返しながら、小犬陛下が耳元で囁く。
    びっくりして陛下の顔を見ると
    すごく嬉しそうなニコニコ笑顔の小犬陛下があらわれていて




    そのまま愛馬・黒龍へと夕鈴をいざなう。
    『皆、大儀であった。これにて式典を終了する。』
    『李順。』
    『民に妃を見せる為、夕鈴とともに先に王宮に帰るぞ』
    『お待ち下さい! 陛下っ!!』
    『民の期待に答えねばな。』

    『方淵!』
    『手はずどうり、道を開けさせろ』
    すでに馬上の夕鈴は、陛下にしがみつくしかない。

    今来た道を全速力で駆け抜ける。
    疾走する黒龍の背で一対の深紅は、民の目にどのように映ったのか?



    ー白陽国・新橋完成式典・完ー


    ☆ お忍びで・・・  2012.05.31.

    昼間、式典のあった橋の両岸に並ぶ屋台を眺めながら
    人ごみを縫うように、二人は手を繋ぎ歩く。

    『こんなに人が居たんじゃ、はぐれたら見つからないよ。』

    すでに夕鈴の片手には、李翔の買った出店の食べ物が抱えられているが、握っている手は李翔から離してもらえない。

    昼間、黎翔として二人で参加した橋も今は綺麗に篝火が焚かれ、水面に姿を映している。

    『待って下さい。へ・・・李翔さん。』
    結局、夕鈴もそれなりに久しぶりの下町の空気を楽しんでいた。
    『ごめん。夕鈴、歩くの早かった?』
    『・・・それとも、欲しいの見つけた?』
    『そうじゃなくて、李翔さん。もう、これ以上私持てません!!』
    人ごみの中、二人は立ち止まる。

    『んー困ったなぁ。』
    (ぜんぜん困ってるように見えないんですけど)

    李翔は、黎翔の瞳で人を探す。
    探していた人物が、李翔と目が合ったとたんビクリとした。

    『・・・浩大。』
    『コレを持て』
    いつの間にか近くに来ていた浩大に、夕鈴の荷物をすべて李翔から押し付けられた。
    『そりゃないよ。李翔様』
    情けない声に浩大が、少し可哀想になる・・・も
    つかの間
    『・・・コレ食べていい?』
    『全部食べていいが、食べかけはやらん。』
    (・・・・・////!!)

    浩大に向けていた視線を夕鈴に戻す
    『これで軽くなったね、夕鈴。・・・次は、どこに行く?』
    浩大を残し、また人ごみを縫うように、二人は手を繋ぎ紛れた


    ☆ 君が、勝てない小犬の僕で  2012.06.01

    『李翔さん、帰りましょうよ!』

    僕の手を引っ張りながら、今晩、何度目かの帰りを促される

    『もう少しだけ・・・ね。大丈夫だよ。夕鈴。』

    祭のような露天商めぐりが楽しくて、いつの間にか長居をしていた。

    僕の話は、ぜんぜん君は聞いていなくて・・・
    せっかく二人で来ているのに、君は帰ることばかり。
    繋いでいたはずの手も、なんだか冷たい。
    君の心は僕に無いとは思いたくなくて
    ぎゅっと握り返して、君にもう一度お願いをする。
    君が、勝てない小犬の僕で・・・。

    『もう少しだけ。』


    ☆ 無花果-いちじくー  2012.06.01.

    『アレ、美味しいんですよ』
    君が指差すその先には、甘い香り。
    砂糖をまぶしたボールみたいな揚げお菓子

    『ここのは、すっごく美味しいんです。』
    『ちょっと変わってて、よそでは食べれないんです。』
    露天の行列の最後尾に、すぐに二人で並んだ。

    立ち止まって行列に並んでいたら
    『 危ない!』
    通行人が夕鈴にぶつかりそうになり、夕鈴を抱き寄せる。
    『夕鈴、危ないから気をつけて!』
    立ち位置を入れ替えながら、肩を寄せた

    さほど待たず手に入れたお菓子の中には、甘酸っぱい無花果の甘露煮が入っていた。
    指についた砂糖を食べる。
    ついでに、夕鈴のも食べたら、真っ赤な顔で怒られた。


    ☆.びいどろ  2012.06.01

    ・・・ぱつん。・・ぽっぺん。
    不思議な音がする
    夢中になっている夕鈴がすごくかわいい
    ほっぺたが膨らんでまるで子供のよう
    僕の知らない子供の頃の君を見た気がした。

    買ってあげようとしたら
    『無駄遣いしないでください。』
    と怒られた。


    ☆【詩文】「わたあめ」恋人の日限定コミュ 2012.06.12.

    夜店で買った
    わたあめを
    きみは
    美味しそうに
    食べる

    君の
    鼻先についた
    わたあめの味は
    きみのように
    ふんわりとして
    僕の口の中で
    甘く溶けた

    ☆小犬のささやかな幸せ Ⅰ 祝!恋人の日  2012.06.11.

    先ほどから、ふくれっつらの小犬が隣を歩く
    なぜって
    さっきから、
    私が断ってばかりだから

    小犬の要求は呑めない
    (だって、私は臨時なのよ)
    (本気になんて、させないで・・・)

    横目で苦笑しつつも
    ため息しか出てこない
    目に鮮やかな夜市の出店は
    にぎやかな輝きと共に
    人々に輝きをふりまく

    特別なことなんて
    無くてもいい
    閉じ込めた思いに
    気づかないで・・・
    揺れる瞳で
    喧騒の中をそぞろ歩く
    貴方の辿る道を
    私は必死でついてゆくから


    僕は、真剣に今日の思い出になるものを探している
    君の好みはいまひとつわからない。
    さっきから、君は断ってばかりだ。
    ついつい頬がふくらんでしまう。
    いつもこんなに近い距離に僕らはいるというのに・・・。
    何一つ君が分らなくなる。
    距離が近すぎるせいなのか?
    どうか、僕の気持ちに早く気づいて!


    ☆小犬のささやかな幸せ Ⅱ  2012.06.23.改

    「・・・あ。」

    先を進む僕に君の声が聞こえた。
    何かを見つけたような小さな声を僕は聞き逃さない。
    「どうしたの?」
    と彼女に聞くと。
    「あれ見たいです!」
    人ごみを避けるように、小さなこじんまりとした露天があった。
    なにやら、商品なのだろう。
    夜道を照らす提灯の明かりに照らされ、きらきら素敵に輝いている。
    夕鈴の興味をひいた物に強く興味を引かれ二人はお店に向かった。

    商品は、形は違えど同じものだという。
    異国の珍しいものだと恰幅の良い客うけする笑顔の店主はそう言った。
    「万華鏡」というらしい。
    何故か、万華鏡の商品の中に茶碗に挿した花が一輪生けてあった。
    店主はかわるがわる夕鈴と僕を交互に見た
    何かに納得するようにうなづくと・・・・
    店の奥から、商品を取り出し、同じものを僕らに手渡した。
    細工の精緻なそれは、明らかに店先の商品より高価な品だった。
    形も違っていた。
    店先の商品は、ただの円筒形なだけの商品で、装飾に綺麗な紙が巻かれていた。
    渡された商品は、円筒形の片側に、丸い水晶球がはめ込まれていた。
    円筒形の筒の部分は、銀と紅い貴石で精緻な装飾がされている。
    明らかに、形も細工も違うのに、同じ万華鏡なのだという。

    「球体万華鏡です。お嬢さん、覗き穴から水晶球を通してそこのお花を見てごらんなさい。」
    店主の言うがままに夕鈴は一輪挿しの花を覗き見る

    「わぁ! すごい!!!」
    「李翔さん、これすごいです!!」
    夕鈴の万華鏡の中には、たくさんの花々
    まるでお花畑に居るような光景に、夕鈴の瞳が輝いている。

    その夕鈴をかわいいなと思い眺めていると
    突然、店主から袖を引かれた
    そのまま小声で、隣の彼女を万華鏡越しに見ろという。
    いわれるがまま覗くと、

    「!!!!」
    見えない幻のしっぽが、高速でぱたぱたと振り出した。

    「二つでいくらだ?」
    「コレをもらおう!!」
    そのまま李翔は、値切りもせず店主の言い値で二つ買い、いそいそと大事そうに懐にしまった。

    急な展開についていけない夕鈴だけが、ぽつんと取り残された。



    ー小犬のささやかな幸せ・完ー


    ☆【詩文】「心の万華鏡」恋人の日限定コミュ 2012.06.12.

    後宮の景色を
    水晶球に映して
    次々と変化する筒の中の景色を
    飽きずに夕鈴は、くるくると眺める

    陛下から
    いただいた
    あの日の夜のプレゼント

    水晶球が作る
    夢の世界に
    浸りながら
    巡る世界に浸っていたら

    急に
    陛下がたくさん現れて
    心臓が
    跳ね上がった


    ー『白陽国・新橋完成式典 -橋シリーズー』完ー

    ※長文お読みいただきまして、ありがとうございます。
                            2012.10.03  .さくらぱん