花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    完【書庫】黒龍『キミに会いに行くよ!』

    完【長編】『キミに会いに行くよ!』  last up 2013.03.14. 
    ※白友・瀬津音さんへの贈答品
     
    2013.03.14.に白陽国SNS地区・パラレルコミュで行なわれました。
    一日限定トピック『君に会いに走れ』の投稿作品。

    深夜、別れを決意した夕鈴。
    諦めきれない黎翔のとった行動とは・・・
     

           上から順にお読みください。

     
    2013.03.13. 【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』1   さくらぱん挿絵付き(微大人味)

    2013.03.13. 【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』2

    2013.03.13. 【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』3

    2013.03.13. 【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』4

    2013.03.14. 【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』5

    2013.03.14. 【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』6

    2013.03.14. 【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』7   さくらぱん挿絵付き

    2013.03.14.完【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』8
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    【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』1

    静かな・・・静寂に包まれた後宮の一室

    降るような綺麗な星たちの囁きさえ聞こえるようなそんな夜

    夕鈴は、隣に眠る黎翔の寝顔を見つめる




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    ーーーーもう、これで逢えない。

    夕鈴の決意は、固かった。

    黎翔に悟られぬよう準備を進めて来た

    今夜、私はここを去る。

    王族特有の美しい顔(かんばせ)

    柔らかな黒髪

    漆黒の睫が頬に影を作る。

    規則正しい寝息が聞こえる。

    蘇る愛しい人の言葉

    『初めて知ったよ。愛する人と共に眠ると、こんなにも安眠できるんだね』

    安らかな夜を2人で初めて過ごした朝のこと

    今でも、鮮やかに蘇る

    はにかむ陛下の笑顔を今でも、はっきりと思い出せる

    夕鈴は、陛下の寝顔とぬくもりを忘れないように、心に刻む。

    夜明けは、近い。

    貴方に知られないように抜け出す時はーーーーー今。

    震える唇で、黎翔の唇にかすめるような口付け。

    心の中で、そっと黎翔に『ーーーさよなら』をする。

    『お元気で、陛下。ずっとお慕いしております。どうかお幸せに』

    気配に敏感なはずの黎翔は起きない。

    未だに、けだるい熾き火の残る身体を無理やり起こして

    寝台の床に落とした、紅蓮の夜着を身に纏う・・・・

    冷めやらぬ激しい陛下との恋の色のような紅蓮の夜着

    絹仕立てのそれは、冷たくこれから封印する恋のよう。

    無常にも、夕鈴から黎翔のぬくもりを奪い去る

    そのまま、何も考えぬように、そっと黎翔から離れた。

    後ろ髪を引かれつつ・・・静かに離れる夕鈴に、背後から黎翔の寝言。

    『・・・・・ん。・・・・・夕鈴。愛しているよ。』

    その言葉に、振り向いた夕鈴の瞳には、一粒の涙。

    黎翔が未だ寝台で深い眠りについているのを、確認すると、そっと部屋を出て行った。

    何事も無かったかのように、星が瞬く・・・・

    その日から、狼陛下の唯一の寵妃、夕鈴は後宮から姿を消した。


    ・・・・続く



    2013年
    03月13日
    08:27

    【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』2


    ・・・続きです。

    『ーーーーーー何故だ!!!夕鈴!!!』

    次の日、黎翔は荒れ狂う。

    裏切られたかのような激しい胸の痛み、それでも尚、彼女への愛しさが募る

    混沌とした胸中。

    ガシャーーーーン!!!!
     
    薙ぎ払い、割れた花瓶。

    嵐が来たかのような荒れた室内に、李順は、嘆息する。

    その李順に黎翔の怒りの矛先が向いた。

    愛しい人の喪失に、気付いた黎翔は、行き先を知っているであろう李順を
    問いただす。

    『言え!!!夕鈴の行き先を!!!』
     
    両刃の剣の切っ先が、李順の咽喉に向けられた。

    荒んだ紅い二つの紅玉の瞳。

    血に飢えたような狼のような・・・・

    紛れも無く、孤高の狼陛下は、裏切られた愛に飢えていた。

    一筋の血の道が、李順の咽喉を伝う。

    黎翔の嚙みしめた、口腔にも鉄錆びの味。

    (ようやく、君と心が通じ合えたというのに・・・何故私の下から去る、夕鈴。)

    夕鈴への愛しさは、募るばかり・・・

    愛することを覚えたばかりの狼は、この痛みを鎮める術をしらなかった。

    (夕鈴、君は、いったい何処に居る?)

    朝一番で、駆けつけた下町の夕鈴の実家にも居なかった。

    手紙一つ・・・さよならさえ言わず煙のように消え去った彼女。

    暗い焔で、側近を見る。

    そんなことが、できるのは、ただ一人しか考えられなかった。


    ・・・・・続く



    2013年
    03月13日
    08:48

    【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』3

    ・・・・続く

    『吐け!!!李順!!!夕鈴は、何処に居る?』

    確信とも取れる質問。咽喉もとの刃(やいば)に

    ひるみもせず李順は、答えた。

    「お教えできません。夕鈴殿の望みです。」

    『何故だ!!!主君が問うているのに!!!』

    「夕鈴殿のご意志だからです。」

    「恐れながら、夕鈴殿が姿を消された訳をお考え下さい。」

    「陛下の御為です。」

    「自らの意思で、身をお引きになったのです。」

    「後ろ盾も何も無い無位の妃よりも、別の正妃をと望まれました。」

    「私では、陛下のお役にたてないからと悩まれていました。」

    「そんな夕鈴殿を探してどうするおつもりですか?」

    『役に立たないなどと、誰が決めた!?』

    『あれは・・・夕鈴は、傍に居てこその価値であるのに・・・・』

    滲み出す、紅い双眼。

    言い知れぬ悔しさと夕鈴の愛しさで、涙が零れる。

    『・・・・私の為を思うならば、離れてはならぬというのに・・・・』

    黎翔の胸中を思い、李順も瞳を曇らせた。

    「ならば・・・・早く、白陽国の憂いを取り除き、夕鈴殿を迎えに行ってください。」

    「夕鈴殿の意思は固く、今、居場所をお教えしても説得は無駄に終わるでしょう」

    「一刻も早く、反乱軍を治めるのです。」

    「陛下、それしか夕鈴殿を説得できません。」

    「正妃に、夕鈴殿を望むのならば・・・一刻も早い、国の平和を!!!」


    李順の咽喉から、ゆっくりと刃が外された。

    黎翔は天を仰ぎ、瞑目する。

    心に描くのは、鮮やかな笑顔。

    優しい唯一の愛する人。

    ------夕鈴。




    黎翔は、李順を見た。

    『討伐軍を編成しろ。早急だ。』

    『反乱軍を鎮圧し、夕鈴を迎えにいくぞ。』

    「ーーーー御意。」

    意思の固い二つの紅玉は、未来に輝く。

    この腕に、愛しい人を再び抱(いだ)くために黎翔は、走り出した。


    ・・・・続く



    2013年
    03月13日
    11:21

    【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』4

    ・・・・続きです。

    夕鈴は、憂いていた。

    はしばみ色の瞳が、翳る。

    彼女が、後宮から去ってすぐのこと・・・

    風の便りに陛下が、反乱軍を治めるために

    討伐軍を率いて、出兵されたと聞いた。

    ーーーーそんな話は、後宮にいた頃は、知らなかった。

    陛下自らが、鎮圧せねばならないほどの大事なのであろうか?

    自らが、陛下の下から去ったというのに・・・・

    未だ愛する陛下の身が案じられる・・・・

    夕鈴は、空を見上げた。

    暗い色した曇天の空の色。

    鉛色の空は、不安を誘う。

    胸の奥が痛い。

    (会いたい)と思う

    (逢えない)と思う

    心は、引き裂かれたように痛かった。

    曇天の空に続く・・・・あの向こうに陛下がいる。

    誰よりも、愛していたから身を引いた

    きっと、探すだろうと思っていたから身を隠した。

    月日は流れ、もうすぐ閉ざされた雪の季節。

    はらり・・・・・一片の結晶花が、夕鈴の手のひらに落ちた。

    氷で出来た花びらは、すぐに手のひらの上で消えた。

    我侭な心は、陛下へと駆ける。

    どうか、ご無事で・・・・・

    祈る気持ちは、嘘では無かった。

    溶ける祈りに答えるかのように、結晶花が降る。

    冬の季節の到来だった。


    ・・・・続く。


    2013年
    03月13日
    12:23

    【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』5


    ・・・続き

    東への反乱軍の討伐か終わったかと思うと、西へ・・・

    西への反乱軍の討伐か終わったかと思うと、北へ・・・

    北への反乱軍の討伐か終わったかと思うと、南へ・・・

    陛下率いる討伐部隊の出兵の噂を耳にするたびに、
    夕鈴は小さな胸を痛め・・・神に祈った。

    王都での華々しい戦場の鬼神の凱旋の噂に、
    無事を知り ようやく夕鈴は安堵する。

    そんな日々を過ごし、季節は移り変わる・・・・・

    幾度目の満月が新月へと変わり

    幾度目の朝と夜を迎えたのだろうか?

    夕鈴の隠れていた白陽国のはずれ・・・北の王領地にも春の訪れ。

    清らかな雪解け水が大地を潤し、川岸に満開の福寿草が咲きだした。

    いつの間にか、季節は目覚めの春。

    小鳥たちの喜びの歌が、聞こえ始める。






    ーーーーーーそんな時だった。

    夕鈴の耳に、陛下が正妃を娶られるらしいとの噂話を聞いたのは・・・・


    (・・・・・ああ、とうとうこの時が来てしまったのね。)

    忘れようとしていた陛下との恋が疼きだす。

    夕鈴の髪を、優しい春風が吹きぬける。

    忘れたくても忘れられないあの人との甘い記憶。

    日に透ける夕鈴の髪を好きだと言ってくれた黎翔との記憶が蘇る

    髪を優しく撫ぜる記憶。

    この吹く春風のような・・・・甘やかな思い出。

    明るく暖かな春の日差しは、よけいに夕鈴の心を悲しませる。

    春の光の中で夕鈴は、静かな涙と哀しみに染まるのだった。

    ・・・続く



    2013年
    03月13日
    13:47

    【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』6


    ・・・続き

    主の居なくなった後宮の一室。

    灯火も点けない寝台に、黎翔は居た。

    寝台の端に座り、部屋の主のものだった紅蓮の夜着を手にする。

    追憶の微かな残り香を手繰り寄せて、彼女を思い描く。
    滑らかな絹の手触りはあの日のままに…

    求めてやまない彼女を脳裏に描く…

    鮮やかに蘇る 柔らかな微笑み。
    …はしばみ色した大樹の瞳。

    …夕鈴。







    寝室の中央に飾られた、早咲きの白梅。
    残り香をかき消すような梅の香りが部屋に満ちる。

    どれくらいそうしていたことだろうか…

    微かな物音に、黎翔は瞑目していた瞳を開けた。

    『…李順』
    「また、こちらにいらしていたのですか!? ---陛下。」
    「もうすぐ夜が明けます。また、お休みになられなかったのですね。」

    紅蓮の夜着を見つめて、黎翔が呟く。

    『彼女が居ないのだから…仕方ないではないか…』

    紅蓮の夜着を、握り締めて黎翔はか細いため息をついた。
    凪いだ湖面のような瞳で、李順を見つめた。

    『約束は、果たした。』
    『李順…私は、正后を娶る。』
    『夕鈴は、何処にいる…!?』






    まもなく…
    朝霧の中…単騎で王都を駆け抜ける一つの影。

    風のように、駆け抜ける黒影は、真っ直ぐに北を目指していた。

    …続く。



    2013年
    03月13日
    13:47

    【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』7

    ・・・続き

    濁りない青が、伸びやかな大地に這うように咲き乱れる
    イヌフグリの青い花

    お日様の光を凝縮したかのような…
    輝く黄金色の蒲公英の花

    輝く美しの春の野原

    その野原を 疾く駆ける一騎の黒影
    力強い蹄で大地を蹴り上げ 駆け進む

    今キミに会いに行くよ

    この頬を撫でる 優しい春風のような
    暖かな春の日差しのような

    …夕鈴。

    キミに、もう一度会いに行くよ!!


    駆け抜ける大地は、キミに会える未来へと続く。

    大地の青よりも青い空。
    芽吹いたばかりの木々の芽は柔らかく
    目覚め始めた大地は輝きに満ちている。

    キミに会えたら、僕の気持ちを伝えよう

    …もう、二度と離さないと

    駆ける気持ちは、まだ見ぬ キミへと走りだす。
    弾み踊りだす心は、キミへと向かう。



    …やっと、会えるね

    …迎えに来たよ。夕鈴。 



     IMG_0431-1.jpg   IMG_0433.jpg 

    ・・・・続く

    完【長編】黒龍『キミに会いに行くよ!』8




    新しい何かが始まる予感。

    大地を響かせる蹄の音

    開け放した窓から、春の優しい沈丁花の高薫が薫る

    夕鈴の胸を高鳴らせる・・・この音は聞き覚えのある 黒龍の蹄の音。

    ーーーー陛下!!!

    隠れ家を飛び出し、春の野原を夕鈴は走る

    漆黒の黒影

    緋色の外套が翻る

    見覚えのある会いたくて・・・会いたくて・・・たまらなかった人。

    夕鈴の心から愛する人が、真っ直ぐに彼女へと駆けて来る。

    ーーーー春の耀く北の森。

    優しい春風が、吹きぬける

    夕鈴の瞳から、嬉しさの涙が零れ落ちる

    何故ここに、黎翔がいるのかということなんて考えさえも浮かばない。

    嬉しくて・・・・ただ、嬉しくてたまらなかった。

    あっという間に、夕鈴の近くまで来た黎翔は、転げ落ちるかのように

    黒龍から下り、夕鈴へと駆け走る。

    そのまま・・・夕鈴は、陛下の胸へと抱きしめられた。

    花咲き乱れる・・・光り溢れる春の野原の真ん中で抱きあう二人。

    抜けるような澄んだ青空の下・・・・

    ようやく2人は、再び出会う。

    『・・・・・夕鈴、会いたかった。』

    『心配していた・・・ようやく逢えた。』

    「陛下・・・ごめんなさい。」

    きつく抱きしめられて、身動きさえ取れない。

    震える陛下の声に、黎翔の心配の程が知れた。

    抱きしめる夕鈴も、懐かしい黎翔のぬくもりに

    黎翔の背をきつく抱きしめる。

    『ーーーーーー夕鈴。一度しか言わない』

    『私の正后になってくれ!!!』

    『私には、君しかいない』

    『君の憂いは全部取り除いた。』

    『誰にも、文句は言わせない!!!』

    『君の是しか受け入れない。』

    『私と共に白陽国を支えてくれ!!!』

    「・・・・・陛下。」

    『夕鈴・・・・黎翔だ。黎翔と今までどうり呼んでくれ。』

    『君が私の唯一の后だ。』

    「・・・・・黎翔様。」

    溢れる涙を拭いもせず・・・・夕鈴は大粒の涙を零す。

    『夕鈴・・・・愛している。返事は!?』

    耳元で囁かれた優しい黎翔の言葉。

    夕鈴が愛した優しい人の言葉に、震えが走るほど喜びに満ち溢れる。

    言葉にできず・・・・・こくんと夕鈴は、一つ頷いた。

    『夕鈴!!! ーーーーー我が后よ。』

    ようやく切れない絆でつながれた黎翔と夕鈴。

    求め合う口付けは、愛し合う恋人達のもの。

    雲ひとつ無い青空の下

    夕鈴の新しい扉は開かれた

    世界が、この一瞬で極彩色に変わる。

    『さぁ・・・夕鈴、帰ろう!!!    王宮へ!!!』

    信頼と愛に溢れた紅い瞳が、夕鈴を見つめる。

    晴れやかな2人の笑顔。どちらとも無く微笑み見つめ合う。

    今まで流してきた2人の涙の分、幸せになろう・・・・

    囁かれた言葉に、再び涙が零れる。

    馬首を変え、王宮へと向ける黎翔。

    黒龍の背に乗り、駆け抜ける二人の見つめる眼差しの先はただ一つだけ。

    同じ未来。

    もう離れることは二度と無い。

    強い絆で結ばれたのだから・・・





    ―完ー



    2013年
    03月14日
    18:43




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