花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    完【書庫】『紫陽花の夕立』

    こちらは、本誌設定・中編を収めた書庫室です。
    こちらは、珀 黎翔陛下と汀 夕鈴妃の物語。続ける余地のある終わり方をしています。不定期更新。







    完『紫陽花の夕立』祝!! 恋人の日 2012.06.11
    紫陽花の夕立Ⅰ 祝!! 恋人の日 2012.06.11
    紫陽花の夕立Ⅱ 祝!! 恋人の日2012.06.11.
    虹彩 -こうさいー 2012.07.02.

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    紫陽花の夕立Ⅰ 祝!! 恋人の日

    ある日、侍女たちと共に夕鈴は、宮殿の奥にある
    斜面の紫陽花を見に来ていた。

    複数の花を集めたような、ボールのようなかわいい花は、
    快晴の空の下 風にゆれ、
    今が見ごろと赤や青・ピンクや紫と色見本のような花の盛りを迎えていた。

    紫陽花の小道を侍女とともに、妃の薄い桃色の軽やかな衣が弾むようになびく。
    夏のはじまりを告げるこの日は、とても蒸し暑い日だった。

    花を愛でるのに気をとられ、風が変わり
    湿り気を帯びたことに気づくのが遅れた。
    あっという間に、夜のように雲が厚くなり、突然大粒の雨が降ってきた。

    この辺りに、妃が雨をしのげる四珂は無く、宮殿は遠かった。
    そのことに、気づいた侍女たちは、ますます騒ぎ出す。

    右往左往する侍女たちに、落ち着くように女官長が声をかけるも、
    夕鈴を気遣う侍女たちには、誰一人、耳に入らなかった。

    大粒の雨音の中、かすかな喧騒に王宮から気づいた黎翔。
    その侍女たちの騒動の中に、薄い桃色の衣の夕鈴を見つけた。
    気づくと、黎翔は走り出していた。

    叩きつけるように、雨が降る。
    大粒の雨の中、夕鈴の元に宮殿から走って行ったのである。

    『夕鈴!』
    「!!陛下!」
    『大丈夫か?』
    『大事なわが妃が濡れてしまう!』
    そう言って黎翔は、自分の外套を広げ
    夕鈴を頭からすっぽりと自分に包み込んだ。

    雨は、ますます地面を、叩きつける
    雨足が強くなった。

    黎翔は、夕鈴を連れ、今来た道を戻りだす。

    『ここから、見える宮殿に走るぞ!!』
    「ハイ!!」




    ・・・続く
    2012.06.11.

    紫陽花の夕立Ⅱ 祝!! 恋人の日

    宮殿に走る黎翔に、
    突然夕鈴の抗議の声がかけられた。
    『夕鈴、大丈夫か?』
    『陛下、きちんと入ってください。濡れていますよ!!』
    『大事な妃が、濡れてしまうほうが、困る』
    『後で、風邪を引かれると私が困るのだ。』
    『しっかり被り直せ。』
    すっかり雨に濡れた夕鈴が、さらに濡れない様に
    しっかりと被り直す。
    紫陽花の花も叩きつける雨にうなだれて見える。
    そのまま視界が閉ざされた紫陽花の小道を二人で足早に宮殿へと駆け抜けた・・・。



    『陛下に見つけてもらって助かりましたっ。』
    『・・・ああ。』
    『あのままあそこにいたら、もっと濡れてました。』
    『ありがとうございます。』
    『・・・そうだね。』
    (へいか・・・さっきから、うわのそら?なんで?)

    濡れたぬばたまの前髪のむこうに
    視線を揺らす狼がいて・・・めずらしくうろたえている?
    濡れていることもあり、陛下が色っぽくて・・・ぼぉっと陛下の顔を見詰める。

    なかなか、視線を合わさなかった陛下が私の視線に気づいた。
    困った瞳の狼と私。絡み合う視線。
    一瞬だけど、目覚めるのに十分だった。

    はじかれたように、一歩下がる。
    いまだに、羽織ったままの陛下の外套に気付き返そうとして脱ぎだした私を陛下は止める。

    『このまま部屋まで・・・。』
    『部屋で脱いでほしい。』
    『えっ??なんでですか?』
    肩に乗せられた大きな手で、またしっかり覆われる。
    狼の瞳が深くなり、揺れていた視線がしっかり私に重なる。

    真顔で、言われて余計ふしぎになった。
    そのときに、陛下の衣装に気づいた。
    いまだに雫を落とす陛下の濃紺の一重の夏ごろも
    雨に濡れ、まとわりついた麻の夏衣・・・濡れたために肌に張り付き、陛下の肌がところどころ濡れ見える。

    ―――――――――――――――――――――――――っ!!

    そのことに、気づき、ボフンと音を立てて顔が赤くなる。

    ――――自分が怖くて見れない。

    わたしも、夏の一重の衣装だったはず・・・外套の中の衣装の重さはぐっしょりと重い。
    どのような姿を陛下の前にさらしていたのだろう。

    恥ずかしすぎて、今度はこちらが目を合わせられない。

    『このまま部屋まで・・・。』
    こくこくと湯気のたった頭でうなずく。
    きっと首まで真っ赤だわ。
    『やくそくだよ。』
    全身真っ赤な夕鈴には、ただうなずくことしかできなかった。



    いつの間にか雨が止み、まぶしい太陽とともに真っ青な青空が見えた。
    雨に濡れた雫光る紫陽花の葉の上をゆっくりとかたつむりが進んでいった。



    ー完ー
    2012.06.11.



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    ☆虹彩 -こうさいー

    紫陽花の花を愛でつつ
    陛下と共に歩く
    朝露を含んだ庭は
    昨夜の雨の匂いがまだ残っていた。

    朝日に紫陽花の雫が
    虹彩を放つ
    ひんやりとした空気は
    心を綺麗にきよませる

    私は、ぬかるんだ斜面に
    足を取られ転びそうになる
    その都度

    「 大丈夫? 夕鈴? 」
    「ありがとうございます。陛下。」

    たくましい陛下の腕に、何度助けられたことだろう。
    助けられるたびに、私は意識してしまう。
    陛下が好きなことをどうしても意識してしまうの・・・・。


    昨夜の雨が僕に残した喜び
    足を滑らす君を堂々と抱きしめている。
    抱きしめるたびに頬染める君を
    本物の花嫁に・・・と思う、自分を止められない。
    腕の中の夕鈴に、あふれる気持ちが止められないんだ・・・。