花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    完【書庫】『氷結の華ーひょうけつのはなー』

    こちらは、本誌設定・長編を収めた書庫室です。
    こちらは、珀 黎翔陛下と汀 夕鈴妃の物語。続ける余地のある終わり方をしています。不定期更新。



    完『氷結の華ーひょうけつのはなー』

     刺客に襲われた夕鈴、生死をさまよう重症を負った夕鈴に、陛下は……


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    【長編】 氷結の華 1

    ※シリアス
    暗い・捏造
    真っ黒陛下

    視界の隅で、銀の輪をとらえた時には、
    白い雪に綺麗な真っ赤な花が咲いていた。

     あつい熱の塊が、肌を焼いたと思った。


    ・・・・ゆっくりと傾ぐ身体
    夕鈴には、
    何が起こったのか分からなかった。

    ただ肩が熱い。

    異変に気付いた侍女達が、騒ぎ始めた
    その侍女たちも、銀輪が舞うごとにひとり・・・またひとり・・・とくず折れる

    狼陛下唯一の妃の変事。
    警備の手厚い後宮での事件。

    警備の者の怒号と侍女達の悲鳴の飛び交うなかで
    着実に近づく死の使者の足音。

    一番の当事者であるはずの夕鈴には、何も知らされていなかった。
    今が、どんなに危険であったかということに

    王宮の闇も人々の思惑さえも
    彼女の耳には、入らなかったのだから

    ただ陛下の計らいで、春のような穏やかな後宮にて
    守られていたのだから・・・・

    陛下のその配慮が、彼女にとって仇となる・・・・

    今少し、彼女の耳に何かしら警戒すべき事柄が
    もたらされていたのなら事態は、もっとちがうものになっただろうに・・・

    凍えた空に…
    赤い紅い血飛沫が舞い散る。

    肩に熱を受けた身体は、意識とは無関係に冷たい雪にくず折れ動けない。

    また銀輪が視界に入る…

    今度は、その銀輪の正体がはっきりと分かる

    旋回する刺客の凶刃
    素早いはずの刃煌めきは、なぜかスローモーションのように見えた。

    …身動き一つとれぬままに
    妃の命をねらってきたのであろう刺客に
    このまま、二回目の凶刃を受け死すしかないのか!?

    妙に、冷めた視線で思う。

    徐々に近づいていく、猛り狂う刺客の刃に
    夕鈴は、生をあきらめ…覚悟した。

    せめて…最後は瞼の裏に陛下を思い逝きたかった…。










    最後かもしれない。
    そう思うと、気持ちが溢れてとまらない。

    後悔と愛しさと希望と願い…

    生に執着する悔しさ・・・悔しい!!!!

    自分の中の感情が入り乱れて交錯する。

    涙が溢れ止まらない…

    強くつよく乞い願う

    《今一度、陛下に逢いたい!!!!》

    声を限りに、夕鈴はただ一人の名を叫んだ!!!

    「・・・・・・・陛かぁっ!!!!。」


    ・・・続く


    2013年
    01月20日
    18:53
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    【長編】 氷結の華 2

    ※シリアス
    暗い・捏造
    真っ黒陛下


    ・・・続きです。

    冷たい霙(みぞれ)降る王宮に
    鋭い切り結ぶ剣戟(けんげき)の音

    刺客に襲われた黎翔は
    手ごたえの無い刺客に疑念を感じていた。

    ーーーー胸騒ぎがする。
    言いようの無い不安が黎翔を襲う。

    本気を出しているとは、どうしても思えない。
    かといって、しかたなく・・・という感じでもない。

    影のような刺客は、数だけはいて、
    謁見殿の近くで襲われたことが、黎翔に幸いし
    数多くの武官が刺客と戦っていた。

    例えようのない胸騒ぎ・・・・
    胸がムカつく

    足元には、先ほどまで人であったものの塊が転がる
    覇気のない刺客など、黎翔には敵ではない。

    ーーーー自分の命を狙って来たにしては、
    歯ごたえが無さ過ぎる刺客達に、
    いいしれぬ不吉な予感がした。

    次々と矢継ぎばやに、黎翔を襲う刺客達
    数さえいれば、黎翔を殺せるとでも思っていたのだろうか?
    甘すぎる考えに、嘲笑いがこみ上げた。

    黎翔は、横凪ぎに大太刀を振るった。
    重さで、人を屠る剣は、鋭く空気を切り裂き
    風音(かざね)をたてて・・刺客に襲いかかる。

    あっさりと鈍い音をたてて骨を断つ
    今まで、黎翔と相対していた刺客が、足元に平伏す。
    刺客の鮮血が墨染めの衣に、新たな染みを作る。

    もはや、ここは王宮でありながら、第一線の戦場だった。

    黎翔の瞳に、ほの暗い焔が灯る
    あかい紅い瞳が、次の獲物を狩ろうと、値踏みする。

    かつての戦場(いくさば)での高揚感が蘇り、
    黎翔は、楽しくて仕方ない暗い愉悦がこみ上げる

    唯一不満があるとするならば・・・・
    相手に手ごたえが無さ過ぎること。

    (・・・・・あっけなさすぎる。)

    敵も味方も
    酷薄な愉悦の笑みを浮かべて、血しぶきを浴びながら
    敵を次々と屠る黎翔の姿に、
    忘却となりかけた戦での、《戦場の鬼神》の姿を重ねた。


    最後の一人を、屠ったとき
    後宮から、警笛が鋭く鳴った。

    特徴のある警笛の音。

    後宮・・・・・夕鈴の変事を知らせる笛の音に
    黎翔の顔は、青ざめた。

    何度も鳴る、その音は有事にのみ鳴り、その笛の音が鳴り止まない。

    黎翔は、悟る・・・
    自分が、まんまと足止めを食らったということに。
    武官とともに自分も囮に惑わされたということに。
    舌打ちしたい、最悪な気分だった。
    言い知れない不安は、現実のものとなった。

    ・・・・・胸がムカつく

    屍をそのままに・・・
    血染めの剣を抜き身のまま、全力で後宮へ駆け出した

    黎翔に追随する武官達。
    皆、一様に神に願う。
    後宮に住まう人の無事を願っていた。

    霙(みぞれ)降る冷たい空は、暗く垂れ込める
    重く重く圧し掛かるような霙空(みぞれぞら)に
    時だけが 無常にも、刻まれる。

    夕鈴の無事だけを願う黎翔は、いくら駆けても近づかない
    広い王宮に苛立つ

    抵抗する術を知らぬ愛しい人を狙った刺客に
    その背後のあやつる者に
    怒りがこみ上げた。

    嚙みしめた口腔に鉄さびの味がする。

    警笛の音が、鳴り止まない。

    不安の警鐘が現実のものとなった黎翔に、
    冷たい霙(みぞれ)が降る

    真っ白なはずの雪景色は、黎翔の怒りで、血の色に染まっていた。


    普段、神になど祈らぬ黎翔がはじめて神に乞う

    願う思いはただ一つ、

    (ーーー夕鈴、無事でいてくれ!!!!)

    果たして、黎翔は、間に合うのか?

    ・・・続く


    2013年
    01月21日
    14:43 続きを読む

    【長編】 氷結の華 3

    ※シリアス
    流血・暴力表現あり
    刺客と戦闘中
    暗い・捏造
    真っ黒陛下




    ・・・続きです。

    黎翔の胸をえぐる、自分の名を呼ぶ彼女の悲痛な悲鳴に
    まだ見ぬ彼女の安否が気遣われる

    警笛の音を頼りに、広い後宮の一角へと辿り着く。

    笛の音が、近づくごとに増える、雪が蹴散らされそこに咲く鮮血の花

    鮮やかな生々しい血の花は、
    雪に滲まぬ妖しい美しさで咲いていた。

    その花の主は、雪に累々と並ぶ侍女や近衛の武官達

    皆、一様に深い刀傷で絶命していた。

    その中に、夕鈴の姿を探す…

    (…居ない。) 

    彼女の姿は、居なかった。

    黎翔は、この場に夕鈴が居なかったことに安堵しつつ、
    この変わらぬ状況に不安が募る。

    彼女が居ないことに、影が忍び寄る。

    胸騒ぎが、おさまらない。






    黎翔が、ようやく夕鈴を見つけたのは、
    雪に倒れ臥した彼女に、刺客の凶刃がまさに今、
    落ちようとしていたところだった。

    夕鈴の雪よりも、白いその顔に、ざわざわと寒気を覚える。

    薄桃色の衣が、真っ赤な血で染まる。
    雪に、倒れ臥したその姿に、何もかも遅かったのかと黎翔は思った。



    (…夕鈴!)

    手勢を連れて、駆けつけて来た黎翔に、刺客が怯む。

    武官と黎翔が、四方に散り、刺客を取り囲んだ。

    刺客に迷いが生じる…

    任務を全うし、妃を暗殺するべきか
    逃げる為に、妃を利用すべきか

    追い詰められた刺客の隙を黎翔は見逃さなかった。

    一瞬だけの夕鈴への意識の拡散
    周囲の黎翔・武官達への警戒

    刺客の意識が、周囲へと向けられたその隙を。



    今、まさに夕鈴に振り下ろさんばかりにある鮮血に染まる刺客の刃

    刺客の下に倒れる夕鈴は、自身の血で染まる雪に埋もれ動かない。

    しかし、先ほどの声は、夕鈴のもの…


    夕鈴、黎翔から、意識がはずれ、離れた武官へと
    刺客が意識をそらした時、

    黎翔は、素早く夕鈴へと駆け寄りその身を沈めた。

    刺客の刃を下から薙ぎ払う、軽さを重要視した刺客の剣は
    黎翔の重い太刀筋を受けきれず
    鋭い剣戟の音をたてて地面へと弧を描いて離れ落ちた。


    黎翔の大太刀は、止まらず・・・・そのまま刺客へと吸い込まれる。

    (殺さないで・・・・アナタの敵を吐かせなければ・・・・)

    黎翔の耳に、いつもの夕鈴の声が聞こえた気がした。

    こんな時にまで、聞こえるとは・・・・

    君を殺めようとして、君を傷つけようとした刺客。

    こんな状態の君を見て、手加減などできるものか。

    黎翔の大太刀は、一撃で夕鈴を襲った刺客を仕留める。

    不自然な形で、血飛沫を吹き上げて地面へと倒れ付す刺客を

    黎翔は冷ややかな視線で見ていた。




    ・・・続く 



    2013年
    01月22日
    09:49 続きを読む

    【長編】 氷結の華 4

    ※シリアス
    暗い・捏造
    夕鈴・重体です
    戦闘・流血シーンは、終わりました。(気分を害した方スミマセンでした。)




    ・・・続きです。



    妃襲撃事件・第一日目

    天候/雪(みぞれ)







    奇跡的に、陛下から救出されたお妃 夕鈴様。

    侍医、老師、侍女達が、慌ただしく妃の部屋を出入りする

    国外への外交のため、妃が襲撃されたことは、緘口令がしかれ

    王宮でも公然の秘密にされた。

    特に、襲撃された妃の容態は、重く

    詳しいことは、関係者以外には明かされない機密事項となった。

    王宮・後宮での片付けが終わり、今回捕縛した刺客数名の処分もほほ

    終わったのは、日付も変わり明け方近い時刻だった。


    『侍医、どうだ・・・妃の容態は!?』

    憔悴した厳しい顔で、寝台で治療を受ける夕鈴を見詰める。

    先ほどの汚れは、涙ぐむ侍女達により払拭され
    髪の一筋さえもいつもの彼女に戻っていた。


    刺客から、取り戻したものの夕鈴の怪我が酷く
    急いで侍医たちを呼び寄せ、治療させた。

    あれから黎翔は、事後処理で夕鈴の傍を離れなければならなくなり、
    ようやく容体を確認することが出来たのだった。

    緊迫した空白の時間・・・なかなか侍医は、夕鈴の容体を話さない。

    『侍医、妃の容態はどうなのか?』

    苛立ちが募る。
    夕鈴の容体を確認したら、すぐ戻るようにと李順から言われていた。
    また、事後処理のために夕鈴の傍を離れなければならない。
    時間が惜しかった。

    夕鈴の意識は、戻っていない。
    夕鈴は、刺客から救い出した時には、意識がなかった。

    黎翔が最後に聞いた、悲痛な自分を呼ぶ声。
    あれが、夕鈴の声を聞いた最後だった。

    耳に未だに木霊する彼女の声。
    自分は、間に合わなかった。

    今 無性に、黎翔は夕鈴の声を聞きたかった。
    そのはしばみ色の瞳を見たかった。
    いつもの笑顔が見たかった。
    夕鈴に対する確かなものを知りたかった。





    だが・・・・現実には

    優しいはしばみ色の瞳は、閉ざされ・・・

    夕鈴の眉間に苦しげな眉が寄せられる・・・

    いつもの生き生きとした表情はなく

    薔薇色の頬だった顔色は悪く、雪よりも青白い。

    柔らかな唇も、白く青ざめている。

    白い包帯を巻かれた肢体、幾つもの傷のうち背中の包帯に赤い色が滲む。

    黎翔は、意識の無い夕鈴の髪を漉いていた。

    いつもどうりの感触が、今は哀しい。

    「背中の刀傷から、血を流しすぎたようです。」

    王の様子に、途切れ途切れ・・・・遠慮がちに侍医が言う。

    「一命はとりとめたものの、未だ意識が戻らず危険な状況かと。」

    予想どうりの侍医の言葉に、唇を強く嚙みしめる。

    『手を尽くせ!!! 引き続き、手厚く介護せよ。』

    思ったより、冷たく硬い声が出た。

    侍医・侍女達は、拱手し無言の「是」をとった。

    黎翔は、踵を返し侍医たちに夕鈴を任せた。

    王宮へと戻る黎翔の足取りは、重い。

    自分が、この場で何も夕鈴に対して出来ない無力さを呪った。

    自分と関わったばかりに、このような事態になってしまった。

    予測はしていたが、いざ現実になると後ろめたい苦さがこみ上げる

    自分が厭わしかった。

    後宮から王宮へと戻る途中、

    ふと、見上げた空は昨日と同じ冷たい霙(みぞれ)が降っていた。

    黎翔の心にも、冷たい霙(みぞれ)が降る。

    (夕鈴、持ちこたえてくれ!!!!)

    黎翔は、ーーーーー泣きたい気分だった。





    ・・・続く


    2013年
    01月23日
    23:55

    続きを読む

    【長編】氷結の華 5


    ※シリアス
    暗い・捏造
    夕鈴・重体です



    ・・・続きです。

    妃襲撃事件・第二日目

    天候/雪







    侍医達の手厚い介護も空しく、背中の傷から高熱が続く・・・
    苦しげな息遣い・・・・未だ意識が戻らない。
    夕鈴の手を握ると、指先の冷たさに驚く・・・

    本来なら、君は、家に帰りたいのだろうな・・・
    こんな刀傷をつけたまま・・・家に帰せるわけが無い。
    何より、私が返したくない。

    ・・・・・君が元気な頃だけを思い出す。
    こんな状態にさせてしまっても、なお君を求めてやまない。

    「陛下、お妃様は、今夜が峠です。」
    侍医の言葉が、すぐには信じられなかった。

    ーーーー私の世界に君が居なくなるかもしれない。
    君が居ない世界など、考えたくもなかった。

    足元から、じわりじわりと忍び寄る冷たい現実を受け止められない。
    死神から守るかのごとく、夕鈴の手のひらを握り締めた。
    彼女との絆を離したくなかった。

    夕鈴の小さな手のひらは、握り返されることもなく
    黎翔の大きな両手に包まれていた。

    彼女の手を離したくなかった。

    あの日からの霙(みぞれ)は、いつの間にか牡丹雪

    白くしろく降り積もっていく・・・・

    全てを白く覆い尽くす穢れない雪で
    あの日の紅い華も隠れてしまった。

    後宮の庭は、元どうり・・・・・
    純白の白い雪に何事も無かったかのように佇む・・・

    静かに降る雪の音しか聞こえない。

    運命の時に流れを任せるしかない夕鈴と黎翔

    すでに起こった事について、時は戻せない。

    せめて、以前のままに戻りたいと思うのは、人の性なのか・・・・

    (・・・・・・・・・夕鈴。)

    握る手のひらに願い、黎翔は指先に口付けた。

    ・・・・・・・切なく哀しい口付けだった。




    ・・・続く。



    2013年
    01月24日
    09:04

    【長編】 氷結の華 6

    ※シリアス
    暗い・捏造
    夕鈴・重体です


    ・・・続きです。

    妃襲撃事件・第四日目

    天候/月の無いぼんやりとした雪明り




    ようやく、熱も下がり、命の峠は越えたというのに
    君は、まだ目覚めない。

    同じ寝台で枕を共にする…
    幾度となく見た夢なのに、夢とは違う現実がこんなにも哀しい。

    君を抱き寄せて、傷口に障らないように
    僕の胸の上へと手繰り寄せる

    熱を分け与え、君を暖めることしか私には、することが無い。

    背中から肩の刀傷は、血が止まったものの包帯を換えるたびに
    又流れ出す。

    ヒキツレタ痛々しい傷が、安らぎの邪魔になると思ったから
    うつぶせのままで私の胸へと引き寄せた。

    熱が下がり、侍医の許可が下りた晩から続く
    君との時間。

    うわ言で、きみが寒いと言ったから・・・・
    僕のぬくもりを分け与えた。

    意識も戻らないのに、私を呼ぶから・・・
    回復の希望が持てた。

    侍医の指導により、葛を少しの砂糖と白湯で溶き伸ばした食事も
    私が、口移しで食べさせた。

    止血と化膿止めの苦い薬も、君は飲んでくれた。

    後は、君の意識が戻るのを待つばかり・・・

    ぼんやりと・・・寝台の帳の越しの雪明り

    君の寝顔を見詰める。

    どんな些細な変化も身逃さないように・・・

    淡く光る金茶の髪を漉きやる。

    「・・・・・・へーか・・・」

    今夜、何度目かの君が私を呼ぶ声。

    小さな手が、私の夜着を掴んだ。

    『夕鈴、早く目覚めて・・・』

    ここ数日で、軽くなった君の重みに苦しくなる。

    それでも、このぬくもりが切なく嬉しい。

    今夜も、君を抱きしめて眠ろう・・・・

    君が目覚めるのを、私が最初に気付くために・・・・





    ・・・続く


    2013年
    01月24日
    15:26

    【長編】 氷結の華 7

    ※シリアス
    暗い・捏造

    IMG_0194.jpg

    ・・・続きです。

    妃襲撃事件・第五日目の朝
    天候/後宮の木々か凍りついたとても寒い快晴の朝



    ぽたり・・・ぽたり・・・
    軒下から滴り落ちる水の音。

    ・・・・・温かい、ぬくもりに包まれてなかなか目覚めたくない私に
    穏やかな規則正しい音が目覚めを促す。

    ・・・とくん・・・とくん。・・・とくん・・・とくん。

    眩しい日差しが瞼の裏から分かる。

    朝の気配がした。

    だけど、いつもと違う目覚めに疑問を持つ

    頭の中に、深い霞がかかったかのよう・・・・

    はっきりしない意識のまま、凝った身体を解きほぐすために
    身じろぎをした。

    ーーーーーとたん、背中に走る激痛とあの刃の煌めき

    恐怖!!!恐怖!!!!こんなにも温かいのに寒さで心が凍りつく!!!!

    耐え切れず、叫んでいた。

    ただ一人、救いとなる愛しい人の名を!!!

    「・・・・・・・陛かぁっ!!!!。」





    ・・・続く



    2013年
    01月25日
    05:40




    続きを読む

    完【長編】 氷結の華 8

    ※シリアス
    暗い・捏造






    ・・・続きです。

    「いやあああぁ…陛かぁ…」

    夜明けと共に、突然、叫び声をあげた君に、目覚めたことを知る。
    あの日から、凍り付いていた君の時が、ようやく動き出した。

    錯乱して、取り乱す夕鈴は、はしばみ色の大きな瞳を見開きつつも
    何も映していない様子だった。


    君のあの日の恐怖が、私に伝わる。

    過去を見て、いまだにあの日に居る君に、私は伝えなくてはならない

    ーーーーーもう、あの日は過去のことと。
    ・・・・君に今すぐ伝えなければ・・・・・。

    「へいかっ・・・・陛下ぁ・・・・」

    泣き叫ぶ、夕鈴を宥めるように

    ・・・・その額に

    ・・・・・その頬に

    ・・・・・・その唇に

    柔らかな口付けの雨を降らせる。
    私から君への目覚めの祝福。

    君が、目覚めたことへの感謝の喜びを君に伝えたかった。

    口付けとともに、想いを込めて君の名を繰り返し呼んだ。

    「もう、大丈夫だ。安心して欲しい」と繰り返し囁いた。




    黎翔の胸に顔を埋めて、夕鈴は泣き続けた。

    ・・・・・・少しづつ・・・・すこししづつ・・・・夕鈴の嗚咽が静まっていく・・・・・

    抱きしめていた夕鈴の強張っていた身体の緊張も解けていく。













    ・・・・・・静かな沈黙










    暖かな陽射しが夕鈴の髪を輝かせていた。
    柔らかな光が二人を包む。

    どれくらいたっただろうか?

    ・・・しばらくして、夕鈴がポツリと呟いた。

    「・・・・陛下。」

    伏せられていた、夕鈴の顔が真っ直ぐに黎翔を向いていた。

    穏やかないつものはしばみ色の瞳。
    優しい笑顔。
    私の知っているいつもの夕鈴だった。

    今までが、不安の連続だっただけに
    再び、刻みはじめた君の時に 黎翔は、素直に喜んだ。


    いつの間にか、黎翔の頬が濡れていた。

    …歓喜が溢れて涙が零れる。

    誰かの為に、まして他人の前で泣くことなどありえなかった。

    『夕鈴・・・・君が死んでしまうのかと思った。』

    今まで、口に出来なかった気持ちが零れる。

    口にしたら、君が本当に死んでしまう気がして、
    口に出来なかったその想い。

    こんなにも、君を必要としていたことを、黎翔はここ数日間で思い知った。

    夕鈴を失くしたくない!!!!

    ーーーー愛していることを自覚した。

    「陛下、ご心配をおかけしました。」

    柳眉が下がり本当に申し訳なさそうに謝る君に愛しさがこみ上げる。
    いつも黎翔が、見慣れていた夕鈴だった。



    ーーーーー想いが溢れる。

    二人は、純粋に嬉しかった。



    再び、刻みだした二人の時は、優しく緩やかに流れだす。



    今度は、より強い絆を結ぶために、黎翔は夕鈴の手を握った。

    『夕鈴・・・・・君を愛してる。』

    握られた手を、今度は、しっかりと夕鈴は握り返した。

    「陛下、私もずっと前から・・・・・・お慕いしておりました。」

    二人とも静かな涙が頬をぬらしていた。
    どちらともなく微笑み返していた。笑顔が零れる。

    『夕鈴 早く、元気になってくれ!!!』

    一足早い雪解けの春。

    二人の純粋な想いは、水晶のような煌めきでお互いを潤す。

    もう離れることの無い強い絆で結ばれた二人。

    絡めあう指先に想いを込めて、繋がれた手は、もう離さない。

    零れ落ちる雪解けの音に、近づく春の足音。

    きっと、もう二人には凍りつく冬は訪れることはないだろう。

    黎翔が 繋いだこの手を、必ず守るのだから・・・・。



         ー氷結の華・完ー

    2013年
    01月25日
    11:30

    【幕間】『氷結の華ー結晶花ー』へ 続きを読む

    【短・詩文】幕間『氷結の華―結晶花―』

    ※こちらは、先ごろ完結しました。『氷結の華ーひょうけつのはなー』の幕間です。
    今朝からの雪を見ながら、作りました。ひたすら陛下が哀れで切ない作品です。


    それでもよければどぞ。




    音もなく降り積もる美しい雪を見ながら…

    今夜も、目覚めぬ
    愛しい人の髪を梳き、優しく抱き締める

    少し痩けた頬は、私の痛みを誘う

    切ない口付けは応えてはくれない。

    いまだ目覚めぬ、はしばみ色の瞳

    ああ…
    心安らぐ君の瞳が見たい。
    鈴の音のような優しい君の声が聞きたい
    輝くような眩しい笑顔が見たい


    早く、目覚めてくれ!夕鈴。

    静かに降る白い雪の花びら

    時が止まったかのような私達の時間

    音もなく降り積もる静かな夜

    私の腕の中で眠る愛しい君を愛でながら

    今夜も、夜が更けていく


    ―氷結の花
    その切ない結晶花


    時が止まった君が、目覚める時を私はずっと待ち望んでいる。


    目覚めの時を待っている。



    2013年
    02月06日
    11:05