花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    完【書庫】『玻璃天蓋ーはりてんがいー』

    完『玻璃天蓋ーはりてんがいー』

    【玻璃天蓋・本編】
    『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅠ』
    『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅡ』
    『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅢ』
    『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅣ』
    完『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅤ』

    【玻璃天蓋・外伝】
    【詩文】玻璃天蓋・切なの実【玻璃宮殿のカナリア】 2012.12.06.
    【短編】玻璃天蓋・ぴゅあの実『青硝子の白薔薇』 2012.12.12.
    【短編】玻璃天蓋・ぴゅあ甘々の実『陽だまりの優しさ』
    【短編】玻璃天蓋・切なの実『あなたの優しさに包まれて』
    【短編】玻璃天蓋・甘々の実『玻璃宮の口付け』※初めての口付け設定。
    【短編】玻璃天蓋・甘々の実『棘の傷痕ーいばらのきずあとー』※黎翔のちょっぴり倒錯的な大人味
    【詩文】玻璃天蓋・甘々の実『覚めない夢』
    【短編】玻璃天蓋『はじまりの庭』※最終章

    【玻璃天蓋・幕間】※要注意!!!真っ黒・冷酷非情の陛下・隣国の王女の末路
    【中編】玻璃天蓋『蒼の月影Ⅰ』
    完【中編】玻璃天蓋『蒼の月影Ⅱ』

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    完【書庫】本誌設定『玻璃天蓋ーはりてんがいー』※白友A様贈答品

    本編は、12/11にお誕生日だったお絵かき白友Aさんに・・・・
    番外編【幕間】は、リクで白友かなめさんに・・・・
    それぞれ、お贈りしました。

    花の四苛Ⅰ・Ⅱ、橋シリーズ、と並ぶ、好評をいただきました。
    どぞ。

     IMG_9826.jpg         IMG_9829.jpg
    アナタのぬくもりにつつまれて       『白薔薇・夕鈴』

    ☆こちらは、本編設定。
    【書庫】『玻璃天蓋ーはりてんがいー』です。
    本日のお誕生日を迎える白友・天沢さんへの贈答品です。
    『天沢さん、お誕生日おめでとうございます。』

    誕生花『白薔薇ー私はあなたにふさわしい。』
    と誕生石『ミルキー・アクアマリン・安らぎと平和の導きの石』で、創りました。
    いつものごとく見切り発車・・・・ごめんなさい。
    気に入ってもらえるといいな。             では、どうぞ。
                                  2012.12.11. さくらぱん


    完『玻璃天蓋ーはりてんがいー』本編

    2012.12.11.『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅠ』

    2012.12.11.『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅡ』

    2012.12.11.『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅢ』

    2012.12.11.『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅣ』

    2012.12.11.完『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅤ』



    【玻璃天蓋・外伝】

    2012.12.06.【詩文】玻璃天蓋・切なの実【玻璃宮殿のカナリア】

    2012.12.12.【短編】玻璃天蓋・ぴゅあの実『青硝子の白薔薇』

    2012.12.12【短編】玻璃天蓋・ぴゅあ甘々の実『陽だまりの優しさ』

    2012.12.12【短編】玻璃天蓋・切なの実『あなたの優しさに包まれて』

    2012.12.13【短編】玻璃天蓋・甘々の実『玻璃宮の口付け』※初めての口付け設定。

    2012.12.14【短編】玻璃天蓋・甘々の実『棘の傷痕ーいばらのきずあとー』※黎翔のちょっぴり倒錯的な大人味

    2012.12.15【詩文】玻璃天蓋・甘々の実『覚めない夢』

    2012.12.14.【短編】玻璃天蓋『はじまりの庭』※最終章



    ☆イラスト説明

    『玻璃天蓋ーはりてんがいー』書庫の挿絵。
    『白薔薇・夕鈴』です。

    誕生花『白薔薇ー私はあなたにふさわしい。』と
    誕生石『ミルキー・アクアマリン安らぎと平和の導きの石』を盛り込みました。

    ちなみに、前作の夕鈴イラスト『あなたのぬくもりに包まれて・・・』
    陛下のもふもふのリベンジ品です。
    上手に、リベンジできたといいのですが・・・まさかの返り討ち!?

    物語を読み進むと薔薇色の頬の謎が分かる・・・かな。たぶん。





    【玻璃天蓋・幕間】※要注意!!!真っ黒・冷酷非情の陛下・隣国の王女の末路
     
    2012.12.19.【中編】玻璃天蓋『蒼の月影Ⅰ』

    2012.12.20.完【中編】玻璃天蓋『蒼の月影Ⅱ』


    【長編】切なの実『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅠ』※白友Aさん贈答品

    ☆こちらは、本編設定。
    『玻璃天蓋ーはりてんがいー』です。
    本日のお誕生日を迎える白友・Aさんへの贈答品です。
    『Aさん、お誕生日おめでとうございます。』

    誕生花『白薔薇ー私はあなたにふさわしい。』
    と誕生石『ミルキー・アクアマリン・安らぎと平和の導きの石』で、創りました。
    いつものごとく見切り発車・・・・ごめんなさい。
    気に入ってもらえるといいな。             では、どうぞ。







    空から降る氷雪(ひょうせつ)の花びらは、こんこんと
    温室の周りに降り積もり、辺り一面を白一色に染め上げる

    陛下から賜った玻璃硝子(はりがらす)の温室
    夕鈴だけの箱庭
    ここだけは、別世界。
    一年中暖かい春の植物園。

    冬場、彼女の花簪(はなかんざし)が途絶えることの無いようにとの
    配慮(はいりょ)で陛下の寵愛(ちょうあい)の証(あかし)として建てられた。

    陛下が、夕鈴の為に贈った、硝子(ガラス)の箱庭の中は、
    外と季節が異なり、春の庭。

    玻璃硝子(はりガラス)の天蓋(てんがい)の箱庭の外は、真冬の白陽国

    年の瀬に近づき、はらはらと落ちる氷の結晶の花びらの降る
    厳寒(げんかん)の冬の世界が硝子越しに映る。、
    暖かな夕鈴の温室の中は、別世界で春のぬくもりと香気に満ちていた。

    今は、色鮮やかな薔薇が咲き乱れていた。
    その中でも、美雪(みゆき)と同じ真っ白な花びらの白薔薇が咲き乱れている
    温室の一角が、夕鈴は好きだった。

    長椅子に座り、夕鈴は、外の降る雪を眺めながら・・・なにも考えず雪を眺める。

    はしばみ色の瞳は、静かな雪の花びらの行方を追う。
    天空からの結晶花の冬の花は、静かな光の軌跡を描いて降り積もる。

    温室の花は、優雅で高貴な薔薇の高薫(こうくん)に包まれている。
    今は、美しい白薔薇の甘い香りが彼女を包む。
    ふくよかな艶のある高貴な香りに包まれながら、彼女は長椅子に身をゆだねた。

    (綺麗な人だったな・・・・)

    先ほど、宴で初めて見た、隣国の王女を思い出す。
    漆黒の髪、この美雪(みゆき)のような肌の白さ、青海(せいかい)の瞳の美しい貴婦人。
    陛下の、縁談のために白陽国に来た王女に、夕鈴は、昼の歓迎の宴もそこそこに、逃げ出して、ここにいる。

    歓迎の挨拶をする陛下に、堂々と求婚した隣国の王女。
    並び立つ美しい一対に、白陽国の官吏からの呟きが漏れ聞こえた。

    官吏の心無い陛下と隣国の王女への賞賛に、夕鈴の心は、抉(えぐ)られるように痛んだ。
    あの場で、涙を零(こぼ)さなかったのは、陛下の為の演技ゆえ。
    今は、誰も見咎(みとが)める者も居ない。
    はらはらと・・・はしばみ色の大きな瞳から大粒の涙が零(こぼ)れる。

    (陛下は、あの方を正妃に迎えられるのだろうか?)
    (李順さんは、しかるべき時に、陛下にふさわしい方を妃に迎えると言っていた。その時は、今なのだろうか・・・・)

    甘い薔薇の香りは、逆に涙を零(こぼ)させるだけ・・・
    陛下からの玻璃天蓋(はりてんがい)の箱庭は、陛下に包まれている気がして・・・・夕鈴はここが好きだった。

    だけど・・・今は、それが辛い。甘い記憶の色濃い場所だけに、とても辛かった。

    (・・・・傀儡(かいらい)ゆえの期間限定。)
    (叶わない恋を嘆(なげ)くのは、間違っている。)
    でも、演技と知りつつ、育ってしまった恋心は、
    ズキズキと夕鈴を責め苛(さいな)む

    ここなら、この苛立(いらだ)つ想いも静まると思っていたのだけど・・・・
    薔薇の香りが噎(む)せかえる。
    (ああ・・・今は、何も考えたくない。)

    はしばみ色した大きな瞳は、静かに降る雪を眺める
    玻璃硝子(はりがらす)の箱庭の外。

    外の景色は、いつの間にか、吹雪(ふぶ)いていた。
    王宮のような厳しい現実がそこにある。

    春のような、箱庭で 王宮の嵐も、知らされず、何も聞けない
    ただ何も知らず、知らされることの無い傀儡(かいらい)の妃。
    偽者の妃は、どこまでも偽者。
    本物になりえない。

    私と、ここの薔薇達は、わたしと、同じ運命。
    季節を無視した、花たち。
    ・・・・外を知る必要の無い陛下の花だった。




    ・・・・続く。

    【長編】切なの実『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅡ』※白友A様贈答品

    ☆こちらは、本編設定。
    『玻璃天蓋ーはりてんがいー』です。
    本日のお誕生日を迎える白友Aさんへの贈答品です。

    『白友Aさん、お誕生日おめでとうございます。』

    白友Aさんの誕生花『白薔薇ー私はあなたにふさわしい。』
    と誕生石『ミルキー・アクアマリン・安らぎと平和の導きの石』で、創りました。
    いつものごとく見切り発車・・・・ごめんなさい。
    気に入ってもらえるといいな。             では、どうぞ。






    ・・・・続き

    宴の先触れが、夕鈴の到着を知らせる。
    李順の指示で、美しく着飾った夕鈴。

    いつもの政務室にいるような普段着の妃の装いと違い、
    此度(こたび)の隣国の王女との縁談よけに美しく着飾り
    《狼陛下の寵妃》を隣国の王女に見せ付ける。

    春の陽だまりのような金茶の髪は、
    複雑に結い上げられ
    金の髪飾りが、金特有の揺らめく光りの軌跡を描く。

    金と銀の歩庸(ほよう)は、涼やかな音をたて
    しゃらん・・・・しゃらん・・・・と
    彼女が歩くたびに奏でる。

    金茶の髪に絡ませた、
    ミルクブルーのアクアマリンの柔らかな煌めき。

    対照的に、鮮やかな赤の花簪(はなかんざし)。

    少し、緊張のせいか、上気した薔薇色の頬

    淡く色づく、清楚で可愛らしい唇。

    その唇は、柔らかく私に微笑む。

    夕鈴のはしばみ色の大きな瞳は、輝き
    柔らかな眼差しで、私を見つめる。



    貴石に合わせた、柔らかなミルク・ブルーの衣装

    いつもより、大胆に胸元が大きく開いた宴用のデザインに

    ミルキー・アクアマリンを連ねた繊細な貴石の雫の首飾りが、
    夕鈴の白磁の肌に柔らかく映える。




    たおやかで華奢な身体に、たっぷりとしたドレープを効かせて、
    裳裾を引いた冬用の宴の衣装。

    幾重にも、重なる美しい薄絹の重なりのグラデーションが美しい。

    細腰に巻かれた淡いミルク・パール色した絹の腰帯。

    それらの衣装の全てに散りばめられた、真珠とミルキー・アクアマリンの光りの揺らめきが、夕鈴を彩る。




    広間に夕鈴が入ってきてから、私の瞳は夕鈴しか見えなかった。
    演技ではない、最愛の人の愛らしい姿に、私の心は跳ね上がる。

    心待ちにしていた夕鈴を出迎えるために、私は彼女に手をさし出す。
    目の前の王女など眼中になど無い。

    迎え入れ引き寄せた私の寵愛の花に、私は称賛(しょうさん)の言葉と甘やかな口付けを贈った。



    ・・・・続く。

    【長編】切なの実『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅢ』※白友A様贈答品

    ☆こちらは、本編設定。
    『玻璃天蓋ーはりてんがいー』です。
    本日のお誕生日を迎える白友Aさんへの贈答品です。

    『白友Aさん、お誕生日おめでとうございます。』

    白友Aさんの誕生花『白薔薇ー私はあなたにふさわしい。』
    と誕生石『ミルキー・アクアマリン・安らぎと平和の導きの石』で、創りました。
    いつものごとく見切り発車・・・・ごめんなさい。
    気に入ってもらえるといいな。             では、どうぞ。





    ・・・・続き

    私の安らぎの最愛の妃に、隣国の王女の蔑むような値踏みの眼差し。

    もとより、夕鈴しか見えない私には、
    この王女の夕鈴を見る眼が気に食わない。

    どんなに、美しい女だろうが、夕鈴しか私は愛せない、ほかの妃など、私はいらない。
    私にとって、美しさを鼻にかけて、それを武器にする女は、毒花・妖花でしかない。
    隣国の王女は、そうゆう類(たぐい)の女だった…。

    夕鈴に、醜い嫉妬を露わにしたその視線に苛立つ。

    例え、隣国の王女だろうとも、夕鈴が傍に居なければ、切り捨てることは、簡単なのに…。

    儀礼的に、歓迎の言葉であしらうつもりが、私の視線を勘違いした王女が、私に求婚してきた。
    《結婚したあかつきには…》の華燭の言葉と共に…

    黎翔には、隣国との関係は、どうでもいいことで
    ましてや、その国の王女との婚儀など、意味も無い。

    (私の腕に、夕鈴が居るというのに、勘違いも甚だしい女!)
    立場をおもんばかりうやむやに接した結果が、夕鈴に牙を向いた。

    無抵抗の夕鈴を、抉(えぐ)るような刃の言葉が続く。

    (やはり、毒花・妖花の類か…)

    みるみるうちに、夕鈴の身が強張り、青ざめる

    私しか分からないような夕鈴の微(かす)かな震え…
    私のせいで、傷ついた夕鈴に胸が痛い。

    と同時に、隣国の王女への殺意が芽生える。

    夕鈴は、妃演技のまま、毅然とした態度で

    『気分が優れないから…』と、宴を辞した…

    勝ち誇った態度の隣国の王女。


    宴の間から、消え入るように、夕鈴が姿を消す。

    輝きを失ったはしばみ色の瞳。
    強張った笑顔。
    青ざめた顔色。
    私には、夕鈴が今にも泣きだしそうに見えた。

    今すぐ、追いかけて慰めたくても、今は、周囲が許さない。
    黎翔は、夕鈴を追いかけたくても追いかけられない。
    我が身が、呪わしかった。

    元凶の隣国の王女に黎翔は、冷ややかな氷の視線をおくった。

    宴の間から夕鈴が消えすぐのこと。

    黎翔は、隣国の王女に酷薄な笑みを浮かべる。

    (愚かな王女よ…
    …さて、夕鈴が居なくなった今。
    自分がどれほど、身の程知らずだったことかを後悔するがよい…)

    優美で冴え渡る月も消え入る美貌はそのままに、黎翔は、ユラリと《冷酷非情な狼陛下》へと気配を変えた…

    黎翔の笑みを勘違いし、勝利の確信を深めた王女は媚びるような笑みを深くする・・・。

    数秒後の我が身の破滅を知らずに・・・。


    ・・続く。

    【長編】切なの実『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅣ』※白友A様贈答品

    ☆こちらは、本編設定。
    『玻璃天蓋ーはりてんがいー』です。
    本日のお誕生日を迎える白友Aさんへの贈答品です。

    『白友Aさん、お誕生日おめでとうございます。』

    白友Aさんの誕生花『白薔薇ー私はあなたにふさわしい。』
    と誕生石『ミルキー・アクアマリン・安らぎと平和の導きの石』で、創りました。
    いつものごとく見切り発車・・・・ごめんなさい。
    気に入ってもらえるといいな。             では、どうぞ。



    ・・・・続き


    『夕鈴…やっと見つけた…』

    硝子越しの雪景色を見ていた夕鈴に
    聞きなれた優しい陛下の声とあたたかなぬくもり。

    先ほどの宴の衣装、そのままの陛下がそこはいた。
    夕鈴の肩にかけられた陛下の謁見用の毛皮つきの冬衣。
    まだ、陛下のぬくもりが残るそれを、黎翔は、夕鈴に羽織らせたのだった。

    (……!!!!)

    ここにいるはずの無い陛下の姿に、夕鈴は目を疑う。
    今頃は、隣国の王女との宴を楽しんでいるはずの陛下が
    ここにいるのが、信じられなかった。

    「・・・・陛下、どうして(ここに)・・・」

    きょとんとした姿で、見上げるように陛下を見上げる夕鈴は、
    いまだに信じられない様子で、僕を見つめる。

    黎翔は、彼女の瞳を覗き込む。

    (ああ・・・やはり・・・、君はここで泣いていたんだね。)

    潤んだはしばみ色の瞳は、充血し、まるで兎の目のように赤かった。

    睫に、きらりと涙が一粒落ち残る。

    少しだけ鼻の先が赤かった。

    いったい、どれだけの時を君はここで一人で過ごしたのだろうか。

    声をかける前の君は、外の吹雪の景色を眺めていた。

    微かに震える肩は、僕の見間違いではなかったらしい。

    長椅子に座る夕鈴の隣に、黎翔は座る。

    か細い夕鈴のおずおずとした声。

    「隣国の王女との宴は・・・・」

    聞きたくなくて・・・でも聞かないわけにはいかなくて・・・
    そんな夕鈴の気持ちが僕にも伝わる。

    (安心させたい夕鈴、君を今すぐに・・・)

    不安げに、揺れるはしばみ色の瞳を黎翔は、見つめながら
    安心して欲しいとの願いをこめて、夕鈴に優しく微笑む。

    『・・・帰ったよ。』

    「・・・・は?」

    『隣国の使節団は、帰国した。』

    「ええっ・・・今朝、到着したばかりですよ?  この吹雪の中を帰国?」

    驚き、はしばみ色の大きな瞳が更に大きくなる。
    感情を素直に出せる君が、愛しい。

    君の頬に残る涙の痕が僕の胸を締め付ける。
    黎翔は、夕鈴に手を伸ばす
    夕鈴の頬に残る涙の痕を指先で、辿った。
    微かに、身を震わせ、それから逃れようとする夕鈴。
    はしばみ色の瞳が、翳る。

    気付くと黎翔は、羽織らせた毛皮つきの冬衣ごと、夕鈴を抱きしめていた。

    「・・・ッ、陛下!!!」

    それに驚いた夕鈴が、僕の腕の中で暴れだす。
    腕の中から、逃げ出そうと、必死にもがく。
    さきほど傷ついた君をそのままになんて、僕には出来ない。
    更に、腕に力を込めて、身動きできないように力強く抱きしめた。

    そして、夕鈴に囁いた。
    先ほど、傷ついた君を追えず、ここで一人涙を零していた夕鈴に対して、切なく苦い思いが渦巻く。

    黎翔の夕鈴を気遣う、苦しげなささやき声。

    『もう、よい。何も考えるな。』

    『彼らは、帰国した。』

    『だから、隣国のことや、宴はもういいんだよ。夕鈴』

    「・・・・・陛下。」

    ・・・・続く。

    完【長編】切なの実『玻璃天蓋ーはりてんがいーⅤ』※白友A様贈答品

    ☆こちらは、本編設定。
    『玻璃天蓋ーはりてんがいー』です。
    本日のお誕生日を迎える白友Aさんへの贈答品です。

    『白友Aさん、お誕生日おめでとうございます。』

    白友Aさんの誕生花『白薔薇ー私はあなたにふさわしい。』
    と誕生石『ミルキー・アクアマリン・安らぎと平和の導きの石』で、創りました。
    いつものごとく見切り発車・・・・ごめんなさい。
    気に入ってもらえるといいな。             では、どうぞ。



    ・・・・続き

    「・・・陛下、でも・・・隣国との婚儀は?」

    『・・・・夕鈴、隣国の王女は、私に求婚したが、私は【是】と応えていない。』

    『【是】と応えていないんだ。』

    黎翔は、抱きしめる力を緩めて、夕鈴を見つめる。

    私の好きなはしばみ色の瞳に真剣な顔の私が映る。

    黎翔は、切なげに夕鈴の額に震える唇で、彼女に口付けた。

    (こんなにも、愛おしい人ができようとは・・・)

    夕鈴と、出会うまでは、想像もしなかった思い。

    狂おしい切ない擦れた声で囁く。

    『いままでもこれからも、狼陛下の妃は、君だ。夕鈴。』

    「・・・陛下。」

    (未だ、この想いを僕は、君に伝えられない。

    この言葉も行動さえも、君は演技だと思うのだろうな。

    「君を愛しい」と気付いてからの僕は、君しかいらないというのに・・・)

    伝わらぬ気持ちを胸に抱いて、黎翔は夕鈴をただ抱きしめる・・・・・

    『さっきは、ごめん。君を守れなかった・・・・・』

    「・・・陛下、気にしないで下さい。」

    「それが、私の仕事ですから!!!」

    『夕鈴、すまない。』

    玻璃天蓋の箱庭の外。
    降る雪は、さらさらと美しく降り積もる。

    王宮の暗闇も思惑も白く降り積もる雪に消える

    黎翔の想いも然り・・・・
    夕鈴の思いも然り・・・・

    やがて積もる想いは、春を迎え溶けていく。

    わだかまりも、こだわりもなく二人の想いが素直に花開く春の時。
    二人の春は、まだすこし先のこと。

    今は、玻璃天蓋の箱の中。
    恋焦がれる思いを秘めた二人は
    かりそめの春に、抱(いだ)きあい
    つかの間の幸せを嚙(か)みしめる。

    玻璃天蓋の箱庭の中に、二人は想いを閉じ込める。
    美しく花開く恋をそれぞれに、乞い願う。

    無償の愛という美しく純粋な想いを胸に秘めて・・・・・
    幸せを夢見る二人は、暖かな春の箱庭で時を過ごす

    【恋が実る】時を夢見て・・・・。



                   ー『玻璃天蓋ーはりてんがいー』完ー



    ここまで、応援、読んでお付き合いしていただきました
    読み手の皆さん、ありがとうございました。

    久しぶりの長編で、乗り切れなくてもやもやしてましたら、
    ありがたいメッセが白友さんから!!!
    カンフルメッセありがとうございます。おかげで書ききれました。

    贈答品を、今日中に終わらせることが出来ました。
    感謝してます。

    本当に、読み手の皆さん応援・足跡ありがとうございました。ぺこり。

                                 2012.12.11.さくらぱん




    【詩文】玻璃天蓋・切なの実【玻璃宮殿のカナリア】

    私は、玻璃宮殿の偽カナリア
    玻璃宮殿の外の世界は、触れることが出来ない。

    王宮の暗闇も
    数々の醜い思惑も全て
    玻璃宮殿の外の
    天から降る美しい雪の花びらが
    全て覆い尽くす。

    もはや、私が感じられるのは、
    玻璃硝子の中からの美しい眺めだけ…

    玻璃の向こうの現実を知ることは出来ない。

    閉じ込められ守られるだけのカナリアは、
    羽根をもがれたのも同然。

    見つめるのは、美しいものばかり・・・
    現実とは、異なる世界。

    どんなに現実が厳しくとも、
    例えこの身が刻まれようとも、
    真実を見たい…感じたいと乞い願う、

    貴方と同じものを見て、同じものを感じたいと思うことさえも
    私には、許されないことなのか…。

    私を気遣い、私を大事にしてくれる陛下。
    切なさと狂おしい想いが、彼女の胸を締め付ける。

    陛下の優しさに触れるたびに、
    陛下のぬくもりに触れるたびに
    私は、貴方が好きだと感じる。

    こんな想いさえ、本来なら許されない想い。
    叶わぬ恋に身を焦がす・・・
    恋焦がれる想いだけは膨らみ、
    彼女の内から、チリチリ・・・と焦がされる

    傀儡の妃だから、陛下の本物のお妃でないから、
    貴方は、私に現実を見せないのか…

    優しい陛下が、私を気遣い
    そっと私の瞳を目隠しをする。

    厳しい現実は、貴方が優しく蓋をする
    私はそんな事望んでいないのに・・・・

    貴方が、囁く言葉は、優しく甘い。
    怖くて厳しい現実は、貴方が耳を塞ぐ

    陛下の優しさに触れるたびに、真実を知りたいと私は乞い願う。

    私は、玻璃宮殿のカナリア

    歌を忘れ、綺麗なものを見て
    優しい貴方に守られる

    傀儡の小鳥。本物になれない偽のカナリア
    玻璃宮殿の外の現実は知らない。知らされない。

    問うことも出来ず・・・ましてや貴方を愛することも許されない。
    ただ、貴方の愛を乞い願うのみ

    玻璃宮殿の偽カナリア

    貴方に愛でられ、小首をかしげる
    ここを出て行く術(すべ)を知らない。
    貴方の傍を離れたくない。

    玻璃宮殿の外は、厳しい現実の世界。

    私は、今日も春のような貴方の優しさで造られた
    玻璃宮殿で偽のカナリアとして暮らしている。

    【短編】玻璃天蓋・ぴゅあの実『青硝子の白薔薇』※白友A様贈答品

    或る晴れた冬の日

    いつものように、政務室に行くと私の執務机に、
    青硝子(あおがらす)のインク壺に飾られた花が活けてあった。

    見覚えのあるインク壺。
    確か、西の国からの献上品。
    空になって捨てようとしたのを、夕鈴が、綺麗だから欲しいと
    言ったので、あげた八角形の青硝子のインク壺であった。

    それにしても活けてあるということは、夕鈴が活けてくれたのだろう。
    日常品のインク壺に花が活けられているのが、いかにも夕鈴らしくて
    僕は、くすりと笑った。

    花は、可憐な白薔薇の蕾だった。
    ようやく花開こうと綻(ほころ)んだばかりの蕾
    それが、八角形の青硝子インク壺に一枚の葉と花首だけ挿してあった。

    夕鈴、君は白薔薇の花言葉を知っているのだろうか?
    白薔薇の花言葉は「わたしは、あなたにふさわしい」「恋の吐息」
    薔薇の葉は「希望あり」「頑張れ」

    まだ、蕾ということは、君は「わたしは、あなたにふさわしい」と
    思ってくれていても、自信が無いのかな。
    君も僕と同じ気持ちで「恋の吐息」に戸惑っているのだろうか?
    僕の恋は「希望あり」なのだろうか?


    (・・・・・まさかね)

    偶然とはいえ、君への想いに心が弾む。
    君に、恋を後押しされた気分だ。

    (君を本当の妃にするべく今日も仕事を頑張るか)

    「陛下、綺麗な薔薇ですね。夕鈴殿ですか?」
    『ああ・・・たぶんな。』

    ついつい仕事場に関わらず、甘い微笑が零れた。

    今夜は、君に薔薇を贈ろう。
    大輪の赤い薔薇を一本だけ。

    夕鈴、君に・・・・
    『あなたを愛します』
    今の僕の気持ちを花に込めて
    今夜、薔薇を届けに行くよ。


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    【短編】玻璃天蓋・ぴゅあ甘々の実『陽だまりの優しさ』※本編設定。

    或る日 いつものように黎翔は、政務休憩の長時間を使って
    後宮の夕鈴の部屋を訪れた。

    そこに、出迎えてくれるはずの夕鈴の姿が無く、
    夕鈴付きの侍女の話だとしばらく前から玻璃宮殿(温室)に
    向かったまま戻ってこないのだという。

    私の足は、夕鈴の姿を求めて、自然とそちらへと向く。
    後宮の庭は、晩秋の彩り
    幾つもの繊細なセピアの重なりが庭を彩る

    晩秋ともなれば、時折吹く風が快晴にも関わらず
    寒さを感じさせる。
    見上げれば、空は雲ひとつ無い
    青(あお)とも碧(あお)ともつかぬ深い秋の空。
    柔らかな陽射しが、降り注いでいた。
    そんなうららかな日和だった。



    後宮に建てられた玻璃宮殿の扉を開ける。
    ここは、いつ来ても心安らぐ甘い香りがする、暖かい春の庭。

    さて、私の愛しい妃は、いったいどこにいるのだろうか?
    迷路のような小道を辿り、夕鈴を探す。
    玻璃天蓋からのうららかな陽射しはとても暖かく。
    玻璃宮殿の春の庭を、明るい恵みの光りで彩る。
    その天蓋からの燦燦とした陽射しは、光輪を生み出し
    春の庭を眩しい光の庭へと変えていた。

    甘い香りと、光と花に包まれて、
    私の探し人、最愛の夕鈴が長椅子に座っていた。

    柔らかな蜂蜜色の髪がとろりとした光りを纏っている

    優しい色した薄紅色の薔薇に囲まれている愛しい彼女。
    少し、小首を傾げて座っている。
    後姿の彼女でさえ、愛しくて仕方ない。

    彼女の奥に見える人工の池が、噴水を作りキラキラと
    陽射しを弾いていた。




    『・・・・ゆ・・・・。』

    彼女に、声をかけようとした黎翔は、言葉を飲み込む。
    起きているものと思っていた、彼女は座ったまま眠っていた。
    そのあどけない姿に、起すのもなんだかしのびないので、
    言葉を飲み込んだのだった。

    無防備に寝ている彼女の側からなんだか、黎翔は離れたく無かった。
    そっと、彼女の隣に腰掛ける。

    そのうち、夕鈴が黎翔の肩に頭を預けたかと思ったら、ずるずると身体が傾いできて、黎翔の膝の上で、寝入ってしまった。

    それでも、起きない夕鈴に切なくなると同時に愛おしさが湧いてくる。
    (これだけ信頼されている証なのか?)と思いたくなる。

    「・・・・・へーか・・・・」

    君の呼ぶ声がして、僕はどきりと心臓が跳ねる。
    柔らかく微笑む君の瞳は、未だ開かない。
    (・・・・寝言?)
    そのことに、まだこうしていたい気持ちが安堵し、同時に嬉しくなる。
    君は、いったいどんな夢を見ているのだろうか?
    そこに、僕がいるんだね。

    彼女の綺麗な髪を梳き、一房に口付ける
    愛しい君に出会えたこの奇跡に感謝して・・・・
    蜂蜜色の艶やかな絹糸のような君の髪。
    陽だまりに暖められた髪は、僕の唇に甘やかで温かなぬくもりを残した。

    夕鈴の蜂蜜色の髪を僕は、指先で楽しむ。
    玻璃宮殿の春の庭、陽だまりの庭は、時が止まったかのよう。

    黎翔の穏やかで心安らぐ甘い時

    静かな池の噴水の水音だけが響く。

    こんなにも、心ときめき幸せなのは、君が側にいるから・・・・

    恋ゆえの甘い時の雫。

    (夕鈴、今は僕の膝で幸せな眠りを・・・)

    【短編】玻璃天蓋・切なの実『あなたの優しさに包まれて』※本編設定。

    玻璃王宮の外は、美しい雪が舞い散る厳冬(げんとう)の庭。
    玻璃王宮の私の庭は、常春(とこはる)の花の庭。

    外の温度も厳しさも知らない。
    あなたが創りあげた穏やかで優しい時が過ぎ行く・・・

    陛下の突然の抱擁(抱擁)に 私は、呼吸すら出来ない。
    力強いあなたの腕の中で、私は、愚かにも溺れだす・・・

    苦しくて、切なくて・・・・でも恥ずかしいけど幸福で・・・
    ごちゃ混ぜの感情に、わたしは、どうしていいのか分からない。

    あなたのぬくもりが残る謁見用の毛皮の冬衣に包まれて
    あなたの優しさに包まれる

    耳を打つのは、切なく優しい声。
    貴方は、自分を責めているのは何故なのかしら?
    職務を放棄した私を貴方は、責める権利があるというのに・・・・・

    あなたのぬくもりに包まれる
    じんわりと、浸み込んでくるのは、あなたの優しさ

    わたしは、あなたの愛に包まれる

    わたしは、あなたの優しさに触れるたびに
    あなたに心が傾く 愚かな気持ちを止められない。

    叶わない恋なのに、育ち行く恋心。

    あなたのぬくもりに包まれる
    幸せすぎて、手を伸ばしたくなる
    届かないと初めから分かっているのに

    あなたの愛に私は震える
    包まれるたびにわたしの切ない恋心がきゅんきゅん啼くの

    叶わないと分かっていても
    切なくて、あなたの隣はとても苦しいのだけれど、

    あなたのぬくもりに包まれると とても幸せになれる
    時よ止まれと 強請りたくなる。

    甘く切ないあなたの声に、わたしの時が止まる

    『いままでもこれからも、狼陛下の妃は、君だ。夕鈴。』

    あなたの優しい嘘に騙されたくなる・・・・ほんとうですか?

    【これからも優しいあなたの隣にずっと私が居てもいいのでしょうか?】

    わたしが、咽喉の奥に飲み込んだ熱い想い

    「・・・・・あなたに恋しています。あなたが、大好きです。・・・・」

    玻璃王宮の花の庭、あなたに抱(いだ)かれ甘い夢を見る。
    玻璃王宮の内なる世界、美しい玻璃の夢が織り上げられる。

    常春の庭で、あなたの優しさに包まれる・・・・

    【短編】玻璃天蓋・甘々の実『玻璃宮の口付け』※初めての口付け設定。

    ※本編設定より、少し進んでいます。
    ちょっぴり大人味
    (口付けどまりですけど・・・・)
    イメージを壊されたくない方は、退出してください。
    それでも、いいという方のみ  どうぞ。





    暖かな深紅の瞳に囚われる
    吸い込まれそうな瞳から、私は、視線が外せない。

    あなたの指先が、私の髪を梳く
    わたしは子猫のように、あなたに寄り添い
    されるがまま、あなたの指先に愛でられる感触に酔いしれる

    髪を梳いていたあなたが、私の首筋に触れた

    そのまま、わたしの輪郭を辿る指先が、頤(おとがい)を捉えた。
    ゆっくりと、唇を親指でなぞられる

    ぞくり・・・と背筋を走る戦慄
    甘い予感に震える唇

    あなたの深紅の瞳が深くなる。
    焔のような瞳の中に映る戸惑うわたし。

    おとがいを引き寄せられて
    あなたへと傾ぎなから、
    引き寄せられる身体

    抱き締められて身体までもが、震えだす

    近づく距離に、眩暈がする

    戸惑いのはしばみ色の瞳が閉ざされる

    少しづつ重ねられる唇
    ・・・・・おずおずと、あなたは柔らかく口付けを落とす

    ただ重ねただけの口付け

    口付けの甘い痺れが駆け抜ける

    触れるだけの口付けは、甘い余韻を残して
    すぐに離れた

    「・・・・・・ぁ。」

    私の名残惜しいような微かな吐息
    その吐息に反応して、再び重ねられたあなたの唇

    今度は、重ねるだけでない深い口付け・・・・
    二度・・・・三度・・・・繰り返し
    深く・・・より官能的に甘くなる口付け・・・・

    再び、甘やかな吐息が零れだす。
    あなたとの甘美な口付けにわたしは酔いしれる

    ・・・・幸せの予感に
    全身が歓喜で満ちてくる

    甘やかな薔薇の香りがことさら甘い
    あなたのぬくもりが私に伝わる
    あなたの愛が私に希望を灯す

    玻璃天蓋の春の庭
    甘美な口付けに身を染めて
    あなたに酔いしれ、わたしは花開く・・・・・

    【短編】玻璃天蓋・甘々の実『棘の傷痕ーいばらのきずあとー』※黎翔のちょっぴり倒錯的な大人味

    ※本編設定なのです。これでも/////。
    黎翔のちょっぴり倒錯的な大人味
    イメージを壊されたくない方は、退出してください。
    それでも、いいという方のみ  どうぞ。      2012.12.14.さくらぱん


    「あっ・・・」

    気付いた時には、薔薇の鋭い棘が、夕鈴の指先を刺していた。

    『大丈夫?夕鈴?』

    膨れ上がる赤い真珠・・・
    鋭い鉤爪(かぎづめ)の薔薇の棘は、思っていたより深く、
    夕鈴を傷つけていたようだ。
    白い指先から…赤い真珠が零れ落ちる。

    僕は、夕鈴の返事を聞かずに、その傷ついた指先を口に含んだ。
    口の中に広がる甘美な鉄錆の味。
    こんなにも、君の指先が甘かったなんて…

    夕鈴の指先の傷口に何度も舌を這わせて、
    羞恥と痛みに震える指先の甘さを味わう…

    僕が痛む指先に舌を這わす毎に
    君は、柳眉を顰(ひそ)めて、苦悶の表情をする。

    「陛下、もう…大丈夫ですから、手を…」
    「手を…離して下さい…お願い。」

    控えめで震える熱を帯びた夕鈴の懇願の甘い声。

    柔らかな白い指先に、舌を這わす。
    甘美な傷に、僕は夢中になる
    傷口を辿るように、ゆっくりとじっくりと味わう。

    チロリと、見上げた紅い瞳に映るのは・・・・

    【涙で潤むはしばみ色の大きな瞳 】
    微熱めいた光りで僕を見つめる

    【華やかな妃の袖口で隠した口元】
    震える衣に、君の動揺が伝わる

    【耳朶から首筋まで染まる君】
    ほんのりと恥ずかしそうに色づく肌は、
    艶やかで…艶(なまめ)かしい


    そのすべてが愛おしくも狂おしい夕鈴。
    僕の胸をこんなにもかき乱すのは、夕鈴。君一人だけ・・・
    何度でも舌を這わし君を愛でる。

    【その苦悶の表情を何度でも見たい。】

    僕は、玻璃宮殿の春の庭から後宮へと君を連れ去った・・・・

    【詩文】玻璃天蓋・甘々の実『覚めない夢』

    覚めない夢を私は見る

    星明かりの空の下
    貴方に寄り添い

    くすぐったい愛を語り合い
    瞳を見つめあう…

    貴方の瞳の中に私を見つける
    貴方は私の瞳の中に愛を見つける

    覚めない夢に抱(いだ)きあう二人

    お互いの指を絡ませ
    唇を重ねる

    口付けで語り合い
    愛を確かめ求めあう

    こんなにも
    離れ難くて…
    愛しくて…
    一つになりたくて…
    惹かれてく…

    【どうして、二人は2つに分かれているの!?】

    魂の半身
    貴方を求める引力に逆らえない

    貴方から離れたくない
    私の心は貴方の心と一つになりたい。

    夢から覚めない夢をみる
    幸せな夢に酔いしれて…

    私の夢は、今日も紡がれる…

    覚めない夢を今日も紡ぐ

    【短編】玻璃天蓋『はじまりの庭』※最終章

    『おいで・・・君に見せたいものがあるんだ・・・』

    ある日、突然現われた黎翔に連れられて、後宮の自室から
    夕鈴は、庭へと連れ出された。
    まだ、夏の陽射しが残る初秋の庭を二人は手を繋ぎ歩いてく。

    よほど急(いそ)いでいるのか、黎翔の楽しげな軽い足取りは
    急(せ)いていて、いつもの夕鈴を気遣うような足取りは見られず、
    早足に後宮の庭を進む。

    「陛下・・・待って!!!・・・待って下さいっ!!!!」
    「どこまで行くのですか?」
    「早すぎますっ。もう少し、ゆっくり歩いてください。」

    足に絡まる妃の衣に、転びそうになりつつも、ついてきた夕鈴が
    とうとう音をあげた。
    乱れる呼吸に動悸(どうき)が激しい。
    なせ、そんなに陛下は、急ぐのか分からない。
    何をそんなに私に見せたいのだろうか・・・・?

    『夕鈴ごめん。もう少しだから・・・疲れた?』

    陛下と繋いでいた手を、外されたと思った瞬間。

    「きゃっ・・・・・!!!」

    陛下に、足元を救われて陛下に抱き上げられた。
    バランスが取れなくなり、慌てて、陛下の首にしがみ付く。
    至近距離の狼陛下は、とてもご機嫌で、謎めいた紅い瞳が笑顔で輝く。

    『夕鈴、もう少しだから、ここからは僕が連れて行ってあげるよ。』
    『しっかり、掴まっていてね。』

    悪戯な笑顔で滑るように早足で、夕鈴を抱えた黎翔は歩みを進める。
    やがて、新しい回廊、見慣れない庭に着いた。

    『ここからは夕鈴、目を瞑っていてほしいな。』
    『ビックリさせたいから。』

    言われるがままに、夕鈴は素直にはしばみ色の瞳を閉じる
    陛下の腕の中、風の匂いと陛下の息遣い。
    自分のドキドキと激しい鼓動(こどう)を感じる

    揺れる陛下に抱(いだ)かれて、見えない世界に身を委ねた。

    陛下のびっくりさせたいものとはいったいなんだろうかと
    ドキドキしながら・・・

    そのうちに、ようやく陛下が立ち止まる気配。
    陛下が、何かを開けるような重たげな音と
    張りの或るのしなやかな腕の筋肉の動き

    再び、歩き出した陛下。
    ーー瞬間、空気が変わった。

    濃厚な空気の重さ、水の匂い。
    華やかで穏やかな花の香り。
    何より、目を閉じていても瞼の裏に感じられる明るく眩しい光。

    明らかな先ほどとは、違う空気感。
    いったいここは、どこなのだろう。
    夕鈴の記憶を辿っても、どの記憶にも繋がらない。
    記憶の無い不思議な場所に連れられて
    陛下の気配を身近に感じる

    やがて、爽やかな水音のする場所・水の気配が濃い場所で陛下はようやく夕鈴に声をかける。

    『夕鈴、着いたよ。もう、目を開けてもいいよ。』

    陛下に抱かれたまま、夕鈴の瞳はおずおずと開かれる。
    はじめは、眩しい輝く光の奔流。
    次にキラキラと輝く噴水の光りの飛沫。
    美しく啼く小鳥達。
    緑濃い様々な種類・色とりどりの花々
    そして美しく手入れされた蕾の薔薇の庭園。
    眩しい光は玻璃天蓋からの燦燦とした太陽。

    見知らぬ場所の見知らぬ風景。
    美しい光りの庭園に夕鈴は言葉も無い。

    はしばみ色の瞳が美しく輝き、黎翔の腕の中で
    ぽかんとした顔で周囲を見渡す。
    まるで、子供のような姿。

    素直な表情の夕鈴の様子に、黎翔は満足した。
    嬉しくなって、夕鈴に囁く・・・・

    『夕鈴、君の庭だ。』

    その言葉に、びっくりした夕鈴が弾かれたように陛下を見つめた。
    驚きのはしばみ色の瞳と、優しい紅い瞳が絡み合う。

    「・・・・わたしの庭?」
    信じられないと、ぽつりと呟く。
    真っ赤に高揚した顔で、夕鈴が聞き返す。

    『そう、君のために私が造らせた。ここで育てた花を花簪に使うがいい。』

    驚きに見開かれたはしばみ色の瞳。

    玻璃天蓋の夕鈴の庭。
    はじまりの庭の最初の二人の想い出。

    ここで育つ二人の想い
    見守る玻璃天蓋のこの庭に、優しく育つ想いの花
    恋の花が花開く時はいつ?

    二人の物語が始まる・・・・



                      ー玻璃天蓋・完ー