花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【書庫】黒龍「君に花束を!」

    こちらは、旧パラレルコミュニティに、素敵な挿絵を描いてくれた天沢真さんに捧げた作品です。
    瀬津音さんのファイナル・限定トピック「君に向かって走れ!」に素敵な扉絵を天沢真さんが描いてくれました。
    山百合の花束を抱えた黎翔と、それに驚いた夕鈴。
    三枚組みの豪華な扉絵です。

    そのイラストからの派製品となります。
    天沢真さん、ありがとうございました。

    素敵な三枚組みイラストは、白陽国SNS地区で見ることができます。
    天沢真さんのご自宅か、旧パラレルコミュニティ限定トピック「君に向かって走れ!」で見てくださいね。 






    【中編】黒龍『君に花束を!!!』1

    完【中編】黒龍『君に花束を!!!』2
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    【中編】黒龍『君に花束を!!!』1





    初夏の爽やかな森を
    黎翔と黒龍は、駆け抜けていた。
    木漏れ日は、キラキラ…と大地に煌く彩りを添え
    木々は、若葉の色を濃くして涼しげな木陰を作る。
    黒龍で駆け抜ける景色は、目まぐるしい変わり行く
    流れゆく景色は…照り葉の色も美しく黎翔の目を楽しませた。


    久しぶりの一人での遠乗り。
    全速力で森を黒龍と駆けていく。
    心なしかいつもより楽しげに見える黒龍。
    軍馬として、人を背に乗せて思いっきり走ることを楽しんでいるようだった。

    いつもの遠乗りなら、夕鈴を同乗させるのだが…今日は黎翔一人だった。
    一人の気軽さでグングンと黒龍のスピード上げる黎翔。
    一人で見る景色は、いつもと違ってスピードが速く、自由な開放感に満ち溢れていた。

    疾走する黒龍は、森に高々と蹄の音を響かせ、木々を抜ける。
    漆黒の黒龍の身体は、輝く木漏れ日の光を照り返して、しなやかな筋肉が躍動し走り続けていた。。
    軍馬特有の逞しさで速さを増す黒龍の残像。
    後方へたなびく漆黒の鬣。絹糸のような尻尾が、後方で躍る。

    翻る黎翔の漆黒の外套。
    人馬一体となった、黎翔と黒龍
    流れるように森を駆け抜けていくその姿は、まるで、黒い風のようだった。

    逞しくしなやかで有りながら優美なその姿。
    代々王家が、愛馬として来た黒龍の血筋。
    王の愛馬として選ばれてきた理由がそこにはあった。

    黎翔の騎乗眼鏡越しの視界は、疾風のごとくひた走る黒龍の背で
    恐ろしいほどの速さで後方に流れゆく…

    緑萌ゆる王領地の森。
    一人での遠乗りを勧めたのは、夕鈴だった。

    「陛下、いつも私のペースに合わせての遠乗りは、黒龍が可愛そうです。」
    「せっかく、どの馬よりも早く走れるのに・・・」
    「今日は、思いっきり黒龍と遠乗りしてきたらいかがでしょうか?」

    『えーーーっ。夕鈴と一緒がいい。』

    唇を尖らせて、文句を言い出す小犬陛下に、きっぱりと夕鈴は、返事した。
    「ダメです。」

    「丁度、午後は、私も老師のところにお后教育がございますので、自室を留守に致します。」
    「もちろん、今日は遠乗りにもお付き合いできません。」
    「そのかわり、お帰りになりましたら、お茶を楽しみましょう。」
    「美味しいお菓子を用意して、お待ちしていますね。」

    そう言って送り出してくれた夕鈴。
    森を駆け抜ける黎翔は、開放的な一人の時間を過ごせたことに、夕鈴に感謝していた。

    香りよい緑の草葉の匂いを嗅ぐ。
    黒龍の背に黎翔は揺られながら、優しい愛しい人の笑顔を思い出すのだった。



    ・・・・・続く


    2013年
    03月21日
    14:36 続きを読む

    完【中編】黒龍『君に花束を!!!』2

    ・・・・続く

    いつしか、王領地のはずれにある小川まで黒龍を走らせていた。
    咽喉の渇きを覚えて黎翔は、小川の清水を飲んだ。
    しっとりと、汗ばむほどに夢中で黒龍と森を駆け抜けた。
    黒龍も黎翔の傍らで、清水を飲む。
    気だるい疲労感が心地良かった。
    爽やかな風が、小川で冷やされ黎翔の頬を撫でる。
    火照る身体に、冷たい風は、心地良かった。

    黎翔は、柔らかな若草に寝転び、空を見上げると、
    真っ青な空に白い雲がほっかりと浮かんでいた。
    ゆっくりと移動する雲をぼんやりと眺める。

    いつぶりだろうか?
    一人で、こんな風に過ごした記憶は、最近では無かった。

    木々の枝葉が生い茂り、柔らかな木陰を作る。
    さやさやと、葉擦れの音がする。
    木漏れ日のキラキラとした眩しさ。
    爽やかな薫風・・・・

    音も無く、一匹の蝶が舞い
    小鳥たちが歌う
    黒龍の静かないななき・・・・草を食む音


    ・・・・・・・・静かで穏やかな森の時間。

    いつしか黎翔は、心地よい眠りに夢を見ていた。
    黎翔は、大輪の白い花を抱えて、夕鈴に渡していた。
    花よりも美しいその笑顔。艶やかで鮮やかな夕鈴の微笑み。
    その笑顔をもっと見たいと黎翔は思った。


    ・・・・・ぱちん。

    うたた寝だったのか、さほど時間がたっていなかったが黎翔は、夢の余韻をひきずっていた。
    夢であっても、もう少し彼女の笑顔を見たいと思ってしまった。
    見渡せば森の中、そこには夕鈴は居ない。

    夢の彼女の笑顔を思い出す。
    ビックリしたけれど、とても嬉しそうな良い笑顔で笑ってくれた。
    黎翔が見たことの無い素敵な笑顔だった。


    ふと・・・・気付く。
    あの夢の中で嗅いだ香りに・・・・・
    香りの先に、視線を辿らせると
    木々に隠れるように咲誇る大輪の山百合の花。
    幾輪もの花を見事につけた美しい白百合が咲いていた。
    よく見ると、森のあちらこちらに見事な山百合が咲いている。

    (夢の花は、山百合だったのか。では、この花を君に持ち帰ったらあの笑顔をもう一度見れるのだろうか?)

    夢の中のことなのに、目覚めてもなお鮮やかに蘇る夕鈴の笑顔。
    自分だけに向けられたその笑顔に、黎翔は愛しさに胸を焦がす。

    そうと決めたら、決断は早かった。
    指に着く雄しべを丁寧に取り除き
    懐の小刀で山百合を花弁を傷つけないように手折る。
    複数の大輪花が咲誇る見事な山百合の花を、幾つも本数を合わせて
    黎翔は大きな大きな花束を作った。

    黎翔はその花束を抱えて、今度は来たときと違い 花弁を傷つけないように慎重に黒龍を走らせる。

    今、君に届けに行くよ。
    君の笑顔をもう一度見たいんだ。
    だから、お願い。
    夢の笑顔をもう一度私に見せてくれ!!!!

    純白の穢れない山百合を抱えて、黒龍の手綱をとる黎翔。
    その紅の瞳には、鮮やかに微笑む愛しい人の未来の笑顔が映っているのだった。


                       ―完―


    2013年
    03月21日
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