花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    完【書庫】『真夏の粉雪ーまなつのこなゆきー』





    こちらは、本誌設定・中編を収めた書庫室です。
    こちらは、珀 黎翔陛下と汀 夕鈴妃の物語。続ける余地のある終わり方をしています。不定期更新。



    完『真夏の粉雪ーまなつのこなゆきー』 2012.07.29
    「真夏の粉雪 Ⅰ」
    「真夏の粉雪Ⅱ」
    「真夏の粉雪Ⅲ・-完-」
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    さくらぱん祭8「真夏の粉雪Ⅰ」

    うだるような蒸し暑さの中、
    政務室だけは、別だった。
    真夏に冷たい吹雪が吹きすさぶ。


    先ほどから、
    官吏たちの提出書類は、一つも決済ができない
    酷暑の廻らない頭でまとめあげた書類は、
    不備が多く、溜まっていく書簡に
    狼陛下の機嫌は、最悪だった。

    密かに 政務室から狼陛下の唯一の妃に使いがだされた・・・・・

    「・・・・陛下。」

    政務室の最悪の空気の中、愛しい妃の声がする
    ちょうど、午前の小休憩時間
    様子を伺うように夕鈴の顔が見える。

    「お邪魔してもいいですか?」

    控えめでおずおずとした声に、慌てて冷たい狼陛下の気配を消す。
    かわりに、妃専用の笑顔を取り繕った。

    「真夏の粉雪Ⅱ」

    「夕鈴、丁度、休憩の時間だから、大丈夫だよ。」
    「どうしたの?」
    「ここは、暑いから、今日の政務室は来なくて良いって言ったよね。」
    「暑いと、伺っていましたので・・・」
    「頑張っている陛下と陛下のために頑張っている官吏のみなさんに
    差し入れをお持ちしました。」

    「お願いいたします。」

    「「失礼します。」」

    妃の声にあらわれたのは、後宮の華やかな侍女たち
    それぞれに、たくさんの小さめの透明なガラスの器の乗った盆を手に
    官吏の元へ歩み寄る。

    「夕鈴様、どうぞ。」

    女官長から、一つだけ青硝子の高台の器が乗った盆を夕鈴は、手渡される。

    青い硝子には、うす削りした粉雪のような氷と刻んだ桃のような果物。
    とろうりと全体に、白蜜がかけてあった。
    青い器ときらきら輝く氷は、見た目にも、とても涼しそう。

    「陛下には、こちらを・・・・」
    「政務室に行けない私に、せめて陛下に差し入れでもと考えまして・・」
    「カキ氷と言うそうです。」
    「こちらは、わたしが、削りました。」
    「溶けないうちに、お召し上がりください。」

    「そうか・・愛しい妃の手作りか。」
    「では、いただくとしよう。」
    「妃よ、お願いがある。私に、食べさせてくれ。」
    「ここで・・・」

    トントンと、陛下は、自分の膝を叩いた。

    「真夏の粉雪Ⅲ・-完-」





    顔を耳まで、染めながらおずおずと、僕の膝に腰掛ける。

    侍女と官吏の視線を気にしているのだろう。

    恥ずかしいのか

    その細い首までもが真っ赤になり僕のお嫁さんは本当に可愛らしい。

    不安定な体勢を支えるべく、君の細い腰を両手で支えた。

    羞恥で、じんわり潤んだ瞳で、僕に挑むようにきつく睨まれた。




    「夕鈴、氷が溶けてしまう・・・」

    なかなか動かない夕鈴に、陛下が、促す

    「・・・・・はい。」


    氷の乗った白蝶貝のスプーンが小刻みに震える。

    溶ける寸前の氷を乗せたまま・・・・

    そのまま、おおきく「あーーん」と開いた僕の口に、冷たいスプーンとカキ氷を入れた。

    口のなかで、冷たさとともに、爽やかな甘さが、口のなかで、溶けて消える。

      

    私は、おねだり小犬の瞳に、いつも弱い。

    つい、あのうるうるとした瞳でお願いされると

    困ってしまうものの従ってしまう。

    「美味しい」

    ただでさえ心臓に悪い、綺麗な顔の貴方に

    至近距離の、嬉しそうな大好きな笑顔で微笑まれ

    耳元で囁かれ、心臓が早鐘を打つ。

    ただでさえ、暑い政務室の体感温度が、更に急激に上昇した気がする。

    手元の器の氷の冷たさだけが、唯一 の救いだった。



                   「真夏の粉雪」

                     -完-