花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    ★完【長編】『コミュ解禁・黎翔の優雅な朝Ⅳ』 ※現代パラレル





    ザワリ…と背が、逆立つ

    「……ぅ。」

    夕鈴は、破裂しそうな心臓を抑えて
    …されるがままに黎翔の行為に身を委ねていた。




    夕鈴の震える指先を僕は手離せない。

    傷口をザラリと舐め上げると、彼女の大きな震えが指先から、僕へと伝わる。

    君の温もりの欠片だったものは、甘美な味がした。

    もっと味わいたくて何度も舌を這わせ肌をナゾる。

    いつの間にか、君は羞恥で美しく染まり零れ落ちた涙が、僕の頬を濡らしていた。




    「…黎翔さまは、いじわるですっ。…」

    「…さっぱり、私の話を聞いてくださらないっ…」

    「…今も、イヤと言ったのに…こんないじわるを…」



    『…夕鈴、それは違う!』

    ガタンと、黎翔が座っていた重い椅子が、音を立てた。

    大きな音に夕鈴は、驚く。
    はしばみ色の大きな瞳が見開いて
    椅子から急に立ち上がった僕を見つめていた。

    睫毛に残る涙の雫が、ホロリと頬に落ちて、ゆっくりと滑り落ちていった。


    まだ、掴まれたままの左手を引き寄せて、
    夕鈴を僕の腕の中へ閉じ込める。

    かすかな抵抗さえも許さない。

    キツく強く抱きしめる

    「はぅ…」

    「黎翔さま…何を…」

    君の苦悶の声が、腕の中から聞こえた。

    『夕鈴、それは違う!いじわるなんかじゃない!』

    『君は僕の心配さえも、いじわるというのか?』

    「黎翔さま…ごめんなさい…」

    『ーーーー君が、好きだ。夕鈴。』

    『あまり僕を心配させないでくれ!!!』

    黎翔の囁きは、溜め息混じりになり語尾がかすれた。

    (こんな傷でさえ・・・あなたは、心配するの?)

    先ほど、傷口から、夕鈴に浸み込んだ黎翔の熱が
    夕鈴の胸を締め付ける

    夕鈴の心が、…ツキンと…痛む。

    黎翔によって強く抱きしめられた身体の痛みは、黎翔の強い想いの表れなのか

    紅く燃え上がるような二つの瞳に、囚われたまま…

    主人であるはずの黎翔の突然の告白に、
    夕鈴は、身体が強くうち震えるのだった。

    黎翔は、動揺し震える夕鈴を更に引き寄せ、
    彼女の柔らかい口唇に自らの唇を重ねていった。

    テーブルに挿したピンクの薔薇が、二人に恥じらい
    朝露が、花びらを伝い落ちていった…

    穏やかな朝の光りが部屋に差し込めていた。

                          ―完―
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    ★【長編】『コミュ解禁・黎翔の優雅な朝Ⅲ』 ※現代パラレル





    「黎翔さま、手を離して下さいませ。」

    『ダメだ。理由を聞いていない。』

    「離して…」

    黎翔に、掴まれた手首は、びくともしない。

    立ちすくむ夕鈴は、
    ダイニングテーブルの椅子に座る黎翔の顔を見つめる

    首筋まで朱に染まる顔、涙目で滲むはしばみ色の瞳は、黎翔の紅い瞳を見る。
    怖いくらいの黎翔の強い視線が夕鈴を見ていた。
    絡み合う二人の視線。・・・一瞬、時が止まった気がした。

    夕鈴の心まで 見透かすかような鋭い視線に、彼女はたじろぐ。

    『薔薇のトゲに引っ掛けたんだね 』

    黎翔の有無を言わせぬ断定的推測の言葉に、夕鈴は黙ってコクリと頷いた。

    『夕鈴、君用に買った薔薇用の鹿皮手袋を、なぜ使わなかった?』

    「棘の少ない薔薇一輪だけだから・・・大丈夫かなと・・・」

    『以前も注意したけど、怪我をするからね。』

    『きちんと、使って。』

    黎翔は、夕鈴の左手の薬指の絆創膏を捲(めく)り始めた。

    「黎翔さま、何を・『夕鈴、傷を見せて・・・』」

    「黎翔様、もう血は止まりました。」

    「確認せずとも・・」

    「・・・・たいした傷では・・・・・・「ーっ!!!」」

    すべての絆創膏が剥がされ、最後の時に傷が少し開いた
    ぴりっとした痛みに、夕鈴は、声無き声でうめく。

    治りかけの傷に新たな血真珠

    夕鈴の言っているほど浅くも無く
    傷跡が残るほど深くも無い傷

    白い指先に残る一本の小さな赤い傷跡
    そこから滴る紅い血潮

    みるみる膨れ上がる紅真珠

    『夕鈴、この傷は君が言うほど浅くは無いよ』
    『消毒しなくては、ならないな・・・』

    「あっ!!…」

    黎翔は、夕鈴の白い指先を含み、指先の紅真珠を、
    ちぅ…
    と舐めとった。

    『黎翔さま…止めて下さいっ…』

    夕鈴の声も空しく、そのまま小さな傷に沿って、
    黎翔の熱い舌先が傷口をナゾる。

    ・・・ピリリとした、痛みに震える、指先。
    首筋まで朱に染まる夕鈴が、痛みで苦悶の表情に・・・
    今にも零れそうな涙が、はしばみ色の瞳に落ちていた。

    左手の薬指は、人の心臓に一番近いという…
    小さな傷口から、黎翔の舌先の熱が浸み込んでゆく
    夕鈴の指先の熱は、そのまま彼女の心臓に届いてゆく。


    ・・・続く

    ★【長編】『コミュ解禁・黎翔の優雅な朝Ⅱ』 ※現代パラレル




    『黎翔さま、コーヒーをお持ちしました。』

    落ち着いたいつもの朝食が終わり、
    黎翔に、食後のコーヒーが夕鈴から差し出された。

    フワリと香るコーヒーの香りが心を穏やかにさせる。

    今日は、マンダリンのブラック
    少し、薄めのアメリカンが身体に優しい。
    僕の好みを少しづつだが、この3ヶ月間で分かってくれていた。

    器まで、ほんのりと暖かい。
    冷めないちょっとした工夫なのだろう。

    この夕鈴の細やかな女性らしい気遣いが、私の気を惹く。

    コーヒーをテーブルに置き、手を下げようとしたその時
    夕鈴の手首を掴み、私は彼女を捕らえる。

    『・・・夕鈴。』

    『どうしたの指先?。』

    朝食のあいだ中、気になっていた・・・・君の指先の絆創膏。
    昨夜には、無かった左手の薬指。

    「・・・・ぁ。」

    夕鈴は、いたずらが見つかった子供のように、
    指先を丸め
    僕の視線から絆創膏を隠す。

    朝露のついた薔薇の花
    もしかして・・・

    『夕鈴、絆創膏どうしたの?』

    再度、僕は聞いてみる。

    「~~~っ」

    顔を真っ赤にし、言いどもる夕鈴。

    もう一度、黎翔が詳しく尋ねる。

    『いつ、怪我したの?昨日は無かったよね。』

    『隠さないで・・・僕に答えて。』

    心配でたまらないといった黎翔の気遣いの視線が、夕鈴を射抜く。

    ーーーーー隠し事は、許さない。

    握られた手首が熱い。

    「たいしたことないんです。ちょっと、ひっかけてしまって・・・」

    『・・・・夕鈴。』

    ちらりと、黎翔は、朝露のついた薔薇に視線を走らせる。

    ますます、黎翔の眉間の皺が深くなる。

    夕鈴を見つめる視線が、すべてを話せと伝えている。

    有無を言わせない支配者の視線。

    (・・・・いつもそう。私が何も言わなくても、すべて黎翔さまは悟っている。)

    ふぅ・・・

    瞑目して、深い溜息をついた。

    黎翔さまが、心配するのを分かっていただけに、
    できれば知られたくなかった。

    (隠していたかったのに・・・。)

    悟られてしまった。

    もう・・・・・・隠しとおせない。

    夕鈴は、心の中で深いため息をついた。



    ・・・続く



    2012.09..25. さくらぱん

    ☆【長編】『コミュ解禁・黎翔の優雅な朝Ⅰ』 ※現代パラレル




    朝の陽射しの中・・・
    ゆったりと屋敷の時間は流れる

    まだ、陽が昇ったばかりの朝の庭から
    朝露がついたままのピンクの薔薇が、テーブルに飾られている

    部屋に流れるのは、静かなフルートとピアノの音。

    僕の夕鈴の仕事に、微笑みが零れる
    細やかな気配りが、嬉しい。

    朝露がついたままだということは、
    早朝から、薔薇園で選んできたのだろう

    「おはようございます。黎翔さま」
    「黎翔さま、朝食は、どちらにご用意いたしましょうか?」
    「こちらで、お召し上がりになりますか?」
    「それとも、東の庭に面したいつものテラスにご用意しますか?」

    白襟の濃紺のメイド服が、ようやく馴染んできた初々しい夕鈴。
    テーブルの上で香りを放つ 朝露のついた薔薇よりも可愛らしい。


    上気した薔薇色の頬で、真っ直ぐに僕を見つめる。
    朝に心地よい。柔らかな鈴の音のような君の声。
    業務連絡なのが残念だけど、ずっと聞いていたい。

    この屋敷で働き出して、もうすぐ3ヶ月になろうというのに、
    いまだ僕に慣れていない。
    どこかぎこちない仕草が、とても愛らしい。

    『そうだな・・・朝は、冷えてきたし、ここでもらおうか。』
    『ここに用意してくれ。』

    「かしこまりました。黎翔様」

    ぺこりと、僕にお辞儀をして、厨房へと踵を返す
    背中で揺れる一つ纏(まと)めのポニーテール
    濃紺の制服と白いエプロンの上で、金茶の髪が踊るように跳ねる

    その姿を眼で追いながら
    今朝のニュースとメールを手元のPCで、手早く確認するのだった。


    ・・・続く

    2012.09..25. さくらぱん